第53話

アルは与えられた自室にてぐったりとしていた。

肉体的にも疲れてはいるが主な原因は精神的なものだ。

扉がコンコンとノックされる。

「アルフレッド様。今、よろしいでしょうか?」

「フランソワ様?少しお待ちください」

アルは身だしなみを整えて気合いを入れ直す。

疲れている所など見せられないからだ。

「どうぞ」

「失礼します」

フランは寝巻き姿だった。

レースをふんだんに使ったドレスは妙な色気が感じる。

アルは意思を総動員して視線を外す。

「どうでしょうか?似合っていませんか?」

フランは心配そうな顔でそう言ってくる。

「いえ。とてもお似合いだと思います」

アルはなんとかそう言葉をひねり出す。

「でしたらもっと見てもいいんですよ?」

そう言って見せつけるようにアルの目の前でくるりと1回転してみせる。

「何かお話があるんですよね?」

「そうですね・・・」

フランは思案げな顔をしつつベッドに腰かける。

「アルフレッド様。よろしければ隣にきませんか?」

「隣に・・・?」

「はい」

フランは笑顔を浮かべつつ隣をポンポンと叩いている。

「では、失礼します」

アルは緊張しつつ隣に腰かける。

「アルフレッド様は頑張っていますね」

「そうでしょうか?」

「教師役を勤めた使用人達は皆、誉めていましたよ?」

「失望されていたらどうしようかと・・・」

「そんなことはありません。頑張っているアルフレッド様はとても素敵でした」

「ありがとうございます」

「そんなアルフレッド様にご褒美をあげようと思いまして・・・」

「ご褒美ですか?」

「はい。ひ、膝枕などいかがですか?」

顔を見なくてもわかる。

きっと、フランは顔を真っ赤にしているだろう。

「そんな・・・。フランソワ様にそんなことをしていただくわけには・・・」

「いえ。私がしてあげたいんです。お嫌ですか?」

今度はちょっと泣きそうな顔をしているような気がする。

断ったら絶対泣かせてしまう。

それは男としてダメだろう。

「嫌なんて・・・。それでは失礼しますね」

アルは恐る恐るフランの膝に頭をのせる。

まず感じたのは高級感溢れるシルクの感触だ。

すべすべしていて気持ちいい。

そして、続いて感じたのは女の子特有の柔らかさだった。

「どうですか・・・?」

不安そうな顔でフランがそう聞いてくる。

「気持ちいいです。なんだかこのまま寝てしまいそうです」

「眠くなったらどうぞそのまま寝てください」

フランは優しく頭を撫でてくる。

本当に寝るつもりはなかったのだが、気がつけばアルはそのまま眠ってしまっていた。

フランはその寝顔を嬉しそうに眺め続けていた。

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