第110話

「あの!唯桜さんに聞きたいことがあるんっすけど唯桜さんってクズなんですか?」


楓が俺にそう訪ねてきた。.......ふう、どう切り抜けようか。まずクズを演じているということは友達もいるし何よりバレたときめっちゃ恥ずかしいから言いたくない。となると話の話題をずらすか茶化すかの2択だ。しかしここで話題をずらしても問題が先延ばしにされただけでまた同じことをどこかで聞かれる可能性が高く何の解決にもならない。取り合えず茶化して様子見るか。


「なんかそういう噂よく流れてるな。俺はこんなにも優しいのに.......」


多分こういったら俺の友達二人は総ツッコミをするはずだ。


「どの口が言ってんだよボケが!!」


「噂の内容1つ1つ胸に手を当てて思い返せ!!」


ほらな、予想通りだろ?こいつら幼稚だからコントロールするぐらいお茶の子さいさいだぜ!あとさっきから彩葉が目輝かせながら回転ずし見てるな。家がお金持ちだし多分来るの初めてなんだろうな。俺がツッコミを受けている間彩葉を見ていると楓がまた聞いてきた。


「私は噂で判断するんじゃなく、誰とかかわるかは自分で決めるからいいんっすけど唯桜さんはそれでいいんっすか?」


「そんなん言わせとけばいいんだよ。実際俺のこと嫌っている奴って俺と話したことないか女子かの2択だしほとんど関わることもないから別に問題ないんだよな」


「そうなんっすね!唯桜さんが優しいけど人見知りと聞いた時からちょっと心配してたっすけど安心しました!!」


ん?俺が優しいけど人見知り?そんな噂流れてるの本人が認知していないんだけど!!クズっていうのは全然俺から広めてるし良いんだけどそれ広められたらめっちゃ恥ずかしいんだが!?


「か、回転ずしに来たんだし寿司食べようぜ!寿司!ほらイカあるよ!!」


なんかこいつ急にまともなこと言い始めたんだけど。何かあったのか?あ!もしかして......


「ちょっと待って楓、その噂誰から聞いた?」


楓はさっき俺にイカを渡してきた友達をそっと指さした。やっぱりお前か!!楓が俺に話しかけてくる原因やっとわかったわ!お前単なる遊びで俺のことを優しい奴って楓に言っただろ!俺がクズの振りしてるって知らねえくせに!!


「お前なぁ!」


「ごめんごめん!で、でも今こんなに仲良くなったんだし終わりよければすべて良しじゃね?」


うーん、よくよく考えてみればこいつのお陰で俺や彩葉の友達も増えたことになるしまあいっか。


「次そんなことしたらガチでころすからな」


「はーい!あ、夜見。俺茶わん蒸し食いたいから端末渡してくんね?」


少しは申し訳なさそうにしろや!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る