うみのどーくつダンジョン・6 ~黄金、再び~

◆ 自宅 ◆


「――――次のニュースです。昨晩から降り続く大雨の影響で京都府の鴨川が増水し、20万人に避難指示が――――」


 これかぁ……。レーナちゃん先輩、これの影響で仕事に行けなくなってるんだなぁ~……。あ、トースト出来た。今日はミニサラダとコーンスープ、バターを塗ったトーストを頂きま~す。ん~~……美味しい……。美味しいんだけど……。


「――――では、今後の天気を見ていきましょう」

「(カリッ……)」


 テレビニュースと、私の咀嚼音、家電がたまに自動で動く音、こんな立派なマンションに居るのが私でいいのだろうか。うーん明日は東京、雨か~……。月曜日には上がるみたい。ご飯は、引き籠もれるだけの食事があるね。大丈夫。外に出なくて良い……? なんだろう、スマホに通知が届いた。真弓からだわ。


『大変ですわ! お昼寝さんがログアウトしていますのよ?! 朝にログアウトしたことなんて、今まで一度もありませんの! この大雨で被害に遭われているのではないか、心配ですわ……』


 そりゃ重大な事件じゃないですかぁ……?! え、お昼寝さん、大丈夫かな? 朝の入浴もして行っちゃおうと思ったんだけど、やめた方がいい? 早く戻って詳しい話を聞かないと……? また通知来た。あっ、メルティスオンラインのフレンド機能からでもメッセージ飛ばせるんだ。


『お昼寝は北海道住みだから関係ないよ』


 なぁんだ、ペルちゃんの早とちり~。心配して損しちゃったじゃない。でも本当、この大雨で被害に遭ってるギルドメンバーさんが居ないと良いけど……。最近異常気象多いなぁ。


「――被災地域には既にパワードレスキューが出動しているようですね」

「そうですね。バーチャルダイブシステムの応用で、危険な地域にはこうしてパワードアーマーメカが出動出来るようになって、救助に出たレスキュー部隊が亡くなる悲惨な事故も滅多に聞かなくなりました」

「技術の進歩は凄いですけど~。大雨で川が溢れないように工事したほうが安そうなのに、なんでやらないんですか~?」

「やってはいるんですよ。しかし今度は河川堤防を上げすぎると水の逃げ場がない。河川堤防よりも低い位置にある建物は異常降水によって浸水してしまう。大きな水たまりが出来てしまうんです」

「遊水地に河川の水を送るための装置も老朽化が進み、取り換え工事が間に合っていない地域も――――」

「でも~――――」

「それには予算が――――」

 

 ん~ニュース番組で難しい討論を始めるこの現象、ニュース番組なんだからニュースをやって、こういうのは解説系の番組に回せよっていつも思う……。朝の顔としてアイドルとか評論家とかを出したいのはなんとなくわかるけど、ニュースを見たいのにアイドルばっかり映されるとイライラする……。


「次のコーナーです! 可愛い子犬の赤ちゃんが登場します!」

「わぁ~可愛い~! 可愛い服を着せて貰って、まるで天使みた――――」


 アンチエンジェルシステムが作動しました。テレビを消します。はい、ごちそうさまでした。最後の最後で嫌な気分になりました。きっと全国的にも私だけでしょうね、こんな些細な事でイラッとするの。なんでこんなに天使嫌いなんだろ。でも嫌いなものは嫌いだし。無理なものは無理。さて、さてさて。戻りますか~!


『バイタルチェックスキャン開始――問題ありません』

『本製品はエコノミークラス症候群対策に、定期的に寝返りを取らせるために自動でベッドが動きます。ご了承下さい』

『バーチャルダイブシステム起動……ゆっくりと、目を閉じてください』

『バーチャルシンクロ開始……完了』

『ようこそ、仮想現実空間へ。メルティスオンラインのプレイがリクエストされました』

『メルティスオンラインへアクセス中……リンク完了』


 この無機質な女性のボイスでの状況の読み上げ、結構ドキッとするよね。なんか『あ~始まる~仮想現実行くんだ~~』ってワクワク感がある。


『おかえり~♡ 愛しのバビロンちゃんから、ア・ド・バ・イ・ス♡』


 ア゛ッ゛!!! バビロンちゃんの声の方が好きッッッッッ!!!!!


