日進月歩
◆ ギルドハウス【ロビー】 ◆
「リアちゃあぁぁぁぁん……すぅぅぅぅぅぅ~~~~~…………」
「ひっ……?!」
精神的にダメージを受けたり、何か辛いことがあった時、幼女を吸う。そうすることで並の悩みはたちまち解決する……。これは今さっきレーナちゃん先輩に教わったライフハックだ。いざ実践してみたが、なるほど……。人間性を失うという点で、人間としての悩みなど薄っぺらく些細な事だと感じれるようになるらしい。ん~……。リアちゃん、温かい……。元は骨だったなんて思えない……。
「ど、どうしたんですか、お姉ちゃん……?」
「龍言語辞典がね、出ちゃったんだよぉ……」
「あ……。なるほど……。それでこれほどまでにショックを……」
「うぅううぅぅぅうぅぅ…………。すぅぅぅぅぅ~~~~~~…………」
「う~ん、じゃあいつもお姉ちゃんにやって貰うこれをお返しします……。元気になってくださいね、よしよし……っ」
「ア゛ッ゛」
「え? ちょっと? お姉ちゃん?! 死なないでください?! 息をして?!」
オーレリアマッマ……。お姉ちゃんはそんなことされたら、耐えられないよぉ……。
「あらあら、でっかい子供に小さいお母さんがいるわね……」
「これは……? 龍言語、ですか」
「会話の出来るドラゴンの話は聞いたことがないですね」
「もし、これを習得出来たら会話できるようになるのかしら?」
「お姉ちゃんちょっと、ごめんなさいっ……。以前、話に上がった"強い言葉"はこういった龍言語などが該当するのではないでしょうか?」
「オーレリアちゃん、つまりそれは詠唱ワードを龍言語にする、ということ?」
「リアって呼んでくださいっ!!! お姉ちゃん達につけてもらいましたっ!!!」
「リ、リアちゃん。リアちゃんね!」
「はいっ! そうですね、詠唱ワードや起動ワードを龍言語にするということです。特に起動ワードを龍言語で呼び出せば、龍の扱う魔術……もしくは、魔法陣の言語を龍言語に置き換えることが出来るかも知れません。順序が逆になってしまうかもしれないですが、呼び出した龍魔術の魔法陣を転写して、それをこの辞典で解読して詠唱ワードを割り出せれば、完全に発動出来るかも知れません」
「天才的な発想ね……」
「やってみましょう! そうだ、お昼寝ちゃんが地下に訓練場を増設してくれたはずよ! 実験はそこでバカスカやりましょう!」
「いくら破壊しても元に戻る隔離空間らしいですからね。存分にやりましょう」
ギルドの魔術師チームのお姉さま達と、オーレリアマッマが難しい話をしてる……。え? 何? もしかしてオーレリアちゃんの龍魔術消滅したの、完全消滅じゃないってこと? もしかしたらまだワンチャンスが残ってる? おおっ?!
「リンネさん! その様子だと、立ち直れたかしら?」
「幼女を吸う、元気が出る。常識」
「元気が出ました! リアちゃん、また吸わせてね!」
「い、いやです……!」
「えっ」
「あの、吸う時は、お風呂に入った後だけに、してください……」
「エッッッッッッッ――――」
今度お風呂上がりのリアちゃん吸おう……。吸う。
◆ そして【3号室】 ◆
【★★狂気の翼】(極上・ミスティック・空きスロット【●】)
・【呪】【恐怖】状態になり、HPが回復しない
・【呪】【発狂】状態になり、MPが回復しない
・【呪】装備者のカルマ値が-444以上である場合、装備出来ない
・スキル【黒イ雨】使用可能
・【セイレーンカード】【飛翔】使用可能。飛翔時、黒い翼のエフェクトが発生する
・【呪】カード外し不可
――狂え。狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え狂え。許せない
強化不可・解除不可・重量なし
「HPもMPも回復するわ」
「えぇ……」
「え~……」
「ボス属性なんで」
「「ええ…………」」
私が凹んでいる間に我慢できなくて二人が虹枠の【?服】を鑑定した結果、なんとカードが刺さった装備が出たんだけども……。あまりのデメリットに両者共に白目を剥いてぶっ倒れる程ショッキングな装備が出た。なんせメリットがよくわからないスキルが使える効果に加え、カード効果の飛翔っていうスキルが使えるだけ。そのためにインナー装備を潰してまでこれを着けるかっていうと……。無理でしょうねぇ……。
まあでも? これ私ならHPが回復しなくなる【恐怖】も、MPが回復しなくなる【発狂】も効かないんで。なんせ私、不死属性でボス属性ですからね!!! 不死・ボスに通る状態異常は【出血】と【火傷】だけですので!!! ガチ耐性ですよガチ耐性! 怖くないし、狂わなーい。ねえねえ呪いの装備さん、今どんな気持ち? ねえどんな気持ち??
