第67話

アルの姿がヒンメルン王国の貴金属店にあった。

いつもなら隣にフランの姿があるのだが今日はその姿はない。

その理由は表向きたまには1人で街を見てみたいということになっていた。

だが、本当の目的はフランに贈り物をする為だった。

アルはショーケースに飾られた指輪を真剣な目で見ていく。

地球では結婚指輪としてダイヤを送ることが多いがそれはこちらの世界でも変わらないのかダイヤの指輪が多く展示されている。

アルはその中からピンクダイヤを選んだ。

代金を支払いケースに納められた指輪を受けとりアイテムボックスの中に入れる。

これで、盗難にあうこともないだろう。

フランの反応が今から楽しみでしかたない。

「この後はどうしますか?」

護衛の騎士がそう問いかけてくる。

「そうですね。せっかくですし少しブラブラしてみましょうか」

すぐに帰ってはフランに怪しまれる可能性もある。

それに寄ってみたい場所もあるのだ。

適当にブラつきつつ目的のお店を探す。

目的のお店は少し寂れた場所にあった。

アルは迷いなくそのお店の中に入る。

店内はカビと埃っぽい匂いがする。

だが、それ以上に目を引いたのはところ狭しと積み上げられた本の山だった。

これだけの蔵書がありながら客がいないのはしかたないところだろう。

識字率が低く文字を読めるのは貴族や富豪など余裕のあるものばかりだ。

それに紙が貴重で本はどうしても値段が高くなる。

生活に必ず必要というわけもなく優先順位はどうしても低くなってしまう。

だが、アルからしてみればこのお店は宝の山にしか見えなかった。

タイトルを見て気になった本を片っ端から積んでいく。

見たことのない文字もあるが言語理解を持っているアルには何の障害にもならない。

むしろ、見たことのない文字の本の方が面白そうな本が多い印象だ。

護衛についてきた騎士は顔を嫌な顔もせずアルの選んだ本を持つのを手伝ってくれた。

最終的にかなりの数の本をカウンターに持っていく。

「本当に全部買うのか?」

店主は念を押すようにそう聞いてくる。

「はい。全部ください」

アルはそう笑顔で頷いて代金を支払う。

買った本は全てアイテムボックスの中にしまい込んだ。

その後は喫茶店によって紅茶を楽しみつつ休憩する。

個人的には紅茶より珈琲の方が好きなのだが残念ながらこの大陸には存在していなかった。

この世界は地球の作物などが普通に存在するのでまだ見ぬ大陸に存在する可能性もある。

それらを求めて航海するのも悪くないだろう。

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