予測不可能の事態

◆ 武王国ガトランタ・コロッセウム ◆


『現在あなたのレートは4,025です』

『対戦相手が見つかりませんでした。リトライしますか?』

『リトライしないを選択致しました。またの挑戦をお待ちしております』


 ん~~……55戦してとりあえず全部勝ったけど、マッチングしなくなった!! バビロンちゃんから『イカレ女達はすっごく強いから、予選ぐらい3人で突破出来るわよね~? 頑張りなさいね~♡』って感じのお手紙届いてたから頑張ったんだけど、頑張りすぎたかな? 多分4000台からマッチングレートが変わるのかも? 他の人達がレート上げてこないと当たらないね、これは。

 それに予選中はカヨコさん達には一回も当たらなかったし、掲示板で見た勇者パーティとか他の代表にも当たってないし、もしかして代表同士とか強力パーティ同士はマッチングしないようになってる? なんか調整入ってそうな雰囲気があるなあ。


「マッチングしなくなっちゃった」

「そうなんですか? 周りにはいっぱい参加者さんが居るみたいですけど」

『わう~~? (なんで~~??)』

『Σ(´∀`;)』

「んーー勝つとね、ポイントみたいなのが入るんだけど、そのポイントが同ランクのパーティが居なくなっちゃったみたい」

「あ~……なるほど~~! じゃあ、帰りますか? 他にもイベントがあるんですよね?」

「あるよ~。そっちに行こうか~?」

『わう~! わう? わんっ!! (行こ~!! ん? あっ!!)』


 ん、どうしたどん太――――お、ペルちゃん発見。ペルちゃんに気がついたから吠えたのね、偉い偉い! 偉いぞ~どん太っ!


「ペ~ルちゃんっ!!」

「まあ! 御機嫌ようリンネさん! そして皆さんも御機嫌よう!」

「こんばんはペルセウスさんっ!」

『わふっ!! (こんばんは!)』

『(*´ω`*)ノ』


 ペルちゃん、昨日も今日も忙しかったろうに疲れも見せずに頑張ってるなあ~。ソロ部門の代表だよね、調子はどうなのかな?


「ペルちゃん調子はどう~?」

「はっきり言って退屈ですわ。既にわたくしが始めた時間では環境がライトシューター環境になっていて、開幕即連射で終わりというのが当たり前の環境でしたの。ですがほら、わたくし効かないでしょう? 遠距離攻撃」

「あ~……。ペルちゃんに対して無力なプレイヤーばっかりか~」

「そうですわね。最終的にわたくしを見るとサレンダーするプレイヤーが大半になったので、レートの上がり方が異常なペースで。ほら、運営からメッセージが届いていますのよ、このスクショをご覧になって?」

「えーっと……? 『想定していないペースでのレート上昇を確認したため、現在調査中です……暫くお待ち下さい……』え、相手がサレンダーしすぎて八百長疑惑に引っかかってる?」

「そうですわね。なので退屈凌ぎに露店を回っていたのですが……あーちゃんは?」

「私はマッチング自体しなくなっちゃった~」

「え゛……レ、レートは?」

「4,025だよ」

「…………なるほど。なるほど……。今日はもう、わたくしと同じで暇ということですわね?」

「そう! 暇になっちゃいました!」


 おっ! ペルちゃんも暇ってことはこれは、ペルちゃんと一緒に遊びに行けるのでは! 暇だったら一緒に遊びたいねっ! 今21時半ぐらいだから、結構遊べるんじゃない?


「では、何処かに行きませんこと?」

「うんうんっ! どん太、リアちゃん、おにーちゃんはどうする? 狩りか何か行くんだけど」

『わんっ! わうわう~! (行くよ! でもお腹へっちゃった!)』

『(*´ω`*)b』

「行きます行きますっ! 新しい、イベント? 行くんですか?」

「キングキラータイガーなんて来ていましたわねえ、どうしましょうか?」

「キングキラータイガーね、難易度開放がてら行ってみようよ~」

『ヾ(*´∀`*)ノ』

『わんわんっ!? (美味しい!?)』

「美味しいかな……どうだろう……。あ、そうだ。バビロニクスの料理人さんに材料持ち込みで注文して、どん太用にローストドラゴンブロック作ってもらってるんだよ、取りに行こうっか。皆の分もあるはずだよ」