『魔術にも相性がいい組み合わせがあるのよ~? イカレ女の魔術にもいい組み合わせがあるから、暇な時に探してみなさいな~♡』


 バビロンちゃん……。優しい……。好き……。どうしてこんなに奇跡的な可愛さのゴスロリ魔神が生まれたんだろ、本当にバビロンちゃんをデザインしてくれた人、感謝です……。感謝しかない……。




◆ 華胥の夢の宿【エントランス】 ◆




『わふっ! わんわんわんわんっ!! (おかえりおかえりおかえり!!)』

「…………どん太、何そのお出迎えの方法は」

「あら、帰ってきましたのね! おかえりなさいまし!」


 帰ってきて早々に、どん太がお座りからの前足パタパタでお出迎えしてくれた。近寄った途端にバタッと横になってお腹撫でて欲しいよ~のポーズ。たまには王者としての貫禄を見せてくださいよう、どん太くん……。まあ可愛いからいいっか。


「ほれ、どこだ? ここか?」

『あうぅぅ~~~~♡』

「どん太さん、メロメロですね~……。おかえりなさい、お姉ちゃん」

「ただいま~。リアちゃんも撫でられたい?」

「ん~~~~っっ!!! ん~~~~…………!!!」

「撫でてあげよう。ほれほれほれほれ…………」

「私も撫でる~……」

『わおわおわおわおっ……♡』

「はわ~……」

「朝から愛情たっぷりですわねぇ~……」


 ついでにリアちゃんもなでなでしておこう。撫で甲斐のある従者だなぁ君たちは……。もう私よりだいぶ? いや遥かに強いだろうに、私が主人のままでいいのかね。


「どん太~。私より強いのに、言う事聞いてお利口さんだね~」

『わんっっっ!!! (ご主人のおかげだよ! 強くなったのは! 一番偉い人!)』

「いい子だわ……」

「わ、私も! お姉ちゃんの言う事聞いて、なでなでして貰えるので!」

「…………いい子だわぁ」

「んっ……いい子。そしてよく、食べる」

「ヤバイカをあれから十杯は食べましたのよ」

「わぁお……」

『わうわう(おやつがわり!)』

「おやつ代わりだそうです……」

「「ええ……」」


 全く、いい子過ぎて困っちゃう。こんなのがリアルでも居たら飼っても――――食費とか維持費がヤバそうだから無理だわ。あのマンションでも狭いぐらいだよね、飼えない飼えない。無理だわ~……。改めて、仮想世界だからこそって思う所ね。最高だわ。


「今日は、何階から開始しますの?」

「宝箱落ちてる、3階?」

「さつりくしゃーち狩りをしながら行くのも手ですよね」

「インベントリを整理しましたから、装備は20個ぐらいまでなら……重くなければ、多分……」

「私も~。昨日はインベントリ整理忘れたの、凄く痛かった。とても申し訳ないです。ごめんなさいでした」

「謝るようなことでは……あ! そういえば装備で思い出しました、これどうぞ!」

「これ、イヤリング……? え゛、強……良いの?」

「斬半減ですけど、大丈夫ですか?」

「斬属性、ないから。嬉しい、ありがとっ!!!」


 うみのどーくつダンジョンに行く前に、レーナちゃん先輩に突1.2倍のダークネスパールを渡しておいた。これであの超威力の射撃スキルが、更にダメージ伸びるんだから頼もしい。