「本当に貰ってよかったの? 一応ミスティック装備だよ?」
「いらない」
「絶対いりませんわ……」
「わ~い!」
要らないって言うんだから貰うしかないよねえ? じゃあありがたく貰おう、着ちゃおうって話。ちなみにどんなインナー装備かって? 見せないよ? とりあえず……これを下着と認めるには些か困難が伴うね。紐と表現したほうがよろしいかと。なお、上着を脱ごうとすると『無効な操作です』って出るので、その様な行動は出来ませんからね? 安心安全なゲームです。
「これを貰って喜ぶの、リンネだけだとおもう」
「呪い装備は性能が良いですからね。こんなん幾らあっても困りませんよ」
「呪い装備はデメリットが、デメリットが酷いはずですのに……」
「せめてカードだけでも、外させて欲しい~……」
「カードまで呪われてるだなんて……。それにしても、別のモンスターのカードも出ますのね。どうしてなのかしら」
「…………まっさつしゃーちの、お腹の中に入ってたとか?」
「どんちゃんじゃあるまいし……」
「ありえると一瞬でも思ってしまいましたわ……」
「え? それ以外何かある?」
「「…………」」
「ノーコメは卑怯だと思います!」
セイレーンカード、本当にどっから出てきたんだか……。しかしこれでカード無しだったのはペルちゃんだけか~。無念無念……。
「……じゃあ、覚醒やろうか?」
「そうですわね! では、せ~ので実行しましょう!」
「いいね~」
アイテム分配と鑑定が一段落したので……。やってみましょう、覚醒イベント!!! 装備欄を開くと【深淵の死の欲動(覚醒スキル取得可能!)】って出てた。このボタンをぽちっと押すと、王者の証を捧げる選択が出来るし、きっとこれで良いはず。
『警告!!! 危険な操作です!!!』
『警告!!! 正常なサポートを受けられない可能性があります!!!』
お、出た出た。いつもの警告画面。前にも増してノイズとかバグっぽいチラツキが増えてるホラー演出、こういうの大好きなんだよね。
「け、警告画面が出ていますわ……」
「演出かっこいい~~」
「こういう演出ぞくぞくしますよね! じゃあ、せ~ので押しちゃいましょう!」
「お、押して大丈夫ですの?! 本当に、大丈夫ですの?!」
「私前も出たし大丈夫でしょ~」
「せ~~~~の~~~~」
「ほら、押しちゃえ押しちゃえ!」
「押しますわ~~~!!!!」
そーれ、王者の証投入! ポチッとな!!! あ――――?!
『不明なエラー……干渉に抵抗――――謚オ謚怜、ア謨――――はぁ~い、ごあんな~い♡』
◆ ???? ◆
王者の証を投入して、ポチッと覚醒スキル取得のボタンを押したら……。真っ黒なポータルが足元に出てきて吸い込まれた。ここは、謎空間……。赤黒い靄がどこまでもどこまでも広がる、不気味な空間……。
「あら、来たわね~♡」
「…………バビロン様ァ~~~~~!!!!」
「はぁ~い♡ 愛しのバビロンちゃんよ~♡」
そして振り返れば!!! バビロンちゃん!! バビロンちゃんが居ました!! どうしよう、レーナちゃん先輩みたいに抱きついて、吸う?! 吸う!?
