うみのどーくつダンジョン・4 ~真っ赤っ赤~

◆ リンネ、ペルセウス、07XB785Yレーナ・うみのどーくつダンジョン前の浜辺 ◆


 ちょっと時間を遡っての話になるけど、お昼寝さんが私をPKしに来た連中に報復を仕掛けたらしい。それもギルドハウスを木端微塵にする威力のスキルでド派手に。

 それで私とペルちゃんが慌ててギルドハウスに戻ったらレーナちゃん先輩が居て、これまで【黄金の風】ってギルドに嫌がらせを受けてたことを説明してくれて、そんな事をしてる内になんか指名手配みたいなエリアメッセージも流れたりして……。しかも気がついたらレーナちゃん先輩居ないし。本当気まぐれなお方なんだなぁって思ってたらお昼寝さん帰ってきて、速攻でぬいぐるみに抱きついて寝た。嘘でしょ。何か、説明とか……。

 ハッゲさんも丁度離席してて居なかったから、これ以上もうどうしようもないしってことで落ち着いた頃を見計らって海岸を歩いてたら、レーナちゃんが追いかけてきたのがついさっき。途中変な人をどん太がキルしそうになったけど、顔面べろべろ舐めて砂かけて追い払ってた。狩る価値も無かったらしい。


「追いついた……。ふぅ……良かった」

「レーナちゃん、あれ? レベル25?! まさか?!」

「うん……さっき、会った時。声が聞こえたから、えっと……殺してきた」

「レーナさん、話の内容もバッサリと殺し過ぎですわ?! 誰の声が聞こえて、何を殺してきましたの?!」

「んーっと……。神。理想のゴスロリ神。天使殺してきたの」


 それで、そうかあの時居なくなった理由はこれかぁ~~……! レーナちゃん先輩も、私の影踏んでバビロンちゃんの声聞いちゃったかぁ~~~…………! バビロンちゃん、一人また一人って引きずり込んでる……。魔性過ぎるよ、バビロンちゃん!! え~~~私も声聞きたいのに~~~!!!


「バビロンちゃん、可愛いよねぇ……!!」

「んっ……最の高。出会って2秒で抱きついて、吸った」

「吸ったァ?!?!?!?」

「す、吸いましたの?!」

「んっ…………。最高…………死んでもいい…………」


 しかも、レーナちゃん先輩、バビロンちゃんに抱きついて、吸った?! 吸ったの?! うっそぉ……!! よく、生きてますね、本当に……。あれ? 嫌われたりしてない? 大丈夫?!


「そうしたら、えっと……仲良くなった」

「間の内容が死んだァ……!」

「で、貰った」

「貰った…………貰った?!」

「んっ……」

「え、銃……?! 銃、ですわよね、それ……」

「魔砲。こう書くの。私、魔砲使い」

「「魔砲使い」」

「んっ!」


 魔砲、魔砲使い……。レーナちゃん先輩が取り出したのは、煌びやかな装飾が施されたマスケット銃だった。これが魔砲、らしい。どうしよう、滅茶苦茶似合うんですけど……。ちっちゃい女の子がながーいマスケット銃を抱えてるの、破壊力高すぎる……!!!


「こうやって、使うの」

「え?」

「ばーん」

『07XB785Yが【ピアーシングショット】を発動しました』

『クリティカルヒット!!! 防御貫通!!! デッカイカニ(Lv,34)に100ダメージを与え、撃破しました。経験値 4,700 獲得』

『07XB785Yがレベル26に上昇しました。お祝いしましょう!』

「ぶい~」

「え、超硬モンスターの防御を貫通しますの?!」

「わ、凄い……筒から、何か出たと思ったら!」

「クリティカル、だけ? さっきは、30ぐらい」

「ひょぇえええ…………!」


 え、すっごぉ……。というかレベル26ってことは、今こうやってパーティ組む前に誰かと模擬戦を? 誰とやってきたんだろ?


