第20話

すり寄ってくる学生を邪険に扱うわけにもいかない。

彼等も愛すべき国民であり生徒である。

それに中には純粋にもっと学びたいと熱意のある者もいる。

アルは厳しく指導する一方で丁寧に学生に対応する。

そのせいか、いつも学生達に囲まれていた。

「ふぅ・・・」

「お疲れですね」

そう言って声をかけてきたのはすっかり馴染んだ教官仲間である。

「やる気があるのはいいことなんですけどね」

「そうですね。我々としても歓迎すべきことですが、アルフレッド様にばかり負担をかけて申し訳ない」

「いえ。皆さんはよくやってくれています」

まだまだ、この学校は歴史が浅い。

その中で教育方針を常にアップデートし簡単な物だがマニュアルの作成もしている。

アルもそうだが教官達の多くは授業が終わったあとも職務に向き合っているのだ。

その努力は称賛されるべきことだ。

「それはそうと明日はお休みを貰ってもいいですか?」

「あぁ・・・。そう言えば明日でしたね」

明日は新艦隊の発足式がある。

指揮官は経験豊富な古参の軍人が就くことになっているがアルの同期達の多くが組み込まれることになっている。

「皆と一緒に働けないのは残念ですが激励ぐらいは・・・」

「我々を代表して発破をかけてきてください」

「はい」




翌日、アルは港にやってきた。

国王であるマーカスも一緒だ。

「アル。元気にやっているかい?」

「はい。色々大変ですが、元気にやっていますよ」

アルは教員の仕事が忙しく中々、家に帰れていなかった。

「エルドラが寂しがっていたよ?たまには顔を見せてやってくれ」

「はい・・・」

そんな家族の会話をしつつ港に作られた台の上に立つ。

「皆。よく集まってくれた。今日は素晴らしい日である。栄光あるマルコシアス王国に新たな勇姿が生まれた」

マーカスのその発言を受けてアル少し離れた位置に大型の戦闘艦をスキルで生み出す。

すると港のあちらこちらで歓声が上がる。

「見よ。この頼もしい船を。多くの富と恩恵を与えてくれるだろう。ここに新たな艦隊の設立を宣言する」

港は熱狂に包まれ国民達は「マルコシアス王国万歳」と繰り返していた。

軍人達はきびきびと動きその間に必要な物を大型の戦闘艦に積み込んでいく。

その間も国民達は熱狂したままだ。

そして、全ての荷物を運び込んだ大型の戦闘艦は沖で待機していた艦隊と合流して大海原に旅立っていった。

新たに作られた艦隊は海賊や他国の船への対応をすることになる。

アルは心の中で「皆、頑張れよ」と応援していた。

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