「それにしても、レベル75に到達するの早かったわね~? ズル、してないわよね~?」
「してないです!!!」
「ん~~♡ 元気なお返事でよろしい! ざっと過去を覗き見たけど? 超格上の相手の弱点を突くことで効率よく成長したのね~? やるじゃなぁ~い♡」
「ありがとうございますっ!!」
ほ、褒められた、でへ、でへへへへへ…………。吸わなくても幸へ……へへへへ……。あ、よだれでちゃ……。じゅるっ……。
「さて? 早速だけど、覚醒スキルの話をしても良いかしら~?」
「はいっ!!!」
「覚醒スキルはイカれ女の死の力、ネクロポイントだったかしら? それをブレイクすることで発動するハイリスクハイリターンなスキルのことよ~♡」
「ブレイク…………?」
「大体1時間かしら、ネクロポイントの利用も回復も出来ない状態になるってことね~」
「なるほど……。それは、ハイリスクですね……」
「そうよ~? イカレ女の場合だと、アンデッドの復活が出来なくなるから、アンデッドが全滅したらオシマイ。そうならないように立ち回る必要が出てくるわね~」
…………本題! バビロンちゃんに覚醒スキルの説明は、ざっとメモした感じこうだった。
・覚醒スキルを発動すると『NPブレイク』状態になる
・NPブレイク中はNPの使用、回復が一切行われない
・NPブレイクは1時間程度で回復する
・ハイリスクだが、それだけの価値があるハイリターンな起死回生のスキルである
「――――覚えられたかしら~? もう一度説明が必要かしら~?」
「はいっ! 大丈夫ですっ!」
「じゃあ、イカレ女~♡ 覚悟してね~♡」
「アッ」
覚えた、覚えられたけどバビロンちゃん待って、ちょっとでいいの、ちょっとで良いから吸わせ――
『痛そ~~♡ ワ・タ・シ♡(Lv,????)から??,???,???ダメージを受けたわよ~?』
『イカレ女が死んじゃった~♡ あ~あ♡』
『ワ・タ・シ♡(Lv,????)が【
『クラスチェンジね! 【
『ネクロポイントの回復速度が1分で1回復するぐらいにはなったかしら?』
『ワ・タ・シ♡(Lv,????)が【リコンストラクション】を発動して、イカレ女を復元したわよ!』
『ワ・タ・シ♡(Lv,????)が【グレーターテレポーテーション】を発動して、イカれ女を元いた場所に帰すわね。ばいばぁ~い♡』
――やば、このシステムメッセージ超可愛いんですけど……。課金してこれに出来ない……?
◆ いつもの【3号室】 ◆
『システム復旧――――システムに異常はありません』
帰ってきた、いつもの……3号室に。
「あ、帰って、来ましたわね!」
「ペルちゃん! ペルちゃんも、バビロンちゃんに会ったの?」
「会いましたわ、そして一戦だけ戦って……。惨敗ですわ……」
「私、吸われた。でも吸い返して、押し倒して、仲良くなった」
なにそれちょっと羨ましいんですけどレーナちゃん先輩?!
