うみのどーくつダンジョン・8 ~ログイン五日目と共に~

◆ 自宅 ◆


 京都の方面で降っていた雨は予報を大きく外れて東京には流れず、極めて清々しい晴れ。7時に皆とダンジョンに行くのが楽しみ過ぎて、5時よりかなり前に起きてしまって二度寝も出来ず、とりあえずバナナを一本だけ食べてから気分転換にストレッチを開始。ダイブマシンでずーっと横になってるから体が鈍ったような気がしてたけど、ちゃんと開脚前屈もびたーっと伸ばしきれるし、最終的にはY字バランスを超えてI字バランスも難なく出来た。体に不調がないことも確認できたし、ついでに軽めにトレーニング……と思ってやっている内に、つい癖でハードトレーニングに移行してた。体を動かすのはやっぱり楽しいね。

 汗もびっしょりとかいて満足したところでお風呂に入って汗を流してから普段着に着替えて軽めの朝食。やっぱり運動するのは気分が晴れやかになるからいい……。前は毎日やってたんだけどなぁ、なんでやめちゃったんだっけ? またこの日課を再開しようかな。そうしようね。


「さて、と……!」


 現在時刻は6時30分、泥酔状態で行動不能になったねーさん達もそろそろ復活する時間かな? 昨日は充実した一日だったなぁ~……今日はまずうみのどーくつダンジョン、呪物作成タイムを挟んでからその後に教会ダンジョンに行って、大体お昼になってるだろうから昼食。そして午後からお楽しみのステラヴェルチェ王宮強襲タイムだー! 私達以外まだ誰もプレイヤーは辿り着いてないだろうし、今度はメルティスから妨害も入らないでしょ。そもそもメルティスに捨てられた地だとか言われてるのに妨害が入ったらおかしいよね~? 今更どの面下げてステラヴェルチェの防衛を命じてんだってなるわ。


『バイタルチェックスキャン開始……問題ありません』

『東京都の今日の天気は晴れが予想されますが、ところにより雨が降るでしょう』

『鍵の閉め忘れ等に問題がないと回答を頂きました。バーチャルダイブシステムを起動します』

『バーチャルダイブシステム起動……ゆっくりと、目を閉じてください』

『バーチャルシンクロ開始……完了』

『ようこそ、仮想現実空間へ。バビロンオンラインのプレイがリクエストされました』

『バビロンオンラインが見つかりませんでした』

『バビロンオンラインのプレイがリクエストされました』

『バビロンオンラインが見つかりませんでした』

『バビロンオンラインのプレイがリクエストされました』

『バビロンオンラインが見つかりませんでした』

『バビロンオンラインのプレイがリクエストされました』

『バビロンオンラインが見つかりませんでした』


 ッチ…………。


『メルティスオンラインのプレイがリクエストされました』

『メルティスオンラインへアクセス中……リンク完了』


 ッチ………………!


『おっはよ~♡ 愛しのバビロンちゃんから、毎日プ・レ・ゼ・ン・ト♡』

『バビロンちゃんからの! デイリーログインボーナス4日目【悪夢の絵本(素材)】』

『ボスに効く状態異常は、相手の種族によっては効くものと効かないものがあるわよ~♡ 例えば死霊系に毒や呪いは効かないの、でも逆に種族によってはボスなのに通る状態異常もあるから、色々と研究すると良いわよ~♡』


 ッチュ…………♡ 最高。ハッピー……。




◆ 魔神殿・ギルドルーム【ロビー】 ◆




『トルネーダが再召喚可能になりました』

『ローレライが再召喚可能になりました』

「およ? おはよ~」

「おはようございます、お昼寝さん~」

「よう!」

「ハッゲさんおはようございます~」

「あら、御機嫌よう!」

「んぅ……おはよ……ふわぁ……」

「ペルちゃんおはよ~レーナちゃん眠そうですね、おはようございます」


 バビロンちゃんの声を聞いて幸せになったところで、ギルドのいつもの顔ぶれって感じのメンバーにご挨拶。エリスさんとレイジさんがまだログインしてないのかな? うちのは、えーっと。どん太と千代ちゃんは満腹、リアちゃんとおにーちゃんは良好、ねーさんとローラちゃんはやっと再起したから、フルメンバーだね! よしよしっ。じゃあまずは、一発言っておこうかな。


