第35話

フランとトーマスを招いた翌日、アルの姿が港にあった。

旅の途中でも船は作り続けており、在庫の船がアイテムボックスに大量に入っている。

港に着くと大勢の人たちが待ち構えていた。

アルは一定の感覚をあけて漁船や輸送船を出していく。

「アルフレッド様。ありがとうございます」

そう言ってお礼を言ってきたのはこの港の責任者である。

「人材の育成は順調ですか?」

「はい。おかげさまで」

漁船といっても誰かに師事して基本的な操作を学ぶ必要がある。

ベテランの漁師達は若手を自分の船に乗せその技術を惜しみなく若手に指導をしてくれていた。

その結果、自分の船がほしいと若手達から頼まれたのだ。

彼等が働いてくれればそれだけマルコシアス王国としては収入が増えることになる。

まだまだ手のつけられていない事業も多いが確実に1つ1つ進めていけばいいだろう。




「お帰り。皆の反応はどうだったかな?」

「皆、喜んでくれました」

「そうだね。私のところにもアルはまだ戻ってこないのかって陳情がきてたからね」

「多めに出していったつもりだったんですけどね・・・」

「国民がやる気に満ちているのはいいことだよ」

「そうですね・・・」

「さて、それじゃぁ交易の報告を聞こうか」

「はい。やはりメインとなるのは砂糖とラム酒ですね。魚の干物については商材として弱いようです」

「やっぱりそうなったか。だが、我が国としては輸出できるほど確保できるものとなると・・・」

そうなのだ。

商材にできるほどの物が他にないのだ。

野菜なんかは育ててはいる。

現在は国民の生活を支える程度であるし、長い航海に耐えられるかというとそれも難しい。

地球のように保冷できればいいのだが、この世界にはそのような技術はまだ存在しないのだ。

「当面は砂糖とラム酒をメインに輸出して時間を稼ぐしかないでしょう」

「そうか・・・。引き続き何か商材となるものがないか調査させる」

「僕のほうでも考えてみます」

「続いてはヒンメルン王国に派遣する艦隊だが、現在哨戒にでている古参を中心に派遣する。国内は新人が多くなるがなんとかなるだろう」

他国に派遣する人員は柔軟に対応できるだけの判断力が必要となる。

国内の守りが不安になるが他国が関わってくる話だ。

当然の結果といえるだろう。

もうじき学生の第3期生が卒業を向かえる。

アルはそれを待って派遣艦隊を率いて再びヒンメルン王国に向かうことになる。

細かい調整はマーカスがしてくれるとのことで任せても大丈夫だろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る