第20話 エマージェンシー
「夜見君、大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫!!登りと違って下り坂だけだからだいぶ楽になった」
山を下り初めて10分、俺は余裕だった。筋肉痛もカレーを食べたあとに気付いたら治ってたし完璧なコンディションだ。あの登りの苦痛は何だったのだろうか。
「あのぉ、すみません。この合宿の前に張り切って靴を変えたのですが靴ずれでかかとが痛いです」
「大丈夫!?荷物全部持つよ」
何で合宿前に買えるんだよと思うがもうなっちゃったものは仕方がない。靴ずれは体験した事がある人ならわかるだろうがかなり痛いし出来る限りのサポートはするべきだろう。最近思ったんだけど綾崎は無理をし過ぎる癖があるっぽいからちゃんと無理してないか見ておかないといけないな。
「ごめんなさい。よろしくお願いします」
「全然良いって。困ったときはお互い様だから」
ここまで言っておかないと綾崎は考えすぎてしまいそうだな。俺は綾崎の荷物を持ち上げた。
「じゃあゆっくり行こっか?」
__________
「綾崎、流石にちょっと休憩しよう。お前汗すごいぞ」
綾崎は靴ずれの痛みと疲労が溜まって来たからなのか汗がすごい。ちょっとずつ下るスピードも落ちてきているしかなり心配だ。
「...わかりました」
さっきまではまだ行けますの一点張りだったのに今回はあっさり休憩を承諾してくれた。かなりキツかったのだろう。早く行ってくれれば良いのに。馬鹿だなぁ。俺なんて登りのとき1分おきに休憩しよって言ってたぞ。
「あそこに小屋があるからそこまで行こっか?肩、貸すよ」
「ありがとうございます」
俺は綾崎を支えるとゆっくり小屋へ向かった。
「おお!思ってたよりきれいじゃん!蛇とか虫もいないし!!」
どうやら当たりだったようだ。この小屋は下手すると昨日の泊まっていた部屋よりも綺麗かもしれない。俺と綾崎は小屋の中にはいると直ぐに地面に座った。疲れたー!荷物も途中から2倍だったしな。
「夜見君、迷惑を掛けて申し訳ありません。後、ありがとう」
「気にすんなって!そういや靴ずれが原因だったよな?靴と靴下は脱いどけ。より酷くなるぞ」
「わかりました」
綾崎はそう言うと靴を脱ぎ始めた。俺も行きはずっとバテてたし綾崎に迷惑かけてばっかだからちょっとぐらいは恩返ししたい。借りがあるのも嫌だしな。
「何処が痛いんだ?うわっ!これは痛そうだな」
無理して山を下り続けたからかかなり酷い惨状になっている。やらかした!無理矢理にでも休憩させとけば良かった!!王女様に怪我をさせてしまうなんて。
「ちょっと待って。確かここに...あった!!」
俺は自分の荷物の中に入れていた絆創膏を取り出す。
「貼るよー。綾崎に拒否権は無いけどね」
「何から何までごめんなさい」
綾崎さっきから謝ってしかしていないな。もう大丈夫だって言ってんのに。
「そんなに謝るなって!次謝ったら綾崎は超がつくほどのマザコンって噂流すぞ」
「それは...かなり嫌ですね。やめて欲しいです」
綾崎の顔にようやく笑顔が戻った。やっぱりレベルが違う。とてつもなく美人なんだよなぁ。
「冗談だよ。綾崎の体調が良くなるまでここで休憩するか。皆より片付けも早く終わらせて早く下りてきたし余裕はあるぞ」
そこから俺達は夏休みの予定の話などの雑談をして体力が回復するのを待った。
「そろそろ行きましょう!足は痛いけれど体力は戻ってきたので」
綾崎がそう言ってきた。明らかに顔の色もさっきより良くなっているしもう出発しても良いだろう。
「じゃあ行くかぁ。ん?」
俺はそんなはずがないと同じ行動を繰り返す。
「夜見君、なにをしているのですか?」
「扉、開かないんだけど....」
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