第86話

サーキス王国はマルコシアス王国に対抗するために船を増産していた。

それだけでなく植民地に派遣していた艦隊からも支配に影響がでない範囲で引き抜き戦力を整えた。

狙うのはまずヒンメルン王国に派遣されている艦隊だ。

ヒンメルン王国に派遣されているマルコシアス王国の艦隊はいくつかの哨戒艦隊を置いておりそのうちの1つが接近する大艦隊を発見した。

マルコシアス王国の哨戒艦隊は国際法にのっとり目的を訪ねるが返答がない。

不穏な空気を感じ取った哨戒艦隊は小型艦1隻を伝令として本隊に向かわせた。

強力なアームストロング砲という兵器を積んでいるがさすがにこの数は相手にできないため距離を保ちつつ手旗信号を送り続けた。

応答のないままヒンメルン王国の海域に入る。

これ以上は下がれない為、哨戒艦隊は覚悟を決め戦闘を開始する。

アームストロング砲が相手の艦隊にダメージを確実に与える。

最初に被害を受けたのは大型の戦闘艦を守るように布陣していた小型の戦闘艦だった。

成果を確認しつつ指揮官は次の砲撃の準備をさせる。

無理に狙わず距離を取り続けることを徹底させる。

だが、多勢に無勢である状況は確実にマルコシアス王国の哨戒艦隊を追い詰めていた。

マルコシアス王国の哨戒艦隊に相手の魔法が飛んでくる。

距離があるため有効な物は少ないがそれでも敵の攻撃範囲に入ったことにはかわりない。

指揮官は冷静に対応するように指示を出すが浮き足たっている。

無理もない。

今まではアームストロング砲の射程が長く相手からまともに攻撃をもらったことはない。

派遣されてから初の窮地といえるだろう。

距離を取れれば一方的に攻撃できるため、とにかく距離を取るように指示を出す。

だが、相手も必死に食らいついてくる。

攻防を繰り返すなかでとうとう小型の戦闘艦の1隻に大きな被害が出る。

自走できなほどではないが大きく速度を落とす。

ここで指揮官はある決断をした。

「突撃用意!我が艦はこれより敵に突っ込む」

突っ込めば大きな被害を受けることだろう。

だが、窮地に陥った味方艦を見捨てるという選択肢はなかった。

他の艦もその思いは同じらしく一斉に回航する。

相手の艦隊はこちらが突っ込んでくると思っていなかったのだろう。

一時的に統制が乱れる。

その隙をつくように被害を受けた艦が離脱する。

被害は受けたが突撃した艦の被害は軽微だった。

そこに高速で駆けつけてくる艦隊の姿が見える。

派遣されているマルコシアス王国艦隊の本隊である。

「よし。本隊が来てくれたぞ。後少し耐えればなんとかなる」

指揮官はそう鼓舞しつつ各艦に粘るように指示を出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る