湿原を征く
◆ リンネ・ペルセウス、ジードの湿原を征く ◆
ターラッシュの森から出て更に南側、ジードの街の西側にある湿原はとにかく足場が悪い。湿度の高い草原地帯、水たまり、大きな池、沼地、人が歩くにはかなり厳しい。
「
『ジャイアントフロッグ(Lv,19)に170ダメージを与えました。ジャイアントフロッグ(Lv,19)が呪い状態になりました』
「げごっ……」
「お退きなさい!」
『ペルセウス(Lv,16)が【ハイパースラッシュ】を発動し、ジャイアントフロッグ(Lv,19)に469ダメージを与えました』
『ジャイアントフロッグ(Lv,19)がスリップダメージで死亡しました。経験値 1,960 獲得』
それもこれも、どん太がすいすいと歩いてくれるおかげ。どん太の上に跨ってカーススピアを撃ち、ペルちゃんが魔剣ビームことハイパースラッシュを発動すれば大抵倒せる。経験値もかなり大きいし、このあたりの敵を歩き狩りしているだけでレベルがもりもりと上がっていく。今は私とペルちゃんが揃って16レベルで、私がちょっと早くレベルが上がってたので先に上がってペルちゃんが追いつく。後は忘れた頃にどん太がレベルアップ、オーレリアがレベル上がりすぎて進化待ち。そんな感じで進行中。
「魔術スキルふえなーい」
「魔術系は魔術書を読まないと基本的には増えないと聞きましたわよ? 死霊魔術のススメとか、闇魔術のススメにあった魔術以外は自力で編み出すとか、新しい魔術書を見つけるしかありませんわね」
「むぅ~……」
ちなみに私はレベルが上がるばっかりでスキルがあんまり増えてない。増えてたのは『死霊術・ソウルスティール』で、これは発動させるタイプじゃなくて、常時発動しているタイプのパッシブスキルってやつ。ソウルスティールは撃破時の獲得経験値の上昇する奴で、なーんか名前負けしてる感が凄い。
「ペルちゃんは? ステータスどうなってるの、見せてよう」
「あまり人にステータスを開示してはいけませんのよ? 内緒にしなくては駄目でしてよ?」
「わかった!」
『わうっ(わかった!)』
「あら、なんか、ちょっと似て……んんっ! なんでもありませんわ! まあでも、リンネさんになら見せちゃう!」
それで、ペルちゃんのステータスなんだけど。
・ステータス
【名前】ペルセウス
【レベル】16
【性別】女性
【職業】(偽装)ソードマン 【秘匿】ダークプリンセス
【カルマ値】-500(大罪人)
【HP】889/889
【MP】421/570
【PP】5/5
【STR】4+32
【AGI】4+32
【TEC】4
【VIT】4+48
【MAG】64+22
【MND】4
【スキル】
【魔剣術】【秘匿】
・魔剣召喚【秒間 MP5 消費】
・ハイパースラッシュ【MP50】
【ダークプリンセス】【秘匿】
・乙女の突進【PP1】
・乙女の応援【PP1】
・魔盾アイギス【PP1】【ペネトレイト 1 】
・エレガント&ダイナミック【パッシブ】
【装備】
右手:不可
左手:不可
頭:プラチナヘルム+7【アバ:★プリンセスクラウン】
体1:プラチナアーマー+7【アバ:★姫騎士の鎧・赤】
体2:プラチナアンダーアーマー+7【アバ:白いレオタード】
足:プラチナグリーブ+7【アバ:★姫騎士のグリーブ・白】
アクセサリー【指】:プラチナリング
アクセサリー【腕】:プリンセスガントレット【秘匿】【偽装名・金のガントレット】
アクセサリー【首】:ターコイズネックレス
アクセサリー【他】:ルビーのイヤリング
ステータスたっけーーーーーーー。装備の質の差とかもあるんだろうけど、とんでもない差を感じちゃう、感じるっ!!!!!!
