第139話

元サーキス王国から南西に向かった所にポセスと言う名の島がある。

ポセスは独自の海軍を持っており元サーキス王国から自治権を与えられていた。

「ポセスの代表が面会を求めております」

「思ったより来る来るのが遅かったね」

アルの予想ではもっと早い段階で来てもおかしくなかった。

食料事情などを考えると落ち着いた今、来てくれたほうが助かったのだが。

「応接室かな?」

「はい。応接室に通しております」

アルは入室前に衣服を整えてから扉を開く。

「お待たせしました」

「いえ。突然の訪問に応じていただきありがとうございます」

「改めまして、この地を任されております。アルフレッド・ド・マルコシアスです」

「ポセスの代表を勤めております。ヒュドラ・フォン・ポメリアです」

「来訪の目的をお聞きしても?」

「我々はサーキス王国に庇護されておりました。ですが、貴殿方に倒されたことにより孤立無縁となってしまいました」

「それは申し訳ない。ですが、こちらにも事情というものがありまして・・・」

「いえ。サーキス王国が滅んだ経緯は聞いておりますので。それは仕方のないことだと思っております」

「では・・・?」

「厚がましい願いだとは承知しておりますが、我々を庇護してもらえませんでしょうか?」

ポセスは独自の海軍を所持しているとはいえ、周辺の国々からの干渉を防ぎきるだけの力はない。

どこかしらの国に庇護してもらわなければ存続するのが難しいのだろう。

「願いを聞きたいところではありますが、こちらも余裕がないのが実情です」

アルの率いている艦隊は半数を交易にまわしており残りで支配地域の治安を守っている状況だ。

そこにポセスまで防衛することを考えると戦力が足りていない。

「無理を言っているのは承知しております。それに力になれることもあると思いますよ」

「と、いうと?」

「我々は独自に各国の商会にコネクションを持っております」

「詳しく聞いても?」

「はい。我々は本拠地の性質上、必要な物資を交易に依存しております。その為、本島の防衛戦力よりも交易船を多く展開しているのです。今まではサーキス王国の庇護の元、交易をしておりましたがその庇護がなくなったのが問題でして・・・」

「海賊などに狙われていると?」

「その通りです。サーキス王国を倒した貴殿方が庇護してくれれば手を出されにくくなるでしょう。庇護してくださるなら相応のお礼をするつもりでおります」

悪い話ではない。

新規にコネクションを築くのは時間がかかる。

それを考えれば条件次第では受けてもいいだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る