深いようで浅い。浅いようで深い

◆ 【2番】地下訓練場 ◆


焼き尽くす炎よラ・ソダムドラゴンブレスドーラ・アェリーリャ……。ダメだわ」

「どうして上手く起動しないのでしょうか……」

「MPだけがごっそり持っていかれるのよね~」

「間違いなく発動はこれで合ってる。だけど発動しない感じよね」

「言うなれば、エンジンは始動したのにギアが入らなくてアクセルを踏んでも発進しない、みたいな状態ですね」

「あーなるほど……」


 2番地下訓練場では、リアちゃんと複数人のお姉さま達が熱心に龍言語についてお勉強中だった。どうやら龍言語自体はそこそこ解読が進んで起動ワードらしきものも見つけたみたいなんだけど、肝心の発動となると途端にMPだけが消費されて発動に失敗って形で終わってしまうらしい。お姉さま方の一人が言っていた通り、車に例えるとエンジンは始動するから燃料は消費されてるんだけども、アクセルを踏んでも発進せずに何も起こらない状態らしい。なかなか謎だ。


「考え方が悪いのでしょうか……」

「龍の扱う魔術と、人の扱う魔術に差があるということかしら」

「その肝心な龍が扱う魔術の形って部分がわからないから、困ってるのよねぇ……」

「起動ワードで魔法陣が出れば、解読も進むと思ったのに」

「ん~……」


 龍の扱う魔術、かぁ~。ロマンがあるなぁ~。人が使う魔術と何か違うのかな? そもそも、なんで龍魔術って分類を受けてるんだろ? 別に火属性の魔術なら火属性魔術に入れておけば良くない? 私がゲームを作ってる側だったら、面倒だから火属性魔術のリストに一緒に入れちゃうけどなぁ。

 龍属性を持ってないとやっぱり発動出来ないのかな? でもそれなら起動ワードすら反応してくれないと思うんだけど。反応はするけど発動しない、なんなんだろ。


「龍言語というものが強い言葉という認識が間違いなんでしょうか」

「どうかしら、起動ワード自体は合っているようだし……」

「あの、さっきの言葉って人間の言葉だと……なんて言ってるんですか?」

「焼き尽くす炎よ、ドラゴンブレスと言ってるのよ~」

「あら、リンネさんもこれのお勉強、しますか?」

「い、いえ……」

「そういえばビーストテイマーだものね、魔術を覚えても仕方ないわね」

「確かに、そうでしたね」


 いや、本当は死霊術師です……。今は死そのものってクラスになってます……。すみません、すみません……。それにしてもうーん、焼き尽くす炎よ、かぁ~。なんかドラゴンブレスの発動にしては言っちゃ悪いんだけどしょぼいっていうか……。迫力に欠けるよね~。でもこんな幼稚なことを皆の前で言ったら笑われそうだし、リアちゃんにこっそり教えよう。


「リアちゃんリアちゃん」

「す、吸わないですよね……?」

「吸わないから!!!」

「じゃあ、えっと、はいっ」


 もう! 人をなんだと思ってるのリアちゃんは! いや、うん、ちょっとさっきのは確かに変態的だったけど……。それは謝るけど! とりあえず、こっちに来てくれた。内緒話が出来る距離だ。


「起動ワード、しょぼくない……?」

「えっ?」

「いや、あの、ドラゴンが『焼き尽くす炎よ~』とか言わないと思うんだけど。もっとこう、尊大っていうか、暴力的な言葉じゃない? 何かを思いやる様な種族じゃないでしょ、勝手なイメージだけどね?」

「…………」


 ごめんって、リアちゃん黙らないでよ。ノーコメントが一番キツイんだから、お願い馬鹿を見るような目だけはしないでね? やめてね? せめてオブラートに包んで言葉を選んでお姉ちゃんを罵ってくれる? くれるよね?


