第74話
アルは物々交換用にと集められた品を見て感激していた。
ジャガイモにトウモロコシにトマト。
少量ではあるが珈琲にカカオもある。
トウモロコシとトマトについては運んでいる間に傷んでしまうので種がないか聞いてみると快く提供してくれた。
こちら側からは念のために積んでいたラム酒と砂糖を提供する形になった。
今回の交換は少量に留まったが航路が確定したため、本格的に交易を開始することも可能だろう。
今回の交流は大成功のうちに終わったと思ったのだが、トラブルが発生した。
「異民族と交流するとは、貴様ら我が神を侮辱するのか?」
そう言って怒鳴り込んできたのは独特の民族衣裳をまとった集団だった。
「彼等は・・・?」
「我らの神を祭る聖地を守る人々です・・・」
「はじめまして。私はマルコシアス王国のアルフレッド・ド・マルコシアスです」
「異民族の餓鬼だと?我らを馬鹿にしているのか?」
喧嘩腰の彼等に対して配下の船員達はアルを守るように周囲を固める。
アルは手振りで船員達を落ち着かせる。
「確かに我々は貴女方から見れば異民族でしょう。ですが、我々の目的は友好を深めることです。話し合いをしませんか?」
「ぐぬぬ。よかろう。ならば我等の神の前で我等に害意のないことを誓ってもらおう」
「わかりました」
「聖地に来るのは小僧。お前だけだ」
どうやらアルの度胸を試しているようだ。
「いいでしょう。お受けします」
アルは船員達に状況を説明する。
当然、船員達はアルを止めたがここで逃げては何も解決しないと強引に押しきった。
聖地からやってきた一族は背の低い馬に乗っていたがアルは歩かされる。
アルはそう言えば最近、あまり運動していなかったな程度の感覚だったが、疲れたと文句を言うことを期待していたのか面白くなさそうな顔をしていた。
食事休憩の際もアルに渡されるのはトウモロコシの粉を水で溶いただけの物だった。
ここまで非友好的だと本当に交渉などできるのかと心配になってくる。
歩かされること3日、どうやら彼等の言う聖地に到着したようだ。
一色で統一された建物は別世界に入り込んだようだった。
「ここが我等の聖地だ。ここで少し待っていろ」
アルは1人残される。
アルは建材を見てある可能性に気がついた。
指で少し削って舐めてみる。
確かな塩味を感じる。
どうやらこの建築物は全て岩塩でできているらしい。
塩には困っていないが東の国々に持ち込めれば良い交易品になるかもしれない。
どうにか手に入れられないかとそんなことを考えていた。
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