早起きは結構お得!

◆ ギルドハウス【ロビー】…………? ◆


『おはよ~♡ 愛しのバビロンちゃんから、毎日プ・レ・ゼ・ン・ト♡』

『バビロンちゃんからの! デイリーログインボーナス3日目【呪われた十字架(素材)】』


 バビロンちゃんの『おはよ~♡』で目覚められる朝、最高か……? いや、うん? なんでバビロンちゃんの声がリアルでも聞こえるように…………?! あっ?! 私寝落ちした?!


『わんっ! (おはよう!)』

「あ、どん太……。おはよう」


 どん太も居るってことは、間違いない。寝落ちしたんだわ……。いつ寝落ちしたんだろ、全然覚えてない。最後は確か、第二訓練場? リアちゃん達のお話を聞いてる最中に眠くなってきて、あ~~……そこか~。そこで寝ちゃったのか~。あれ、誰もいないの? あ、朝の5時だもん誰も居ないか……。お昼寝さんとハッゲさんはいつもいるイメージなんだけどなぁ。オーレリアちゃんもパーティ情報から見たら『睡眠』ってなってる。寝てるの起こすのは可哀想だしなぁ。


「……まだ5時かぁ。何しようかな」

『わうっ? (前のドロドロ、やらないの?)』

「ドロドロ? あ~、アニメイト・フェティッシュか。やろうか」

『わんっ! (やろやろ!)』


 じゃあ早速いつもの3号室を借りよう。ここを使うのもなんか恒例になってきちゃったなぁ。会議室みたいな16畳ぐらいの広さのこの部屋、邪魔にならない程度になにか飾ってもいいかも……。


「確か、レーナちゃん先輩がイヤリングがまともなの無いから欲しいって言ってたけど、あまりにも性能が低いから置いていっちゃったんだっけ? ペルちゃんは指輪と腕輪が良い装備だけど、他の2箇所が微妙なんだよね」

『わんわんっ!! (たぶん、そう言ってた!)』

「イヤリングを3個は作りたいなぁ~」

『わう~(出来ると良いね!)』


 さて、本題。前回はものの見事に失敗したさつりくしゃーちを使ったアニメイトフェティッシュ、今度は前回より遥かにレベルが上がって79もあるし、レベル差は20! そしてさつりくしゃーちの死体は死体安置所が10個に増えたことで6体も入っていて、まっさつしゃーちも2体入ってる。これだけあれば1体ぐらい成功する……はず!

 肝心の装備本体はって言うと、まだギルド倉庫にコモンとアンコモンのイヤリングがゴロゴロと眠ってるからこれを使おうかと。どうせ昨日配る用にって全員取得権放棄したやつだし、使って良いと思う。使っちゃお。一応取り出したよって記録リストに書いておいて……っと。


「それじゃあ、これからやってみようか」

『わんっっ!!』


 まずは何個かある【真珠のイヤリング】から行ってみよう。効果はVIT+1しかない、なんとも微妙なやーつ……。無いよりマシみたいな感じの装備。これがどこまで強化されるかよね~。それでは左手に呪いのコインを持ちまして、棺桶を召喚して蓋を開けてまっさつしゃーちの死体を召喚。装備も右手に持った、ヨシッ!


「行くわよ……。"捧げよ"!」


 さあ、今度こそ成功してよね!


『真珠のイヤリングが呪われました!』

『真珠のイヤリングが変質しました!』

『黒真珠のイヤリングが更なる変質に耐えられません!!!』

『黒真珠のイヤリングが消滅しました』

「…………」

『くぅ~ん…………』


 いや、行ったと思ったんだけどなぁ~……。これって、死体がボスだったりレアモンスターだったりすると、変質が複数回発生するのかな。その度に成功率抽選するの? これだと、失敗する確率がほんの少しでもあると、やる度にドキドキしながらやらなきゃならなくなっちゃうよね、これ……。あれ? メールが届いた、誰からだろう……? どれどれ……アッッ!!!!!


