第22話 看護

「誰かー!!助けてー!!」


閉じ込められてから多分15分は経っただろう。小屋の中の温度は最初とは比にならない位に上がって来た。さっきからずっと叫んでいるがクラスメイトがこっちに気付く素振りがない。穴から見えてはいるんだけどなぁ。スマホは勿論圏外だし連絡手段も無い。


「やっぱり誰も気付かないよなぁ。綾崎、体調は大丈夫か?」


俺は意外とまだ行けそうだ。結構汗を掻いるが何故か元気のままだしまだまだ声も出せる。


「私は今のところは身体に異常があったりしていません。夜見君こそ大丈夫ですか?」


「今のところは余裕だよ。でも俺の水が少なくなってきたから早く出ないとな」


綾崎はああ言っているが実際はかなりしんどいだろう。本当に早く出ないとな。そう思いながら穴を覗いて見ると今までのどのクラスメイトよりも俺達に近い位置にいる男子二人組のペアを見つけた。これなら声が届くかも!!


「助けてー!」


俺が叫ぶと二人組は足を止めてキョロキョロと周りを見渡した。これは行けるっ!そう思ってもう一度助けを呼ぼうとしたところである考えが思い浮かんだ。これ男子だったら綾崎が助けてーって言ったほうが探してくれるんじゃね?この状況の最適解に辿り着いてしまった。ちょっと悲しいけど。


「おい綾崎!!今すぐに助けてってあの穴から言うんだ!」


男子二人組がいなくなってしまわないように急いで綾崎に伝える。綾崎はびっくりしていたがすぐに穴のある方へ来た。


「わ、わかりました!助けてくださーい!!」


綾崎がそう言うと外からこっちの小屋から綾崎の声がしたぞと言う声が聞こえてきた。どうやら気付いてもらえたようだ。


「やったな!綾崎!!外に出れるぞ!!」


「そうですね。一時はどうなるかと思いました」


「本当に危な...かった....」


あれ?これやばい!!さっきまでは元気だと思っていたけどもしかして熱中症になった!?このままじゃ綾崎の方に倒..れ....る....


「夜見君!?」


_________


「やっぱり...!!こっちの小屋から綾崎の声がしたぞ!!」


俺は山への合宿の下山中に男の人と女の人の助けてという声が聞こえてきた。さっきの声は夜見だったと思う。あいつらのペアに何かあったのだろう。綾崎と夜見にはテストのときに勉強を教えてもらった借りがあるから返さないと。ペアの友達に荷物を預けてから俺は急いで小屋の前に行き勢い良く扉を開けた。


「大丈夫か!?」


「夜見君が危ないです!」


そこで俺が見たのは寝ている夜見と夜見に膝枕をしている綾崎の2人の姿だった。


「はぁ、イチャイチャするのに他人を巻き込まないでくれよ。このことは誰にも言わねえから」


せっかく急いで助けに来たのに無駄足だった。一体どんなプレイしてんだよ。


「違うんです!!夜見君が熱中症で倒れたんです!」


それを聞いて俺は驚いた。綾崎は嘘を言うような人じゃないということはこのクラスの全員が知っている...夜見はカスだが。


「それは本当か!?じゃあ夜見をここから早く出そう!!もっと涼しいところへ!」


「わかりました。一緒に夜見君を運びましょう」


何で俺が夜見の介護しないといけないんだよ。綾崎様だったら喜んでするのに!!



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