朝、目が覚めて……

◆ ???? ◆


『長時間のご利用、誠にありがとうございます。午前6時になりました』

『一部のダンジョンがリセットされ、再設定されました』

『大変恐縮ですが、一旦のご休憩を推奨致します』

『警告、強制ログアウトまで残り30分』


 ――――うっるさ……。うわ、顔が良いッッッッッッッ!!!!! スクショッ!!!!!


『~♡』

『~!』

『~♪』


 ――――か゛わ゛い゛い゛っ゛!!! スクショッッッ!!!


「おはようおはよう、ふわぁ~~……。さて、学校に…………」


 あれ、なんで真弓が私のベッドで寝てて、ちびちゃん達が私をペチペチして起こしてくるんだっけ? ん? あ……あ? ああ!?


「ま――――ペルちゃん! ペルペルペルペルペ~~~~ルちゃん!!!!!」

「んぁああ!! あ……? え? おはようござい、ます……?」

「おはよう! 6時!!」

「早いですわね……。いえ、お待ちになって? どうして……。ああ!!!」


 平日に、バビロンオンラインで寝落ちしましたあ!!! うわあどうしよ――――いやまだ6時か。6時なら別にどうとでもなるや……。


「わたくし、朝の用意が大変ですのに! 先に落ちますわね!? 御機嫌よう、また学校で!」

『ペルセウスがログアウトしました』

「あ、あ~……落ちちゃった」


 ペルちゃんの寝顔、良かった。あ、ちびちゃん達は私が起きたのに満足したのか元の部屋に戻っちゃった。おやつ、まだあるかな? ちょっと覗いてみよう。


「お……?」


 おろろ? これ、なんだろう。おやつ入れてる冷蔵庫に紙が貼ってあって何か書かれてる。え~っと……。おお!?


『きぼう:おやさい』

『きぼう:おさかなのおにく』


 あるよ、あるよ……! 前にハッゲさんに貰った、たぶんおさかなのソーセージが……!! それにリアちゃんが食べ残した野菜スティックもあるよ……! ごめんね、残り物で!! さ、お食べ~。手はつけてないからきれいなままだからね……。


『わう? わん! (あれ? 朝から早いね!)』

「おはようどん太~。昨日あのまま寝ちゃったんだ~」

『わふっ? (お散歩行こ?)』

「お散歩か~……。あ、じゃあローレイまでマリちゃんの様子を見に行ってみようか。モッチリーヌちゃんにも会いたいでしょ?」

『わん!! わう……くぅ~ん (行きたい! あ、でも、まだ会うのは我慢したいよう~)』

「そっか~……」


 どん太は早起きだね~。そっか、お散歩行きたいけどローレイはダメか~。なんだなんだ、難しいお年頃か~? 女の子は目を離すとどっか行っちゃうぞ~? もっと構ってやれ~??


「あれ? お姉ちゃんおはようございます。風の日の朝にお姉ちゃんが居るの珍しいですねっ」

「リアちゃんおはよう~。元の世界に戻らずにそのまま寝ちゃってたんだ~」

「元の世界に戻れなくなっちゃいますよ!?」

「え!?」

「なーんて、嘘です!」

 

 おおう、リアちゃん……朝から脅かしてくる……。あ、そうだ。リアちゃんにどん太とお散歩に行ってもらおうかな?


「どんどん、お散歩行きますよ~」

『わうっ!!』

「あ、あれ、今頼もうと思ったのに……」

「いつも行ってますから! ちよちよはもっと早く起きて、朝からどこかで鍛錬してますよ」

「ほええ~~……。みんな朝から熱心だ~……」

「まあ私はどんどんのお散歩中に背中に乗って寝てますが! 朝日がぽかぽか気持ちいいですから~」

『わうわう~~ (はやくいこ~~)』

「はいはい、行きましょうね~。じゃあ、行ってきます!」

「いってらっしゃい~」


 いつもリアちゃんが朝のお散歩についてってるんだ。いつもありがとうねえ~……。じゃあ、おにーちゃんとマリちゃんの様子を見に行こうか。


『ギルドポータルを開きました。ローレイへ転送します』




◆ ◆ ◆




「――マナリアクターはマナタンクから送られる貯蔵マナを燃焼エネルギーにとあるが、これは何故燃焼エネルギーにしなければならないのだ? 直接マナを原動力に動くように、例えばこのように構造を変更してしまえば、エネルギーロスが減るのではないだろうか?」

「それだとマナエネルギーが膨大過ぎてリアクターで生成されたエネルギーによって内部の機関が耐えられない。そのままの状態で利用するのは現状の技術では非常に難しい問題なんだ」

「なるほど。では、マナを仮にだが液体に――――」

『Zzz……(*´ω`*)……Zzz』


 この人達、いやまさかだけど、一晩中これやってらっしゃる……? あ、でもちゃんとご飯は食べた痕跡がある……。おにーちゃんの座ってるテーブルに、食事を終えた食器が並んでるし……。これは、朝食後かな……? 朝食後であってほしいなあ……。


「それは危険だ。だが、そうだな……。仮に、マナを液体化させる方法があれば、それは十分に可能かもしれない」

「問題はマナを安定して液体化させる方法と生成するコンバーターの保護か。それにマナタンクも液体化したマナエネルギー、仮にマナエーテルと呼称しよう。このマナエーテルが万が一にも外部に漏れては重大な問題が起きる。これではいくら強力なパワーが引き出せるとしてもリスクが大きくて安心して使用出来ない」

「マナポーションとかって液体ですけど、あれじゃダメなんですか?」

「「ダメだ」」

「「あ?」」


 あ、やっとマグナさんとマリちゃんが私に気がついた。二人揃って同時に否定してくると、ちょっと凹みますね~……。


「リンネ! 感謝する、マグナ殿と引き合わせてくれたこと、第二の人生を我に与えてくれたこと、マスターリンネは我の恩人だ。マグナ殿、この方が我を導いてくださった導師様だ」

「ああ、名前が同じ他人じゃなかったか。彼女は天才だ、この一晩で私の研究が格段に進んだ。グリムヒルデも更に強化出来そうだ。感謝するよ」

「一晩……。やっぱり夜通しやってたのね! マリちゃんこっち見て!」


 あれあれ、マリちゃんそういえばアンデッド作成で復活してからの、受肉と転生したばっかりの状態じゃなかったかな? それでこんないきなり飛ばして……。むむむむっっ!!!


