ログイン9日目 ~新しい道~

◆ 竜胆天音、私立鹿鳴寺学園【1-1教室】 ◆


「レベル100だよ!? ヤバくない!?」

「あれってチーターだろ? 天下一の予選の団体で当たったが、8秒で全滅だぞ? ありえねえだろ。こっちもレベル100にされてんのによ」

「チーターは即BAN、身元調査まで入って各企業のブラックリスト入り、やるわけなくな~い? ちょっと頭使った方がいいって~」

「マジそれ~。相手が強すぎるのは認めるべき~」

「実際、途轍も無い強さでしたね~……。何が起きたのかわからない内に全滅だから、そう感じるのも仕方ないかもですね~」

「それよりさ、キングキラータイガーのハード行こうよ。あれの死体、1000万で売れるらしいよ」

「え~マッジ~!? なんでそんな高いの~!?」

「なんでも呪物を作ってくれるNPCに持っていくと、最低でもユニーク以上の装備が出来るらしいよ。レジェとかも出るらしいから、皆それ狙いだって。ベリハは2000万だって」

「え~!? ってことは、えーっと……全部限界まで倒したら」

「9000万な。6人で割って1500万――――」


 ――――うるさ~……。眠い~…………。取らぬ狸の皮算用ならぬ、取らぬ虎の皮算用じゃん……。真弓おっそ~……。あ~、あのぐるぐるを作るのに今一生懸命なのかな。早く来ないかな……。雨つっよ……。今日の午後の体育、多分自習だわこれ。

 それにしても、おにーちゃん……。完璧超人って感じがしてつい頼っちゃったけど、おにーちゃんにも限度があるよね。あれは私が悪かったなあ、反省反省……。もう3人目・・・は嫌だからね、気をつけないと。

 どん太も、あんなにモッチリーヌちゃんモッチリーヌちゃんってぴょんぴょんしてたのに、まだ会いたくないなんて……。そういうのも芽生えて来たのか、成長したなあ~。

 リアちゃん、自由だ……。

 千代ちゃんはあんな時間から鍛錬してたんだねえ、いつもご飯! ご飯! なイメージだったけど、努力して――――いや、まだ努力しているところを目の当たりにしていない。もしかしたら努力よりもご褒美のほうが多い可能性があるし……。今度、計画的に朝ログインして見に行こうっと。


「あーちゃん……おはようございます……」

「おは……う~わ。ドリルが低品質」

「…………高品質になりませんでしたわ」

「でもゆるっとしたドリルも可愛いね。おはよう」

「か、可愛い……? 本当?」

「本当本当。でもいつものほうがパリッとバシッと決まってて好き」

「あ、んぅ~ん……」


 真弓、今日はドリルがゆるふわだわ。なるほど、真弓のドリルは作るのに時間がかかるのね……。そりゃそうか、一日もつんだもん、並大抵じゃないよね。


「あ、そうそう! これ、食べたがっていたでしょう?」

「え? あ、これ……え、良いの?」

「ええ! 帰りに一緒に食べましょうね!」


 おお、これは……。帰り道にあるクレープ屋さんの、事前予約優待券……! いちごいちごいちごクレープ!! わあ~~楽しみ、ありがとう真弓っ! やっぱりママかもしれない……。いや、パパの可能性も……。


「…………どうしましたの?」

「いや、なんでもない。嬉しいなあ~って……ふふっ」

「ん゛っ゛……!」


 わあ~でも本当嬉しい、これは、えっと……。帰りの何時に取りに行くから作っておいてねって言えばサッと持ち帰れるのね。最高じゃん。どうやってこんなの――――まさか、真弓ってばクレープを買わずにクレープ屋の方、買った? いやまさか。まさかね。まっさか~……。怖くて聞けるか……!!




