第159話

「これ、俺に全く似合っていないと思うんだけど」


俺は試着室から出てそう言う。イルカショーで濡れてしまった俺達は着替えを買うためにお土産屋で服を選んでいた。水族館でも結構色んな種類の服があるんだな。見たときびっくりしたわ。


「全然そんなこと無いですよ!可愛くて似合ってると思いますよ」


俺は可愛く描かれたペンギンがたくさんいるパーカーを着ている。っていうか彩葉に無理矢理着させられた。デザインはめちゃくちゃいいと思うんだけどさ、これ可愛すぎて彩葉が着るならまだしも俺に似合ってないだろ。あとこの服着て帰っているところをだれかにみられたら恥ずかしい。一応学校ではクズをやらせてもらってるんで(パワーワード)。


「あー、彩葉はこれ似合うんじゃないか?」


お、これは上手いこと躱せたんじゃないか?これだったら俺は似合ってないし違うのにするけど彩葉はこれにしなよって意味になるもんな。実際、絶対に似合うと思うし。まあ彩葉は可愛いし美人だから何でも似合うと思うけど。


「そうですか。では私それにしますね。唯桜君のやつは黒色なので私は白色にしましょうか」


あれ?これ俺の意図が伝わってないか?いやいや、いくら天然でも頭は良いんだからしっかりわかってるはずだ。もしかしてわざとやっているのか?


「この人が今着ている服と、この白色の服を下さい」


「はい、畏まりました」


俺が考えていると彩葉は勝手に会計を始めた。え!?待てよ!!俺がこれ買うみたいになってるじゃないか!?あと彩葉が俺の分までお金を払おうとしてるし!!と、取り敢えずお金はしっかり払わないと!!(育ち良い奴)


「これは買うからお金は出させてくれ。流石に買ってもらうわけにはいかないから」


「いえ、ここは私に出させて下さい。いつも買ってもらってばっかりですから。あといつもの感謝の印と言うことで」


そこまで言われてしまってはもう『そんなことどうでもいいから金払わせろ!!』とは言えないな。ここは甘えさせてもらおう。


「ありがとうな」


俺は彩葉に笑い掛けながら礼を言う。外で着るのは恥ずかしいから冬の間の部屋着になると思うけど。


「い、いえこれぐらいはさせて下さい。私は今から着替えてきますね」


彩葉はそう言って買った服を持って急いで試着室に入っていった。顔が赤かったけどこれ多分濡れたせいだよな!?明日確認のメッセージを送ってもし風邪を引かせてしまったら明日にでも何か体に良さそうなやつ持って行こう。


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