仲良きことは可愛らしきかな
◆ 竜胆天音、私立鹿鳴寺学園【1-1教室】 ◆
「あっ……」
「おっと。ごめんなさい、どうぞ~」
「…………あ、ありがとう。天音、さん。あの…………」
「ん?」
「…………い、いえ、その…………。おはよう、ございます」
「……? おはよう、舞さん」
いや~寝坊した~……まあいつもの時間に比べて、だけどね。いつもなら結構早い時間に学校に到着してるのに、今日はホームルーム15分前ぐらいだわ。んで? 今の舞さんの微妙な間は何? ちょっとよくわからない。
「――――んでさぁ! ボッコボコにされたわけぇ! でも取られてた武器返ってきたし、まあいいけどさあ! ねえ聞いてるぅ?? 譲二!!」
「聞いてる、聞いてるから……」
「何万倍にもなって返ってきたな、アレはヤバかった。舞のおかげで取られたのは返ってきたがなあ」
「そもそも舞ちゃんがPK仕掛けるのが悪いじゃん~~!!」
「防御の上から即死は無理~強すぎ~~最上位勢ヤバーーって感じ」
「顔を見る間もなく殺されたし! 何が起きたのか後からわかったレベルだよ、ほんっっっっと強かったんだから! ねええええ聞いてるうぅううう!!!?」
「うん、聞いてるって……声デカすぎ、みんな見てるから……」
「まあ、舞のおかげで最上位勢はヤバいってのがわかって良かったな。触らぬなんたらに祟りなしってやつだ」
「譲二も、アレに負けないぐらい強くなんなきゃ駄目なのよ! 見たでしょあんたも、あのペテン野郎が粛清されるとこ! あいつの嘘に騙されすぎ!」
「ペテンって……。アルトラさんのこと、そんな悪く言うなよ」
「お前アイツのことまだ信じてんのか? 実質運営にBANされてるようなもんだぞアレ」
「そーそーあれまじウケるーーーめっちゃ笑ったーーー」
「アレヤバいよねーーー」
ふ~ん。こいつら最上位勢の装備でも欲しくてPKしかけたのかな? で、見事に返り討ちにされたけど、装備は返してもらえたと。舞さんは居づらくなって退席中? まあ、昨日アレだけ喧嘩してた譲二って奴と三上って子がこうやって話してるぐらいだし、明日にでもなればケロッとまた集まって仲直り? してるか。ま、私には関係ないしどうでもいっか。
「あ~~ちゃ~~ん~~~……」
「おー。おはよう真弓、どうしたの。よしよ~し……」
「くっっっだらないトラブルのせいで! 昨日楽しいことがいっぱいあったみたいなのに、仲間はずれですわぁぁ~~~…………!!!」
「今日は来れるの?」
「行けますの! うっふふふ!!」
「んじゃ、昨日よりもっと楽しい今日にしようか」
「!!!!????」
真弓もちゃんと登校してきてるね。昨日は可哀想に、あんなにイベント盛り沢山だったのに……。今日は来れるみたいだから、くだらない昨日を忘れられるぐらい楽しい今日にしてあげようね。まずはうみのどーくつダンジョンか、それとも新ダンジョン探索の旅に出るか……。まあ、何をしてても真弓と一緒なら楽しいのよね結局。
「そういえばね、あ、大声出さないでね……私、団体部門のPvP代表プレイヤーに選ばれたんだよね。今日手続きするつもり」
「まあ! 実はわたくしも、ソロの代表で選ばれてますの。当然受けるつもりですわ。お互い頑張りましょうねっ」
「おー。ソロでなんだー。むしろペア代表選出ってあれ難しくない? どうするつもりなんだろうね」
「同じパーティでの活動が多いプレイヤー同士に提案が行くそうですわよ。お昼寝さんとエリスさんはペア代表のようですわね」
「へえ~……。え、お昼寝さんとエリスさんもなんだ」
「他にも、レーナさんとレイジさんはソロ、赫さんとミッチェルさんがペアのようですわね」
「あ~……えっ、レーナちゃん絶対ヤバいじゃんそういえば」
「ヤバいなんてもんじゃないですわ。無対策では上から一方的になぶり殺しにされますわよ……」
「こ、こわ……。私も上とかの対策…………千代ちゃんでいっか……」
「…………あーちゃん、隙がないような」
「それを見つける為に模擬戦をね、やろうかなーって……」
「あーそれなら、わたくしも付き合いますわよ!」
「おー……ぜひお願いしたいっ」
「お願いされますわよ!」
うちのギルドからの代表選出多いなーって思ったけど、代表になれるようなプレイヤーが集まってるギルドだもんそりゃそうだわ。むしろうちのギルドから代表出てなかったら『代表って何?』ってなるか。というより代表って一応複数居るんだねえ。何枠か存在してるのかなー? まあ、オリンピックとかで日本代表の選手が複数人居て、表彰台独占ーってのもあるし、代表だから一人もしくは一組ってわけじゃないか。
「そういえば今日はずいぶんとゆっくりの登校でしたわね?」
「昨日夜更かししちゃって……。ほら、迷惑系犯罪モンスターが大砲で飛ばされた奴」
「ああ、アレでしたらわたくしもチェックしましたわ。情けない男でしたわねえ~」
「ね。あ、トミーさんがお爺ちゃんなんだって」
「そうですの…………。は? アレの?」
「そう、アレの。びっくりだよね」
「…………今、叫びそうになったのをぐっと堪えましたの。偉い? 偉いでしょう? 頭を撫でてもよくってよ?」
「よしよし、偉いねえいい子だねえ真弓~……」
「んっ…………!!」
「――――おはようございます。ホームルームを始めますので、席に戻りなさい」
「ッチ……」
「真弓が不良になってしまった……」
さすが真弓よ。一瞬『あ、これは叫ぶな』って思ったけど、絶叫をごくっと飲み込んで涼しい顔に戻ったわ。そこまではいい子だったのに、担任の教師が入ってきて席に戻らなきゃならなくなった途端に急に悪い子になっちゃった。可愛いね。
さ~て、本日火曜日の退屈だけれど大事な大事な学生の本業の時間が始まるわ。中間テストも近いし、真弓に負けないようにしっかり勉強しておかないとね。ん? あ! そうだ、昨日はまだオープンしてなかったけど、今日から帰り道にクレープ屋さんがオープンするんだった! 並んでたらパスだけど、サッと買えそうだったら帰りに何か買ってっちゃおう~! クレープクレープ! 最後に食べたのいつだっけ? ん~~~~~っと…………。まいっか!
