月夜の晩に
◆ 廃教会への道中 ◆
廃教会へ向かう道中、もう10時半を過ぎたのもあってログインして増えてきたプレイヤーとちらほらすれ違いつつ、特に代わり映えのしない雑魚モンスターしか居ない退屈な道中だったので、リアちゃんに読んだ本の話とかをして貰ってた。さっき読んでたのは『月夜の晩に』と題が記された本だったそうな。
月夜の晩に。いつぞやの鑑定大会で出た気がする、魔術書かなんかなのかなーと思って書庫にぶち込んでおいたそれは『日記』だったらしい。リアちゃんに内容を教えて貰ったら、ローレイへ向かう商船に乗り合わせたとある騎士の日記で、ローレイから南西に向かった島国に渡ったとか、そこには細身で刃渡りが長い剣があって、皆独特な服装をしていたとか、コメを炊いてそれを丸めてつくられたおにぎりなるものが美味しかったとか……。あれ、これ日本モチーフの国あるな? って話を聞いてるうちに思ってましたね。細身の刃渡りが長い剣は刀、独特な服装は着物、コメはまんま米でしょうねぇ……。
そういえばレイジさんって刀持ってたし、うみのどーくつダンジョン産の装備に刀がちょいちょい入ってるから、レイジさんはこの辺りから刀を拾って侍になったのかな?
「――それで、この人の乗った船は海賊に襲われて沈没しちゃったみたいです。漂流した後、命からがら崖の下に洞窟を見つけてそこで休んだみたいですけど……。その場所で、とある女の人に会ったという内容を最後に途切れてましたね」
「死んだな……」
「死んでますわねぇ」
「粛清」
『わう~? (その崖の下の洞窟、あれのこと?)』
なんだって? さっきの話に出てきた崖の下の洞窟、どん太くん見つけちゃったの? え? どこ?!
「どん太がその洞窟見つけたみたいなんだけど……」
「えっ! ああでも確かに、この辺りは漂着物多いですわね。流れ着いたのはこの辺りかもしれませんわね?」
「…………高低差ありすぎ」
『わんっ!! (気になる気になる!)』
いや~見つけたには見つけたけど、高低差ありすぎるでしょ。ローレイの東も西も都市を囲むように海崖地形になってるから、崖上の廃教会を目指すと崖下の道に行くにはぐるーーーーっと戻って来ないと行けないんだよね。流石に無理かな~。
『わうぅぅ~~!! (突撃~~!!)』
「ちょぉぉおおおい!?」
「ひゃあああーーー!?」
「わ~~~~~」
「え?! どん太さん?! 背中に皆さん乗せてるのに?!」
どん太ぁぁああああああ!!!!! 背中に私達を乗せてるのに、急に崖下りを始めるなぁああああ!!!!! うわぁあ、うわぁああああ怖ええええ……!!!!! ひぃぃぃいい!?
『わんっ! (着いた!)』
「着いたじゃないよお馬鹿! 落ちて死ぬかと思ったわ!」
「生きてます……? 生きてますわ……」
「楽しかった」
「レーナちゃん先輩、こういうの好きなタイプなんですか……?!」
「だいすき。遊園地行ったら、とりあえずジェットコースター」
「わたくしはあんまり得意ではありませんわ……!」
「ひぇぇ……」
「上に戻る時は、私が一人ずつ皆さんを乗せていきますねっ」
「ああ……。そっか……。降りる時もそうしたかった……」
どん太の問答無用の崖下り、落差20メートルはあるよこれ……。本当死ぬかと思った。でもまあ、漂着物がごろごろ落ちてる場所には来ましたね。そんで洞窟は、これか。波に侵食されて出来たのかな? 中は、あっ! 意外に広い。でも、何も無い感じが…………。
「……これ?」
「あ~……」
「あ、クエストが出ましたわ!」
あっ、この感じ前に何処かで――――
◆ ◆ ◆
――――海賊船に襲われた商船に未来はない。海の戦いに長けた彼らにとって、海が通り道なだけの商人が敵うはずもない。戦いに慣れた者でも揺れる足場、波飛沫で濡れ、不慣れな環境では十分な力を発揮出来ない。ここに眠る騎士もまた、海賊船の餌食となった一人だ。