『ワォ――――わふっ……わふっ!! (嬉しくて吠えそうになっちゃった!! 周りに迷惑だから我慢我慢……!)』

「我慢できるようになったかああ~~~どん太偉いねえ~~~~!!!!」

『わっふ……わっふ……♡』

 

 ん~~どん太っ!!! 周囲に気遣って我慢できるようになったかぁ~偉いねえ~~~偉すぎてなでなでが止まらないねえ~~!!! リアちゃんも撫でて欲しそうな顔をしてるけど、リアちゃんもなにかお利口さんなことをしたら撫でてあげようねえ! おにーちゃんは腕組してゆっくり頷いてるし、そうか、良いか。この光景が良いか!! で、ペルちゃんも撫でて欲しそうな顔をしてるのは何でですか? こんな場所で撫でて欲しいんですか? ペルちゃんは誰もいないところでひっそり撫でられる方がいいでしょ。


「よしっ! 一旦バビロニクスに移動して、回収するもの回収して、移動しよう~!」

「そ、そうですわね! それにしても、材料持ち込みで注文なんて出来ますのね」

「50万シルバーぐらいで作ってもらえるよ~。安いよね~」

「リンネさん。50万シルバーは安くありませんのよ」

「…………そうかもしれない」

「そうですわね……。わたくしより金銭感覚が狂ってきていますわね……」

「…………そうかもしれない!」


 料理を作ってもらう為に50万シルバー渡した時、料理人さん達が変な顔をしてたけど……あれは『え、少ないな……』って不服な表情じゃなくて、『え、多くね……?』って顔だった……!? ほんのお気持ち程度貰えればいいって言うから、気持ち程度渡したんだけど……え、高かった……!!?




◆ ターラッシュ・西の平原 ◆




『金色のアイツ(Lv,????)が合計20ダメージを受け、死亡しました。経験値 1 獲得』

『あなたがMVPです。おめでとうございます』

『MVP報酬は【★★★緋緋色金ヒヒイロカネ】です! おめでとうございます!』

『【★★★緋緋色金ヒヒイロカネ】を獲得しました! おめでとうございます!』

「あの? 息をするように倒しましたわね?」

「うん。どん太が追いつけるし、魔術も多段ヒットするのがあるし、余裕余裕」

「わたくしには倒そうという発想すら思い至りませんわ……」


 いやあ、また居たから狩っちゃった。ヒヒイロカネがま~た2個貰えた、嬉しいね。残念ながらカードは出なかったけど。とりあえずこれはレーナちゃんにメールで送信しておこうっかな~。


『ワールドアナウンス:金色のアイツ(Lv,????)が3体倒された為、次回以降生息域が変更され、強化されます』

「「え゛」」


 うっそぉん……。通りかかった時に復活してたら食べておくレベルのおやつ感覚のボスだと思ってたのに、生息域変わっちゃう上に強化されるの!? そんなぁ~……。


「乱獲対策がされていましたのね……狩り方が確立したら別地域になるなんて、面倒なボスですこと……」

「ん~……。ヒヒイロカネの貴重な入手ルートが……レーナちゃんが欲しがる素材が~……」

「残念ですわね……。また見つけたら狩るしかありませんわね!」

「そうだねえ~……」

『ワールドアナウンス:ターラッシュ近郊にエリアボス【ブラッドウルフ】が出現するようになりました。赤い毛の狼にご注意ください』

「うわ、代わりのボスが来るんだ!」

「初心者キラーになりそうですわね……」


 うわ~……初心者キラーみたいなボスが追加になっちゃった~……。わ、わたし知~らないっ!!! 


