想い溢れて
◆ バビロニクス・ギルドルーム【スイート】 ◆
千代ちゃんのお腹が落ち着くまでのんびりお喋りをしている間に、ペルちゃんが強くなりたいと呟いた一言がきっかけで、おにーちゃんがそれにぴこーんっと反応してペルちゃんとおにーちゃんが模擬戦をやりに行く流れになりました。バビロニクスのはちょっとアクセスが悪いから、ローレイ側の修練場でやりに行くって。ついでにおにーちゃんは向こうで食べたいものとかお風呂とか色々楽しみたいから、暫く向こうでゆっくりするみたい。今日はもうこれで別行動かな?
そしたらそんな事している内にどん太がわんわんわうわう言ってるから見に行ったら、リアちゃんが『色々と悔しいので納得するまで頑張ってきます!』って書き置きを残してどこかに行っちゃった。離脱状態ではないし、従者ステータスからどこに居るか見てみよう~って思ったら『バビロニクス内のどこか』って表示になってるだけで教えて貰えなかった。うん、偽装工作だね……便利ね、それ。
どん太はちょっと休憩だって。ギルドルームに来たギルメンさん達に挨拶したり、ペロッとしたりもふもふさせてあげたり、たまーにちびちゃんズに滑り台にされて遊ばれたりと、極めてお利口さんにして休憩してるわ。
「ふ、ぅ、落ち着きました……」
「えい」
「うわぁああ……!? お、お腹を押すのは、反則! 反則に御座いますぅ……」
「お持ち帰りしても良いって書いてあったのに、無理してあそこで食べ過ぎだよ~」
「ふぐぅ……が、我慢出来なくて、つい……」
千代ちゃん、あれは
ああ、そういえばね、デラックスパーティ料理チケットは地獄パーティクリア時のパーティ会場で自動消費されるアイテムだったみたい。これを引き当ててないと最後のフロアが宝箱しか置いてないんだって。パーティ会場で料理をせっせと運んでた地獄料理人の人達にそう言われた。ちなみに途中退場しても用意して貰えたみたいだけど、負けた後に食べるパーティ料理と踏破後のパーティ料理じゃ同じものが出されても味に雲泥の差がつきそうだよね。踏破後に食べられて良かった良かった。とっても美味しかったもんね! ほろほろローストチキンが一番好みだったかな……!
「ん、まあでも、美味しかったもんね。しょうがないか!」
「しょうがない、しょうがないことなのです……」
思い出しちゃうぐらい美味しかった料理だし、千代ちゃんがあの場で食べ過ぎるのもしょうがないことか。そうしとこ。んじゃあー……とりあえず気を取り直しまして? 千代ちゃんの上限解放とやらをやってみましょうか! 【上限解放:姫千代】って名前の従者クエストだけど、皆とは何か違うのかな? 同じ?
「よし、じゃあ千代ちゃん! 上限解放、しようか!」
「その前にリンネ殿、聞いて頂きたいのです」
「お? 聞きます! はいっ!」
「わ、大変よい姿勢に御座いますね。そこまでシャキッとなさらずとも、いつものように聞いていただければ……」
「は~い!」
およ、千代ちゃんからお話がしたいのは割りと珍しいかも? 何を聞かせてくれるのかな?
