第37話

「アルフレッド様。どうかしましたか?」

訝しげにフランがそう聞いてくる。

アルは横顔に見とれていたとは恥ずかしくて言えない。

「いえ。なんでもないですよ」

「そうですか?」

アルは誤魔化すようにフランの横に並ぶ。

「どうせなら水の中に入ってみませんか?」

「興味はありますけどどうしたら?」

「こうするんです」

アルは靴を脱ぎ裸足になる。

「こうですか?」

フランも真似して靴を脱ぐ。

「砂がサクサクしていて気持ちいいですね」

「水の中に入ったらもっと気持ちいいですよ」

「それは楽しみです」

アルとフランはそのまま水の中に足を踏み入れる。

「思ったより冷たいんですね・・・。でも、ひんやりとして気持ちいいです」

「よかった・・・」

王族としてははしたないかなと思わなくもない。

だが、気持ち良さそうに目を細めるフランを見て誘ってよかったと思える。




アルとフランは仲良く押し寄せる波を楽しんだ。

「喉など渇いていませんか?」

「そうですね・・・。少し、喉が渇きました」

浜の方を見れば使用人がやってきたところだった。

「こちらへ」

そう言ってアルはフランの手をとって浜に戻る。

アルは使用人からある果物を受け取って手渡す。

フランは受け取ったもののどうしたらいいかわからない様子だ。

アルは使用人から果物を受けとり手本を見せるようにそのままかぶりついた。

「そのまま食べるのですか?」

「えぇ。その方が健康にいいんですよ」

「そうなんですか・・・?わかりました」

フランは小さな口で果物をかじる。

「甘くて美味しいです・・・」

「お口にあってよかったです」

「これはなんという名前なんですか?」

「桃ですね」

「桃・・・。輸出は難しいのでしょうか?」

「前回は時期ではなかったこともありますが、日持ちしないんですよ」

「そうなんですね・・・。お父様やお母様にも食べさせてあげたかったです」

「関係が続けば我が国に足を運ぶ機会もあるでしょう」

「確かにその通りですね。そのためにしっかりと友好を深めないと」

「喉が潤ったところで少し沖にでてみませんか?」

「沖にですか?でも、船は見当たらないですけど」

「大丈夫です」

そう言ってアルはボートをアイテムボックスから取り出すと海に浮かべる。

「今のは・・・?」

「アイテムボックスです。常に船を持ち歩いてるんですよ」

「そうだったのですね。それで、まだ幼いアルフレッド様がこられたのですね」

何やら勘違いしているようだが、船を作れることは秘密なので勘違いしたままにしておいた。

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