「いえいえ、こちらこそ。この前のアバターのお礼です!」

「そういえば、そのパラソルのままということは、片手杖系を持っていますの?」

「そう! この前PKした人たちから巻き上げた髑髏の杖+7を使ってるよ。他にも強化済みの装備が色々あったから、リアちゃんとかにも着せてる」

「着てますっ! ちゃっかり、です!」

「ちゃっかり~」

「そういえばPKシステムにテコ入れが入ったようですわ。リアルタイムアップデートで、今朝変更になったようですわ。レベル30まではPKされても装備が奪われないように調整されるそうで、露骨な初心者狩り対策ですわね。悪質PKを繰り返していると、街や都市のガードのNPCに攻撃されるようになるそうですわ。一定条件を下回るまで死亡しないと、これは解除されないそうですわ」

「良いと思う~。初心者で装備無くなって、引退は辛いから」

「私、結構やっちゃったけど大丈夫なのかな」

「ほとんど返り討ち型のPKですし、問題ないのではなくって? 売られた喧嘩を狩った・・・までですわ」

「そー。もんだいなーい」

「じゃあ、良かった……」


 PKシステム、ちょっと変更になるんだ。良いシステムだと思う……けど、今思いついたけどレベル30で止めて、レベル31の人を狩るようなPKをすれば負けてもペナルティ無し、勝ったら装備奪えるのか。こういうのが悪質PKになるのかな。それが原因で街に入れない、追い回されるようになったらプレイ困難だよね。一定数死ねばなくなるペナルティみたいだけど、多分この死んだときに逆に装備没収とかありそう。上手く調整されてると良いね。


「では、今日は3階層から行きましょうか」

「3階層から~~」

「さつりくしゃーち狩りは?」

「「する!!」」

「というわけで、どん太、リアちゃん。今日もお願いね?」

『わんっっっ!!! (まかせてね!)』

「わかりましたっ!」

「今日はタフなサメバーガーが無いから、注意して行こうね~」

「あっ! そうですわね、保険無しでしたわ! 気をつけないと」

「赤いのが出たら、狙撃。ペルちゃん、どんちゃんにアイギス。リアちゃん、回避専念。どんちゃん、頑張って走る。リンちゃんは…………私、抱っこ」

「抱っこ! 頑張ります!」

「一番良い役ですわね……?!」

「黒いの、全部リンちゃん任せだから。赤いのは、他が頑張る。いいバランス」

「どん太がずっと走ってるから成り立つ狩りなだけで、影のMVPはどん太なんですよね実は……」

「「「確かに」」」

『わう? わんっっ!!! (走るとご飯貰える? 頑張る!)』

「よしよし、今日も頑張るんだぞ~……」


 さて、方針が決まった所で、現在時刻は7時10分! 出発しましょうか。今日は3階層から! いざ、うみのどーくつダンジョンへ!




◆ うみのどーくつダンジョン【7階層】 ◆




 凄いよ。何が凄いって? 今日はね、出が悪い。王者の証0個、勝者の証が3個。しかも銀箱が最高で、3,4,5,6,7階で合計さつりくしゃーちを14体倒して、3個。全部木の宝箱だよ……。


「物欲センサ~……」

「物欲センサー?」

「昨日まではレベルを上げるのが目的だったでしょう? 今日はどちらかというとレベル上げより宝箱目的で、レアアイテムが欲しいと思って来ましたわよね。こういう時に限って出ない、これを物欲センサーに引っかかった、なんて言いますわ」

「実際にはない。でも、よく引っかかる……。私達が生まれてない時から、存在する言葉」

「そんなに古くから……」


 ちなみにここまで狩って私達はレベル80。どん太はレベル45、リアちゃんがレベル35。なんだかレベル79で全員経験値ゲージの伸びがとんでもなく渋くなった。やっと80に上がって、レーナちゃん先輩もギリギリ80に上がった感じ。しかも80から81は全然経験値が伸びない。ここからは要求量が桁違いになるみたい……ここが、壁なんだろうなぁ。