「ほ、ほら。私の魔術もそうじゃない? 穿て、とか。沈めとか、生ける屍と化せとか、深淵の脈動とかでしょ? リアちゃんのも砕けて弾けよ、でしょ? どっちかって言うと『あ、魔術さんおねがいしまーす』みたいなニュアンスっていうか……。というかわざわざ魔術に名前を付けてる時点で、ちょっと下手に出てる感じ、ない……?」

「…………」


 リアちゃんお願いします。何か言ってください……。


焼け死ねグィ・ゾダス!! 絶滅しろアニェーラ!!! あっっっ…………!!!!!」

『オーレリアが【絶滅焼夷弾】の発動をキャンセルしました』

「アッ――――」

「あ、危なかったぁ~……!!!」


 こっわぁぁぁぁ…………!!! 今、リアちゃんの手元で人工太陽でも発生したかと思ったわ、すぐ消えたけど、いや怖すぎ……!! 何今の?! 絶滅焼夷弾って何?!


「こんな、簡単に発動していいんですか……?!」

「え、やっぱり今の発動したの?!」

「はいっ!! そっか、なるほどっ……ドラゴンが尊大っていうのは、当たりかもしれないです! 魔術にお願いなんてするはずないですよね、ドラゴンが!」

「お、おお……?」

「そもそもが間違っていたのかもしれません。私達が使っている魔術の起動ワードという物自体が!」

「おおおお……?!」


 なんだなんだ、リアちゃんの頭の中に何かが急に、ビビビビっと受信したみたいな、唐突に悟りを開いてらっしゃる……。それ、お姉ちゃん達にもわかるように説明してもらえないかなーー……?


「みなさん、聞いてください! お姉ちゃんから頂いた助言で、これまでの常識が覆されましたよ!」

「あら、何かしら……。さっきピカーーーっと光ったのと関係あるのかしら?」

「急展開ね、聞かせて欲しいわ」

「聞きましょう! 是非聞きましょう! 聞かせてください!」


 これは、また勉強会が開催される流れですね? お姉ちゃんついて行けるかな~大丈夫かな~~……。




◆ ◆ ◆




 リアちゃん曰く。魔術の起動ワード、これは正確には【起動を要望する言葉】だそうだ。魔術側に発動条件が設定されていて、この発動条件を満たした人物が起動を要望する言葉を発すると魔術が起動するということ。

 これを裏付ける証拠として、レベルの低い魔術師が上位の魔術の起動ワードを口に出して魔術を使おうとしても発動することが出来ないというものがある。これは『いや、まだ貴方は私を発動出来るレベルじゃないですね~w』と魔術側の発動条件を満たしていない為に、魔術側に拒否されている状態なのだと言う。この場合、MPの消費すら発生せずに不発に終わる。

 

 では、龍魔術はどうか。まず龍魔術を起動するワードを割り出して口に出しても、MPだけが消費されるだけで発動しなかった。不発の場合はMPも消費されずに何も起こらないので、これは前述のレベル不足や資格不足などではない。ではなぜ、要望をしても魔術が発動しないのか?

 リアちゃんは結論として『発動したくないから』と言う極単純な答えに行き着いた。非常にフランクな表現をすると魔術側が『いや~働きたくないでござるなぁ~……あ、MPウマ~……』というような状態になっている。龍魔術はちょっとやそっとのお願いじゃ働かない。これを働かせる方法は、そう! 非常に強い言葉で強制的に発動させる、【強制発動ワード】である…………と、思われる。

 なんせ公式から正式な回答がないので、こればっかりはわからない。ただ非常に強い言葉で魔術の起動ワードを強制系にすると発動するので、恐らくこれが正解なのだと思う…………。


「人間は魔術を行使しているのに対して、龍は魔術を使役している、という表現が正しいのでしょうか。龍は万物の長、魔術すらも使役する存在、故に龍の使役する魔術……龍魔術なのではないかと」

「私達が使役するには、レベルが足りないようね……」

「暴発、しましたね……」

「リアちゃんのようにコントロール出来ずに、自らが焼け死んで終わりでしたよ~」

「不相応な力を強制的に引き出せば、たちまち飲み込まれて滅ぼされるということなのでしょうか」

「メタ的な言い方をすると、隠しステータスみたいなのがあるのかも。魔術には内部的にレベルが存在してて、成長と共に扱える魔術レベルも成長している的な?」

「あーありそう。ここの運営隠しステータス好きだもんね」

「カルマ値とか、メルティス教団関連の職業に転職して、貰った装備品にカルマ値要求があってようやく発覚したぐらいだったもんね~。それでようやっとカルマ値の隠しステータス化が解除されたんだっけ」

