第142話
アルは護衛を引き連れ見つかった鉱山にやってきていた。
現場では集められてた人達が作業を行っていた。
鉱山のすぐ近くには作業に従事する人々の住まいが用意され少量ではあるが鉄鉱石の掘り出し作業も進められていた。
ジェイクに知らせを送るとすぐに人員を送るとの返事が返ってきた。
ヒンメルン王国としても今回の鉱山発見の報には期待しているのがよくわかる形だ。
ヒンメルン王国内にも鉱山はいくつかあるが採掘量が減ってきており危機感を覚えていたようだ。
鉄の確保は国家を運営する上で必須な物資だ。
兵士の武器はもちろんのこと民間でも必要になってくる。
包丁であったり鍋であったり農具にも鉄は使われているのだ。
それを考えれば今回の発見がどれだけ重要なことかわかるだろう。
旧サーキス王国は植民地から必要な物を運び込んでいたので見逃されていたのだろう。
鉱山もそうだが他にも見逃されていた資源があるかもしれない。
アルは鉄鉱石とは別に別けられている鉱石があることに気がついた。
「これは?」
「あぁ・・・。屑鉱石ですね。どうやっても加工できないゴミですよ」
「そうなんですか?」
アルは何かに使えないかと考えてみるが現時点では活用方法が思い付かなかった。
「一応保管しておいてください」
「わかりました」
アルはジェイクが警備の兵士を送ってくるまで鉱山に滞在して帰還した。
「お疲れさまでした。少し休まれたら?」
「フラン。ただいま。休みたいところだけど・・・」
鉱山の視察に出ていたため、仕事が山積みとなっている。
これを放置して休む勇気がアルにはなかった。
「わかりました。私も手伝いますから頑張りましょう」
「ごめんね」
「いえ。民のことを優先するアルは立派だと思いますよ」
フランと協力してアルは精力的に政務を片付けていった。
1週間ほどで全ての決済を終えスケジュールに余裕を作る。
「2、3日ゆっくりしましょうか」
「はい。どこかにでかけますか?」
「う〜ん。遠乗りにでもでかけますか?」
「では、お弁当を用意しますね」
「うん」
アルとフランは護衛の騎士を引き連れて近くの山まで馬を駆けさせる。
アルは運動をかねて密かに乗馬の練習をしていたので安定して馬を操っている。
それでもここにいるメンバーの中では一番腕が劣っていた。
せめてフランと同じぐらいの腕前になりたい。
男として好きな女性の前では格好をつけたいという心理が働いていた。
その為にはまだまだ、修練が必要なようだ。
異世界は帆船とともに 髙龍 @kouryuu000
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