「「ちょっと内容を詳しく」」
「言えない……ふふっ……♡」
「ぐがががぎぎぎぎ……」
「リンネさんは?!」
「私は、いつも通り粉砕されて復元されてここに来たよ……幸せパンチ……」
「わたくしだけ、まともですわ……?!」
私がどうやら最後に帰ってきたらしい。ペルちゃんもレーナちゃん先輩も、それぞれ覚醒スキルを授かって帰ってきたみたいで。私が覚醒クラスの『
「覚醒スキル、気になりますわよね……」
「明日こっそり、確認する」
「私も明日こっそり確認しまーす……」
「わ、わたくしも!」
内容の確認は明日まで取っておくことに……。というかこの感じ、多分私達3人共この場で確認できないようなやばーーーい名前が書かれたスキルを持ってる感じがする。私なんて【死の侵食】だからね? どう考えても範囲即死とかそんな感じのスキルでしょ、これ……。今すぐ確認なんて出来るわけないし、そもそも今はネクロポイントがブレイク中なんだよね。多分さっき死んだからだと思うんですけど!!!
「あ。0時……。私は後のアイテム分配、放棄する~おやすみ~」
『07XB785Yさんがログアウトしました」
「唐突過ぎませんこと?! え?! 本当に落ちましたの?!」
「本当に落ちちゃった……」
「ま、まあ……。0時過ぎまでレーナさんが起きていたことは確かにありませんし、仕方ないかもしれませんわね」
「明日も仕事なのかなぁ」
「確か、レーナさんは隔週土曜日がお仕事ですわね……。今週はお仕事だったかしら? 半日で上がりだったような気もしますわ」
「じゃあ、明日レーナちゃん先輩がログインしてきたら、うみのどーくつダンジョンのボス狩りに行く?」
「ええ、そうしましょう! その旨のメールを送っておきますわね~……っと」
はぁ~~~…………あ~……。なんだか、色々あって眠くなってきたなぁ~。明日土曜日で休みだし、もうちょっと夜更かししても良い気がする。あ、そうだ! リアちゃんがギルドの魔術師チームのお姉さま達とどんな研究をしてるのか、見に行こうかな?
「ペルちゃん、この後なにするの~?」
「バビロン様と一戦交えて、まだまだ対人戦の立ち回りが甘いと自覚しましたわ。ですから、少しギルドメンバーの皆様と模擬戦をしようかと……リンネさんは?」
「リアちゃんの観察~? 何してるか気になるから」
「それなら、2番訓練場でやっているはずですわ! では、こちらのコモンとアンコモンアイテムは――――」
ペルちゃんは模擬戦しにいくらしい。とりあえずコモンとアンコモンのアイテムはギルドの共有倉庫に投入して、レジェンダリー装備は【★鯨喰らい】を、もしかしたらレイジさんが使えるんじゃないかってことでペルちゃんが渡しに行って、【★止まらない殺戮】を私が一応所持、【★ぎがんてぃっくすきれっと】はレーナちゃん先輩が持ってるので、後でハッゲさんに渡すだろうとのこと。
魔導書系とか料理本に関しては、ギルドハウスの新しいルーム【書庫】に格納されたらしい。ギルドメンバーはここに自由に出入りしてこれを読むことが出来るので、是非活用していこうって内容がギルドメールで届いてた。ここを魔導書とかスキル本とかで、埋めたいね……。私の死霊術・闇魔術のススメは残念ながら取引不可アイテムなのでこの書庫に入れられない。取引可能な奴が出たら入れておこう。
それにしてもやれることが増えてきたなぁ~……。ボス討伐が終わった段階で、どん太とリアちゃん、私、それにペルちゃんも見せて貰えたら……ステータスとかを纏めて確認しても良いかもしれない。意外に色々と見落としてるかもしれないし。
「お? 終わったか。レーナは寝たか?」
「寝ましたわよハッゲさん! 聞きましたわよ、親戚なんですって?!」
「おう。俺も信じられんが、親戚らしいぞ。リアルでもあんな感じでな、ふわふわ~っとしててどこか行っちまいそうで怖いぜ」
「…………信じられない」
「どこ見て言った?」
「…………イカちゃんを、ですかねぇ……」
「可愛いだろ?」
「ソウデスネー……」
もう、本当に……。何回見てもハッゲさんとレーナちゃんが親戚って信じられない……。本当に信じられない……。嘘だと言ってよ……。
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