「魔術レベルか~……ありそうだわ~……」

「この魔術はどのレベルって言うの、纏めてみたいわね~」

「あ、面白そうですね! 初心者さん達に魔術を教えるがてら、ステータスを見せて貰って統計とか取りたいです」


 …………。凄いなぁ~。みんな、熱心熱心……。


「ステータスを見せて貰った上で、魔術を教えるようにしないと。ステータスを見せずに去っていく人が出てきそうだわ」

「確かに。でも怖いですよね、まずステータスを開示しろ~なんて」

「しかも魔術レベルっていうのが存在してるかも怪しいし」

「ありそうだけどね、ありそうの域を出な…………よね」

「そう――――なにより――――」


 こうして皆でテーブルを囲んで、膝の上にリアちゃんを乗っけて、抱っこして皆の話を聞いてると……。リアちゃんが温かくて…………。ん~…………。魔女っ娘なのに、お日様の香り……いや埃っぽい匂いがしたら嫌だけど……。それはそれで解釈一致というか……。


「でもこうやって――――」

「これは、アナイアレーションナパームと呼ぶことに――――」

「格好いいわ――――」

「――――? ――――??」

「あらあら――――」


 温か…………。ふわっ……あぁぁ~~~…………。リアちゃんの声、9歳とは思えない大人びた優しい声で好き……。サラサラの金髪好き……。青い目が綺麗で好き……。肌白っ……もちもちしてて好き……。ん~~~~…………。どん太の、もふもふも、捨てがたいけど……。


「これはもう――――」

「ええ、そうで――――」

「では――――」


 …………。




◆ ギルドハウス【ロビー】 ◆




 わっ。僕以外に寝落ちしてるプレイヤー、初めて見たかも。


「よう。起きたか」

「おはよ~……」

「夜中の2時だぜ? おはよ~じゃないだろ」

「ハッゲこそ、いつまで起きてるのさ」

「そりゃあ、眠くなるまでだろうな」

「じゃあそろそろか~」

「そろそろだろうなぁ」


 ん~。やっぱりダイブ中に寝るのは気持ちいい。気持ちいいけど、起きる時が一瞬で起きるからこれが辛い……。眠りが浅いように感じちゃうんだよねぇ……。

 んで! ハッゲ、起きてた。ハッゲは2時以降に寝るんだよね~いつも。10時ぐらいに起きて、昼にちょこっと仕事して、後はほとんどメルティスにログイン。相変わらず何の仕事してるかも謎だし、どうしてこんなにマッチョなのかも謎。ただとにかく良い人なんだよね、ハッゲは。


「……良い寝顔だぁ」

「おう。リアちゃんが『おっきい子供みたいです』って困り顔で運んできたぜ」

「意外に力持ちだね……?」

「後ろから抱きつかれてたから、丁度良くほうきに一緒に乗せられたみたいだぜ」

「なーる……。幼女に抱きついて寝るとは、普通逆だろうに」

「幼女に抱きついて寝られたら、もう身動き取れんよなぁ」

「動いたら死罪だよ死罪」

「だな!」


 リンネちゃん、良い寝顔で寝てらっしゃる……。最初はくらーい感じの子で『大丈夫かなー馴染めるかなー』って心配だったけど、あのペルセウスが連れてきたんだから大丈夫と思ってたら、案の定大丈夫だった。大丈夫過ぎるぐらい。


「そういや、あいつらぶっ飛ばしてレベルは? 上がったのか?」

「37~。前の59から比べたら低いね~」

「戻すのが大変だな。60遠い~って嘆いてたのに、まさか転生するとは。何でまた?」

「あれ? ハッゲ、リンネちゃんに結構近寄ってるのに聞こえない・・・・・んだ?」

「聞こえる? 何が? 寝息なら聞こえるが」

「あ~~~……。何か条件とかあるのかな。レーナちゃんも聞こえたらしいし……」

「なんか聞こえると、転生すると何かあるのか?」


 やっぱり、ハッゲも気になるよね。このハンドパペット……可愛いでしょ……っては、押し通せないよねえ。それにハッゲとは前のオンラインゲームから一緒で付き合い長いし、教えてもいいかな。喋るような人じゃないし。個人メッセージ、っと。


