第13話 放課後
放課後、俺は綾崎と一緒に近所の喫茶店に来ていた。
「綾崎は何頼む?」
「どれも美味しそうですね。迷ってしまいます」
この喫茶店はチェーン店ではなく個人経営をしているところでどのメニューも安くて美味しそう。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
店員さんが俺達の席にやってくる。綾崎はまだ迷っている様子だったので先に俺から頼もう。どれも美味しそうだし決まらない気持ちもわかる。
「ミルクティーとチョコバナナケーキをお願いします。綾崎は?」
「私は紅茶とチーズケーキをお願いします」
綾崎も甘いもの好きそうっていう偏見があるかも。
「かしこまりました」
店員がそういうとすぐに注文した品が運ばれてきた。早すぎだろ。
俺がケーキを食べ始めるとと綾崎が口を開いた。
「いきなり本題に入るのですが夜見君は何故クズの振りをしているのですか?」
うーんその質問かぁ。他のクラスメイトには絶対に言いたく無いけど綾崎にはもうクズの演技をしていることはバレてるし言っちゃうか。
「恥ずかしいことだけどさ、実は友達を作るためにやってるんだよね」
「どういうことですか?」
俺が綾崎の質問に答えると綾崎はさらに質問してくる。
「俺、昔は友達が殆どいなかったときがあるんだ。その時はちゃんと皆に優しかったぞ」
「面白いですね。皆に優しいし夜見君、ちょっと見てみたいかもしれません」
綾崎はそう言ってクスクス笑う。ウケんな。
「で友達が欲しかった当時の俺は唯一の友達と一緒に考えてクズという立ち位置に辿り着いた」
「他のアイデアは無かったのですか?」
「それ以上考えるのが面倒くさかった」
俺は正直に答える。
「馬鹿なのですか?確かに今は男子からは結構好かれていますよね。男子からは」
女子からは嫌われているということをわかりやすく遠回しに言って来た。ここまで言うのならもう直接的に言っても変わらないような気がする。
「まあ男子は単純だからな。ちょっときついこと言っても笑ってくれる」
これはクズの演技のときの意見ではなく男子という生物を客観的に見たときの意見だ。
「確かに男子って単純ですね。些細なことで一喜一憂しますし」
「まじでそれな」
この意見には激しく同意する。クラスの男子も皆同級生か?って疑うほど精神年齢低いし。まあそういうところがあいつらの面白いところでもある。
「そろそろ俺の方から質問しても良いか?」
話に丁度区切りができたので俺が聞きたいことを聞くことにする。俺のターン!ドロー!!
「綾崎はどうして俺にテストで勝負を持ち掛けたんだ?」
「ただ単純にあなたの本気の実力が見たかっただけです。てっきり夜見君は余裕で500点を取ってくると思っていたのでびっくりしました」
綾崎は俺の質問に答える。あと最後のは煽りと捉えて良いのだろうか?もしそうなのだとしたら煽りスキル高いな。
「俺も何でも出来るスーパーマンか何かと勘違いしてないか?俺もミスはする」
俺が点数が良いのは過去の自分が頑張っていたお陰だ。才能はちょっとはあったかも知れないが才能だけで全てが解決するとかそういったタイプでは無い。
「確かにそうですね。私も周りからは完璧な人だと思われていて少し荷が重いです」
綾崎は人望が厚い。うちのクラスはまだ出来たばっかりなのにみんな綾崎の後に付いて行っている。俺はいつもと流石だなと思っていた。口には絶対に出さないが。
「話が変わるけどもう一つ聞きたいことがあって、合宿のペアってその人と何するか知ってる?」
「私達が行くところは山ですから肝試しとかそういうオリエンテーションを一緒にやるんじゃないでしょうか?」
肝試し.. か.....。怖がらせたりしてくるやつだよな.....俺、詰んだかも知れねえ。
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