第137話

迷惑な客であるロマニア帝国一行を捕らえてから2週間。

ヒンメルン王国とマルコシアス王国からそれぞれ返答がやってきた。

「アルに判断を任せるか・・・」

いわゆる丸投げという奴である。

お題目としては将来の事を考えてとのことだが間違いなく面倒事に関わりたくないという強い意思を感じる。

アルとしても誰かに押し付けられるなら押し付けたいがそう言うわけにもいかないだろう。

「取りあえずロマニア帝国と連絡を取るところからかな・・・」

そう考えていたのだがその必要はなくなった。

「アルフレッド様。ロマニア帝国の物と思われる船が入港を求めております」

「わかった。取りあえず港に向かおうか」

アルが港に向かうと沖で停泊しているロマニア帝国の船が確認できた。

「上陸許可を求めてきておりますがいかがいたしますか?」

「許可するよ」

どういう目的でやってきたのかはわからないが会ってみないことには判断できない。

数人がボートに乗り上陸してくる。

アルは話を聞くべく護衛を引き連れて近づいていった。

「上陸を許可していただきありがとうございます」

「いえ。来訪の目的をお伺いしても?」

「うちの馬鹿の回収です」

「馬鹿ですか・・・。心当たりはありますが・・・」

「この度はご迷惑をおかけして本当に申し訳ない」

話を聞けばロマニア帝国と付き合いのあったサーキス王国の貴族が逃げ込んできたそうだ。

それを聞いた馬鹿。

もとい、皇太子はサーキス王国に加勢すべく独断で手勢を引き連れてロマニア帝国を飛び出したそうだ。

それを知った皇帝は激怒し連れ戻すように将軍であるイングに勅命を出したそうだ。

「取りあえず話はわかりました。ですが、無条件に引き渡すわけにも・・・」

「わかっております。考えなしの馬鹿ですから問題を引き起こしているだろうと・・・」

統治している王族への暴言に実力行使までしているのだ。

保護者がきたからといって「はい。どうぞ」というわけにもいかない。

「少ないですがこちらをお納めください」

そう言ってイングは皮袋を取り出し差し出してくる。

重さからしてかなりの額の貨幣が入っていそうだ。

「はぁ・・・。正直、扱いに困っていたところですので引き取ってもらえれば」

国民の食料が不足している状況で高貴な身分だからと虜囚に出す食事のランクを高くするわけにもいかなかった。

その関係もあって食事を出す際に毎回文句を言ってきていたそうだ。

こちらからすれば出してやってるだけマシだろという状況だったのだが。

「船の方もお返ししましょう」

「ありがとうございます」

船は差し押さえたのはいいもののスペースを取って邪魔だったので返却するのは当然の判断だった。

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