◆ 自室 ◆
クレープ屋さんは長蛇の列だった……。私にはあの列を待つような余裕はない……。ほとぼりが冷めて、私でも買えるぐらいの客数に落ち着いたら買わせて貰おう。あ~……いちごが、ホイップクリームが、もっちもちしてそうなクレープ生地が美味しそうだったなあ……。ああ~~~~…………? クレープってもちもちしてるんだっけ? あれ、しっかり食べたことがない気がする。覚えてないかも! どうしよ、気になる……気になるけどあの列は無理……!! 明日! 明日ね!!
「クリーニングよしっ、お洗濯終わりっ! お風呂もご飯も済ませたし、歯磨きもしたし、明日の準備もしたし……やるかあ~~!!!」
クレープの確認は明日の私に任せよう! そーれ、よっこらしょっと!!
『バイタルチェックスキャン開始……問題ありません』
『東京都の明日の天気はくもり後雨が予想されます。降水確率は午前30%、午後は80%です。お出かけの際は雨具をお忘れなきようご注意ください』
『ダイブ前チェックリストにすべて問題がないと回答を頂きました。バーチャルダイブシステムを起動します』
『バーチャルダイブシステム起動……ゆっくりと、目を閉じてください』
『バーチャルシンクロ開始……完了』
『ようこそ、仮想現実空間へ。バビロンオンラインのプレイがリクエストされました』
『バビロンオンラインへアクセス中……リンク完了』
今日は、カレンちゃん!!! 昨日ティスティスお姉ちゃまが言ってたもんね!!
『んっ…………。おかえり、持ってきた。あげる』
――――超シンプルだねえ、カレンちゃん!?
『カレンちゃんが持ってきた! バビロンちゃんからの! デイリーログインボーナス6日目【カードバインダー】』
『またね。ばい『カレンちゃ~~~ん、クッキー焼けたの~~♡ こっち来て食べよ~~♡』…………ばいばい。クッキー、食べてくる』
自由だなあこの姉妹なあ!? 可愛いなあぁあああ!!!???
◆ バビロニクス・ギルドルーム【スイート】 ◆
「ん、やっほ~こんばんは~」
「こんばんは、お昼寝さん。あ、ハッゲさん! こんばんは、あの……大丈夫だったんですか?」
「よう! まあ、ちっと濡れた物もあったが、大丈夫だ。心配かけてすまんな!」
ログインして、まずお昼寝さんとハッゲさん。いつもの二人って感じでなんだか安心する~~……。
「ん――――」
おわあ~~……! ドラゴンとしゃーちのでっかいぬいぐるみの間から、レーナちゃんが出てきた~~……!!
「おひさ」
「おひさ!? 会ってないの昨日だけですよレーナちゃん!?」
「もう一ヶ月ぐらい会ってない感じがした。今日、何するの?」
なかなか凄い挨拶をされた気がするんですけど!? 会ってないの1日だけなのに、おひさ!?