彼は強運であった。沈みゆく商船から脱出し、船の残骸にしがみついて岸までたどり着いてこの洞窟まで転がり込んだ。しかし強運だったのはここまで、洞窟には先客が居たのだ。
ここにあるのは騎士の亡骸。首から上を一撃で刎ねられ殺された騎士は、一体誰に殺されてしまったのか。あなたはこの奇妙な騎士の亡骸を発見した。気になるのであれば、その死の謎を解明しても良いし、彼を気の毒に思うのであれば埋葬してやっても良い。その場合は、彼の使っていたこのフルプレートアーマーを頂いたとしても、彼に恨まれ呪われることはないだろう。
◆ ◆ ◆
「これ、回数制限クエストってやつ?」
「たまーにあるネームドNPCの死体かもしれませんわね。フルプレートアーマーは随分と性能が良さそうですし、埋葬して頂けば呪われることはないのではなくって?」
ムービと共にサブクエストに【月夜の晩に】ってのが追加された。あ~これ、リアちゃんの白骨死体の時と同じ奴だわ。ただこっちは騎士を埋葬する、装備を奪うとか色々な条件でクエスト完了するタイプか~。なんか埋葬したらカルマ値上がりそうでやだなぁ~?? 別に私は呪いなんざ怖くねぇんですよ! いやむしろ、いっそコイツ起こすか?! 装備だけ取ったら呪ってくるぐらいにはまだ思念が残ってるんでしょ? 起こせるんじゃない?
「こっち、もう一人死んでる」
「ええ……? あ、本当だ……」
え、本当だ。こっちは、真っ黒な巫女服みたいなのに鎧が付いてる、黒巫女の戦装束! みたいな感じ? え~こういうの好きだなぁ~……。デザイン凝ってるなぁ~……。あ、刀持っとる。え? もしかしてこの騎士の首を刎ねたの、この人じゃない? 状況からしてこの人しか居ないよね? でも何でこの人も死んで……相打ち? でも傷跡とかないしなぁ……。
「これ、どうして死んでるのか気になるんだけど。起こして良い?」
「え? ああ、そういえばそんなスキルが……!」
「私が死霊術師なの忘れてたね?!」
「わ、忘れてませんわよーー?! 闇魔術師だとか、思ってませんわよーー??!」
「あ……。そういえば、ネクロマンサーだったね……」
「おっしゃ、たまにはネクロマンサーらしい所見せてやりましょう。起きろ!!!」
『(ガタッ)』
「うわ動きましたわ?!」
「動いた~~」
『★首なし騎士が貴方の従者になりました。名前を――――名前は【フリオニール】です』
おお、首なし騎士が動いた! フリオニールって名前なのね、オーレリアちゃん同様起こした瞬間から名前付きだ! ネームドモンスター? あ、元々NPCだからネームドNPCか。良いね~……。これからはこき使ってやるぞ~。
「フリオニールって言うのね。今日から私が貴方の主人よ、付き従いなさい」
『…………(!)』
「喋りませんわね……』
「首無い。会話できない~。つまらな~い」
あ、そっか~……。首ないから会話出来ないじゃ~ん……。起こして損した気分かも……。
「あっ! そうです、私と同じ思いをするアンデッドさんが出てくると思って、書庫でこんなのを書き写しておきましたよっ!」
お? リアちゃん、いつか来るであろう後輩のために何か用意してたのね?! さっすがリア様、出来る女は違うねぇ! えーっと、何……何? これ?
「エモーション、習得書ですわね……」
「あ~。顔文字をチャット欄に貼るやつ~」
「こんなのあるんだ……。えっと、使えるのかな? フリオニール、これ使える? っていうか読める?」
『…………? !!!』
「あ、一応読めるみたい……」
「話せないけど見える、謎原理ですわね……」
「ゲームシステムの補助を得ているのだぁ……きっとぉ~……」
『フリオニールが【エモーション習得書・複写】を学習しています……。しばらく時間が掛かります……』
よし、読めるならそれを読んでコミュニケーション取れるようになってくれっ! 是非、なんで死んでるのかの真相が知りたいわ!