『トルネーダを召喚しました』

『ローレライを召喚しました』

「うっ……? 朝……かい?」

「ほあようごじゃぁましゅぅ……?」

「二人共飲み過ぎ! 片付けもしないで、他の人がやってくれたから良いものの、幾ら楽しいからって限度は守ってね! 墓に返すよ!」

「そ、それは勘弁して欲しいねぇ……次からは、気をつけるからさぁ……」

「ごめんなさぁい……!! それだけは、それだけはぁ……!」

「オカンだわぁ~……」

「でっけえ子供だなぁおい」

「そうですわねぇ、限度ってものがありましてよ」

「…………ふわぁぁぁぁ…………」


 とりあえず昨日飲みすぎた件は叱っておかないと。片付けもしないで寝落ちしてそのまま~ってわけには、いかないからね! 二人共反省してるから、まあ今回はこれぐらいにしておこうか!

 

「それではわたくしはリンネさんと一緒に行ってきますわね! レーナさん、それは気が向いた時にマグナさんのところに持っていってやってみてくださいまし」

「んぅ……。ふわぁ……わかっちゃ……」

「レーナはお昼寝と同じぐらい睡眠を愛してる人間だからなぁ……」

「きゅうじつ、きほん、ねる」

「この状態でふわふわで暖かいものを与えると、寝落ちするんだよ~」

「だめ、ねちゃうから、だめ」


 ぽわぁ~……っとしてるレーナちゃん可愛いなぁ……。そっかそっか、睡眠を愛してらっしゃるお方なんですね、しかも朝弱い感じなんだぁ……。可愛いっ! ペルちゃんもレーナちゃんのほっぺをぷにぷにして遊んでるし。可愛いよね、ぽわぁ~っとしてるレーナちゃん。


「じゃあ、行ってきますね!」

「いってら~。こっちも揃ったら行くよ~」

「おう、気をつけてな。料理もとりあえずこれ持ってけ」

『ハッゲから『魔界堪能ピクニックセット!』を6個受け取りました』

『ハッゲから『魔界満喫食い倒れセット!』を4個受け取りました』

「い、いつもすみません……」

「いいさ、食材が余りまくって大変なんだ。とにかく作ってとにかく詰めただけだが、持ってってくれ」

「美味しくいただかせて頂きます!」

「おう!」

「んっ……レイジ、おそ。エリス、寝てる? シメる」

「凄いねレーナちゃん? その話題多分10分前ぐらいのやつだよ~?」

「気にしないで行ってくれや……」

「で、ではまた、午後に!」

「お弁当、感謝ですわ~! では御機嫌よう~!」


 ハッゲさんからお弁当を貰っちゃった。食材が余って余って仕方ないらしいけど、いつもいつも貰ってばっかりで申し訳ない。今度何か面白いものが出たらハッゲさんに押し付けよう、そうしよう……!


『わんっっ!!! (あ、ご主人! おはよう~!)』

「あ、来ましたっ! エキドナ様、行ってまいります!」

「気をつけていくのじゃぞ~! はぁ、心配じゃあ……心配じゃ、妾も行きたい……。一緒に買物とか――――」

『(*´ω`)/』

「おや、来ましたかっ! ふぬぬぬっ……!!! ふぅ……! 行きましょうリンネ殿っ! それと飲兵衛二人も、どうやら復活したようで御座いますね?」

「す、すまなかったねぇ……気をつけるから、気をつけるからさぁ……」

「ごめんなさぁい……程々にしますぅ……」


 1階に降りたら全員こっちに来てメンバーが揃った。ぽんぽこ千代ちゃんは今回はほどほどに抑えてたらしく、昨日よりもスムーズにシュッと燃やし尽くした……いつ見てもそれ羨ましいですね?

 それじゃあ揃った所で全員のレベルを確認。どん太がレベル47で上限50で進化予定、リアちゃんがレベル37で上限75。おにーちゃんがレベル18で25上限、多分進化。千代ちゃんがレベル10、ねーさんがレベル5、ローラちゃんがレベル1! 私とペルちゃんはレベル81だね、まっさつしゃーちが多く出てくれるとレベルいっぱい上がるんだけどなぁ~。

 あれ? そういえば私のスキルのソウルスティールってどこに行ったんだろ? 無くなってる? え、ああ、ステータスのスキル欄からインフォメーション開いたらレベル30の時に消えてたんだ! 序盤の経験値が少ない区間の救済措置、30からは死体安置所に変わったのね。なるほどなるほど。