「あーーーあそこが、いべんとかいじょうかなーーー」

「露骨に話題を逸らしましたわねえ!? まあまあ、ブラッドウルフなら中級者以降が狩ってくれるでしょうから、初心者の被害は思ったより少ないでしょう。大丈夫ですわ」

「…………大丈夫ならいっか!」

「ええ、大丈夫大丈夫。あら、大会のサレンダー連続の件、調査が終わったみたいですわ。問題なしのようですわね」


 ん、ダブルで問題ないか。問題ないならいいんだよ。ペルちゃんの方に関しては完全にペルちゃんが悪くないトラブルだし、問題になる方がありえないよね。


「そりゃそうだよ~だってペルちゃん悪くないもん」

「勝てる相手をより好みしている相手側に問題がありますものね」

「そんな人は本戦にも上がってこないよ。うちは誰でも構わず好き嫌いせずに食べるもんね~」

『わんっっ!! (誰でも相手になるよ!!)』

「野菜は嫌いです」

『Σ(´∀`;)』


 リアちゃんが『好き嫌い』の話で、条件反射気味に野菜は嫌いって頬をふくらませるの可愛い……。そうかそうか、そんなに野菜が嫌いかあ……。ハッゲさん辺りに、リアちゃんでも食べれる野菜料理とか作ってもらえないかな~……。あるいはサリーちゃん辺りに。可愛かったら案外食べてくれたりして。

 あ、そういえば食べ物の話で思い出したけど、千代ちゃん大丈夫かな。バビロニクスの修練場でかなり根を詰めて剣を振ってたけど……。声を掛けたら『大丈夫、リンネ殿に信じて頂いた道。歩んでみせます』って、ローストドラゴンよりも剣を選ぶっていう驚きの現象が起きたんだよね。明日はもしかしたら6月なのに雪が降るかもしれないね。


「ずいぶん混雑していますわね……」

「これ、チャンネル変えても良いんだっけ?」

「ええ。チャンネルを変えても入場するダンジョンの条件は一緒のようですわ。難易度毎に時間帯や天候が変わるようですので、チャンネルは関係ありませんわね」


 ん、イベント会場混雑してるな~……。チャンネル関係ないなら、別のチャンネルに変えたいね。


「なるほど~。じゃあこの『快適』って表示があるチャンネル13辺りにする?」

「あら? さっきまでチャンネルダウンしていたチャンネル13が復旧しましたのね。一応チャンネル13は人気のチャンネルでしてよ? なんせ真逆の時間のチャンネルですから」

「……ああ! 12時間前の状態なんだ、チャンネル13って! 1時間刻みで時間がズレてるのね!」

「人気エリアで人を分散させたいエリアは1時間刻み、過疎エリアは3時間から4時間刻み、わざと過密にしたいエリアは8時間か12時間刻みですわね。基本はチャンネル1のままですけれど、混雑しすぎて処理が重いエリアに入るとチャンネル変更誘導が出ますのよ。では、チャンネル13に移動しましょうか」


 へ~。チャンネルもいろんな分け方がされてるんだね~。なるほど、今いるエリアの1~4チャンネルだと、ローレイとかターラッシュに入ると自動的に1チャンネルに移動されたり、チャンネルを移動すると周囲が一瞬ブラックアウトする演出があるんだ。あれ? でも今までチャンネル変更誘導? っての、出たことないなあ。なんでだろ。


「へえ~……出たことない~」

「リンネさん、使っているVRダイブシステムを思い出してくださる?」

「…………最新鋭の特注品で専用回線つきです!!」

「そうですわね。そういうことです」

「そういうことかーーー」

「エリスさんはちょっと古い機体をお使いなので、チャンネルを別の場所にすることが多いですわ」

「あ~~だから別チャンネルから来ることが多かったんだ!」

「そういうことですわね」


 なるほど、うっかりでした……。そういえばとても良いものを使ってるんでした……。これのおかげで私は快適にプレイできてるんですね。いつもありがとうございます。


「チャンネル13、誰も居ませんわね。さすが復旧したばかりのチャンネルですわね……っと、言っているうちに周囲にプレイヤーが転送されて来ていますわ」

「じゃ、先にポータル入っちゃお!」

「そうですわね! では、準備は良くって?」

「よくってよ! どん太は? リアちゃんも、おにーちゃんもいい?」

『わふっわふっ! (よくってよ~!)』

「よくってよ~! ふふっ」

『ξ(´ω`)ξ』

「…………っぐ……」

「それ、ずるいですわね……よくそんな、エモーション……っふ……」


 おにーちゃん……。そのお嬢様風のツインテドリルみたいなの付けた顔文字、よくこの一瞬で出したね……。そんなの出してくるって予測出来ないじゃん! ずるいって、面白いじゃん……!!! イベントポータルに入る前に笑いを堪えながらポータルくぐったら、周りから変な目で見られちゃうでしょうかぁ……!!! あーもうだめ我慢できない……!!!!! あっははははは!!!!!!


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