「模擬戦システム、使ってきましたのね!」

「んっ。ハッゲ、30回倒した」

「「ハッゲさん……」」

「お兄ちゃんだから、いいの」

「「お兄ちゃん!!!!!!????????」」

「お兄様なんですか?!」

『わうぅ?!』

「んっ……」


 どこに、どこにこんな美少女と、あのハッゲさんに、同じ遺伝子が……? どういうバグなの……? 現実って、ゲームより不具合多くない……?! 嘘、嘘でしょう……?


「嘘」

「「えええ~~~~~~!!!!!?????」」

「え、ええ~……!」

『わふぅ……』

「親戚の、おじさん」

「それでも親戚なんだ……」

「親戚ですの、ハッゲさんと、親戚、レーナさん……親戚……」

「親戚、なんですね……」

「んっ……」


 兄は嘘だったけど、それでも親戚なのぉ……?! 嘘だと言ってよ、え、本当……? うわぁぁぁぁ…………!!


「…………らぶらぶ、でしょ? 私、邪魔? ダメ?」


 ら、ぶ、らぶ……? え? 私と。ペルちゃん?


「そそそそそそ、そんなんじゃないですよぉおおお?! そうかも、しれないですけど?!」

「そそそそそそ、そうですわよぉおお?! いえ好きですけど、違うの、違いますの、いえ好きですけど?!」

「ふふっ……」

「らぶらぶ、なんですか?」

「らぶらぶ、らぶ、ら――――ど、どうかなーーーー…………?!」

「どうでしょう、どうでしょうねぇ?!」


 あ~~~~。オーレリアちゃんまで!! 顔が、真っ赤だよ! 真っ赤っ赤!!! もう! で、でもどうしよう。レーナちゃん先輩に、死霊術師ってバレちゃうよなぁ……これからやるのも、バレちゃうし……。


「ん、んんっ!! 全然、邪魔じゃありませんわ! それに、同じバビロン教なのですから、一緒に行きましょう?」

「いいの? じゃあ、大丈夫です。中に入ってから、やりたいこと言いますね」

「わぁ、ありがとっ」


 ペルちゃんが良いなら、私もオッケー! レーナちゃん先輩は魔砲使いだし、あれ? 実はこのパーティ結構バランス良い? 近接がどん太にペルちゃん、後衛アタッカーにオーレリアちゃんにレーナちゃん先輩、各種諸々で私。結構バランスいいね?!


「よかった。うみのどーくつ、行ってなくって」

「やっぱりこっちに来たってことはそこだって、わかります?」

「こっち、それぐらいしかないもん」

「そうですわね~……。今日は、4階層からですけれど、よくって?」

「んっ!」

「あ、それなんだけど、1階層からがいいな~って」

「あら、何か考えがありますのね? よくってよ!」

「んっ!!」


 さてさて、今日は5人。オーレリアちゃんは自分のほうきコントロールが上手くなって高速移動出来るようになったみたいだし、どん太の全力と並走出来たから大丈夫だね。

 それとさっき、レーナちゃんと合流前にかるーく試したんだけど【アビスウォーカー】! どん太の影に潜り込んで移動したり、オーレリアちゃんの影の中にワープしたり、従者の影に潜り込んで移動できるってスキルだった。この影の中からも一応魔術が使えたけど、影の中で魔術を使う度にネクロポイントを1消費するから連発は出来なかった。使い所は考えないとダメ。


「ついた~」

「着きましたわねっ! では、1階層から……。中に入ってからお話ですのね?」

「うん。もしかしたら、まだ尾行されてるかもしれないし……。どん太は反応してないから、大丈夫だと思うけど、一応ね」

「わかりましたわ! では、1階層からスタートですわよ!」

『パーティリーダーからの申請を受諾……。転送カウントダウンを開始します』


 よし、これが上手く行ったら、リベンジが出来る……! しっかりやらないとっ!