「どれ、じゃあうみのどーくつダンジョンに行こうか~!」

「装備が拾い切れるか心配ですわね~……」

「ん? 財宝ならあたしの宝物庫に保管してやろうかい? 昨日の夜役に立たなかった、せめてものお詫びってわけじゃないけどさ」

「おお、ねーさんのスキルで拾えるんだ……! じゃあ、お願いしますっ」

「今後も手伝ったげるよ。ローラも昨日の分活躍しないと、墓に戻されるよ!」

「ひぇえええ~~~~…………!!」


 そういえばペルちゃんと私しか居なかったから、アイテムインベントリがパンク確定だったんだね。ねーさんが独自のインベントリを持ってて助かった~……! こういうところ、ネクロマンサーの弱点かも……。アイテムが拾いきれなくなる現象。アイテムインベントリは重量式で、所持限界重量に達すると拾えなくなっちゃうからね。危なかった~。


「あら、レーナさんが降りてきましたわ。なんだかシャキッとしてますわよ? マグナさんの方に行くようですわね」

「そういえば、昨日何やってたの?」

「禁忌の技術者マグナという方に、メタルハートとバタフライメモリーを見せたら機械生命体を作らないか? と素材アイテムを頂けましたの。ですが回路は難しい、仕組みが難解、かなり集中力が必要な地味な工作が山ほどあって、わたくしには出来ませんでしたわ……」

「レーナちゃん、出来るのかな?」

「どうでしょう。それにあれだけではパーツが全然足りないようですから、まだ集めないと出来ませんわね」

「基礎部分っていうか、心臓部みたいなとこだけを作ってみないか~みたいな感じだったのね」

「そうですわね。心臓と脳の部分だったようですわ」

「なーるほど」


 ペルちゃんはあの時Dエンド報酬で貰ったメタルハートとバタフライメモリーを誰が扱えるのか探してたみたい。結局はマグナさんが扱えるみたいだけど、自分で作らないと駄目なタイプでペルちゃんには圧倒的に向かない作業だったと。レーナちゃんが引き継いだみたいだけど、どうかなぁ~出来るのかなぁ~……。まあ、集中力が必要な作業みたいだし、見に行って邪魔しちゃ悪いから私達は海に行こう! 海!


「見に行ったら邪魔になりそうだね。海、行こっ!」

「行きましょうっか!」

「今日はレベリング目的だから、1階から?」

「そうですわね! 赤い方が多く出ると嬉しいですわねぇ~……」

「前は出たら顔面蒼白になるような相手だったんだけどね~」

「今は美味しいごはんですわ!」

『わんっ!? (ごはん!?)』

「お前、その言葉だけは覚えちゃったのね……。まだごはんじゃないよ、それにさっき食べたでしょ?』

『くぅぅん……? (じゃあ、おやつ……?)』

「おやつもないの。海で頑張って戦ったら、ご褒美ね」

『わううん!!! (やるやるっ!!)』


 どん太め、ペルちゃんの『ごはん』に反応するとは。その言葉には鋭く反応するようになったなぁ……。段々と私以外の言葉もちょっとはわかるようになって来たみたいだし、ちょっとずつ頭が良くなってるのかなぁ~。その内喋りだしたらやだなぁ、どん太はわんわんくぅんくぅん言ってて欲しい……。




◆ うみのどーくつダンジョン・1階層 ◆




『ワゥゥゥゥン!!!!!! (最初から出るなんて聞いてないよ~~!!!!)』

『出ちゃったんだから仕方ないでしょ!! 走れぃ!』


 いやぁ、最初のペナルティモンスターから赤い方が出てきちゃいましたよ、どん太くん……。とりあえずどん太にアイギスを張って、どん太のおケツが炙られてる内は問題ないから……あーどうしよ、前はレーナちゃんにやっつけて貰ってたけど、これどうすれば倒せるんだろ。

 リアちゃんローラちゃんは空中を高速飛行、ねーさんとおにーちゃんとペルちゃんがどん太の背中の上、私がどん太の影の中、千代ちゃんがどん太と並走してクリムゾンブラスター時はどん太を盾にしてガード……。うーん、どうするべきか。


「リンネ殿、聞こえますかっ!」

『姫千代の影にワープしました』

『聞こえるよ~。どうしたの~?』

「おお、頭に直接……!? あの赤い巨大魚は、どこが弱点なのですかっ! 緋影御前を抜かぬとなると、弱点を斬るしかありますまい!」


 あ。あ~~~~…………。弱点のこと、千代ちゃん達知らないじゃん!! 言うの忘れてた~~!!!! 昨日情報共有の大切さをヒシヒシと感じてたばっかりなのに! いや、もう長い付き合いな感じがしてここにも一緒に来たもんだと勘違いしてた。知らなきゃ倒せないよねぇ……!