「此方は、生前よりも身体能力も妖力も劣っております。幾度となく歯痒い思いも悔しい思いも致しました。特に、獅子のレオン殿には。レオン殿には身体能力で大きく勝っているにも関わらず、リンネ殿のご助力がなければ攻撃が通らない始末。此方の技量不足を痛感しました……。そして今までは身体能力と妖力任せに剣を振るっていただけだと気がついた瞬間、これまで振るっていた自分の剣術が途端に恥ずかしくなりました」
ん……。千代ちゃん、意外と思い詰めてたんだ。そういえばあの時、ご飯も食べずに鍛錬鍛錬って感じで、その後に奥義無双国落を引っ提げて来たんだっけ。無双連斬を真似しようとしてた辺りって、実はかなり迷走してたりしたのかな。
「そしてカムイと出会って稽古をした時に、此方は大事なことを思い出させられました。カムイが言うのです『どなたに剣術を教わったのですか? 私は我流なので、他の剣士の剣術にはとても興味があって、教えて頂けるのであれば、ぜひ』と。此方はその時すっかり忘れておりました、此方達の剣術の祖である零姫様が何故刀を手にしたのか、その教えの原点を」
なるほど、それで原点に帰った結果、あの祓魔居合斬ってわけ……なのかな? 確かにカムイちゃんと稽古をしてから、明らかに千代ちゃんの攻撃に迷いとかそういうのが消えたというか、葛藤を感じなくなったなーとは思ってたんだよね。
「大切な人を守る為。零姫様は国を、民を、家族を守る為に魑魅魍魎を退けんと刀を手に取りました。しかし此方は……勝ちたい、悔しい、強くなりたいが故に刀を振るっていました。そこに『誰かを守りたい』という気持ちはなく、いつの間にか独り善がりな剣術になっていました。ですが、あの、だから、ええと……。その……」
「今は、私達を守るために刀を握ってくれてるよね」
「ん、んっ……。そう、なっていると、嬉しいです。刀を振るうことに、何の違いもないように聞こえるかもしれません。ですが、己を見つめ直して心機一転、原点に立ち返ってからは、なんだか刀が軽くなったような気がして、上手く、言葉に出来ないのですが……」
「みんな千代ちゃんに守ってもらって、頼りにして、ずっと一緒にいたいって思ってるよ。もちろん、私も!」
「んっ……んっっ…………リンネ殿に出会ってから、以前よりもずっと、ずっと強くなれました。リンネ殿の一生懸命な姿に、此方は、此方も……頑張って、頑張ろうと思って……っ」
「よーし、泣いていいぞっ!! ほら、来い来~い!」
「い、いえ、そん、そんなつもりでは……あ……あ……」
千代ちゃんが私に、こんな姿を見せてくれるようになったか~……。実はこっそりとどっしり、色々と抱え込んじゃうタイプなんだねえ~。たまーにこうして抱え込んだものが整理できなくなって、言語化出来なくなるぐらいに膨れ上がって、爆発するんだろうね。話も途中から、頑張って伝えようとしてるけどぐちゃぐちゃになってきちゃったもんね。おーよしよし、今この部屋をサブマス特権で遠隔ロックを掛けてあげるからね~…………。
◆ ◆ ◆
「――――あ、の。もう、大丈夫ですから……」
「ヤダ」
「あ、うぅ~ん……」
「このまま始めるもん」
「うぅぅ~~ん……」
それでは、千代ちゃんを座って抱っこしつつ頭を撫でながら、千代ちゃんの上限解放に必要な素材を揃えてクエスト報告ボタンをぽちーーーっとして上限解放やっちゃいましょう! それ、ぽちっとな。
『【上限解放:姫千代】をクリアしました』
『姫千代の状態をチェック中です…………』
『信頼度:★★★◆』
『好感度:★★★◆』
『成長度:★★★◆』
『総合評価:SSS+』
『姫千代のクラスが統合され【◆真・剣術無双】にランクアップしました』
『姫千代が真なる力を取り戻しました』
『姫千代が零姫式刀剣術の心得を取り戻しました』
『姫千代が複数のスキルを取り戻しました』
『姫千代の複数のスキルが強化されました』
『姫千代の【★★妖狐の面】が消失し、常時妖狐化状態になりました』
『姫千代の【妖狐化】スキルが調整されました』
お、凄い他の子とぜんぜん違――――耳!!!! 狐耳が……突然出てきた! もふもふふわふわだぁ!!