「時間がかかるって」
「じゃあ、こちらの方も起こしては?」
「闇巫女~。好きデザイン」
「ね! こういうデザインの巫女服良いですよね!」
「良い。黒い巫女服に、胴だけ鎧。デザイン性はなまる」
「じゃあ起こしちゃいますよ! 起きろ!」
『危険な操作です! 対象が暴走する可能性があります!』
え゛っ゛……。こっち、レベル80もあるんですけど? 元々はそれより強かったの、この人……?! 嘘でしょ……?!
「ぼ、暴走するかもって……」
「え?!」
「そんなことも、あるんだ~」
『本当に対象のアンデッドを復活させますか? 非常に危険な操作で――――起こしちゃえ起こしちゃえ~♡ 今回特別に、それの暴走を手伝ってあ・げ・る♡ もう一回起こしなさぁ~い?』
「バビロンちゃんが暴走手伝ってくれるって!!!」
「まあ! それは――――暴走を手伝って下さいますの?!」
「実際、強いNPCと戦ってみたい~~~」
『わんっ!!! (やるならやるよ!)』
「じゃあ、やりますか!」
「やってみましょう!」
「やろーやろー」
どうしよう、起こしたらヤバいって判ってるのに……。起こしたくなってきちゃったよ?! バビロンちゃんに唆されてるし、もうやるっきゃないじゃない?!
「沈め、ネガティブオーラ!」
『パーティメンバー全員の全ステータスが+40上昇しました』
「アイギス!」
「構えた~。いつでも良い~」
『ガァアアア!!! (やるぞ~~!!)』
「流石にこの場所で龍魔術は、マズいですよね……?」
「リアちゃんは下がってて! 最悪、リアちゃんのところにアビスウォーカーで逃げるから! フリオニールも連れてっておいて! 阻め、ボーンシールド!」
「は、はい!」
『パーティメンバー全員が【ボーンシールド】状態になりました』
「さあ皆様!! 頑張って行きますわよ! ふれー! ふれーですわ!!」
『【乙女の応援】状態になりました。1分間、全ステータスが1.1倍になります』
よし、やれるだけ準備はした! フリオニールはとりあえず、リアちゃんと一緒にこの洞窟から退避。多分この人に首を刎ねられてるんだろうし、役に立たないだろうから! これでもう一度、アンデッド作成を……唱えれば……!
「いくよ!」
「よくってよ!」
「おっけ~」
『ガウゥ!!!』
「起きろ!!」
さあ、かかってこい! 黒巫女のアンデッド!!!
『アンデッド作成が発動し、対象アンデッドを復活させ――――干渉』
『女神メルティスから直接介入――その者の蘇生は許しません――――うっさいわね~♡ はいっ、リコンストラクション♡』
『姫千代(Lv,125)がワ・タ・シ♡(Lv,????)の【リコンストラクション】で復元したわよ~♡ 精々頑張りなさ~い♡』
「――――肉ッッッッッッッ!!!!!」
『わうぅぅぅ?!』
にく?! 憎いってこと?! え、どん太に真っ直ぐ突っ込んでったんだけど、やばいやばいどん太、避けろ避けろ!
「覚悟ッッッ!!!」
『ワォォォオオオオオオーーーーーーーーン!!!!!!!』
『どん太が【超咆哮】を発動しました』
こんのぉ、洞窟の中で超咆哮は……こっちまで頭がぐらっぐらする……。こっちは状態異常にはならないけど、うるさいもんはうるさいんじゃぁ……!!
『07XB785Yが【気絶】状態になりました』
『姫千代(Lv,125)が【気絶】状態になりました』
『姫千代(Lv,125)が【克己】を発動しました』
『姫千代(Lv,125)が【気絶】状態から回復しました』
え、アカンでしょ。レーナちゃん先輩だけ気絶して、あっちは気絶から速攻で復活するし! いやでも一瞬止めただけでも偉いぞどん太!
「穿て、カーススピア!」
『姫千代(Lv,125)が50回復しました。不死属性モンスターに呪いは効きません』
はい不死ーーーーーーーーー。
「
「やば……」
『ワゥゥゥン!!! (背中を向けた! チャンスだ!)』
『07XB785Yが【気絶】から回復しました』
「カラミティウェイブ!!」
「喝ッ!!!!!」
『姫千代(Lv,125)が【殺意の波動】を発動しました。範囲攻撃スキルを無効化しました』
ちょっと待って、マジで姫千代さん強いんだけど!!!? こっちのすること成すこと全部無効化はヤバいんだけど、相性が終わってる!!!