『(ここだけの話、リンネちゃんの影を踏むと魔神バビロンに声を掛けられるんだよ。こっち側の方が向いてるわよ~♡ って)』

『(マジか? 俺、全然聞こえないが。こっち側って、そういや武器変えたよな?)』

『(このタトゥーね、ヒュドラのタトゥーっていうその他アクセサリー枠の装備なんだけど、これを魔神バビロンにバシィっと付けて貰ったんだよね。そしたら卑怯者ってスキルが手に入って、毒とか混乱とか色んな耐性と、クローが装備出来るようになったんだよ~)』

『(へぇ~マジか~……。何で俺だけダメなんだ? スキンヘッドだからか?)』

『(魔神に気に入られてるってことは、それなりのことをしたからだと思うんだよね。ハッゲって、ここを取り返す時に飯配って寝床作って住民励ましてって、かなり善性の働きをしまくってたじゃん? 魔神に気に入られる要素ではなさそうじゃない?)』

『(あ~。海賊ぶっ殺す、腐敗した教団のプリーストをぶっ殺すって殺りまくってたからなぁ、お昼寝達は。そりゃあ、気に入られそうだわ)』

『(でしょ~? でもなんで、こんなにいい子達に慕われてるリンネちゃんの影を踏むと、魔神バビロンの声が聞こえるんだか……)』

『(…………すんっげーーーー気に入られてるんじゃないのか?)』

『(この短期間で? 何をしたのさ、いったい……まだ3日前にやり始めたばっかりだよ?)』


 本当、リンネちゃんは謎存在だわ。めっちゃ強いウルフは従えてるし、可愛い魔女っ娘が従者だし、武器を作れるらしいし、しかも魔術系らしい。34人PKして、自分は一切手を出さなくても倒せるだけの余裕……。もしかして、もしかしてだけど? リンネちゃんってゲームマスターだったりしない? あ? もしかしてGMか?! いや、GMは頭の上にデカデカとGMって付くし、そもそもこのゲームは運営スタッフの一人が個人垢でやりたい放題やろうとして1分でBAN食らって謹慎処分&降格処分されたぐらいセキュリティガチガチだし、それはないか。だったら、何者なんだろう……。本当に謎だ……。


「…………ひれかつぅ……!!!」

「ヒレカツ」

「ヒレカツか、明日作ってやるか……」


 その寝言は無いでしょ、リンネちゃん……。ひれかつぅ!!! って何よ……。いや待てよ、僕ももしかしたら言ってるかもしれないな……?! 今度から、人前で寝るのはやめておこうかな。


「そういえば、レベルいくつになったの?」

「おう? 70だぜ」

「たっかぁ……」

「おう! 皆のおかげだな!」


 うっわー。ハッゲが僕の倍近いレベル……。毎日ギルドメンバーから食材系アイテムを食材保管庫にぶん投げられてるし、その有り余る食材を使って厨房で料理作りまくってれば、そりゃ上がるかぁ……。


「ちなみに60から61に上がるまでに、100人前は作ったな」

「…………絶対個人でやりたくない」

「俺も個人では絶対に無理だな。大富豪プレイが要求されるか、こっちの世界でレストランでも開かんと無理だ。料理で金取らないと絶対にやってられん」

「そういえば、ギルドメンバーから料理代とか取らないの?」

「取るわけ無いだろ。取ったら誰も食材保管庫に食い物入れねえよ」

「それもそっか」


 ハッゲのレベルだけ聞くと羨ましいけど、要求量がヤバい……。それを聞くだけで絶対にやりたいって思えないわ。あれ? でもこんだけ作ってて余らないのかな?