『――――イカれ女~。特別に教えてあげるわね~? そういう、ボスクラスのモンスターは固定の失敗率があるから、絶対成功はしないのよ~? 私なら、出来るけどね♡ by愛しのバビロンより』


 保存。保存保存保存。ヨシ。完璧……。バビロンちゃんから届いたメールとか、絶対保存するでしょ誰だってそうする私だってそうする。ちゅっちゅ。

 それにしても、ボスクラスのモンスターは固定失敗率があるんだ。じゃあ100%作れる保証はないってことなのね、バビロンちゃん以外は。う~~~ん、それならもう、お祈りしながら作るしかないか~! とりあえずテーブルの上に投入予定の装備を並べるだけ並べて置いてっと。そしたら、まずはお祈りだ!


「固定失敗率を回避出来ますように……! 魔神バビロン様のお力を、どうかお貸しください……!」

『パッシブスキル【魔神崇拝】を獲得しました』

『カルマ値の下限が-100されました』

『カルマ値が減少しました(-100)』

『現在貴方のカルマ値は上限は+0、下限は-600です』

「…………これ、後でペルちゃん達に教えとこ」


 お祈りしたら、なんかスキル獲得した~……。こんなことでいいの? って思ったけど、カルマ値がマイナス100っていう本来ならデメリットしかないスキルだし、良いのか……良いのか? いっかぁ! とりあえずこれでお祈りは出来たんだ、後はこの祈りが届くかだよ! リベンジ2回目いくぞー!


「じゃあ、行くよ! 捧げよ……!」

『真珠のイヤリングが呪われました!』

『真珠のイヤリングが変質しました!』

『黒真珠のイヤリングが変質しました!』

『ダークネスパールが呪物化しました!』

『★ダークネスパールが完成しました! おめでとうございます!』


 おおおお~~~~!!!! きたきた、完成したーーー!!! 効果は?! 効果は!?



【★ダークネスパール】(最上級・レジェンダリー・その他アクセサリー・空きスロット1【○】)

・【呪】魔術攻撃力半減

・斬属性攻撃強化+1.1倍

・突属性攻撃強化+1.1倍

・空き

 強化不可・重量0.01kg



 ゲソピの真逆みたいな性能してるなぁ。デメリットがそこまででもない分……いや、魔術攻撃力半減は十分デメリットか……。攻撃力上昇量は抑えめだけど、これはゲソピと違ってカードスロットがあるのが大きいね! その分って考えたほうがよろしいかなぁ。これは、私は使えないし……。ペルちゃん要るかなぁ?


『わうっ!! (出来た!)』

「うんうん、出来たぞ~! よーし、この調子で残り5回……。壊れないと良いけど……」

『わうっ? (次はどれにするの?)』

「今度は、ちょっと調子に乗ってまっさつしゃーちとイヤリングで行くかー!」

『わんっっ!!』


 よし、この流れで続け続けー! 次はまっさつしゃーちを真珠のイヤリングで行くぞー!


「捧げよ!!」

『真珠のイヤリングが呪われました!』

『真珠のイヤリングが変質しました!』

『真紅のイヤリングが変質しました!』

『クリムゾンパールが呪物化しました!』

『★クリムゾンパールが完成しました! おめでとうございます!』

「おおおおお~~~~出来た~~~~!!!!」

『わうわうわうわう~~~♡』


 来たぞ来たぞ、今度はどんな――


『強い思念により、呪いの泥がまだ残っています!』


 こ、これは?! まさかもう一回投入が可能って、こと?!


「え、え、どうしようどうするどん太!?」

『わんっ!』

「あっ!?」


 テーブルに並べておいた、投入予定のアイテムをどん太が勝手に投げ入れたー!!! 今、何入れたのどん太!?


『ウィッチブルームが呪われました!』

『ウィッチブルームが変質しました!』

『ウィッチブルーム・真紅が変質しました!』

『ウィッチブルーム・真紅の海が呪物化しました!』

『★ウィッチブルーム・真紅の海・クリムゾンが完成しました! おめでとうございます!』

「おおおおお~~~~やるなぁどん太ぁ~~~~!!!!」

『わうわうわうわう~~~♡』


 リアちゃんの武器を新しく作っちゃったか~! リアちゃんはほうきコントロールでほうきを小さくすることが出来るから、予備でもう一本持っておくことが出来るんだよね。『ほうきは両手武器』なんだけど、片方潰れたほうが『予備:なし』ってなってたから、こっちに用意しておけるってことね! 思い切って投入したの、偉いぞどん太~♡ じゃあ性能を見てみようか!