『あの光線を発射する前に開けた口の中! ピカッと光る玉みたいなのが弱点だよ、言うの忘れてた!』

「承知ッ!!!」

『ギュァアアア!!! ギュァアアアア!!!』


 ヤバい、まっさつしゃーちがクリムゾンブラスター撃ってくる合図だわ、これも教えてない! あ~んもう、へっぽこなんだから私~~!!!


「これで御座いますか。はぁああ……!!!」

『姫千代が【妖狐化】しました。全ステータスが3倍になります。徐々にHPが減少します』

『ギュァアアアアア!!!!!』

「ッ!!!」


 うわ、妖狐化した時の千代ちゃん、はっや……!? 踵を返してどん太のお尻を踏み台に、一直線にまっさつしゃーちに突っ込んで行くんだけど! これ、間に合う!? 間に合ってよ!? 一応水月で保険とかかけてるよね!?


『姫千代が【一刀断鉄】を発動、クリティカル! まっさつしゃーち(Lv,111)に112,151ダメージを与え、撃破しました。経験値 7,999,999 獲得』


 おおお、おおお……! 一撃、一撃だぁ……! でもクリティカルじゃなかったら多分、もう一発掛かってたかなぁ? でもこれで無事に一体目、しかも経験値1.2倍バフも乗って凄い美味しいじゃーん!


『どん太がレベル48に上昇しました』

『オーレリアがレベル38に上昇しました』

『オーレリアがレベル39に上昇しました』

『オーレリアがレベル40に上昇しました』

『フリオニールが――――』

 …………

 ……

『フリオニールがレベル25に上昇しました。レベル限界です。進化しましょう!』


 あ、おにーちゃんごめん、ログが滝のように流れてうるさい。


『レベルアップ表記を最終レベル時点に設定変更しました』

『姫千代がレベル14に上昇しました』

『トルネーダがレベル15に上昇しました』

『ローレライがレベル7に上昇しました』

「おおーさすが千代ちゃん……! みんなもおつかれおつかれ!」

「なるほど、そのタイミングなんだね? 次からは攻撃に合わせて号令を出そうかね」

「ふぅ、片付きました! どん太殿も、沢山走ってお疲れ様です。トルネーダの号令があれば、瞬間的に力が湧きますからね、是非! 今度は此方が一撃で葬って見せましょう!」

『わふぅ……(赤いの疲れるよう~……)』

「お疲れ様です、どん太さんっ」

『(´;ω;`)』


 うわぁぁぁぁ……! 千代ちゃんとローラちゃんのレベル上昇、渋すぎない!? レアっていうか、上位の職に就いてる系の子のレベル伸びが強烈に悪いんだけど!? 

 まあまあ、まあ! 倒せたしレベルが上がったのは良いことだから、前向きに考えよう! それよりおにーちゃんが進化出来るってさ! どれ、進化先を見てみようかね。


【デッドガーディアン】(不死属性・無形系・中型)

・死して尚主君を守ることに全てを捧げる首なし騎士

・主に防御面のスキルを習得し、更に頑丈さが増す


 おーこれ結構良くない? 攻撃面より防御面が優秀になるのはおにーちゃんのスタイルに合ってるんじゃない? とりあえず他も見てみようか?


【ブラッディナイト】(闇属性・死霊系・中型)

・多くの血を浴び、肉体を取り戻した――――


 あ、却下。次次次次!!


【★魔神兵】(闇属性・無形系・中型)

・魔神バビロンに祝福された首なし騎士

・強い信仰心と強靭な精神力から魔術系回復スキルを習得する

・聖属性の弱点を克服する【魔神の祝福】を習得し、聖属性ダメージが等倍になる

・多彩な攻撃スキルに状態異常が付随し、戦況を有利に進めることが出来る


 はいこれ。これね、おにーちゃんこれでーーーす。決まり、文句ある? ないよね? 魔神兵ね君。当たり前だよねぇ!? だってバビロンちゃんに祝福されてるんだよ!? ありがたいなんてもんじゃないよねぇ、ねえおにーちゃん!!!??? そら、進化だ! 進化しろーーー!!!

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