『カウントダウン、5……4……3……2……1……0。転送』




◆ うみのどーくつダンジョン【1階層】 ◆




 そう、私は気がついてしまったのだ。


「走れ走れ!! 絶対追いつかれちゃダメよ! オーレリアちゃんも、モンスターに気をつけて!」

「大丈夫です!!」

『わうわうわうわう!!! (大丈夫、昨日みたいに追いつかれないよ!)』


 さつりくしゃーちは、高速移動しているプレイヤーを検知して出現するペナルティモンスター。通常であればこれが出てきた瞬間絶望、ダンジョンから追い出されるように設計してある。でも本当にペナルティモンスターなら、そもそもドロップや経験値を設定なんてしたりしていない――――つまり、こいつは狩って良いモンスターなのだ、と。


『――――キュァァアアアア!!!!』

「き、来ましたわ!!!! アイギス!!!」

『ペルセウスが【魔盾アイギス】を発動、どん太が【ペネトレイト・2】状態になります』

「穿て、カーススピア!!」

『weak!!! さつりくしゃーち(Lv,99)が1ダメージを受けました。呪い状態になりました』


 そう、私は思い至ってしまった。このさつりくしゃーちを保険アリで狩る方法を。ネガティブオーラでバフを焚いて、どん太にアイギスを貼って保険を掛ける。どん太はステータスが上がった影響でさつりくしゃーちになかなか追いつかれない。周囲のモンスターに偶然殴られてもアイギス、それが壊れてもボーンシールドがある。オーレリアちゃんはほうきコントロールが上手くなって、モンスターを華麗に避けながらブリザードクラッカー発動前で止めて飛行して貰う。最悪、2回復活出来るからそれまで耐えて貰うのも手。


「ば~ん」

『07XB785Yが【ピアーシングショット】を発動しました』

『クリティカルヒット!!! 防御貫通!!! さつりくしゃーち(Lv,99)に15ダメージを与えました』

「硬った~……」

「穿て、カーススピア!」

『weak!!! さつりくしゃーち(Lv,99)が1ダメージを受けました。呪い状態になりました』


 レーナちゃん先輩は防御貫通のピアーシングショットを……と思ったけど、やっぱり硬い。一定のダメージは固定ダメージで与えられたみたいだけど、流石に倒せないみたいだった。でも、15ダメージでも良い。こいつはHP200しかないんだから、十分大ダメージ! 後はこいつが、呪いで死ぬまで逃げれば……!


『さつりくしゃーち(Lv,99)が死亡しました。経験値 999,999 獲得』

『おめでとうございます! 貴方がMVPです! MVP報酬【☆5魔晶石の箱】』

『レベルが48に上昇しました! おめでとうございます!』

『ペルセウスがレベル48に上昇しました。お祝いしましょう!』

『07XB785Yがレベル34に上昇しました。お祝いしましょう!』

『どん太がレベル13に上昇しました』

『オーレリアがレベル28に上昇しました』

『【死体安置所・3】に【さつりくしゃーち(Lv,99)】を納棺しました』

「え、ええええええええ~~~~~~~」

『わふわふっ! (やった、倒せたね!)』


 やった、倒せた!! 死体安置所に納棺! え、ちょっと待って? レーナちゃん先輩の驚いてる顔、何気にレアじゃない? いつも同じ表情だから、滅茶苦茶珍しいね?!


「――砕けて弾けよ! ブリザードクラッカー!!!」

『オーレリアが【完全詠唱・ブリザードクラッカー】を発動しました』

『Weak!!! 凄いタフなサメさんが4,998ダメージを受け、死亡しました。経験値 9,770 獲得』

『Weak!!! 突撃、ウツボさん!が4,660ダメージを受け、死亡しました。経験値 9,880 獲得』

『Weak!!! 彷徨うタコさんが4,711ダメージを受け、死亡しました。経験値 9,910 獲得』

『Weak!!! 突撃、ウツボさん!が4,961ダメージを受け、死亡しました。経験値 9,880 獲得』

『Weak!!! ドリルサザエが4,660ダメージを受け、死亡しました。経験値 9,880 獲得』

『07XB785Yがレベル35に上昇しました。お祝いしましょう!』


 お、おお~~! やったやった、追いかけてきてたモンスターもブリザードクラッカーで一掃だ! これで安全に宝箱も回収できるってわけよ、あの銀色の宝――――


「き、金!!」

「金ですわ?!」

「金? あ、金の宝箱……」

『わうっ?!』

「やった! 上手く行きましたね! 宝箱は命よりも重いんですよっ! 取りに行きましょう!」


 金、金だーーーーー!!! さつりくしゃーちから、金色の宝箱出たーーーー!!!! 周りに邪魔なモンスターは居ない、ふは、ふふははは……!! ここは、天国なのね!!! 間違いない、ここは天国だー!!!


