第43話

フランからみたアルは好ましい少年だった。

弟か妹がいればこんな感じなのだろうか?

父であるジェイクは冗談のように婚約の話を持ち出したがアルに嫁ぐなら悪くないと思っている。

今までも婚約の話が出たことはある。

王族である以上は仕方のない話ではあるがヒンメルン王国は海軍こそ力をいれていないが陸では負けなしの強国だ。

相手もそれにふさわしいだけのメリットを抱えている者がほとんどだ。

フランとしてはそうした者達と結婚はしたくなかった。

まず、視線だ。

自分で言うのもなんだが容姿は整っている。

性的な目で見られたことも一度や二度じゃない。

その度に気持ち悪いのを我慢して愛想笑いをして誤魔化してきた。

ジェイクはフランが嫌だと言えば付き合いを強制してくるようなことはなかったが、国のことを考えれば結婚しないわけにもいかない。

中には10歳を越えずして結婚を強制される王族や貴族もいるのだ。

それを考えれば自分は選べる分、恵まれているのだろう。

最近ではサーキス王国の王族から求婚をされていた。

陸で負けなしのヒンメルン王国に海軍に力をいれているサーキス王国が組めば周辺国はその存在を無視できないだろう。

政略結婚という意味では間違いない。

だが、相手が問題だった。

40を過ぎたおっさんなのである。

年齢差があるのも問題だがその見た目もフランからすればお断りだ。

贅沢三昧をしているのか腹をぽっこり膨らませ常に汗をかいているような男なのだ。

そして視線も胸やお尻を凝視してきたりと下心を隠そうともしない。

そういうわけで生理的にこの男だけはない。

だが、その男は何度もしつこく関係を迫ってきていた。

今回、マルコシアス王国にジェイクが送り出したのはこの男から逃がす目的もあったのだろう。

マルコシアス王国の海軍はサーキス王国の海軍相手に圧勝してみせたのだ。

その実力を考えれば同盟相手として十分だ。

それにアルの母親であるエルドラ王妃は話していて妙に馬が合うのだ。

主に話すのは共通の話題であるアルについてであるが・・・。

嫁いだ際に関係がこじれるということもないだろう。

アルは客人ということで丁寧に接してくれているがその根本にあるのは私に楽しんでほしいという気持ちだ。

それが年齢に似合わず背伸びしているようにもみえるが常に落ち着いているようにもみえる。

アルが王位につくならマルコシアス王国は安泰だ。

ヒンメルン王国の王位は両親に頑張ってもらうか親類を立てれば問題ないだろう。

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