【★クリムゾンパール】(極上・レジェンダリー・その他アクセサリー・空きスロット1【○】)

・【呪】自身の全ての状態異常耐性-20%

・【呪】外すには浄化が必要

・敵への全ての状態異常固定成功率+20%

・水属性攻撃無効

・空き

 強化不可・解除不可・重量0.01kg



【★ウィッチブルーム・真紅の海・クリムゾン】(極上・レジェンダリー・ほうき・空きスロット2【●○○】)

・【呪】水魔術発動不可

・【呪】物理攻撃時、100以上のダメージを出すと自身が【即死】する

・【呪】物理攻撃時、10以上のダメージを出すと自身が【重篤な出血】状態になる

・【呪】カードを取り外せない

・火魔術威力強化【+1.50倍+0.0倍】

・【まっさつしゃーちカード】MP回復速度+150%

・空き

・空き

 ――――まるで血の海だぜ……。

 強化可能・重量0.9kg



 うわぁ……。クリムゾンパール、これは私が着けさせてもらおう。私は状態異常耐性が100%なんじゃなくて状態異常無効だから、出血と火傷になる可能性が20%増えるだけだね。状態異常耐性が100%下がろうが10,000%下がろうが私に状態異常は2個しか通らないよ。ボス耐性ってのはそういうものなんですよぉ! これは学校で暇なときに公式HPで確認したから間違いない。そうじゃないとボスの即死耐性を100%下げたら即死通ることになっちゃうからね。そんで水属性無効! これは偉い! ヤバイカとかからの直撃事故が減る!

 そんで何このほうき、やっばぁ……。物理攻撃をうっかりしたらほぼ即死じゃん……。でもリアちゃん、物理攻撃0%だしなぁ……固定ダメージの1しか出ないんですよ……。これ、使って大丈夫なやつだぁ!!! それに呪物化したら刺さってるよ、まっさつしゃーちが!! いやもしかしたら、まっさつしゃーちから出たほうきだったから、元々刺さってた? ううん違う、呪物化前には最後にクリムゾンって付いてないから呪物化して刺さった! でも、外せないんかぁ……! そこは呪いの装備だなぁ毎度毎度……。それにしてもこのほうき、真紅クリムゾンって馬鹿みたいな名前になったな……。カード刺した組み合わせでネタな名前の装備が作れそうだわ。


「良い装備だった! これは着けさせてもらおう! こっちはリアちゃん行きね~」

『わんわん! (良かったね! ね? ね!)』

「…………撫でて欲しいのか! わかりやすい奴め~~よしよしよしよしよしっ!!!」

『わうわうわうわうわうっっっっ♡』


 さて次は……。レーナちゃん先輩もイヤリング微妙だったんだっけ? あれ覚えてないな、自信ないけどまだ残ってるし、作っちゃおう! ダークネスパールが作りたいなっ! 


「よしじゃあ次の作るね! 捧げよ!」

『真珠のイヤリングが呪われました!』

『真珠のイヤリングが変質しました!』

『黒真珠のイヤリングが変質しました!』

『ダークネスパールが呪物化しました!』

『★ダークネスパールが完成しました! おめでとうございます!』


 よし、また完成! いい流れいい流れ、この調子で残りさつりく3個とまっさつ1個行きたいな~~~!! え? 装備? どうせ同じ名前の装備なんだから内容変わらないでしょ…………本当に変わってないよね? 見てみよ……。



【★ダークネスパール】(上級・レジェンダリー・その他アクセサリー・空きスロット1【○】)

・【呪】斬属性攻撃力半減

・突属性攻撃強化+1.2倍

・空き

 強化不可・重量0.01kg



 どどどどどど、どうして変わってるの……?! なんで?! 装備にランダム要素があるの???!!! ベースも、素材も、呪いに使ったアイテムも一緒で、別の結果が出る時があるのか……。これは、今度色々試したいな……。ボスじゃなくて雑魚モンスターを使って実験したいかも。これは、レーナちゃん先輩が使えそうかな? 確か突属性だったもんね、あの射撃スキルは。