「では早速、ぱんっぱかぱぁ~~~ん!!!」

「ぱんぱかぱ~んですわ!」

「ぱんぱか、ぱ~ん」

「ぱんぱかぱーんっ!」

『わうわうわ~う』


 さあ、金色の宝箱よ、私をガッカリさせないでくれようっ!!


『【?刀】を獲得しました』

『【?鎧】を獲得しました』

『【?靴】を獲得しました』

『【勝者の証】を獲得しました』


 刀、刀!! 刀って言うと、レイジさん! 関西弁で喋る、黒髪糸目のお兄さん! おおーこれは良いもの、かもしれない……。あれ? 王者の証じゃなくて、勝者の証? なんかこっちはランクダウンしてない?


「刀と、鎧と、靴! 後、勝者の証だって。これって、本来は何に使うの?」

「証系のアイテムは上位職の転職ですわね。結構高値で取引されていましてよ」

「んっ……。100万、ぐらい? 鑑定、楽しみ~……」


 なるほど~……。って言うと、オーレリアちゃんが次に進化する時は王者の証が良いのかな? あっちのほうが、なんか強そうな名前だもんね。


「おー! 経験値も美味しい上に、報酬も美味しい~~!!」

「あれ、なんで、死んだの? 呪い?」

「私の装備の組み合わせで、呪い中にHP回復が止まるのと、スリップダメージが入るんですよ~」

「…………HP、低いんだ。なるほど、凄い。あれ、絶対攻撃されたら、死ぬやつ」

「絶対死にますわね! HP200の代わりに、攻撃力は凄まじいはず! お昼寝さんが一撃で死んだと言っていましたわ!」

「うわぁ……。絶対、当たりたくない……」


 よ~し、NPも戻ったし、バフを掛け直して……。


『パーティメンバーを【ボーンシールド】状態にしました』

『パーティメンバーが【ネガティブオーラ】で強化状態になります』

「…………あれ? レーナさんって、もしかして闇属性か不死属性ですか?」

「え? うん、闇。あと、人間じゃなくて、悪魔」

「悪魔っっっっ!!! 解釈一致っっっ!!!!」

「みて、背中に悪魔っぽい羽。かわいい?」

「ン゛ッ゛!!!!! か゛わ゛い゛い゛て゛す゛……っ!!!」

「あらやだ可愛い……!」

「可愛いですね、それ……!」

「ふふ~ん……♪」

『わう~? (美味しくなさそう!)』


 やばいやばい、可愛い死んじゃうそれ、可愛い……!! レーナちゃん先輩、小悪魔プリティ過ぎるそれダメダメダメダメ、可愛すぎる……! どん太はチョップ入れておくね? 食べ物じゃないんだよ? 食べちゃいたいぐらい可愛いけど。


「さて、もうひとっ走りして、リポップするか試してみましょう!」

「出る、かな……?」

「出たら、ラッキーですわね! 試してみる価値はありますわね!」


 さて、気を取り直して第2ラウンド! さつりくしゃーち2体目は、果たして出るのでしょうか!


「深淵よ、わが道となれ。アビスウォーカー」

『【アビスウォーカー】状態になりました。魔術攻撃時NPを消費する状態になりました』

「では行きますわよ! アイギス!!!」




◆ その後、暫くして…… ◆




「穿て、カーススピア!!!」


 聞いてない聞いてない、いやいやいや、こんなことになるって思わないじゃん!!!