『どん太が【魔狼身弾】を発動しました』
「はっ……!? あ、愛らしゅうても、容赦せぬっ!!」
『姫千代(Lv,125)が【水月】を発動し、【魔狼身弾】を回避しました』
消えたっ?! 回避スキルまで完備してるのこの人?! え、嘘、何処に――――
「上!」
『わうぅ?! (え、どこ行ったのっ?!)』
「取ったッッ!!!!! 此方の糧となれ!」
『姫千代(Lv,125)が【一刀断鉄】を発動しました』
『姫千代(Lv,125)が【一刀断鉄】をキャンセルしました』
『07XB785Yが【クイックドローショット】を発動しました』
『姫千代(Lv,125)が【水月】を発動し、【クイックドローショット】を回避しました』
「面妖な、てつはうか!」
「うっそぉ……」
この人、ワープスキルみたいなので縦横無尽に動き回る上に、戦闘能力が高すぎる! どん太の頭上にワープして首を取りに行ったと思ったら、レーナちゃん先輩の攻撃に反応してまた回避して、また消えた! これは、離れてるレーナちゃん先輩が危ない予感がする! ボーンシールドの貼り直しをしないと!!
「御免ッ!」
「え、うそ――――」
『姫千代(Lv,125)が【一刀断鉄】を発動しました』
『07XB785Yの【ボーンシールド】状態が解除されます』
「阻め、ボーンシールド!」
『パーティメンバー全員が【ボーンシールド】状態になります』
「骨の盾、妖術の類か! しかし脆いッ!!」
「全然捉えられませんわ!? 速すぎますわ!」
「まずっ……」
『姫千代(Lv,125)が【滅鬼斬】を発動しました』
『07XB785Yの【ボーンシールド】状態が解除されます』
『Weak!!! 07XB785Yが合計42,994ダメージを受け、死亡しました』
「一つッッッッッ!!!」
一撃?! 違う、一回斬ったように見えて何回かヒットしてる、ボーンシールドで1回分防いでこれなんだ! ヤバい、本気でヤバいこの人! バビロンちゃんに唆されて起こしちゃったけど、本当に起こしちゃダメなタイプだったじゃん!!!
「こんなに素早くては当てられないですわ! こうなれば一か八かでしてよ!! プリンセスクライシス!!!!!」
『ペルセウスが覚醒スキル【プリンセスクライシス】を発動しました!』
うわぁペルちゃん、前方に誰も居なくなった途端に覚醒スキルを撃った!! 何その馬鹿でかいビームソードみたいなの、これなら当たるでしょ、確実に当たってる!
『姫千代(Lv,125)が【水月】を発動し、【プリンセスクライシス】を回避しました』
その水月ってスキル便利ですねぇ!!!! 随分ねえ!!!!
「
「なぁ~~~!?」
『フリオニールがエモーションを習得しました』
いや今それどころじゃねえんだわ!!
『姫千代(Lv,125)が【百花乱舞】を発動しました』
『ペルセウスの【ペネトレイト】状態が解除されました』
『ペルセウスの【ボーンシールド】状態が解除されました』
『ペルセウスが合計21,994ダメージを受けました』
『姫千代(Lv,125)が【滅鬼斬】を発動しました』
『Weak!!! ペルセウスが合計49,921ダメージを受け、死亡しました』
ペルちゃんが、こんなにあっさり……? 嘘でしょ……?! スキルの発動が速すぎる、攻撃頻度が高すぎる、回避性能が鬼過ぎる、こんなの、勝てっこなくない……?! 次は、私だ! こうなりゃ前から考えてた奥の手、あんまりやりたくなかったけど!
「夜よ、泣き喚け! 黒イ雨!」
『黒イ雨が降り注ぎます…………周囲が夜になりました』
「此方の邪魔をするなッ!!!」
こっちに来る! こうなりゃもう、運よ! 運ゲーよ! あっちのスキルの威力は凄まじいけど、連続ヒットダメージなら! 前から考えてたコイツを、やる価値はある!
『姫千代(Lv,125)が【百花乱舞】を発動しました』
来た、後悔させてやるわ! その連続攻撃のスキルを発動したことをね!!!
