第9話

「お父様。よかったら、僕も連れていってもらえませんか?」

マーカスにアルはそう頼んでみる。

「いくらアルの頼みでもそれは聞けないな」

「そうですか・・・。ですがお父様の安全のために僕にできることをさせてください」

「それは構わないがなにをするつもりだい?」

「それは明日になってからのお楽しみです」

そうアルは誤魔化した。




翌日の朝、アルは父であるマーカスと共に港に来ていた。

「僕からのプレゼントはこれです」

アイテムボックスの中から中型の戦闘艦を取り出す。

「これは・・・」

「気に入ってもらえましたか?」

「あぁ・・・。気に入ったよ。ありがとうな。アル・・・」

船というのは大きくなればなるほど操作が難しくなる。

だが、それと同時に沈みにくくもなる。

安全を考えるならより大型の艦に乗るべきだ。

「さて。私は行くが、アルは真っ直ぐ家に帰るんだよ?」

「わかってますよ。お父様。お気をつけて」

アルはボートでマーカスが中型船に乗り込むのを見届けてから帰路についた。




城では剣術の先生が待ち構えておりこの日も厳しい修練になった。

「かなり、腕をあげられましたね」

剣術の先生がそう誉めてくれる。

今まで、剣術を学んできたが誉められたのははじめてのことじゃなかろうか。

「ですが、心に迷いが見えます。陛下がご心配ですか?」

「そうだね・・・。お父様は強いけど相手の規模もわからないし」

そうなのだ。

マルコシアス王国に蔓延る海賊の規模は不明だ。

今までは戦力が足りず近くを偵察することすらできなかったのだ。

「噂は聞いています。アルフレッド様の加護で生み出された兵器があれば大丈夫でしょう」

「そんなに噂になっているの?」

「それはもう。民達は喜んでいましたよ?」

「そっか・・・。皆の生活が少しでもよくなるといいんだけど」

「その為にはもっと頑張りませんとね」

アルは次期国王だ。

民を守るために少しでも強くならなければならない。

それを考えれば剣術も魔法ももっと上手くならなければ・・・。

カールに認められるためにも気合いをいれなければ。




アルの剣術の先生であるミケンスと魔法の先生であるアルカナは授業が終わってから酒場で酒を飲むのが日常となっていた。

「アルフレッド様は凄いな・・・」

「一体どうしたんだよ?」

「厳しい修練を課しているのに必死についてきてさ」

「あぁ・・・。最初の頃は逃げたそうにしてたな。もう少し手加減してやればいいのに」

「限界まで追い込まないと意味がないだろ?」

「楽しませながら学ばせるのも手だと思うがな」

「だが、修練ももうじき終わりだ」

「そうだな・・・。我々ではもう教えるのが難しい領域に入っている」

「陛下が戻ってきたら卒業だと進言するつもりだ」

アルが知らぬところで修練の卒業が決められていた。

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