「え? 100人前とか作って……余らない?」

「余ったらこの街の住人に配ってんだよ。いつまでも甘えてないで、自分たちの食い物は自分たちで取れるようにならんと、俺もいつまで居るかわからんぞとは言ってるがなぁ」

「なーる……」


 やっぱり、ハッゲは善人が染み付いてるなぁ……。甘やかしすぎないところも、並の善人ではないよね。


「そういや、レーナがさっき寝ぼけながらログインしてきてな、これを貰った。渡された瞬間落ちたんだけどな」

「でっかぁ……」

「ぎがんてぃっくすきれっと、だ。超巨大料理が作れるらしいぞ」

「おおお~~~~…………」


 すっごい、なにそのデッカイフライパン……。なんか、えー! 似合う~~~良いなぁ~~~。


「ちなみにガチ性能だ。ほら」

「うわ、耐性貫通とか付いてるヤバ……。え? ハッゲ戦えるの?」

「敵を料理することも出来るぞ。やる時はやるぜ」

「ほえ~~~……。昔っから対人戦っていうと強かったよねぇ……。やらないの?」

「火がつくと、料理そっちのけになりそうでなぁ……」

「そっかそっか、確かに。昔は全国一位二位をレーナちゃんと一緒に競ってたぐらいだもんね」

「おう」


 またハッゲが戦うところ、見たいなぁ~。料理が一段落したらまたやってくれるかな? そういえばPvP大会とかあるし、ワンチャン出てくるかも!


「はいは~い。やっとレベル45になったエリスちゃんが登場で~す」

「お、来たか。リンネなら寝ちまってるぜ、ほら」

「あ~……良い寝顔だわ~。じゃあ、また今度かな~」


 エリスが来た来た。あれ? 45レベルって、エリスも転生してる? まさか?


「それ、前使ってた武器じゃなくない?」

「あ~これ~? 蛇腹剣、鞭みたいに伸びる剣だよ~良いでしょ~?」

「それ振り回して踊るの? 結構怖いね?」

「最初は自分によく当たったナァ~……」


 これは……っぽいな!? 知らないうちにリンネちゃんに接触して、エリスも聞いたな!? 蛇腹剣、もしかしたらダークダンサーとかにでもなったかな?


「まあまあ、私はまたレベリングに行ってきま~す」

「気をつけてね~」

「そうだ、これ食ってけ。さっき作ったヤバイカフリッターだ」

「お、ありがと~~……。おお、HPが2000も増えるのこれ、すっご~」

「タフなサメバーガーが無くてすまんな。じゃあ、気をつけてな」

「いつも助かります~。ごちそうさまでした~」


 行っちゃった。多分、いつもの夜の海だろうなぁ。ローレイのチャンネルを変更して夜時間帯の海岸に行くと、パイレーツゾンビが出現してるんだよね。これが結構レベルが高いもんで、経験値も良い……。この情報はネットでも流れてるから、結構狩ってる人も居て人気レベリングスポットなんだよね。ただ、うみのどーくつダンジョンの方に行くと全然居なくて皆あっちに行かないし、しかも湧かなくなったスポットからぐるっと回り込まないとたどり着けないから、まだ発見されてないんだよね。そのうち誰か見つけてくれるかな~?


「…………リンネちゃんの寝顔見てたら、僕も眠くなってきたなぁ」

「お前は寝過ぎだ。まあ、ちょうどいい機会だし俺も寝るか……」

「ん~。あれ? そういえば他の皆ってもう寝てるの?」

「どんちゃんに1番訓練場でボコられてるみたいだぜ」

「なるほど……。どんちゃんのもふもふで寝ようかと思ったけど、残念だぁ」

「本当に、そろそろリアルで寝とけよ。ディープダイバー症候群になってないか?」

「どうだろ、なってるかも……。ダイブ中の睡眠の方がより深くまで眠れてる気がして、通常の睡眠で満足出来ないような気がする……」

「初期症状じゃないか? 気をつけろよ、不眠症に繋がるんだからな」

「気をつけないと……じゃあ、僕も今日はちゃんとベッドで寝よう……。あっ! そういえば、隣の廃宿をギルドハウスに吸収したんだよね。今は綺麗になってて、各部屋寝室とバスルームが用意されてるって聞いたんだけど……」

「リアちゃんが使ってるみたいだぜ。ちなみに、バスルームでは強制水着着用だぜ。呪いの装備を着けてると利用不可らしい。考えているような機能はなかった、ってやつだ!」

「残念…………!!!! リアちゃんって、オーレリアちゃん?」

「そうだ。リアちゃんって呼んで欲しいらしいぜ。レーナが付けてくれたらしい」

「へぇ~……。僕も呼ぼ~」

「そうしな! じゃあ、俺は落ちるぜ。またな」

「またね~」


 ん~~~~…………。なんか色々考えてたら眠くなってきたなぁ……。どれ、ディープダイバー症候群にならないように、僕もたまには現実に帰って寝ようかな……。ついでだから、明日は起きたら筋トレとかしようっと。


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