第1話 いつもの日常

「___なんだけど夜見はどう思う?」


高校1年生、6月の下旬。蝉が五月蠅く鳴き始め、高校生活にも慣れてきた頃。


「俺は他人がいつ何処で死のうとどうでもいいから別に何とも思わねえよ」


「あははっ、やっぱりお前クズだな」


俺、夜見唯桜(よるみいお)は友達やクラスでの地位を得るためにクズを演じている。そうでもしないと根は陰キャの俺が友達を作れる訳が無いからだ。クズをしているお陰なのか今は陽キャグループに属している。


「だからお前は女子から嫌われてるんだよ」


そう、俺は女子からは嫌われている。当たり前だよな。だってクズだもん。まあ男子の友達がいるからあまり気にしてないけど。言い訳ではないよ、ホントだよ?


「おーい!!唯桜ー?昼飯食おうぜー!」


教室のドアから俺の事を呼ぶ声が聞こえる。


「零ー!居るよー!今行くー」


今、俺をお昼ご飯に誘ったのは柊木零(ひいらぎれい)、小学校からの親友だ。高校生になって違うクラスになってもこうして一緒にお昼ごはんを食べている。


因みにクズキャラを演じるというアイデアは零と二人で小学生から中学生に上がるときに出したものだ。もっと友達が欲しかった俺に対して一生懸命考えてくれたまじでいいやつ。だから零の前ではクズキャラを演じなくてもいいし気が楽だ。


零は根っからの陽キャだから陽キャの振りをしている俺はよくファッションを見てもらっている。最近の流行りとか全然分からないからな。ありがてぇありがてぇ。


「じゃあいつもの所行こうぜ!」


俺たちはいつも屋上へ続く階段の所でお昼ごはんを食べいる。本当は屋上で食べたいけど危ないからって学校が禁止している。まあ実際危ないししょうがない。


「お前のクラスに王女様居るんだろ?ちょっとどんな感じか教えてくれよ~」


「めっちゃ人気あるらしいぞ。そして残念ながらそれ以外の情報は持ち合わせていない」


俺のクラスに同級生だけでなく先輩からも人気がある綾崎彩葉(あやさきいろは)がいる。彼女の上品な言葉遣いやその立ち振舞によりこの学校の人からは王女様と呼ばれているらしい。『王女様とか安直過ぎるだろ!』思うだろうが1度見てみてみたらわかる。あれは王女様だ。


「同じクラスなんだろ?王女様と話したことはないのか?」


そんなことを零に聞かれたので、俺は高校生になってからの記憶を引っ張り出す。


「そういえば話したこと無いわ。それより零の玉子焼き1個くれよ、ミートボールあげるから」


零の弁当にある玉子焼きから目が離せない。美味しそうすぎる。


「おうっ!!良いぞ。っていうか1回も話したこと無いなんてそんなことあるか?俺はもうクラス皆と仲良いけどな」


「それは零が真の陽キャでイケメンだからだよ」


俺が真の陽キャとのスペック差に落ち込んでいると零は励ましてくれた。


「もう1個玉子焼き上げるから元気だせよ。お前も滅茶苦茶イケメンだぞ。それよりお前のクラスは合宿、どこに行くんだ?」


「お世辞はいらないよ」


「えぇ!イケメンだけどなぁ」


この学校には夏休みに入るちょっと前に合宿に行く行事がある。なんとこの合宿、クラスによって行く場所が異なるのだ。クラスの友達との交流を深めるためらしい。


「ええと、俺のクラスは山だった気がする」


「良いじゃん。俺のクラスは海だ!お互いに綺麗な景色を撮った写真、交換しようぜ!!」


「良いねそれ」


俺たちはの他愛もない話をしながら弁当をバクバクと食べていた。


――――――――――


放課後


零はサッカー部に入っているので練習があり、帰りはほとんど1人で帰っている。そして俺は帰宅部。バイトでお金を稼ぐ大変さを知る為にクラブに入っていないと言っても過言ではない。面倒くさいとかそんな理由な訳ないジャマイカ。


夜ご飯を作っているのも俺だ。両親は共働きで帰って来るのがかなり遅い。姉もいるが、家でぐーたらしているだけだ。就活中と言いつつ一番最近面接に行ったのが半年前だし、この前まで親に就職しろって言われてたけど最近はもう何も言われていない。何かあったのだろうか?


今のクラスにも友達はいるが家の方向が皆真逆なため一緒に帰れない。俺は帰り道に何か甘いものを買って帰る事がマイブームだ。1人じゃないとにお店に入ったりするのにみんなを待たせて迷惑になるから1人のときだけ行くようにしてる。今日はケーキ屋さんに行こうと思う。

いつもと変わらない景色を見ながら歩いていくとすぐにケーキ屋さんに着いた。


「いらっしゃいませ!!」


「チョコレートケーキ1つ下さい」


「わかりました。この店のポイントカードができたのですがお作りになられますか?」


これからもこの店には通うつもりでいるしポイントカードがあったほうが良いだろう。


「ではお願いします」


「それではポイントカードに名前を書いてください。あと今、ポイントカードをお作りになられた方はチョコプレートが無料ですけど如何ですか?」


「あっ、じゃあお願いします」


ポイントカードに名前を書きながらお願いする。俺は名前を書き終えたポイントカードを店員さんに渡す。


「夜見唯桜さんですか。いい名前ですね。ではチョコプレートを用意してきますね」


数分間スマホを見ながら待っていると店員さんが戻って来た。俺はお金を払って店を出る。


「ご来店ありがとうございました!!」











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