『weak!!! 抹殺者(Lv,111)が1ダメージを受けました。呪い状態になりました』


 あの後、2体目のさつりくしゃーちを倒してほっくほくして、もう一体……って。走り始めてこいつが出てきた。黒い模様のところが、真っ赤な真っ赤なボディに変わってるシャチが! 物凄く、速い!!!


「ば~ん……!」

『07XB785Yが【ピアーシングショット】を発動しました』

『クリティカルヒット!!! 防御貫通!!! 抹殺者(Lv,111)に15ダメージを与えました』


 もうかれこれ、こいつと10分近く戦ってる氣がする……。どん太には悪いけど、3人を背負って走って貰ってる。進化してステータスが上がってなかったら、とっくの昔にお陀仏だったね。

 オーレリアちゃんは奇跡的に生きてる。もう避けることに専念して貰って、とにかく生存することを優先させてる。

 正直リタイアも考えた……。でも、あのダメージ1族のさつりくしゃーちの親戚なら……って思って、しかもここまで耐え続けてたらもう諦めきれない。かれこれダメージはかなり蓄積してるはず。HPは回復してないはずだから、死ぬはず。そう思って10分も走ってる。


『――――キュァアアアアアアア!!!!!』

「来ましたわ!!! どんちゃん、右よ!!!」

『抹殺者が【クリムゾンブラスター】を発動します』

『わうぅぅぅう~~~!!!! (お尻に当たるぅ~~~!!!)』

『どん太がダメージを無効化しました』

「どんちゃんのお尻で助かりましたわ!!」

『きゅぅぅ~~~ん!!! (怖いよぉ~~~!!!)』


 そしてさつりくしゃーちと違うのは、このクリムゾンブラスター!!! このスキル、どん太以外に当たったら絶対に即死する! ぐわぁ……っと口を開けたら真っ赤なビームを発射してくるスキルで、発生も早けりゃ威力もヤバい。フレンドリーファイアで当たったモンスターが【即死】ってログが見えた。私には効かないかもしれないけど、でも絶対ダメージもあるって、あれ!

 

「やってみる……」


 レーナちゃん先輩?! 何をやるんですか?! え、ちょっと、なんで私とペルちゃんの間に入ってくるのかな?! どん太の上で移動してくるの、器用ですね?!


「がっちり、抱きしめて」

「え、えっ」

「んっ……揺れが、マシになった」

「あっ!! 穿て、カーススピア!!」

『weak!!! 抹殺者(Lv,111)が1ダメージを受けました。呪い状態になりました』


 あ、私を銃座代わりに……。え? これ、その魔砲撃ったら私の耳死にませんか? 私の耳が死ぬだけで済むなら良いか。ところで、この状態で何をやるんですか?! なんにも聞いてないんですけど?!


「多分、そろそろ…………。すぅ~~~~…………――――」


 え? 私、吸われてる? 吸ってます? この緊急事態で? それにそろそろってなんですか?! 何を――――


『――――キュァアアアアアアア!!!!!』


 あ、クリムゾンブラスター!? やばい、避けないと。


『避けちゃダメ』


 わざわざ直接チャット入力で書き込んでるぅーーー!? でも、何か考えがあるんですね? 信じますよ?!


「どん太! そのまま走れ!」

「え?! またアレが来ますわよ!?」

『わんっ!! (信じてるよ!? お尻、なくなったらヤダよ?!)』

「! 怒り狂えし氷の牙よ、我が元に集いて氷塊となり…………」


 …………来る!! クリムゾンブラスターを発射する時の、口を開けるモーション! え、大丈夫なんですか?! これ?!


