第51話

恥をかかされたウェスカーは憤っていた。

「ぐぬぬ。このままでは終われん」

「ですがどうするのですか?」

「それを考えるのがお前の仕事だろう」

従者としては勝手に暴走してヒンメルン王国の国王であるジェイクの怒りまで買ってとんだとばっちりである。

「ヒンメルン王国とマルコシアス王国を困らせればいいのですよね?」

「何か考えがあるのか?」

「破落戸(ごろつき)共に私掠免許状を交付するのはどうでしょうか?」

「私掠免許状?なんだそれは?」

「我が国の庇護のもと他国の船への海賊行為を認めるのです」

「ふむ。なかなか面白そうだな。我が国の懐が痛まぬのもいい」

「では、国に戻り次第、手配いたします」




サーキス王国に戻ったウェスカーの侍従は私掠免許状の交付を発表した。

噂はあっという間に広がり予想よりも多くの人が集まってくる。

これは利用できると判断した侍従は独断で登録料を取ることにした。

手間賃として一部を己の懐にいれ残りをウェスカーに渡す。

問題視されてもウェスカーの指示だったと言い逃れをする為だった。

サーキス王国の国王であるサラエスの耳にもウェスカーが私掠免許状の交付をしている話しはすぐに耳にはいった。

だが、経緯を聞いてあえて何もしなかった。

ヒンメルン王国と本格的にことを構えるのは困る。

だが、小国のマルコシアス王国には一泡吹かせてやりたいそんな心理が働いたからだ。

外交問題になったとしてもウェスカーが勝手にやったことで国としては知らない。

相手の出方にもよるが最悪、ウェスカーの首をはね送りつけてやればいいだろう。




商品の仕入れ先を失って途方にくれていたサンダース商会の会頭は私掠免許状の話を聞いて決断をした。

「このままでは我が商会は潰れてしまう。取引で入手できないなら奪えばいい、残っている船を総動員して奪い取れ」

サンダース商会がもっている船のほとんどは商船だ。

戦闘には不向きであるが戦利品を得たさいに積載量は大切になってくる。

サンダース商会の船は他の私掠免許状持ちと組むことによって安全に略奪行為を行い確実に利益をあげていた。

だが、サンダース商会の会頭は満足していなかった。

自分達の苦労を水の泡にしたマルコシアス王国艦隊には手をだせていなかったからだ。

果敢にもマルコシアス王国艦隊に挑んだ者もいる。

だが、近づくこともできず一方的に砲撃を受けて沈むだけだったのだ。

今は力を蓄えるとき。

絶対に自分達の商売を邪魔したマルコスアス王国艦隊を沈めてやる。

サンダース商会の会頭は野心で目をぎらぎらさせていた。

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