第12話 勝者

もうすぐテストの順位が発表される。うちの学校は8時になると下足室の前にテストが張り出されるシステムだ。進学校だからテストの点数などの公開処刑は当たり前。今は7時55分、俺はもうテストの順位表が貼り出される場所の最前列で待機していた。俺が緊張を落ち着かせるためスマホを弄っていると隣に綾崎がやってきた。


「綾崎さんとクズのテスト対決どっちが勝つのかな?」


「流石に王女様じゃね?だってあのクズ、前は2位だったじゃん」


「あのときの夜見の2位はノー勉だったって本人じゃなくて綾崎様が証言したらしいぞ」


綾崎と俺が並んだことにより俺達の勝負のことを思い出し皆がどっちが勝つか予想している。


「自信はどうですか?夜見君」


綾崎の方から俺に話しかけてくる。


「まあまあだな。綾崎のほうがやばいんじゃないか?手、震えてるぞ」


「震えてませんっ!!私は私の持つ力を全て使いました。負けるつもりは一切ありません」


綾崎は堂々と宣言する。手が震えてなかったらかっこいいんだけどなあ。手が震えていることは後ろにいる人達には気付かれていない様だから良いけど。

そんな会話をしていると先生が大きな紙を持って来た。


「いよいよですね」


「だな」


俺と綾崎は言葉では表せることのできない謎の空気で包まれる。


「8時になりましたので今から順位表を張り出します」


先生がテストの順位表を貼り出した。


俺の結果は_______


「一番上に俺の...名前がない.....」


そう一番上にあった名前は綾崎彩葉だったのだ。


1位 綾崎彩葉 498点


なんでなんでなんでなんでっ!!!!!!俺は2番目に書かれている名前を見た。


1位 夜見唯桜 498点


そう俺は2位だったのだ.....完全なる敗北.........ってゑぇ?あれ?俺も1位じゃん!!!!!俺はその事実に気付いた瞬間直ぐに普段誰も使用してない空き教室に向かった。


「よっしゃぁあああああ!!!まじで負けたかと思ったーー!」


空き教室で勝利の雄叫びを挙げる。俺は急に安心して力が入らなくなりその場にしゃがみ込む。するといきなり俺の隣に人の気配がした。しかしここは誰も来ない空き教室、誰かがいるわけがない。


「引き分けですね。夜見君」


人の気配は気のせいかではなかったようだ。俺の隣に現れたのは綾崎だった。


「順位の提示を確認したら夜見君がいなくなっていたのですよ。今回のテストや勉強方法について話がしたかったのに...」


「一番上に綾崎の名前があったからまじで負けたかと思ったわ。っていうか何で俺に勝負なんか挑んだんだ?」


俺達はそう言うとお互い緊張が解けたのか肩の力を抜く。


「色々話がしたいので放課後喫茶店でも行きませんか?」


今日の放課後は予定が無かったはずだ。バイトは明日から再開する。


「全然良いよ。俺も綾崎に聞きたいこといっぱいあるし」


俺達は放課後の約束をするとそろそろ朝のホームルームがあるからと一緒に教室へと向かった。


__________

教室に入ると俺達は直ぐにクラスメイトに押し寄せられた。


「惜しかったねー綾崎さん!もうあと少しで夜見をギャフンと言わせてやれたのに」


「おい夜見!お前と綾崎様のお陰で結構順位が高かったぞ!!ふたりとも本当にありがとう」


「何だよあの点数!!俺は本当に同じ人間という種族なのか」


「お前は人間じゃねーから違う種族だぞ。俺との差は一生埋まらないどころか広がるばかりだ」


俺は友達を煽るとそいつは俺に向かって飛び掛かってきた。


「ムキーーーー!!」


「ほらサルじゃん」


クラスの皆に笑われた。





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