「はう、はぁう……!? 耳、耳は駄目に御座います!!」
「……駄目って言われると撫でたくなっちゃう!!」
「ひゃおおおおおおおぉぉ!!??」
おおおおお……!! 耳の付け根が、狐耳の付け根がええか、ええか!! まあ流石に程々にしてあげようか、もの凄く敏感みたいだし!! どれ、どんなステータスになっちゃったのか、私にみせてごらん!
・ステータス
【名前】
【レベル】75
【属性】ボス属性・不死属性・悪魔系・中型
【性別】女性・隠れ妖狐【悪魔系】
【職業】◆真・剣術無双
【カルマ値】-1,000
【HP】200,000 *1.2
【MP】75,000
【印】15+3
【STR】450+650
【AGI】450+500
【TEC】450+500
【VIT】450+500
【MAG】12
【MND】12+1,000
【スキル】
【真・剣術無双】
・乱華【通常攻撃範囲化・対象複数化】
・乱華円舞【中範囲・5~10ヒット】
・滅鬼斬【MP5%】【不死・悪魔系特効】【念属性特効】
・零姫式抜刀術奥義:祓魔居合斬【MP40%】【不死・悪魔系特効】【聖・無属性】【妖力弱化】
・一刀断鉄【MP10%】【即死】【装備破損】
・奥義:無双国落【MP20%】【極大ダメージ】
・紫電脚【高速移動】【風属性】
・牙突紫電【MP20%】【風属性】
・殺界【シールド系破壊+2】
・零姫式刀剣術正統後継者【スキル枠+5】【パッシブ:AGI+500、TEC+500】
・金剛力【STR+500、VIT+500】
・神通力【消費MP半減】【消費MP5%減少・0%可】【MND+1,000】
・妖狐化【ステータス常時強化】
・
・地獄三姉妹のお気に入り【パッシブ:カルマ値最低化・聖属性弱点削除】
【印術】
・喝【印 1】【範囲攻撃打ち消し】
・克己【印 1】【状態異常回復】
・水月【印 1】【回避・瞬間移動】
・驚天動地【印 2】【任意・瞬間移動】
・一騎当千【印 1】【次に発動する攻撃スキルを強化】
・神威【印 2】【次に発動する攻撃スキルを超強化・一騎当千上書き】
・心頭滅却【印 2】【回復・MP完全回復】
・不変不動【印 8】【パーマネンス効果】
・戦意向上【敵を倒す毎に印 1 回復】
【装備】
主:◆◆千紫万紅
副:◆不変不動の篭手
頭:★★黒巫女カムイの鉢金+10
体1:★★黒巫女カムイの戦衣+12
体2:★★黒巫女カムイの不平等+10
足:★★黒巫女カムイの草履+10
アクセサリー【指】:★★一騎当千・妖狐百姫の形見
アクセサリー【腕】:★★戦鬼の篭手
アクセサリー【首】:★★無病息災・鶴折り紙のお守り【状態異常回復速度+1000%】
アクセサリー【他】:なし
「これはアカン、壊れてる」
「へ、ひゃう……!? こ、こわれ……!? こ、こにゃたは、ひゃいじょうぶ、れす……」
「…………まだもふもふしていいってこと?」
「ダメに御座いますぅ!!!??」
「ふっふふ、大丈夫だよ。やらないよ」
「ほっ…………」
なんじゃこれ。アカンでしょ、このステータスは……。このスキル数は……。え、これ本気でおにーちゃんと殺し合ったら、どっちが勝つかわからないね? シールド系破壊+2ってこれもしかして……うわ、1ヒット辺りのペネ削りが+2されるやつだ!! 乱華円舞が10ヒットしたらペネ30削るよこの人!!? ペルちゃんが溶ける!!
