第130話

アルは輸送艦を引き連れて近隣諸国をまわっていた。

目的は余剰食料の買い付けである。

交渉に手こずるかと思ったが交渉はすんなりとまとまり順調に食料を手配できていた。

その理由はサーキス王国に輸出するつもりだった食料がダブついていたからである。

商人達は国に逆らうわけにはいかないが損を出したくもない。

その結果、食料を買いに来たアルは渡りに船だったわけである。

スーウェンの港町に戻ってきたアルを向かえてくれたのはこの地を治めるトーマス伯爵である。

「どうでしたか?」

「どこもスムーズに取引してくれました」

「そうですか。手配を済んでおりますので後はお任せください」

ここからは陸路による輸送だ。

アルのできることはない。

元々、スーウェンはヒンメルン王国の船の玄関口であったためトーマスの手腕は確かなものだった。

当面の食料は確保できた。

足りなければまた買い付けにいけばいいだろう。




サーキス王国に入ったジェイクは現地のゲリラと合流していた。

ゲリラを率いるトップと情報を交換する。

彼等はジェイクからすれば素人同然だ。

だが、勢力と見た場合、その影響力を甘く見ることはできなかった。

正規軍とぶつかった場合かなりの被害が出るだろう。

それでも彼等は目的のためには止まらないのだ。

彼等の目的は王族と貴族の排除だ。

王族や貴族は様々な特権を持っている。

それと同時に義務を持っているのだ。

王族や貴族は国民の生活を守らなければならないのだ。

だが、サーキス王国の王族や貴族は保身に走った。

それを考えれば彼等が蜂起したのも納得である。

より良い暮らしをしたい。

それは誰しもそうだろう。

しかし、王族や貴族を排除した後のことまでは考えていないように思える。

民主による統治かどこかの国に庇護してもらうのか。

ジェイクとしては頭の痛い問題だ。

仮にヒンメルン王国に組み込むとして統治には様々な問題が待ち受けている。

治安を維持しようにも現在持っている戦力では足りていない。

ヒンメルン王国の貴族に丸投げするとして分配でも揉める可能性は多いにある。

むしろ間違いなく揉めるだろう。

前回の戦争であえて一部地域の支配だけに留めたのはそういった事態を防ぐためだったのだ。

こうなってはサーキス王国を維持するのは難しいだろう。

こうなるとわかっていたら事前に準備を色々したのだがそれは言っても仕方のないことだ。

せめてもの救いはこれがヒンメルン王国の単独行動ではないということだ。

マーカスと協議することになるが苦労を分かち合える。

そこがせめてもの救いだろうか。

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