というか何、プリンセスガントレットの詳細見たんだけど、高性能って聞いてたけどマジで高性能じゃん!!! レベルの3倍がVIT値に加算されるって!!! +48ってなんのバグよこれ! 今後も増えるの?! ええー。
「つっよ……」
「MAGを上げると素の値の最大50%がSTRとAGIに加算されますの。派手なアバターを身に着けることで達成出来ましてよ。後はそうね、高性能なアクセサリーが欲しいですわね……」
「既に高性能だわ。どうなってんのこれ……。それと、この魔盾アイギスって? PPって何?」
本当にイカれた性能してる。さすが隠しイベントの隠しクラスだけある……。それより、独自のポイントっぽい【PP】ってのが凄い気になる。ダークプリンセス系のスキルは軒並みPP消費系だから、もしかしてだけどこのPPの略称って……。
「プリンセスポイントですわね! 今は120秒で1復活しますわよ! アイギス? あらいつの間にか増えてますわね。何でしょうね?」
「2分に1回復かー……」
やっぱりプリンセスポイントか! 120秒に1回復は、どうなんだろ。早いのか遅いのか……。
「アイギス!!! あら、出ましたわね。バリアっぽいような? ペネトレイト、1って表示がついていますわね」
「ペネトレイト、侵入? 突破? 1回だけそのバリアが攻撃を防いでくれるんじゃない?」
「なるほど? 制限時間はないようですから、とりあえず切れたら出すぐらいの感じでもいいかしら」
「溜まりっぱなしのPP消費にもなって、良いんじゃない?」
「そうね、そうしましょう!」
さて、この魔盾アイギスは強いのか弱いのか。ペネ1だけしかないけど、盾も持てないペルちゃんの盾代わりになるのかなあ……。
「あ、またジャイアントフロッグ!」
「私が先制する。当たったらハイパースラッシュで」
「よくってよ!」
◆ ◆ ◆
『――――レベルが20に上昇しました! おめでとうございます!』
「…………穿て、カーススピア」
「去れ! ハイパースラッシュ!」
『ジャイアントフロッグ(Lv,22)を撃破しました。経験値 2,220獲得』
『ペルセウスがレベル20に上昇しました。お祝いしましょう』
「わうわう」
「わう。わうわう」
「わう」
『わうぅぅ~~』
「わう」
「わう」
『…………(カタカタ)』
レベルアップ恒例のわうわう合戦を済ませたところで、開始から2時間ちょっとで両者20レベルまで到達した。たぶん、結構レベルが上がりやすい方のゲームなんだと思う。
あ、それとダメージとか撃破とかのログはね、これからちょくちょく弄ってみようと思う。どれが気にいる表記か探っていこうね。後はモンスターの頭の上にHPゲージが赤で表示されるように設定した。HPが一定以下になると表示されるみたいで、これで大体のHPが推測出来るようになるね。
ダメージ表記が詳しく見たい時のために、別個に用意したバトルログも増やしておいた。気になった時はこっちを見ればオーケー。ペルちゃんに教えて貰うまでログがごっちゃごちゃでうるさかったので助かる助かる。この辺りの自由な切り替えもこのゲームの魅力かもね。
「それにしても、アイギス便利すぎない……?」
「そうですわね! 直撃以外のダメージを完全無効、直撃してもペネトレイトシールドが割れた瞬間までならノックバック無効、これは強すぎますわね! 不意打ちの遠距離先制攻撃が完全無効ですもの!」
「つっよ……。でも武器も盾も装備出来ないデメリットに対しては、このぐらいあって丁度なのかもね」
「うーん、そうなのですわ。武器と盾が装備出来なくて、以前使っていた処刑斧+12が使えませんのよ……」
ペルちゃんの【魔盾アイギス】は発動するとうっすら赤黒いオーラが周囲に出てきて、直接攻撃を食らわない限りペルちゃんは完全にノーダメージ。遠距離攻撃も魔術も無効だった。魔術無効はカーススピアで試した結果。ちなみにどん太の前足ペチペチこと【二段掌】は一発目が無効、二発目はヒットだった。直接攻撃の連撃には弱いみたいだから注意が必要だね。