「奥が深いな、アニメイト・フェティッシュは……」

『わうわう~~(もっとな~でてっ)』

「う~む、こんなにデッカイワンコがお腹出して転がってると、結構制圧力高いな……」

『わうわうわう~~~……♡』

「次はどれにしようかな~。まっさつ行くか!」

『わうっ!! わふ……わふ……わふっ……? (お鼻がむずむずする!!)』

「捧げよっ!!」

 

 さて、泥化まではとりあえずしたんだけど……。やば、何を投入するか決めてなかった。何にしようかな~……。


『……くしゅんっっ!!!! (わぁあああ!!)』

「あっ!?」

『わうっ?!? (あっ!!!)』


 今、私の目の前で……。一瞬、世界がスローモーションに、なりました……。

 くしゃみをして頭を大きく振ったどん太、机に激突して装備が宙に舞った……。そして作り出した呪いの泥の中に、腕輪が見事に…………入ったァーーーー!!!


『銀のバングルが呪われました!』

『銀のバングルが変質しました!』

『赤いバングルが変質しました!』

『クリムゾンバングルが呪物化しました!』

『★クリムゾンバングルが完成しました! おめでとうございます!』

「…………やったなぁどん太~」

『くぅぅぅぅ~ん……(やっちゃった、ごめんなさい!)』

「まあまあ、成功したし…………あれ? 今度は追加投入出来ないんだ」

『わうぅ~ん……』


 そして出来上がりました、クリムゾンバングルです!!! うーん、さっき武器を投入したら結構強かったから武器にしようかと思ったんだけど、こうなっちゃったか~。まあ仕方ない! 性能見せてみい!



【★クリムゾンバングル】(極上・レジェンダリー・その他アクセサリー・空きスロット1【○】)

・【呪】自身の全ての状態異常耐性-20%

・【呪】外すには浄化が必要

・敵への全ての状態異常固定成功率+30%

・火属性攻撃無効

・空き

 強化不可・解除不可・重量0.1kg



 おおーーー今度は火属性攻撃無効が付いとるーーー!! さっきも言ったけど、耐性じゃなくて無効ってことは、耐性を下げられても効かないのだ! これはデカい、とてもデカい! もう着けた! へっへっへ……! これで火と水が無効、状態異常固定成功率が50%アップだ~! 無効じゃない限り、相手の耐性を50%で無視して状態異常を通す! ひっどい装備だなぁ! 呪い装備最高~~~!!!


「良いのが出来たぞどん太~~~♡ えらいえらい、災い転じて福となすとは言ったもんだぁ~♡」

『わう、わうっ?! (怒らない? 怒らない?)』

「怒らないよ~~逆にいい結果になった~~!」


 さあ、さあさあ! この調子で残り3匹のさつりくしゃーち、行ってみようかぁ~!! 今度は防具、防具がいいな! 防具に★付きのやつが少ないもん、全身レジェとかやりたいわ~~~!!!


「捧げよ!」

『魔術師のローブが呪われました!』

『魔術師のローブが呪いに耐えられません!!!』

『魔術師のローブが消滅しました』

「…………次! 捧げよ!」

『魔術師の帽子が呪われました!』

『魔術師の帽子が呪いに耐えられません!!!』

『魔術師の帽子が消滅しました』

「はぁ~~~~?! 次!!! 捧げよ!」

『レザーブーツが呪われました!』

『レザーブーツが呪いに耐えられません!!!』

『レザーブーツが消滅しました』


 どうしよう…………私は今、冷静さを欠こうとしています。

 精神的にダメージを受けたり、何か辛いことがあった時、並の悩みはたちまち解決するライフハックを……。実行する時が来たのです。そう、今がその時なのです。




◆ 華胥の夢の宿【101号室】 ◆




「どん太さん、ありがとうございます……っ!!!」

『わうっ』

「ぐぇええ……! おのれどん太、おのれどん太ァ……!」


 リアちゃんを吸おうとして部屋に入った途端、どん太にやさしーくソフトタッチでのしかかられた。もふもふに埋もれて、リアちゃんへの接触が叶う前にどん太に取り押さえられてしまった。おのれどん太、何時からリアちゃんのボディーガードをするようになったァ……!! 私が、ご主人さまだぞォ……!!!!!