『07XB785Yが【スナイピングショット】を発動しました』

『クリティカル!!! Weak!!! 抹殺者(Lv,111)が14,825ダメージを受けました!』

『――――ギュァアアアアアアア!!!!!!!』

『07XB785Yが【クイックドローショット】を発動しました』

『クリティカル!!! Weak!!! 抹殺者(Lv,111)が6,772ダメージを受けました!』

『ギュァアアアアアアア!!!!!!!!! ギュァアアアアアアアア!!!!!!!』



「――――終わりよ」



『07XB785Yが【デッドエンドショット】を発動しました』

『クリティカル!!! Weak!!! 抹殺者(Lv,111)が40,200ダメージを受け、撃破しました。経験値 6,666,666 獲得』

『レベルが61に上昇しました。おめでとうございます!』

『ペルセウスがレベル61に上昇しました。お祝いしましょう!』

『07XB785Yがレベル54に上昇しました。お祝いしましょう!』

『どん太がレベル22に上昇しました』

『オーレリアがレベル45に到達しました。これ以上レベルが上昇しません。進化しましょう!』

『MVPは07XB785Yさんです』

『抹殺者の気配が消滅しました』

『さつりくしゃーちの気配が消滅しました』

『おめでとうございます! うみのどーくつダンジョンの隠しボス【抹殺者】を撃破しました!!!』

『以降、抹殺者はうみのどーくつダンジョンのペナルティ発生時、低確率で出現します』

『命名権が07XB785Yに与えられました』

「いえ~~い…………」

「レーナちゃん先輩、すっごぉい……」

「た、倒せましたの?! え、ええ?!」


 鼓膜がァ……! 一瞬ヤバかったけど、帰って来たぞ、鼓膜が! それで?! い、一体何が、どうして倒せたの、それに隠しボス?! アレが……?! それに、アイツってダメージ1族じゃなかったの?! 


「砕けて弾けよ、ブリザードクラッカー!!!」

『オーレリアが【完全詠唱・ブリザードクラッカー】を発動しました』

『Weak!!! 突撃、ウツボさん!が4,999ダメージを受け、死亡しました。経験値 9,770 獲得』

『Weak!!! 突撃、ウツボさん!が4,960ダメージを受け、死亡しました。経験値 9,880 獲得』

『Weak!!! 彷徨うタコさんが4,911ダメージを受け、死亡しました。経験値 9,910 獲得』

『Weak!!! 凄いタフなサメさんが5,298ダメージを受け、死亡しました。経験値 9,880 獲得』

『Weak!!! 突撃、ウツボさん!が4,990ダメージを受け、死亡しました。経験値 9,880 獲得』

『Weak!!! 突撃、ウツボさん!が4,912ダメージを受け、死亡しました。経験値 9,880 獲得』


 あ、オーレリアちゃんナイス……。ここが決め時だって察して、雑魚処理用に用意してくれてたのね。ありがとう……。


「どうして、急にあんな攻撃に出ましたの?!」

「HP、高いって思って。HPバー、さつりくしゃーちは出た。でもアイツ、出ないから……。多分、弱点タイプ」

「それにしても、口の中、ですか? あれが弱点ってどうして……」

「クリムゾンブラスター、発射する時に口の奥、光ってた。他に弱点っぽいとこないし……かな~って」

「凄い観察眼……。一生倒せないところでしたね……」

「多分、7kぐらい、削ってた。多分……HP、70kぐらいあったと思う」

「「70k」」


 あのままやってたら、後10倍の時間が掛かってたかぁ~……。絶対被弾して壊滅してたわ。よく、仕留めきれましたね……。


『わふぅ……わふ……(疲れたよう~~……)』

「おーよしよし、よく頑張ったねどん太、偉い偉い……」

『【死体安置所・5】が【まっさつしゃーち(Lv,111)】を自動納棺しました』


 忘れてた! 自動納棺本当助かる……。まっさつしゃーちにしたんだ、名前! あの時はすっごい怖かったけど、この名前だとなんか可愛い! あ、それに死体安置所が5個から7個に増えてる! 後2体納棺できるわ! そうだ、まだ忘れてるものがある!!! 宝箱!!!!


「宝箱!!!」

「あっ!!!」

「あっ」


 ボスを倒したら宝箱! 宝箱は命より重いのよ!


「…………!」

「どう見ても、凄い、物が入ってますわよ、あれは……」

「宝石~~~…………」

「わあ、ぴかぴかです……!」

『わうぅぅん……(食べ物入ってない~……? お腹すいたよう……)』


 ボス報酬の宝箱に食べ物が入っててたまるか! しかもこの、宝石でゴテゴテに飾られた宝箱に、入ってるわけないでしょ! さあ、ぱんぱかタイムよ! ぱんぱかタイム!