こう聞くとすっごいチートクラスのスキルに見えるけど、武器は魔剣以外使えないし、盾も装備できないからその分釣り合いは取れてる……取れてるのかなあ。なんかぶっ壊れてる気がするんだよねぇ……。実際、ジャイアントフロッグの溶解液飛ばしもオーラに触れて消滅するみたいに消えたし、完全な状態で得意の近距離戦スタートが出来るって考えるとかなり強いスキルだわ。
しかもこれ、5回まで連発出来る。PP管理スキルはクールタイムがないから連発出来て、アイギスはPP1で発動だから5回連発。2分耐えれば6回目も使える。やっぱり強すぎるよ、これ。
「そういえば、装備品のプラス値ってなに?」
「強化値ですわね。武器以外は+4まで安全に強化出来て、そこからは失敗すると保護チケットが無いと装備品ロストですの。武器は武器ランクによって強化安全値が異なりますわ。一番低いのが【レジェンダリー】クラスで+4までしか安全域がありませんの。都市に行って鍛冶屋に頼むか、ギルドハウスの強化機に素材を突っ込んでお祈りするコンテンツですわね」
「闇が深そう。ってか+12って……」
「処刑戦斧はユニークで、+5まで安全ですわね。7回ほど、過剰に突っ込んでますの」
「…………サラッと言ったけど、とんでもない装備なんじゃ?」
「そうですわね~~~。凄い金額が付くかも? でも誰かに売ることは考えていませんわ。だって自分の売った武器が原因でPvPで負けたら嫌ですもの」
「なるほどね……」
やっぱり重課金者は色々と凄い思考をしてらっしゃる。私なら使えなくなった高額装備なんて絶対売るけどなあ。
『わう? (ぐちゃぐちゃ しなくなった?)』
「あら、もう湿地帯を抜けそうですわね」
「ジードの街完全スルーだったわ。どっちにあったの?」
「あちらですわね。湿地帯の東側、ターラッシュ同様特に見るものはなくってよ」
「へえ~。いや一応、私も装備がそろそろ揃えたほうが良いのかなーと思って」
「貿易都市ローレイに到着したら買い揃えましょう! プレイヤーがフリーマーケットを出せる都市ですし、何よりわたくし達のホームですから! 安心して買い物が出来ますわ!」
「…………ひょっとして、目をつけられすぎてまともに買い物出来ないの? ペルちゃん」
「いや~~~~~~??? そぉぉ~~~んなことないですけどーーーーー?????? ぜぇんぜん!!!」
「そっか、じゃあ安心して買い物出来るローレイが良いね」
「…………ソウデスワネ~、まあ公式のオークション機能などもあるのですけど、なかなか足元を見た金額のものが多くて、おすすめしにくいですわね」
「なるほどー……」
なるほど、ペルちゃんは有名人だからホーム以外での買い物が大変なのかな。難儀なことで……。オークションは値段が高いからおすすめしない、と。ふんふん……。
『わうっ!! (ゴツゴツしてる! 硬い!)』
「……この辺りから一気に砂岩、礫岩混ざりの硬い地層になりますの。ローレイは貿易都市、港のある都市ですのよ。ここらは海が近いのもあって、元々はこのあたりまで海だったのではないかと言われていますわね」
「設定細かすぎない? 凄い作り込みだわ、本当に」
「本当、NPCも一人一人にデータがあって、誰に話しかけられたかもちゃんと覚えていますし。作り込みもさることながらデータ量も尋常ではありませんわね。ちなみに、チャンネルを変えると時間帯が少しずつ変わりますのよ? いつもプレイ時間帯が夜だから常に夜マップじゃ面白くないですから、時間帯をずらせますのよ。それに合わせてNPCやモンスターも場所が変わったりしますわ!」
「ほえ~~~~…………。本当に、とんでもないゲームだわ。元よりVRダイブ装置自体がオーバーテクノロジー気味なのに、このデータ量で快適に遊べるオープンワールドゲーム、やばいわ~」
「技術の進化を感じますわね~!!! 楽しいですわ~!!」
本当、ペルちゃんが楽しそうで何よりだわ。さてと、ここから岩肌の地面が多くなるってことは、あのでっかいカエルのエリアともおさらばってことね。モンスターの種類も変わるんでしょうし、楽しみだわ。
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