◆ 自室 ◆




 今日の真弓は可愛かった。なんせいつものシャキッとした真弓じゃなくって、ぽや~……っとした瞬間が何度か見れて可愛かった。真弓は私と違ってお仕事もしてるから、私より疲れて当然なんだよね。ちなみに、お昼休みから午後の体育の自習の時間の終わりまで保健室で寝かせておいたよ。そしたら元の元気な真弓に戻っちゃった。ぽわわ~っとしてた真弓も可愛かったけど、あのままじゃバビロンオンライン一緒にプレイ出来ないだろうからね、睡眠は大事なのよ。あ、逆にマリちゃんがその時間に起きてマグナさんとまたあーだこーだやり始めた頃だったかな? ちゃんと寝たかな~。

 それで、帰りの頃には雨も上がって、そのままクレープ屋に寄っていちごいちごいちごクレープを貰って行った時は最高だったね。なんせ長蛇の列の人たちに『え、なんで……』みたいな目を向けられてましたし。その視線の中、雨で濡れたのが乾いたばっかりの外の席で食べるクレープはなんだか、ちょっと格別に美味しかったですね。はい。真弓に感謝しかない……。圧倒的感謝……。


「さ、て、とぉ……?」


 というわけで、今日のリアルでの行動が終了しました。体調も万全、鍵も閉めたっていうかオートロックだし、窓とかも閉め忘れのセンサーはどこも反応してないし、やることはやったので~~???


『バイタルチェックスキャン開始……問題ありません』

『東京都の明日の天気は晴れが予想されます。降水確率は午前午後共に0%です』

『ダイブ前チェックリストにすべて問題がないと回答を頂きました。バーチャルダイブシステムを起動します』


 そりゃそうよ。やるわよ。今日も今日とて、私の楽しみを遂行しに行くのよ!!


『バーチャルダイブシステム起動……ゆっくりと、目を閉じてください』

『バーチャルシンクロ開始……完了』

『ようこそ、仮想現実空間へ。バビロンオンラインのプレイがリクエストされました』

『バビロンオンラインへアクセス中……リンク完了』


 さあ、今日は……だーれだ!!!


『おかえり。おかえり。おかえり。おかえり。プレゼント。プレゼントプレゼントプレゼント』


 こ、怖っ……!? あ、これ禍津アラクネのオリビエさんだわ! あの人、同じ言葉を何回も繰り返してしまう呪いが掛かってるんだっけ。その辺りの解呪クエストとか、隠しクエストであったりしてね。基本的に凄くいい人なんだけど、いきなりこのボイスだけだとちょっとホラーだよね。


『バビロンちゃん(……の、代理の禍津アラクネ・オリビエ)からの! デイリーログインボーナス8日目【ランダムユニーク装備箱】』

『ばい、ばい。ばい、ばい』


 なるほど。『ばい』を4回言ったことにしてばいばいを短縮してるのか……。呪いとの付き合いが長いからこそ出てくるワードだわ……。




◆ ローレイ・ギルドルーム ◆




 お……? あ、そういえばローレイ側でログアウトしたんだった。誰もいないから一瞬焦っちゃったよ。さて、皆の様子を確認しようかな~……。


・どん太:良好、バビロニクス・ギルドルーム、究極に親密

・オーレリア:良好、バビロニクス・ギルドルーム、究極に親密

・フリオニール:良好、ローレイ・マグナの研究所、究極に親密

・姫千代:満腹、バビロニクス・食堂、究極に親密

・マリアンヌ:興奮、ローレイ・マグナの研究所、とても親密


 おにーちゃん達は研究所か。じゃあまずはマグナさんに挨拶しに行こうかな。千代ちゃんは……。あ、鍛錬ですね。見なかったことにして……。どん太とリアちゃんはギルドルームでリラックス中かな~? マリちゃんと顔合わせ、まずはどん太達からだね~。


「こ~んばんはっ!」

「――おお、リンネ。丁度良かった、これは今日マリアンヌが作り出したシールドユニットと、エネルギーハンドガン。基礎がしっかり出来ているから、スタンダードながら高機能なものが出来上がったよ」

「リンネ、おかえり。言われた通りきっちり睡眠は取ったよ。良いものも出来た。冒険に行くんだろう? 邪魔にならないよう、努力はするが……」

『(*´ω`*)ノ』

「大丈夫、まずは入門編みたいなところに行くから! それに、これが初めて作った装備? ほえ~すっごい……。デザインは、シンプルなハンドガンだけど……」

「そういうのは、ちゃんとしたものが作れるようになってからだ。まずは中身が伴わないと、外ばかり拘っては格好だけになってしまう」

「マリアンヌの言う通りだね。まあ、中には中身も外見も完璧にしていく馬鹿弟子も居るが、あれは特殊だからな。さ、行ってくるといい」


 おお~これが、マリちゃんの最初に作り出した銃か~……。どれどれ、性能を見せてもらおう~。



【ML-01 EN-HG】(最上級・ユニーク・エネルギーハンドガン・スロットなし)