「お姉ちゃん! お風呂の後だけにしてくださいって、言いましたよねっ!!!」

「うぅぅぅううぅぅぅうう…………!!! だってぇ……!」

「だってじゃありません! もう、守ってくれなかったら私、私……えっと……どうしようかな……っ……?」

『わんっ!! (ぱんち!)』

「パンチは可哀想ですよ?! でこぴん! でこぴんします! とっても痛いのを、遠慮なくやりますからねっ!! いいですねっ!!!」

「…………(どっちに転んでもご褒美では?)はぁ~い!!!」


 なんと、ルール違反をしたら叱ってもらえる上にでこぴんして貰えるらしい。これで吸ってから怒られてでこぴんだったら、ご褒美フルコースじゃん。すげえ! どん太、ナイスアシストじゃん!


「それより、あの、おはようございます……」

「おはよう、ございます!」

『わんっ!!! (おはよ~!)』

「前もふらふらの状態で、へんたいふしんしゃ行動をしに来ましたけど、また何かあったんですか?」

「…………さつりくしゃーちの死体を、3連発で無駄にしたァ……」

「あ、辛い……。今度からは、辛いことがあったら頭を撫でてあげますから、吸わないでくださいね……よしよしっ……」

「あ~~~…………」

 

 どん太に押さえつけられながらリアちゃんに撫でられるこの光景、他人に見られたらなんか色々と終わるなぁ……。いやでも、幼女のよしよしってどうしてこんなに効くんだ……。胸がすーーーっとしますよぉ……!!!


「あ、そうだ。はいプレゼント」

「えっ! いいのですか? ありがとうございます!!」

「うんうん。火属性魔術の威力が上がるけど、物理攻撃をすると死ぬほうきだよ」

「物理は、死んでるので……。死なないですね……」

「水属性魔術を使う時は、持ち替えて使ってね」

「持ち替え! 臨機応変に活用します、ありがとうございますっ!! えっへへ……。これで、気に入らない奴をみんな、焼いちゃいましょうね……!」 


 とっても悪い、良い顔してらっしゃる。まあまあ、気に入ってくれたようで何よりです。


「――あら、こちらに居ましたのね! おはようございます、リンネさん!」

「え? ああ、ペルちゃんおはよう~…………」

「…………リアちゃん? こういう時は、全力で魔術を使って攻撃してよくってよ?」

「ちょっと?」


 ペルちゃん? おはようの瞬間から色々と察して的確に助言するのやめてもらえる? リアちゃんも冗談だよね? リアちゃんの大魔術食らったら、さすがに死ぬよ?!


「そうなんですか?」

「そうよ。変態に遠慮しては、変態はつけあげるだけです。粛清なさい」

「ちょっと???」

「じゃあ、試しにこれで! ぎゅーっとして……! スプラッシュショット!!!」


 アッ、本当にやりやが――――ぶべべべべべ……!!