「話が変わるのですけど、今もレベルが全然上がりそうにないですけれど、レベル60からの伸びも悪かったですわね」

「ハッゲも言ってた。60から伸びないって、それが1週間前ぐらい?」

「え、今ハッゲさんってレベルいくつなんですか?!」

「70。料理作るだけで上がってズルい。でも私、料理下手。ハッゲは作れて羨ましい」

「わたくしも、料理はしたことがありませんわ……」

「…………私も、あんまりしないかも」

「出来る人がやればいいんですわ?!」

「そう、出来る人が出来ることをすべき」

「そうですね、そう……きっとそう……」

「私もしたことないです! えっへへ、一緒ですねっ」

「リアちゃんもしたことがありませんのね、あっ! ハイパースラッシュ!!」

『ペルセウスが【ハイパースラッシュ】を発動、爆天シュート、ヒトデブレード!(Lv,60)に10,148ダメージを与え、撃破しました。経験値 19,950 獲得』

「ナイス~」

「さすがペルちゃん、凄い反応速度」

「ふふんっ♪」


 やっぱり何レベルかごとに壁がありそうなんだよね。こうして壁を作ることによって、次の狩り場次の狩り場って移動するのをやんわり勧めてるんだろうなぁ~。あ、ペルちゃん爆速で吹っ飛んでくるヒトデの叩き潰し、ご苦労様です~。7階層はこのヒトデが飛んできてウザいんだよね~。だいたい明後日の方向に飛んでくんだけど、たまーに的確に飛んでくるからメンドイ。


『わうっ!!!! (来た、赤いやつの臭い!! ピカピカ!!!)』 


 あ、来ちゃったかぁ~~~……。赤いやつ、まっさつしゃーちが出てきちゃったかぁ~。クリムゾンブラスターのピカピカ、ウザいよね~どん太。


「アイギス!!」

『どん太が【ペネトレイト・3】状態になりました』

「ひ、光ってます!!!!」

「え?! もう撃ってくるの?!」

「抱っこして。よっこい、ショット…………ッッッッッ!?」

「レーナちゃん先輩、オヤジギャグ言ってないで、早く撃たないと!」

「ち、ちがう、光ってる、光ってる!!」

「だから、クリムゾン――――ええええええええ~~~~~~~?!」

「何が起きてますの?! え、ええええ~~~~~~?!」


 どん太、ピカピカって、こういうこと?! 嘘、嘘でしょう?!


「「「金のシャチホコ(じゃん)(ですわ)(だ~)!!!」」」

『キュァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!』

「撃ってくる!! タイミング悪い、次……!」

「どん太、左回りで避けて!」

『わんっっっ!!! (ピカピカ、怖いよ~~~!!)』


 まっさつしゃーちが、金ピカなんですけど!? 金ピカのまっさつしゃーちだよ!? こんなのってある?!! ボスまでレアモンスター化してるって、こと?!


有象無象ラウダ・ナウダ黙れサレナ!!! 永遠にエゥレス!!! 無音の白ミュートブリザード!!!!!』


 リアちゃんが覚えたての龍言語で、龍魔術撃った! スッゴイ格好良い詠唱だったけど、なんて言ったのそれ?! ミュートブリザードだけはわかった、ブリザードってことは、氷系のやつね! ブリザードクラッカーの上位互換カナ?!


『オーレリアが【完全詠唱・無音の白ミュートブリザード】を発動しました』

『Weak!!! ☆4まっさつしゃーち(Lv,111)に6,771ダメージを与えました。空間凍結に飲まれました』


 ブリザードクラッカーの上位互換にしては、静かな魔術だなー……と思ったら、うわぁ……。凄い、凄いな……こうすれば、実質凍結が効くのか……。

 まっさつしゃーちの居る空間ごと、ガッチガチに凍結してる。まっさつしゃーち自体は凍ってないけど、周囲の空間が凍っちゃ、動けなくなるか……。でもこれ、多分割って出てくるよね。空間凍結の氷にクラックが入り始めてるもん。