「な、なんだ?」

「目が赤い、おでこ! 熱っぽい……。ねえ、ちょっと一回落ち着いて深呼吸してみて?」

「我は落ち着いているが……。すぅ~…………はぁ~~…………」

「はい、ちょっとここに座って」

「あ、ああ…………あっ」


 ほら、ふらっふらじゃない! ということはここにあるご飯は朝食じゃなくて夜食、しかも食器がかなり少ないのを見るに大して食べてない! 興奮して没頭して、ボロボロなのに気がついてないじゃないの!


「だ、大丈夫だ。このぐらい生前は当たり前……の……ォ……」

「それに加えて立ちくらみ。マリちゃん、もう体がヘトヘトなんだよ。今一番楽しい時かもしれないけど、今の一瞬だけを取って後の何日かを寝込んで潰したい? それともぶっ倒れて、最悪死んだらまた私が起こせばいい?」

「…………す、すまない。マグナ殿、我は休んでからまた、戻ってくるよ」

「ああ。私は体が頑丈だからな、気がついてやれなくてすまなかった。リンネ、どこか休めるところへ連れて行ってやってくれ」

「おにーーーちゃーーーーん!!!!」

『(*´ω`*)!?』

「マリちゃんが倒れそうでーーーす!!」

『Σ(´∀`;)!?』

「だ、大丈夫、そんなに大声で怒鳴らないでやってくれ、我が悪いんだから、その……」

『m(_ _;)m』


 いきなり任せちゃった私も悪かったけど、おにーちゃん! 任せてって引き受けたんだから、マリちゃんがぶっ倒れる寸前まで放置しちゃ、ダメでしょ! も~~!!


「ええい、みんな悪いです! 私もおにーちゃんに任せっきりなのが悪かったし! おにーちゃんも寝落ちしちゃったし! マリちゃんも倒れる寸前まで入れ込むし! とりあえず、ご飯食べて寝る! おにーちゃん軽く食べられるものをクックさんから貰ってきて、はいお金! ダッシュダッシュ!!」

『ε≡≡ヘ( ´Д`)ノ』

「あ、そうだマグナさん! こんな、超合金マグナメイカーハッピーセットっていうのが送られてきたんだけど、これ、私の知り合いで使いたい人が居たら譲ってあげて欲しいんですけど、ここ置いてっていいですか?」

「どれどれ……。これなら、構わないさ。無駄に広い研究所だ、好きにしてくれ。あ、マリアンヌ。初心者向けの物も入っているぞ? まずは、そうだな。最低でも昼過ぎまで寝てきてくれ。それからにしよう」

「おお……! すぐ……あ、昼まで寝てから、だな。また」

「ああ、また」


 良かった~……。本当に、この寝落ちはマリちゃんぶっ倒れイベントを回避する、神がかったタイミングの寝落ちだった……。ダメだねえ、夜はちゃんと皆休ませないと。特にマリちゃんは夜しっかり休ませよう。マリちゃんは従者アンデッドの中でも転生したてでステータス低い方だし、気をつけないと……。


「201……は、やめておこう……。202号室、ここ自由に使っていいから。あ、壊したり改造したりはやめてね?」

「……破壊や爆発を伴う芸術はもう、や、辞めたから……」

「うんうん……。マリちゃん、今夜ちょっと強い体になるように、レベル上げに行こうか。強いモンスターを倒していくと、私はマリちゃん達を強化出来る力があるのよ」

「それは、凄いな……。わかった、今夜だな。昼からは、マグナ殿と一緒に過ごして構わないだろう?」

「うん。あ、私はえ~っと……月の日から、地の日までの朝から昼まで、違う世界で過ごしているの。だから昼間は私居ないから、気をつけてね」

「違う世界……? と、とりあえずわかった。あ、兵長殿が来たようだ」

『!(*´ω`*)っ』

「おにーちゃんありがとー!! じゃあ、私向こう戻るから、おにーちゃんも203号室辺りで休んでて! マリちゃん、マグナさんの所に行くときはおにーちゃんを連れて行ってからにしてね、変なのに絡まれないように護衛ね!」

「あ、ああ。わかった、何から何まで……ありがとう。リンネは、お母さんみたいだな」

「おか…………?」

『Σ(´∀`;)!?』


 …………これって、母親らしい行動なんですかね? いや、わかんないけど……。ペルちゃんが最初の頃、私に対して確かにこんな感じだった気がする。ああ、つまりペルちゃんって私のお母さんなのでは? なるほど。ペルセウスママ……。いや、ペルちゃんはお母さんってより親切過ぎる愛情たっぷりな友人だね。うん。


「と、とにかく! じゃ、おやすみ! また夜ね!!」

「ああ、ありがとう。また」

『(*´∀`*)ノシ』


 ふう~……朝からどったんばったんだった……。ログアウトログアウトっと……。


『ログアウト処理中です……。お疲れ様でした』

『お疲れ様~~♡ 夜更かしさん♡ うっふふ♡』


 ん゛っ゛……。私も元気になった……。ありがとう、バビロンちゃん! 行ってきます!!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る