『水属性ダメージを無効化しました』

「わ、結構水出るんですね、このスキル! ごめんなさい!」

「あら、ノーダメージ……? 水属性はノーダメージみたいですから、今度から水は全力で出してよくってよ!」

「よくないよ~~……ダメージないけどびちょびちょだよ~~~」

「これに凝りたら反省なさいな」

『わんっ! (そうだそうだ~! お腹減った~!)』

「はぁ~い……。ごめんね、リアちゃん。次は吸わせてね」

「え、はい、え、え?」

「もう一発行っておきなさいな」

「はい!!! スプラッシュショット!!!!」

『水属性ダメージを無効化しました』


 ぶべ、ぺっぺ……! なんてことをするんだぁ、私はただ、ちょっとでいいから吸いたかっただけなのに、吸わせてくれぇ……あ、そうだ。思い出した。


「ぶへっ……。うぇ~……。そうだペルちゃん、これあげる……」

「え? この流れで? 平常運転がすぎませんこと?!」

「ちょうどいい感じのが出来たから、あげようかと思って」

「まあまあ! これは、これは凄いですわね……。本当に、よくって?」

「昨日のコモンのイヤリングと、さつりくしゃーちを適当に組み合わせただけだから~」

「ありがとうございます! 感謝致しますわ~~!!! まあまあまあ、嬉しい~~~~!!! 今度、また良いアバターが出たら差し上げますわね?!」

「え、それは流石に……」

「良いんですの! ね、リアちゃんにも何か着せましょうね~」

「わわ、私はこれで、十分ですから!」

『わんわんっ!! (いいな~ ご飯欲しい! お腹減った~!)』


 ペルちゃんにさっき出来た、魔術半減と斬突強化のダークネスパールを渡して置いた。覚えてる内が良いもんね、こういうのは。それにしてもどん太、お腹すいたか~……。でもまだハッゲさんは居ないしなぁ。そういえば【食材アイテム】はモンスターを倒した時に一定確率で手に入って【食材】の専用タブに入るみたいだけど、これってそのまま与えても良いのかな?


「おら、このヤバイカでも食ってな」

『わうっっ!!!』


 おーおー……。私の頭上でばりばりもしゃもしゃ食っとる……。と言うかいつまで乗っかってるんじゃコイツ!


「どん太、そろそろ降りな」

『わふ……!!!』


 やっと開放された。ふぅ~……。ヤバイカ、食材から取り出すと目の所がバッテンになってて可愛いなコイツ……。まあ、どん太の餌なんだけど……。


「もう一杯?」

『わんっ!!!』

「よく食べるなぁ……。そのデカさだもんねぇ」

『わふっ……わふっ……』

「丸ごと行きますわねぇ……」

「丸ごとバクっと行ってますねっ! すごいです」


 おーおーいっぱい食べてデカくな…………ったら困るから、筋骨隆々で逞しくなるんだぞ~。デカくなるな、これ以上デカくなるな……。

 とりあえずペルちゃんが来たし、後はレーナちゃん先輩が来たらうみのどーくつダンジョンのボスの攻略かな~? どんなボスが出てくるんだろ。



『――――07XB785Yさんがログインしました』



 あれ? えっ? 今日仕事じゃなかったんですか、レーナちゃん先輩?!


「あ、あら? わたくしの勘違いだったかしら……? 来ましたわね、レーナさん」

「来た、ねぇ」

『(おはよう。どこ~?)』


 あ、個人メッセージ来た……えっと、返信は……。このタブの、このチャット欄かな?


『(おはようございます、今ギルドハウスの宿エリアに居ますよ。今日仕事じゃなかったんですか?)』

『(ニュース、見てない? 大雨で、川氾濫。それで、行けなくなった~)』

『(え?! レーナちゃん先輩の家、大丈夫なんですか?!)』

『(私は高台に家があるから平気~。やることないから、来ちゃ~)』

「大雨で川が氾濫して、仕事に行けないから休みだって」

「あら、あの大雨でってことは、大阪京都の方面なのかしら……大丈夫、でしょうね。ログインしてくるぐらいですし」

「高台に家があるから大丈夫だって。やることがないからログインして来たって! じゃあ、いっぱい遊べ――」

『最後通告。空腹を検知、食事をなさってからまたログインなさってください。30分後に強制ログアウトになります』

「…………そういえば、ご飯食べてない」

「あらあら、寝落ちしていましたものね。ご飯を食べないと強制ログアウトになりましてよ? 食べていらっしゃいな」

「は~い……じゃあ、また後でね。どん太、リアちゃんもまた後でね」

『わんっ!! (待ってるよ!)』

「はいっ! 朝食、いってらっしゃいませ」


 レーナちゃん先輩がせっかく来たのに、ご飯食べてからじゃないとダメなのか~。というかいきなり最後通告? あ、重要メッセージのタブに注意と警告も入ってるや。寝てた時か~……。

 じゃあとりあえずレーナちゃん先輩に『ご飯食べないと強制ログアウトみたいなんで、行ってきます』ってだけ送って……。よし、行ってこよう。朝ごはんを食べに!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る