「あ。口、開いてる。完璧。終わりよ」

『07XB785Yが【デッドエンドショット】を発動しました』

『クリティカル!!! Weak!!! ☆4まっさつしゃーち(Lv,111)が58,912ダメージを受けました』

『07XB785Yが【クールタイムリセット】を発動、【デッドエンドショット】を発動しました』

『クリティカル!!! Weak!!! ☆4まっさつしゃーち(Lv,111)が59,224ダメージを受け、撃破しました。経験値 6,666,666 獲得』


 …………なんという、完璧な討伐。1回目は長時間戦って賭けに勝って、2回目は油断が原因で全滅してからなんとか撃破。今日は、この、何? 攻略方法がわかったボスって、こんなにあっさり死ぬもんですかね……。しかも、誰もレベル上がらないし。え? これでようやっと半分溜まったの? 経験値……。嘘でしょ……?


「完璧でしたね! 無音の白ミュートブリザード、昨日お姉ちゃんが寝てから色々試してたんです。うまく行きました!」

「完璧~……攻略方法がわかって、攻略方法が確立してれば、簡単~」

「こんなにあっさりと……。アイギス」

『ペルセウスが【魔盾アイギス】を発動、【ペネトレイト・10】状態になりました』

『わうわうわうわう、わお~~~~~ん!!! (みてみて、凄いよ!! ぴっかぴか!)』

「お、おお……!? おおおおおお~~~!!!」


 そうだ、あっさり倒したけど金シャチだよ?! 絶対宝箱凄いって思ってたけど、出たよ。出ましたよ、来ました来ました!!


「宝石の宝箱~~」

「ジュエリーボックスですわ!」

「それ正式名称?!」

「宝石箱~~~」

「宝石箱のほうがスマートですわね……。正式じゃないけれど、そう呼びますわ!」


 出ました、宝石箱ですっっっっっ!!!!! あの時宝石箱が出たのは、もう完全にビギナーズラックって奴だったんだと思う。今日の木! 木! 銀! 木! みたいなドロップが普通なんだろうなぁ……。だからこそ、今回の宝石箱でこんなに高揚感が得られるんだろうし、やっぱり上手く出来てるのよ! プレイヤーを楽しませるようにね! そりゃそうよ!


『わうわう~~!!♡ (ソーセージ出たやつだ!)』

「どん太、またソーセージが入っている保証はないのよ」

「今度入っていたら、どんちゃんには申し訳ないですけれど……」

「じゃんけん~~~」

「じゃんけん……? じゃんけんとは、なんですか?」

「ああ、リアちゃんの世界ではないの? グー、チョキ、パーで勝ち負けを決めるやつ」

「あ! 三すくみですね、ありますよっ! 平和、戦争、飢饉です」

「物騒ですわね?!」

「結構リアリティがある三すくみ……」

「な、かなか……」


 この世界のじゃんけん、物騒だね……?! まあでも、なんとなくわかる気がするわ、その三すくみ……。


「じゃあ、開けよう!」

「ぱんぱかぱーんですわよ!」

「ぱんぱかぱーん……リアちゃん、開けてみる?」

「えっ、良いんですか……?」

『わんわん! (開けちゃえ! そーせーじちょうだい!)』

「遠慮せずーぱんぱかぱーんはしてね?」

「で、では! んんっ……ぱん、ぱか……ぱ~んっ」


 恥ずかしがりながらぱんぱかぱーんするリアちゃん可愛すぎか。どん太、前足パタパタしてちょうだいちょうだいしても、入ってるかわからないんだからおすわりして待ってなさい! あったら私がじゃんけんで勝って食わせてあげるから!


「拾って~」

「あれだけ空けておいたのに、もうパンパンですわ!」

「あ、はい!」


 もう二人ともインベントリパンパンなのね。二人共、装備欄に予備の装備とか入れてるからかな。とりあえず私が拾わせてもらおう! えーっと、何々……?


