第75話

「巫女様がお会いになるそうだ」

アルは戻ってきた人に着いていく。

そこは独特な造りをした神殿のような場所だった。

「真っ直ぐ進めば巫女様がいる」

そうぶっきらぼうに言ってくる。

アルは言葉にしたがって神殿の中に入る。

少し高くなっているところに神秘的な装いをした20歳ぐらいの女性がいた。

「遠路はるばるすまなかったね。この地を取り仕切っているサラサと申す」

「アルフレッド・ド・マルコシアスです」

「不便な思いをさせてすまないな。だが、こちらにも事情がある。そこのところを理解してほしい」

「正直、ここに来るまでの扱いに不満がないわけではありませんが話ができそうで安心しました」

「さて、世間話をしにきたわけではあるまい?何が望みだ」

「我々は友好を求めて海を越えてきました。交流を認めてはもらえませんか?」

「害意があるわけではないのだな?」

「はい」

「我等の祖先はその昔、住む場所を追われてこの地に逃れてきた。そう伝えられている」

「それなら大丈夫でしょう。この大陸に来れるのは今のところ、私の国だけです」

「それを信じろと?」

「そうですね。これを見てもらってもいいですか?」

そう言ってアルはここに来るまでに作った海図を取り出す。

それをサラサが覗き込む。

「マルコシアス王国がここです。東にあるのが他の国々がある大陸です。メール大陸はここですね」

「ふむふむ。この地図が正確なら東の国々ではどうあがいてもこの大陸にたどり着けないというわけか」

「そういうことです。我々は貴女方が望まないならこの大陸の情報を伏せてもいいと思っています」

「この大陸の平穏が乱されないならお主達との交流を許可しよう」

「ありがとうございます。1つお願いがあるのですが・・・」

「なんじゃ?」

「ここの建材に使われているのは岩塩ですよね?余っているなら譲ってはもらえませんか?」

「こんな物がほしいのか?対価をしっかり払ってくれるなら好きなだけ持っていくといい」

「そう言って頂けると助かります」

アルは心の中でガッツポーズした。

「今回は対価として差し出せるものがありませんが、次に来た時には満足いただけるような品を用意しておきます」

「期待しておるよ」

こうしてサラサとの交渉は無事終わった。

港街まで戻る道中は来るときよりも扱いが少しだけマシになっていた。

警戒されるのは仕方ない。

ここから信頼を積み上げていくしかないだろう。

港街では無事に戻ってきたアルを見て泣き崩れる船員達を落ち着かせるのに苦労するのであった。

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