第195話
ごめん、ホテルの部屋には戻れません。私は今、女子の部屋にいます。この部屋の押入れのすみっこで音もたてずに縮こまっています。もうなんか自分の家が恋しくなってきたけれど、でも....今はもう少しだけここで隠れています。部屋に見回りに来た先生も、きっといつか、ここから出ていくから。
「先生どうしたの?」
多分部屋に入ってきたのであろう先生に1人の女子が尋ねた。
「さっきからこの部屋が少しうるさくてね。修学旅行だからってテンションが上がるのはわかるが少しは抑えてね」
「はーい!」
大部屋にいる女子が先生に元気よく返事する。先生に早く出て行ってもらいたいだけなんだろうけど。あとさっき急いで押入れの中に入ったせいでスマホ落としたっぽいんだよな。まじで先生にバレませんように!
「あれ?このスマホ、夜見君のじゃない?」
俺の祈りも届かず一瞬で先生にバレた。え?って言うかなんでわかるの?担任でもないし。まあ担任でもわかったら怖いんだけど。
「え!?」
女子たちが驚きの声を上げる。おいその反応だとバレるだろ!もっと冷静を装えよ!
押入れの中から心の中で叫ぶ。
「さっき自動販売機の前に落ちていたのですが夜見君のだったんですね!けど、どうしてわかったんですか?」
「え、通知が来てて画面が映っちゃってたし、その通知のところに『おい夜見ぃ!戻って来い!!』あるじゃない?」
成程成程、先生が俺のスマホだと見抜いた理由は分かった。けどそれと同時にもう一つ問題も生まれた。その連絡のせいで俺が今部屋から出てるってことバレたじゃん!!普通に考えて男子の部屋にいない奴のスマホが女子の部屋に落ちてるってめっちゃ怪しくね!?
「じゃあ先生が夜見君の部屋までスマホ届けに行ってくるね」
「ありがとうございます!」
そんな会話が聞こえて、先生の足音が遠ざかった。それと同時に押入れの戸が開けられる。
「もう出ていいよ」
クラスの女子にそう言われ、俺は押入れの中から出る。
「マジでびびったぁ!もう先生もいないことだし自分の部屋戻るわ」
一刻も早くここから去りたい。
「じゃあ唯桜っち!また明日!!」
「また明日会いましょう!」
俺の言葉に不破と彩葉も笑顔で返す。それを見ていた他の女子たちはあれ?みたいな顔をしていた。なんでだろう?俺は少し考える。あっ!俺全然クズじゃないじゃん!!何かそれっぽいワードを考えないと!!俺は咄嗟に口を開いた。
「悪いのは全部彩葉と不破だから攻めるんだったら俺じゃなくてその2人でよろ」
そう言い捨て逃げるように部屋から出る。ふぅ、危なかったぁ。そう思い自分の部屋に戻ろうとすると後ろから声がかけられた。
「夜見君?一体どこにいたのかしら?」
無事、説教を食らった。
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