「……力がもりもり溢れ出てきたんじゃない?」
「……その、ように御座いますね?」
「おにーちゃんと何戦か、しに行く……?」
「よろしいのですか? 天下一決定戦の予選は……」
「あ」
「……忘れておられましたね!?」
そうだ、そうだったわ天下一!! えーどうしよー……昨日レート4000台まで行ってマッチングしなくなったけど、そろそろするようになったかなー? あ~……予選で千代ちゃんとかおにーちゃんを出して手の内晒すの、勿体なく感じてきたな~。
「どん太とペアで出てくるかあ~。千代ちゃんは隠し玉だからね、本戦でお披露目したい!!」
「ええ、流石に4対2は厳しいのでは……?」
「憑依して出るから、実質4対1? 勝てたり勝てなかったりするかもしれないけど、私自身がどこまでやれるかの挑戦も兼ねて行ってくるよ~。じゃあ、まずはローレイ行こうっか!」
「リンネ殿が、それでよろしいのであれば……。こ、此方は、それを尊重致しまする」
「ん!! じゃあどん太とペアで行ってくるわ! どん太~~~」
『わう~~?? (なぁに~~??)』
「遊び行くよ~」
『わんっ!! (わ~~い!!)』
よし、じゃあどん太とペアで出てくるか! 三人で全勝なんだから、どん太とペアならいい勝負になるんじゃな~い? それにちょーーっと掲示板で情報漁ったんだけど、どうやら天下一は裏で何らかのマッチング調整されてるっぽいんだよね。代表同士で当たらなかったり、連勝チームと当たらなかったり、なんかね? あるみたい! 検証進んでないから『ある……かも?』ぐらいの情報らしいけど。
「……リンネちゃん、た、ただいま、です」
「おお! つくねちゃんお帰り~……? およ? 武器、斧槍にしたんだ!」
あ、つくねちゃん帰ってきてた! およよ、武器が斧槍になっておる?
「う、うん! それで、あのね? わっち、狂戦士セットがちょっと要らないというか、合わなくなって……。竜騎士セットと、三龍アクセとか、まだ持って……ますか!?」
「あるよー! 倉庫倉庫~」
「か、買いたい――――わあっ!?」
「あげる!! 真覚醒祝いってことで! ん~~っね! また今度地獄パーティでも何でも一緒に行こうね~」
「え、ちょ、ちょ――――わわわわ!?」
『わふっわふっ! (ご主人があげるって! 貰っちゃえ~~)』
「元々共同で行ったやつのドロップだし、遠慮しないの! ねっ!」
「あ、う……。じゃ、じゃあ、あの、頂きます!!!」
「ん!! どうぞどうぞっ!」
なるほど、オーバーキルから何か別系統のクラスに行ったのかな? 強化とか融合とか大変だろうけど、前に共同で行って出した奴だしプレゼントしちゃおうね~。さてさて、つくねちゃんはこれから忙しい地獄の沼の時間だから……。私達はとりあえずローレイ行って、ガトランタ? だっけ、行って! どん太とペアで団体に出場! いっくぞー!
「じゃあ、つくねちゃん! 私達は天下一とかに行ってくるから、またね!」
「あ、またね、です……。が、頑張って! ください!」
『わう~~!! (行ってきま~す!)』
「また一緒に戦いましょう。つくね殿……美味しそうな名前にございますよね」
「食べちゃダメだよ?」
「た、食べません! 此方を何だと思ってるのですかっ!?」
「腹ペコ妖狐」
『わう~~! (僕と同じぐらい食べる仲間!!)』
「な、なか……ま……!?」
千代ちゃん……。どん太に大食い仲間と認識されていたか……。実質進化した千代ちゃんは、胃袋もまた進化しちゃってたりするのかな……? あ、そうだ。オークションで出品してたドラゴンセット選択箱とか色々売れたお金を使って、後で保護チケを買って地獄結晶【蛇神】【絶氷の怪物】【アイツ】【怨嗟の魔王】を私と、千代ちゃんの空いてる部位の分作っちゃおう! いや~アクセ2個落ち状態で行くところだった、危ない危ない。思い出して良かった~っと。それじゃつくねちゃん、またね~行ってきま~す!
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