『【?短剣】を獲得しました』

『【?鈍器】を獲得しました』

『【?楽器】を獲得しました』

『【?家具】を獲得しました』

『【?本】を獲得しました』

『【★★まっかなおさかなさんソーセージ・黄金の味、お得用!】を獲得しました』

「「「黄金の味」」」

「どん太さん、食べ物出てますよっ!」

『わぅぅぅううぅぅぅう~~~~~~~!!!! わぅぅぅぅうううぅぅぅぅぅぅううううぅぅうん!!!!♡♡♡♡♡』


 うわ、うわ出た、しかも黄金の味。この前出たやつより遥かにいいヤツじゃん、これ……。虹枠に加えて、【?】のアイコンが金色に輝いてるんだけど。絶対すごいヤツよ、これは……。あ、でもこれ……。


「このソーセージ……虹枠に金アイコンです。他に短剣が虹枠、家具が虹、本が虹です」

「…………負けないですわ。絶対に!」

「絶対欲しい~……でも、それ、大きすぎ……食べ切れなさそう……」

「ちなみに、説明文はこうです」

「「う~わ~~……」」



 【★★まっかなおさかなさんソーセージ・黄金の味、お得用!】(料理・ミスティック)

 あの大人気商品、まっかなおさかなさんソーセージが黄金の味になって登場! そしてお得用サイズ! 全部食べきれば、君も黄金パワーをゲットだ! 開封後はお早めにお召し上がりください。

 加工不可・完食時スキル獲得・開封後制限時間10分・重量10.0kg



「これ人間の食べる物じゃないのでは?」

「10分以内に、10キロ……」

「む~~~り~~~~~~」

「人間の食べる量じゃないですね……。どん太さんなら、どん太さんなら……」

「棄権致します!」

「棄権~~~」

「私も無理かな~~~…………」

『わふっ……♡』

「「「嬉しそう……」」」

「とっても嬉しそうですね……」


 開封後はお早めにお召し上がりくださいってレベルじゃないんだけど。10分以内に完食しないとスキル手に入らないって、マジで言ってるの? 正気じゃないんだけど? プレイヤーに取得させる気ないでしょこれ……。はい、どん太。どん太行きです、確定です。


「どん太、おすわり」

『うぅぅ~~~~わうっ!!! (座った!)』

「お手は?」

『うぅぅぅぅ~~~~わうっ!!! (お手! 偉い? 偉い?)』

「おかわりはどうやるんだっけ?」

『わうわうわうっ!! (左前足!!)』

「ハイタ~ッチ」

『わうんっ!!! (両足でタッチするやつ!)』

「ばーん」

『きゅぅん(倒れるやつだ!)』

「おすわり、待て」

『…………(じゅるっ……)』

「ワンコ……」

「ワンコ~……」

「ワンちゃんですよね……」


 おお、一通り、出来るようになったね。偉いよどん太……。食い物のためなら、お前は何でも出来そうだね……。じゃあ、いい子に出来たご褒美……。受け取るがいい!!


「よしっ!!!」

『わうわうわうわうっ♡ はふ、はぐ、はふはふはふっ♡』


 消えていく。10キロの肉塊が、どん太の腹の中に消えていく……。どうだどん太、黄金の味は美味しいか……? もう半分ないんですけど。そんなに美味しいですか……。うわうわうわ、残り半分全部行った!!! それ、大丈夫なの?! 大丈夫か、どん太だし……。


『どん太のステータスが上昇しました』

『どん太がパッシブスキル【黄金の右足】を習得しました』

『わおぉぉぉん…………♡♡♡』

「黄金の右足……?!」

「黄金の、右足ですの?!」

「黄金の……。右足……。プロサッカー選手に、なる?」

「黄金の右足、ですかっ」


 黄金の、右足……?! ついにお前、サッカー選手になる時が来たか……?! 突破力は凄そうだねぇ……。でも、ボールを口で咥えてゴールを突き破りそうだよね、君…………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る