第21話 閉じ込め=ラブコメ的展開
「そろそろ開け!!」
俺が本気で蹴っても押してもタックルしてもビクとも動かない。木が引っ掛かってるとかそんなのでは無さそうだな。これ本当にやばくね!?王女様と二人きりで密室に閉じ込められているんだが。思春期男子だから当然そんな事も考えてしまう。一方綾崎はというと何故か信頼しているような目で俺を見ていてずっと落ち着いている。綾崎から俺はどう思われているのだろうか?
「ちょっと蒸し暑くなってきましたね」
涼しい山の中と言えど今は7月の中旬。小屋の中も俺達が入った事によってだいぶ蒸し暑くなっていた。熱中症とかかなり危ない。なるべく早くこの小屋から抜け出した方が良いだろう。
「綾崎、熱中症になったら危ないから上着は脱いどけ」
山の中は危ないため長袖長ズボンは絶対に着ておかないと行けないがこの非常事態はしょうがない。俺は上着を脱いでTシャツ1枚になってから綾崎にそう伝えた。
「確かにそうですね。私もそうしておきます」
綾崎は上着を脱ぎ始める。さっき綾崎は汗かきまくっていたし水分はしっかり取れているのだろうか?
「喉乾いたりしてないか?.....っ!!」
綾崎の方を見ると俺は思わず顔を背ける。
「今のところは大丈夫です。ペットボトルもあと1本残っていますし...どうして顔を背けるのですか?」
綾崎が着ていたのは白Tシャツだった。ここまで来たら皆さん(誰やねん)もおわかりだろう。見えてはいけないものが透けて見えてしまっているのだ。これで俺が注意したら
「キャー!ヘンターイ!!」
と顔を叩かれてしまう。はいはいこの展開、ラノベで100回は見たよ。俺はどうしたら良いか超光速で頭が回る_____うん、詰みだ。下手に遠回しに伝えるよりも正直に話す方が確実に良い。
「ええとですね、誠に申し上げにくいですが...そのぉ..綾崎様の見えてはいけないところが見えてしまっているのですが...」
何故か敬語になってしまった。綾崎は俺の言いたかった事を理解したのかどんどん顔が赤くなる。そしてすぐにさっき着ていた上着で隠した。
「ご、ごめんなさい。ご忠告頂きありがとうございます」
綾崎様優しすぎる!そうだよな、寛大な心を持つ綾崎様なら許してくれるに決まっている。そこらへんの理不尽くそヒロインとは1味違うぜ!!
「って言うか助け来ねえなぁ。一回大声で叫んで見るか。案外下山中の奴らが気付いてくれるかもだし」
「私も手伝いましょうか?」
回復したとはいっても疲れはまだ溜まっているだろう。ここで無理に動いてまたしんどくなり始めたら今度こそ危ない。
「綾崎はまだ疲れているようだし休憩しとけ。綾崎が大きな声を出せるとは思えないし」
「では私は何か役に立つものはないかリュックを確認しておきますね。確か非常食があったような...」
それはありがたい。備えあれば嬉しいな。ん?非常食持ってたんだったら昨日の夜ご飯もっと食べれたじゃん!でも過ぎたことは仕方がないか。綾崎も気付いていないっぽいし。やっぱりちょっと天然だな。
「お!穴あるじゃん!ここに向かって叫ぶわ」
ギリギリで人差し指が入るぐらいの穴を見つけることが出来た。しかも穴が空いているのは登山道の方向だ。ここで頑張るしかない。
「よく見つけれましたね。頑張って下さい!」
綾崎もリュックを漁りながら応援してくれている。俺は大きく息を吸って叫ぶ準備をした。
「助けてー!!!」
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