「ぱんぱかぱ~んは、どうぞMVPのレーナ様……!」

「…………ぱんぱか、ぱぁ~ん」

「ぱんぱかぱ、わぁぁぁぁぁ~~~?!」

「おおっ……」

「あ、ここ来る前に、インベントリ整理、忘れてた……拾って……」

「あらら?!」

「じゃ、じゃあ、拾います!」


 凄いですよこいつは、虹色に光ってる奴がちらほらありますよぉ……?! 拾います、拾いますっ!!!


『【?指輪】を獲得しました』

『【?ほうき】を獲得しました』

『【?盾】を獲得しました』

『【?クロー】を獲得しました』

『【?腕輪】を獲得しました』

『【?イヤリング】を獲得しました』

『【?ネックレス】を獲得しました』

『【?本』を獲得しました』

『【?本】を獲得しました』

『【覇者の証】を獲得しました』

『【★まっかなおさかなさんのソーセージ・お得用!】を獲得しました』


 あったよ、食べ物が……。あったよ、食べ物が?! しかもこれ、虹色枠のやつだよ?! 嘘でしょ……?!


「虹色のアイコンのやつが、4つです!」

「素晴らしいですわ~~~!!!!」

「おぉ~~」

「良いものが出たら、嬉しいですねっ!」

『わおわお(食べ物?)』

「食べ物、あるんですけど……。一応、虹色なんですよね……」

「まあ! それは、調理が出来まして?」

「ハッゲに、料理して貰おう~……」

『わうぅぅううん!!! (食べ物~~~!!!!)』

「どん太さん、大喜びですね!」


 ん~……『加工不可、そのまま食べよう!』って書いてある。それに、お得用とか言って複数本あるのかと思ったら、どでかいの丸々一本だわ、これ。


「ん~、いや出来ないみたいです。加工不可って書いてありますね」

「じゃあ、どんちゃん。食べたそうだから」

「そうですわね……。どんちゃんが居なかったら、そもそも逃げられませんものね! 功労者にご褒美ですわ!」

「え、いいんですか?」

「いい。装備だけ、後で欲しい~……」

「それ以外、分けたいですわ!」

「じゃあ、あげます……。ほらどん太、こっちおいで……うわでっか?!」

「でっかいですわね?! わたくしの太ももぐらいありませんこと?! ほらっ!」

「ペルちゃんはしたない!!!」

「あっ……!」

『わうぅぅぅぅうぅっぅぅぅぅぅ~~~~~~~!!!!♡♡♡♡』


 おお、どん太……。そんなにがっついて食べなくても、おさかなソーセージは逃げないぞ……。よく味わって食べなよ、もう……。


『どん太のステータスが上昇しました』

『どん太が【金剛】を習得しました』


 …………は?


「あの、今なんか、どん太がステータス上がって、しかもスキル手に入れたみたいなんですけど……」

「…………どんちゃん、わたくしも一口! 一口だけ、お願いちょっとだけかじらせて!!!」

『わうわうわうわう!!! (あげない!)』

「あっ!」

「丸ごと行ったぁ~……」

「さすが、どん太さんですね……」

「どん太から食べ物を取り上げようなんて、100年早いよペルちゃん……」

「およよよよ……」


 やりやがりました、どん太君。おさかなソーセージ独り占めです……! まあ、頑張ったもんね。一番頑張った。良くもまあずっと走り抜いたよ、どん太。おつかれおつかれ……。


「…………どうする?」

「吐かせますの?!」

「違う。先に行くか、帰るかの話だと思う……」

「オーレリアちゃんは、まだ大丈夫? ずっと飛んでたけど」

「はいっ! まだまだ元気です!」

「どん太は」

『わうぅぅう!!!! (元気元気! とっても元気!!)』

「はい」

「わたくしも、まだまだ大丈夫ですわ!」

「私も、まだ狩る~……。2階も、3階も、出るんでしょ~?」

「出ると、思います。抹殺者は出なさそうですけど」

「もうこりごり~……」

「さつりくしゃーちがいいですわぁ~……」

「いこ~~~」


 じゃあ、どん太が元気もりもりになったし……。2階と3階でもさつりくしゃーちを狩って行こう! まだまだ、まだまだ狩るよ、美味しいモンスターは狩るの!!