『【ボーンシールド】状態が解除されました』
『姫千代(Lv,125)から1,442ダメージを受けました』
『姫千代(Lv,125)が700ダメージを受けました』
『反射!!! 姫千代(Lv,125)に721ダメージを反射しました』
「飛翔!」
『【飛翔】状態になりました』
『姫千代(Lv,125)から1,446ダメージを受けました』
『姫千代(Lv,125)が700ダメージを受けました』
『反射!!! 姫千代(Lv,125)に723ダメージを反射しました』
『生ける屍と化せ、ゾンビパウダー!』
『姫千代(Lv,125)に効果がありません』
『姫千代(Lv,125)から1,444ダメージを受けました』
『姫千代(Lv,125)が700ダメージを受けました』
『反射!!! 姫千代(Lv,125)に722ダメージを反射しました』
「っく?!」
『姫千代(Lv,125)が【百花乱舞】をキャンセルしました』
これが、【★マル・デ・ウニ】の反射効果よ! 杖の装備を捨てれば魔術の威力は落ちる、結構! 左手に盾が装備できないなら、右手にすればいいだけ! そして黒イ雨のMP消費分のHPダメージ、痛かろう。与えたダメージとほぼ同等のダメージを受ける気分はどうだ!! 怯んだな、隙を見せたなっ?!
「どん太ァ!!!!!」
『ガァアアアアアア!!!!!』
『どん太が【魔狼身弾】を発動、姫千代(Lv,125)が合計4,442ダメージを受けました。スタンしました』
「かっ……は……!?」
『2COMBO! どん太が【爆滅二段掌】を発動、黄金の右足が炸裂! クリティカル! 姫千代(Lv,125)が合計14,442ダメージを受けました。スタンしました』
『3COMBO! どん太が【斬滅】を発動、黄金の右足が炸裂! クリティカル! 姫千代(Lv,125)が合計5,587ダメージを受け、死亡しました。経験値 7,980,980 獲得』
『黒イ雨の発動を停止しました』
『レベル81に上昇しました。おめでとうございます!』
『どん太がレベル46に上昇しました』
勝った……。勝った…………。勝ったぁ~…………。ここまで苦戦したの、初めてだぁ……。レーナちゃん先輩も、ペルちゃんも死ぬし、こんなの初めてだよ~~~……。
「は、はぁぁ……勝った……」
『わうぅぅ……』
『――――凄いじゃな~い♡ 勝てると思わなかった~! 今度復活したら、すっごく大人しいわよ~♡』
…………。復活、させていいんか。こんな化け物。でも今度は大人しいって言うし……。
「起きろ……」
『わぅぅぅうう?!?! (また起こすの?!)』
『アンデッド作成が発動し、対象アンデッドを復活させ――――干渉』
『女神メルティスから直接介入――その者の蘇生は許しません――――ほんっとうっさいわね~♡ リインカネーション♡』
『姫千代(Lv,125)がワ・タ・シ♡(Lv,????)の【リインカネーション】で転生したわよ~♡』
あ、またメルティスに阻まれた演出入った。でもバビロンちゃんにまた干渉されて、今度は転生させられちゃったよ……。え? 転生?! ああ、バビロンちゃんも使えるんだ!! そういやそうだよね、じゃなきゃ皆転生コマンド使ってバビロンちゃんに転生させて貰えないよねえ?!
『★★
「は……っ!?」
「あ、起きた……」
『わ、わう……ぅぅぅぅ……』
あ、起きた……。いや姫千代なのは、散々ぶった斬られまくったからわかるけど……。クラス名、戦巫女姫かぁ……!
