第19話 下手くそクッキング

「「「最初はグー!ジャンケンポン!!」」」


鬼を決めるためにじゃんけんをする。この人数だったらあいこが続きそうだな。


「1人...負け....だと.....!?」


「夜見乙ー!!じゃあお前鬼な。精々頑張って追いつくんだな!」


あいこが続きそうとか思っていたことが恥ずかしい。自分の無力さを痛感した。でもあいつだけは絶対に捕まえてやる。


___________

鬼ごっこはだいぶ白熱した。途中で綾崎をずっと狙う鬼がいてそいつに俺がドロップキックを食らわしたこと以外は平和だった。これで皆も綾崎は雲の上の存在では無くただのクラスメイトだと思うように成ったら良いんだけどな。あと筋肉痛なのに無理矢理走ったから身体中が痛い。これ今日山下ること出来るかな。


「飯ごう炊爨の時間ですよ。料理道具一式持って来ますね」


「もうそんな時間か。じゃあ俺は薪貰って来るわ」


これが合宿の最後のイベントだ。時間が経つのが早く感じる。まあペアは綾崎だし完璧に料理もしてくれるだろ。因みにメニューは王道のカレーだ。


「綾崎ー!薪貰って来たぞー!!っておい!何やってんだよ!!」


薪を貰って戻ってきた事を綾崎に伝えに行くと綾崎は包丁を振り上げてまな板の上にある人参に向かって思い切り振り下ろしていた。危ないって!!


「何って、人参を切っているのですよ?」


本人は危ないということに気付いていないのか。もしかして良い家のお嬢様だから包丁握ったことがないのか?


「その切り方は危ないって!ちょっと包丁貸して。猫の手でしっかり人参を支えて....こう。わかった?」


俺は手をしっかり洗うと綾崎に見本を見せた。一応家でもご飯とかを作ったりしているから一通りは出来る。


「夜見君、料理も出来るんですね!何だか意外です」


馬鹿にしてんのか。


「このぐらい誰でも出来るよ。ほら、さっき教えたようにやってみて」


綾崎が包丁を握り人参を切った。まだ危ないな。左手でしっかり抑えないと。


「もうちょっと左手で抑えて。そうそう猫の手で....。出来てるじゃん」


俺は綾崎の両腕を横からしっかり抑えてあげたら綾崎も出来るようになった。良かった良かった。これで一安心だ。すると綾崎は顔を赤くして口を開いた。


「あの恥ずかしいので手を離してくれませんか?」


教えるためについ無意識にやってしまっていた。俺も教えてもらうときにそうしてもらっていたからだ!


「すみませんでした。下心は一切無いです。本当に申し訳ない」


「そのおかげで私もやり方がわかりましたし、ありがとうございます」


ちょっとだけ気不味くなった俺はさっさと米を炊くことにした。


「米炊いてくるわ。ジャガイモ切るときまた呼んで。あれは難しいから俺がやる」


「わかりました。また呼びに行きますね」


________

「カレー完成しましたー!」


最初はどうなるかと思ったが綾崎は自頭が良いから1教えたら10覚えたお陰で美味しそうに作れた。わざわざ取り除いたジャガイモの芽を鍋に入れようとしていたときは焦ったが。偶々隣りにいて良かったぁ。


「ご飯も美味しそうに炊けたぞ!早速食べるか」


俺が皿に盛り付ける。綾崎の目が輝いている。初めて料理を作ったときは俺もそうなっていたなぁ。


「よし、盛り付けれたぞ!!じゃあ」


「「いただきます!」」


俺達はスプーンでカレーを口の中に入れる。


「うっま!」


「美味しいです!!」


今まで食べたカレーの中で一番美味しい。大成功だな。綾綾崎も幸せそうに食べ進めている。良かった良かった。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る