「あ、私、その……」

「あ!!! 進化!!!」

「お~~~。オーレリアちゃんも、進化するんだぁ~」

「まあ! これでまた一つ上のランクになりますのね!」


 そうだ、オーレリアちゃんの進化! えっと、えっと! 素材は……? 『☆4魔晶石50個』、『証系アイテム1個』、だけみたい……? 素材アイテムが要らない代わりに、☆3魔晶石飛ばしたかぁ~……! 証は、勝者が2個と覇者が1個あるけど……。流石にコレは勝手に使えない。


「☆4魔晶石が50個と、証系で上がるんだけど」

「はいっ! どうぞ、お使いになって?」

「ぽんと出てくる、☆4魔晶石……こわぁ……」

「証、こんなのが出てて……」

「あら? 覇者の証……見たことありませんわね?」

「多分、更に上位の、転職素材~……? いい、さっきの腕輪と、イヤリング……予約したいぃ……まともなの、ないから」

「では、わたくしは指輪とネックレスが欲しいですわ! これで虹枠が公平分配ではなくって?」

「おっけ~……」

「どうぞ、覇者の証はお使いになられて?」

「ありがとうございます……っ!!!」


 アクセサリー系を二人が全部予約って形で、コレも使ってオッケーになった。これで虹枠のアイテムが【?腕輪】がレーナちゃん先輩に、【?指輪】がペルちゃんに、【★まっかなおさかなさんのソーセージ・お得用!】がどん太の腹の中に、残すは【?本】が片方虹枠。これで公平分配ってことで了承を貰ったので……いざ!!!



【エレメンタル・ウィッチ】闇属性・悪魔系・中型

・リトルウィッチから成長した姿――――


 あ、ごめんオーレリアちゃん。これ却下して良い? 飛ばすね? 成長しないで?


【サキュバス・ウィッチ】闇属性・悪魔系・中型

・男性を悩殺する悪魔、サキュバスになり――――


 ごめんねオーレリアちゃん。次、ラスト。


【ディザスター・ウィッチ】闇属性・悪魔系・小型

・それは、小さな災厄。




 …………いや、その他の説明文寄越せよ。嘘でしょ、これでこのディザスター・ウィッチ選ぶ人居ないでしょ?! いや、しっかし、でもオーレリアちゃんがナイスバディでうっふ~んな感じになるの、耐えられない…………。


「私、お姉ちゃん・・・・・に選んでもらえるなら、何でも大丈夫です!」


 そうだ……。他のを選択したらお姉ちゃんって、呼んで貰えないじゃん……。あは、そうだ。これだ、これしかない……!


『オーレリアがリトル・ウィッチから【ディザスター・ウィッチ、オーレリア(Lv,1)】に進化しました』

『複数のスキルがセットされました』

『一部ステータスが大幅に上昇しました』


 おお、ロリっ子のままだぁ……。あれ? 雰囲気変わったね? ちょっと少しだけ、悪い子感出てない? いや一瞬だけね? 出てたねぇ……! 『とっても強い力を手に入れたわ……!』って顔、してたねぇ! 可愛いねぇ!!


「変わりませんわね……?」

「いや、もう進化したよ」

「え……。でも、そっか。急に成長しても、困るもん」

「凄い、途轍もない力を感じます……。早く魔術が使いたいです……!」


 うんうん、撃たせてあげよう! さあさあ、次の階に行こう! もうこんだけ走り回ったから、ポータルは見つけてる……。そういえば、1階には宝箱落ちてなかったなぁ。やっぱりないのかな。次はあるかも? ちゃんと注意深く見ておかないとね。


「それでは、出発しますわよ!」


 いざ、2階層へ!!! 待ってろよ、さつりくしゃーち!

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