・【呪】装備するには【駆け出し魔界技師】が最低でも必要

・MAG依存ダメージ

・攻撃時、MPを1%消費

・魔術攻撃力+20%

 強化不可・重量0.9kg



 おお、なんというか、本当にスタンダードな性能だけど……。あれ、でもMAG依存ダメージか、これはどうなんだろう……。ちょっとマリちゃんのステータスを見せてもらおうか。



・ステータス

【名前】マリアンヌ

【レベル】1

【属性】ボス属性・無属性・人間系・中型

【性別】女性

【職業】魔界技師

【カルマ値】-800


【HP】1,000 *1.2

【MP】5,000 *10.0

【NP】20/20


【STR】4

【AGI】4

【TEC】4+700

【VIT】4

【MAG】4+200

【MND】4+200


【スキル】

【特殊】

・魔神崇拝・最高

・冥神崇拝・最高 


【魔界技師】

・エイミングショット【MP5%】

・アルティメットスペシャリスト【TEC+500】

・ジーニアス【スキル枠+5】【TEC・MAG・MND+200】


【装備スキル】

・ペネトレイト発生【 4 】


【装備】

右手:ML-01 EN-HG

左手:なし


頭:見習い魔界技師の帽子

体1:見習い魔界技師の服

体2:黒・レース

足:見習い魔界技師の靴


【アバター:ティスティスコーディネイト・男装の麗人】


アクセサリー【指】:シールドユニット-1【ペネトレイト 1 】

アクセサリー【腕】:シールドユニット-2【ペネトレイト 1 】

アクセサリー【首】:シールドユニット-3【ペネトレイト 1 】

アクセサリー【他】:シールドユニット-4【ペネトレイト 1 】



 あ、良かった普通…………。いや普通じゃないな、TEC+500に、ジーニアス持ちで色々+200でTECは700も上がってんの!? ぎえ……。すご……。


「いざとなったらおにーちゃん、守ってあげるんだよ……!」

『(`・ω・´)b』

「すまない、よろしく頼む……このまま出かけるのか?」

「ううん、他に3人……あ、いや、2人と1匹居るんだけど、まずは皆と顔合わせしようっか! あ、そうだ。おにーちゃん、夜通し面倒見てくれたご褒美! 何が良い?」

『(ヾノ・∀・;)』

「要らないの……?」

『Zzz……(*´ω`*)……zzZ』

「寝ちゃったから? 遠慮しなくていいのに……。じゃあ、また今度何かいい装備があったら、土下座してでも何してでも譲ってもらうから、それでいい?」

『(*´ω`*)!』

「はいはい」

「凄いな、それでわかるのか……」

「ん~~なんとなく……?」


 おにーちゃんと付き合いが長くなれば、マリちゃんもわかるようになるよ。それにしてもおにーちゃん、やっぱり寝落ちしちゃったの『やっちゃったなあ~』って思ってるのかな。結果的には無事だったから、遠慮しなくていいのに。まあこれで今ご褒美貰ったら、自分の中で許せないものがあるのかな。おにーちゃんの意見を尊重しようか。


「じゃ、マグナさん! ありがとうございました!」

「ああ。それではマリアンヌ、また来ると良い」

「ありがとう、また来るよ。あの話、実現させてみたいからね」

「あれが実現したら、楽しくなるだろうな」


 お、何か2人で画策してるのかな……。聞いても良い内容かな、聞いちゃお。


「何を作るつもりなの~?」

「ん…………。新しい、芸術だ」

「あ、内緒か~……」

「そうとも言う」

「じゃあ、完成を楽しみに待ってるね! 新しい芸術!」

「ああ、楽しみにしていてくれ」


 ん~ん~。新しい芸術ね! わかった、じゃあ楽しみに待っておこうっか。それじゃあまずはギルドポータルを出しまして、どん太達の居るバビロニクスのギルドルームにご案内で~す!! さ、どん太を見たらどんな反応をするかな~! 楽しみ~~!!


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