第85話

アルから報告を受けたマーカスは即決した。

「サーキス王国の動きが怪しいか。ならば、私が直接艦隊を率いて出向こう」

「そこまでしていただかなくても・・・」

フランは恐縮したようにそう言う。

「なに。戦うと決まったわけではないが現場の指揮官では判断にまようこともあるだろう。それにジェイク殿とはしばらくあっていないからな。アル。こちらのことは任せたぞ」

「わかりました」

王としてマーカスがそう決断したのなら誰も止めることなどできない。

即座に指示を出し翌日にはマーカスは艦隊を率いてヒンメルン王国に向かっていった。

アルとフランは出発するマーカスを見送りそのまま街をぶらぶらと探索する。

ヒンメルン王国を通して様々な品が入ってくるようになり街は活気に溢れている。

野菜を扱うお店も扱う品が増えていた。

これはフランの努力が実った形だ。

隣でフランが嬉しそうにそれらの商品を眺めている。

それだけでアルは幸せな気持ちになる。

2人で過ごすさりげないひとこまが貴重なものに感じる。

こうしていることが当たり前のようで難しい。

お互いに王族として民の生活を背負っているのだ。

その期待を裏切るわけにはいかない。

これからもアルは必要があれば長期で航海に出るはずだ。

寂しい思いをさせることになるだろう。

それを考えると非常に申し訳ない気持ちになる。

「アル・・・。難しいこと考えてるでしょ?」

「ごめんごめん。今後もフランに寂しい思いをさせるなって思って」

「なら、今を精一杯楽しみましょ?私はこうして一緒に過ごせるだけで幸せだから」

「うん・・・」

その後もアルとフランは離れていた時間を取り戻すようにこの時間を楽しんだ。




2人が幸せを謳歌する一方で荒れている人物もいた。

サーキス王国の国王ルフェスである。

治安は改善されたが一度失った信頼は戻ることなく他国の商船はあまりサーキス王国に寄り付かない。

生活に困るほどではないとしても民の怒りは王家に向かう。

「これもこれも全てはマルコシアス王国のせいだ」

サーキス王国は海の覇者を自称している。

だというのにマルコシアス王国のせいで面子が丸潰れだ。

サーキス王国はその失った面子を取り戻すために戦力を整えてきた。

謎の兵器への対応策は思い浮かばなかったが数で押せばどうにかなるだろう。

「マルコシアス王国を倒し再び栄光を我が国に」

その様を思い浮かべルフェスは暗い笑みを浮かべていた。

それがサーキス王国の運命を大きく変えることになるとは思ってもいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る