「特にコレっては決めてないですね~。一応はうみのどーくつか、ドラゴン討伐戦のお手伝いとか思ってましたけど」
「ドラゴン討伐行ってない参加予定者、私、ハゲ、お昼寝、エリス、赫、ミッチェル、うぅ~いちゃん。あ……ペルちゃん行ってる?」
「行ってないですね」
「じゃあ、ペルちゃん行きたい時は、連行して8人で。マッハで終わらせるから。その後、うみのどーくつ、どう?」
「いいですねっ! んーじゃあそれまでどうしよう? ペルちゃんがもし行かないって言った時は、ペルちゃんと何かして遊んでます! 行くって時は~……どん太達とお散歩してます!」
「んっ!!! わかった、だって。お昼寝」
「ん~~わかった~。一応行ってない全員にメッセージで声かけたけど、回数残ってて返事があったのはこのメンバーだけだったし、このメンバーなら赫とミッチェルにレーナちゃんがいれば~……なんとでもなるか~」
ペルちゃんと模擬戦ーって思ったけど、流石にあの美味しいコンテンツを蹴ってまで模擬戦ずーっとやるよりは、すぐに終わるし行ってきた方が良いと思うんだよね。それにペルちゃんが来るのっていつも19時だし……。あ、それまで死体処理しようかな! てきとーにぽんぽんぶっ込んで、呪いの装備を生み出しちゃおうぜ~~!! じゃ、ちょっとちびちゃんルームにお邪魔しま~す……っと…………。
『~~~;;;』
『~~~? ~~~♡』
『……;; ……;;』
『(*´ω`*)』
…………ちびコルダちゃんがぴえーーんって泣いておる……。そしてちびバビロンちゃんが、ちびドレイクちゃんを叱っておる……。ちびドレイクちゃんは泣きそうだけどぐっと堪えてる表情をしておるねえ……。んで、それを遠くでおにーちゃんとリアちゃんがほっこりした表情で眺めてると……。え? ここの部屋、可愛いしか存在しないんですか?
「あ、お姉ちゃん! おかえりなさいっ」
「ただいま~リアちゃん~。それで? これは……どういう状況?」
「ちびドレイクちゃんがちびコルダちゃんとお絵かき用のクレヨンを取り合いになって、ちびコルダちゃんがぺちっと叩かれて泣いているところですね~」
「…………むむむむっっっ!!!!」
『Σ(´∀`;)!?』
「え~っと。ちびドレイクちゃんは、ちびコルダちゃんと仲良くなりたいみたいなんですけど、これがなかなか不器用なんですよ~。クレヨンの取り合いになって、つい手が出ちゃったみたいで、あって顔をして、やっちゃった~~って。それでさっきは叩いちゃったのを後悔して泣きそうになってましたね。それで今ちびバビロンちゃんが優しく叱ってあげてるところなんです。あっ! 仲直りしようとしてますよっ! 暖かく見守ってあげましょう、ねっ?」
なるほど……。やっぱりちびちゃんは増えるとイベントが増えるのね。こういう事も起きるんだ~……。いや~、なんだろう、あったかい気持ちになるなあ~……。もどかしさもあるけど! でも、見守ってあげよう……!
「――あ、ごめんねいいところで。リンネちゃん、シュタークさんときぬちゃんがね~? 今度ここに他のちびちゃん混ぜても良いかって言ってたよ~?」
「え! 私は全然そんなの決めるようなアレじゃないですし! むしろどんどん増やしてあげてください!」
「だってーシュタークさーん」
「オーケーオーケー、ありがとう! だが家具がまだ買えないのさ、生憎一文無しでね! カジノコインなら死ぬほどあるんだけどな。これからきぬちゃんと金策して、自分達の子の家具は自分達で買うさ。そしたら呼ばせてもらうぜ」
お、シュタークさんも居たんだ! と言うかこの感じだと、ピッタリ今来たって感じだね。私がちびちゃんルームに入ると同時ぐらいに帰ってきたのかな。シュタークさんもきぬちゃんも、呼んでくれれば私が家具ぐらい買いに行ったのに~……。いや、多分そこは譲れないラインがあるんだね。尊重しようっ! 家具代が手に入ったら招待してくれるのね、楽しみにしてよう!
「あ、ほら。ちびコルダちゃんが上手く描けなかった絵、ちびドレイクちゃんが描き方教えてあげてますよっ」
「ヒュ~~~…………。昨日はすやすやぐっすりタイムしか見てなかったけど、可愛すぎるぜ……一緒に寝るベッドが最低でもなきゃ、呼んでも可哀想だからなあ」
「可愛い……。可愛い……。無限に可愛い……」
「ほっぺとほっぺがくっついて、もちもちし合ってお絵かきしてますね……」
「…………何描いてるんだろ」
「なんでしょうね……」
ん~ちびドレイクちゃん、仲良く出来ないのかなって心配したけど、お絵描きを教えてあげたくってクレヨンを奪おうとしたのね。ちびバビロンちゃんのおかげで仲直り出来て、今度は仲良くお絵描き出来てよかったねえ~……。ちびバビロンちゃんの優しい微笑みが、二人のお姉ちゃん感あってこれも可愛い……。ここ可愛いが無限に溢れてるな……。ここのルームの名前、可愛いの宇宙とかにしたほうが良いんじゃない? そのうち可愛いが銀河になって可愛い第一銀河第二銀河って増えていくんだよきっと。ここが宇宙の真理だったんだね………………我ながら意味がわからない。これが口に出てなくて良かった。
『~~~!!』
『~~~♪』
「ん? くれるの?」
『『~~♡』』
『ちびコルダ&ちびドレイクから【◆たからのちず・なんばー21】を受け取りました』
――――は? え?? た、たからの、ちず、ですかあ…………!?
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