「あ……。ち、力が、入りませぬ……」
「あ、ちょっと!? 顔面から行ったけど!?」
「い、たい……」
起きたのは起きたけど、姫千代さん……今度は急に襲いかかって来ないで、顔面から地面に倒れ込んじゃった。すんごい痛そう……。
「大丈夫?! 今度は、襲いかかってこない?!」
「さ、先程は、とんだ無礼を……。
『わうわう~……? (ねえねえ、お腹減ってるの?)』
「ええ、恥ずかしながら……。ああ……?! ワン公の声が聞こえるなど、千代はもう終いで御座います……」
「あ、多分正常だと思います。私も聞こえるんで……」
そっかー……お腹、空いてるんかぁ……。空腹だった割にはさっき元気だったのは、バビロンちゃんが全盛期の状態で"復元"したからかな? 今度は"転生"させたから、空腹で動けない状態なのかな……。多分。勝手な想像だけどね。
「はい。とりあえず食べてよ」
「こ、これは……?」
「普通のタルタルフィッシュバーガーだけど……。こんなで良ければ、まだあるから」
「い、頂きます! 頂きますっ!!!」
おー。私の手ごと食われるかと思ったわ。とりあえずお腹空いてるんじゃ動けないんだろうし、レベル1の状態なら今度は倒せそうだし、食べさせても大丈夫でしょ。ギルド倉庫から持ってきたハッゲさんの作り置きだけど、何個かあったのを持ってきて良かった。1時間ぐらいHPが上がるから、効果が切れたら食べようと思って持ってきてたんだよね。いっぱいあるし、持っていって良いってお昼寝さんからも言われてるし。一応全員分と思って、20個ぐらいあるんだけど……。
「……もう一個、あるけど?」
「頂きます!! 美味しゅう御座います!!! 此方はこのような美味しいものを食べたこと、ありませんっ!!!」
『わうぅぅ~……(お腹空いて来た……)』
「はいはい。どん太の分もあるから、食べな」
「どん太、殿? で、よろしいですか……? 先程は、肉などと言って食べようとして、もうしわけありません……はむっ…………」
――――この人、最初に起きた瞬間の一言、肉だったの????!!!! 憎いとか、そっちのほうじゃなくて?! どん太が丸々してて美味そうだったから襲ってきたってこと?!
『わんっ! (良いよ! 勝ったもん!)』
「…………あ」
「はい、まだあるから」
「頂きます、頂きます……はむっ……! どん太殿は、お強い、ですね……!」
いや、4対1で……。しかもかなり高性能な2人を落とした人の言葉じゃないですね~……。強いのは貴方ですからね? あの時反射盾でひるまなかったら、こっちに勝機無かったと思うよ? その瞬間にどん太が迷わず魔狼身弾を打ち込んだ、多分100回に1回ぐらいの勝機を掴んだだけのまぐれ勝ちですね~……。
「……お姉ちゃん! もう、大丈夫そうですか?」
「あ、リアちゃん! 大丈夫だよ~」
『わんっ! (大丈夫!)』
お、リアちゃんと……。えーーーっと、フリオニール! フリオニールが帰ってきた。ペルちゃんとレーナちゃん先輩は~……どん太に迎えに行ってもらおうかな?
「どん太、ペルちゃん達を迎えに行ってきてくれる?」
『わんわんっ! (いいよ! わかった!)』
『倒したよ。どん太達が腹ペコなので、ご飯持ってきてくれると助かります』っと、ペルちゃんに送信しておいて……。どん太に迎えに行かせれば、オッケーだね!
「…………2人も、殺してしまったのに。情けを掛けて頂いて、本当に……」
「大丈夫。あの2人生き返って戻ってくるから」
「えっ……?」
「姫千代さんも2回も生き返ってるけど?」
「えっっっ」
姫千代さん、もしかして自分が死んだのにも生き返ったのにも気づいて……ないっ?!
「私はね、死霊術師。貴方の死体を蘇生させたら襲われて、そんで叩きのめしてまた起こしたのよ」
「此方は……。強く頭を打って、気絶したわけでは、ないのですか?!」
「死んでますねー」
「し、死んで……?! あ、そ、そういえば! その鎧は、此方の着替えを覗き見た! 変態っ!! く、首がない?! 本当に、ひっ……?! お、おばけ……此方はおばけが、苦手――――」
『姫千代(Lv,1)が【恐怖】【気絶】状態になりました』
「あ、ちょっと?! 嘘でしょ気絶してる?!」
『姫千代(Lv,1)が【克己】を発動しました』
『姫千代(Lv,1)が【恐怖】【気絶】状態から回復しました』
「――お、おばけなんて怖くありませぬ!!!」
忙しい人だなぁ姫千代さん……。空腹状態じゃなければ、愉快で可愛いお姉さんだわ……。そしてフリオニールよ、覗いたのか……。死んで当然よ、それは……。
『(´・ω・`)』
ふざけてんのかフリオニールお前。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます