うみのどーくつダンジョン・3 ~絶対に許せないヤツ~

◆ リンネ、ペルセウス・うみのどーくつダンジョン【4階層】 ◆


 こんなに見つからないこと、ある……? ってぐらい3階層のポータルが見つからなかった。なんせポータルの位置はランダム、そしてこの広さに加えてマップの端が一目でわからない景色。ミニマップに歩いた位置を記憶させる機能をONにしてローラーして、ようやく発見出来た。

 結果、ポータルがあったのは3階層のスタート地点から対角線上に反対側のマップ端。しかも大きな石の影。こんな悪意のあるポータル生成許されるんかぁ……?! 許されんよなぁ……! 何回あの憎きヤバイカに囲まれたことか。オーレリアちゃんがしれっと1回殺されたわ! 絶対許せんよなぁ?!


「それにしても、宝箱なんてありましたのねぇ……」

「1階と2階にもあったのかな」

「あったかも、しれませんわねぇ……」


 それと大発見! ローラー作戦をしていたら見つけました、宝箱! ぽつーんと木の宝箱があって、一瞬背景かなんかかな~って思ってスルーしかけて……。いや、背景かどうか確かめないと!! って正気に戻って確かめたら、実物でしたね!! これが1階、2階にもあったかもしれないと思うと、取り逃したのがショック過ぎる……。でももう戻れないし、仕方ないよね。ところで肝心の中身は『?服』、『?鎧』、『?本』だった。街に戻ったら鑑定しようね。

 

「あ、また居る……」

「相変わらず可愛いですわね、アレは……」


 さてモンスターに遭遇……したんだけど、このダンジョン内でとびっきりの癒しモンスターでした。こいつ可愛いんだよね……。

 その名も【マッチョマックスペンギン】。名前からしてマッチョそうだと思うでしょう? 実物を見て驚くなかれ……。この、ぽよんぽよんでむっちむちなでっぷりボディ……。うーーーーーん、デブペンギンッ……!! そのくせ、なんか『はいっダブルバイセップス!!』『はいっサイドチェストッ!!』みたいな感じでポージングして来る。


『マッチョマックスペンギンが【モスト・マスキュラー】を発動しました。効果はありませんでした』


 ほら、ポージングして来た。なんなんだこいつの可愛さは……。一体、何を見せつけようっていうんだ……。そのぽよぽよのボディで……。


『わうっ』

『どん太が【ぶちかまし】を発動、マッチョマックスペンギンに714ダメージを与え、撃破しました。経験値 12,320 獲得』


 そしてこの破格の経験値。弱い、可愛い、美味い……。どこぞのイカはこいつを見習って欲しい。マジで見習って欲しい。あのイカ作った開発スタッフ、絶対配置間違えてるでしょ。そしてこいつの性能もなんか間違ってるでしょ……。


「無情、どん太にふっ飛ばされて死亡」

「どんちゃん容赦ないですわ……」

『わうぅぅ~……(でも、モンスターだし……)』

「可愛らしいですけど、何をしてくるかわからないから倒すしか無いですよね……」

「なぁ~お」

「猫に同意」

「猫に同意ですわ……」

『きゅぅ~ん……(犬にも同意してよ~)』


 本当に、このペンギンだけ配置してくれないかな、このダンジョン……。あーーーーそんな事言うから来ちゃったよぉおおーーーアイツがぁああ!!!


「来ましたわね、ヤバイカ……!」

『グルァアアア!!!』

『どん太が【ぶちかまし】を発動、ヤバイカに625ダメージを与えました。スタン状態になりました』

「消えなさいっ!!!」

『ペルセウスがヤバイカに1,699ダメージを与えました』

『ペルセウスがヤバイカに1,691ダメージを与えました』

『ペルセウスがヤバイカに1,635ダメージを与え、撃破しました。経験値 10,220 獲得』

「納得行かないですわ!!! 経験値!!!」

「納得行かない……」

『くぅ~ん……』

「どうして……どうしてなんでしょうね……」


 本当にこのヤバイカ、許せない……。確殺コンボを見つけたからまだマシになったけど、どうして本当にこいつの経験値、あのペンギンより低いの……。納得行かない……。


「……なんか、めっちゃトゲトゲの来てるけど」

「あれは! あれは、ハリセンボンに見えますわね……」

「ハリセンボンって手のひらサイズだよね」

「膨らんでも、そうですわね……」


 今度はハリセンボン来ちゃったよ、しかもデカい。バレーボールよりちょっと小さいぐらい? うーんしっかし、可愛い顔してるな君も……。何でこのダンジョンのモンスターは全体的に可愛いんだ、ヤバイカも見た目だけは可愛いし……。


「あら、2匹居ますわね」

「とりあえず倒す?」

「ゆっくりこっちに来てますわね……。倒しましょう!」

「あ、他のモンスターも来てる……。こんな時は、オーレリア先生! おねがいします!」

「はいっ!! 怒り狂えし氷の牙よ、我が元に集いて氷塊となり、砕けて弾けよ! ブリザードクラッカーー!!!」


 ――――パァァァァァァァン!!!!!


 いやぁ……いつ聞いてもデッカイ音ですねえ、ブリザードクラッ


 ――――――バァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!!!!


「「「~~~~~っっっっ?!!!!!?!」」」

『~~~?!』

『絶対にユルセンボンが命の危機を感じ、自爆しました』

『絶対にユルセンボンが命の危機を感じ、自爆しました』

『ボーンシールドによりダメージを無効化しました』

『絶対にユルセンボンから1,000ダメージを受けました』

『オーレリアが死亡しました』

『黒猫ルナが身代わりになりました』

『オーレリアが復活しました』


 なんっちゅう、クソモンスターじゃコイツゥ~~~~~~?!?!?! 死ぬ間際に自爆したんですけどーーーー?! ってか、1,000ダメージ痛ったあああああああああああああーーーーーー?! ボーンシールド張ってなかったら即死じゃん?! いやぁあああ!!! オーレリアちゃん耐えられんで死んでるぅぅぅううう~~~!?


『絶対にユルセンボンの自爆に巻き込まれ、突撃、ウツボさん!が死亡しました』

『絶対にユルセンボンの自爆に巻き込まれ、彷徨うタコが死亡しました』


 しかも他のモンスターまで巻き込んで殺してるし、え、まさかこれ、経験値手に入らないの?! 手に入ってない!!! はぁ~~~~~~~~~~~~~?!?!?!?!?!?


「…………阻め、ボーンシールド」

『【ボーンシールド】状態になりました』

「嘘でしょう……。経験値手に入らないんですの、これ……」

「阻め、ボーンシールド……」

『オーレリアが【ボーンシールド】状態になりました』

「バットン……」

『オーレリアが使い魔【コウモリ】召喚を発動し、使い魔バットンを召喚しました』

「阻め、ボーンシールド……」

『どん太が【ボーンシールド】状態になりました』

『くぅ~ん……くぅ~ん……(痛いよ~……)』



 被害が、デカすぎるんだよね……。絶対許せないんだけど、絶対許せないよあのクソモンスター……。ペルちゃんはアイギスで無効化してるのを見るに、自爆で針を飛ばしてくるのはしっかり飛び道具扱いらしい。ここのダンジョン、ペルちゃん以外に厳しすぎない? というかペルちゃんがクソ行動に対する防御性能が高すぎるだけ? 一応、サメとかウツボに絡まれるとアイギス解けるし、極端に有利な場面で輝いてるだけかなぁ……。


「絶対に許せないんだけど、アレ」

「絶対に許せませんわ……」

『ガルゥゥゥゥ……(許せないよぉ~)』

「許せませんね……」


 ああ、だから、絶対にユルセンボンなのか……。名前……。お昼寝さんか、エリスさんか、両方かな……。二人からの強烈な殺意を感じる……。あれは、絶対に許しちゃならないモンスターだわ。絶対に許せんハリセンボン……!


「あれも、わたくしが殴ってもよろしくて?」

「飛び道具無効だけど、自爆の爆風とかはどうなんだろうね」

「どうでしょう……。不安ですわね……。アイギスより後にボーンシールドが発動しますし、最悪一発なら耐えれるとは思うのですけれど」

『くぅ~ん(この針抜いて~~)』

「どん太さん、ちょっと痛いですけど我慢ですよっ……えいっ!」

『きゅぅぅ~ん(毛に絡まって気持ち悪かった~!)』


 とにかく、次出てきたらペルセウス先生にお願いしよう……。オーレリアちゃんの広範囲殲滅が逆に危ないヤツが出てきたのは、本当に困るなぁ……。


「オーレリアちゃん、ほうきにマナをチャージする方法、わかる?」

「えっと、わかりますっ! ぎゅーーーってすると、たまります!」

「私もオーレリアちゃんをぎゅーーーーってしたい」

「えっ」

「ごめんなんでもない……。で、今度からそれでスプラッシュショットを使ってみよう」

「わかりました。ブリザードクラッカー、危ないですもの」


 オーレリアちゃんの攻撃方法を変えておこう。オーレリアちゃん曰く、ほうきにぎゅーーーってするとMPチャージが出来るらしい。ぎゅーーーのところ、凄い可愛かった。うーんかわいい……。うわ、居る……! 可愛いけど可愛くないやつ!! うわアイツも居るーーー?!


「ヤバイカに、絶対にユルセンボンがセットで居ますわね……」

「うっわぁ……。地獄絵図だぁ」

「では、行きますわ――――きゃあああああああああーーーーーーーー?!」

「うわあああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」


 ヤバイカあいつ、ふざけんな――――!!!!!


『ヤバイカが絶対にユルセンボンを掴み、【スミバズーカー】で発射しました』


 クソコンボ過ぎる、クソコンボ過ぎるってこれーーーー!!!!!


「ダメ元ですわ!! ア、アイギス!!!!!」

『ペルセウスの【魔盾アイギス】を解除されます。どん太が【魔盾アイギス】の効果で【ペネトレイト・1】状態になりました』

「どん太、庇え!!!!!」

『わ、わうぅぅぅ~~~』

『絶対にユルセンボンが命の危機を感じ、自爆しました』


 最悪のコンボ過ぎるでしょ、ヤバイカが絶対にユルセンボン発射してくるとか、本当に最悪なんだけどこれ!!! しかもしっかり自爆するしーーー!!! でもペルちゃんが機転を利かせた! アイギスをどん太に張って、どん太の影に全員隠れればボーンシールドも消費せずに済む!


『どん太がダメージを無効化しました』


 ナイスどん太! でもあのイカ、自分はピンピンしてるのずるいでしょ!? 巻き込まれて死になさいよ!!! ふっざけてる、なんだあいつーーー?!


「どん太、ペルちゃんの代わりにアレ倒しておいで!」

『ガゥゥウウウ!!!!!! (やっつけてやる!)』


 ペルちゃんはアイギスを他の人にも張れるけど、ペネ1でしか張れないみたい……。しかも2枚以上は張れないから、どん太に張ると自分のは剥がれるっぽい……。というわけでどん太、君の出番だよ。


『どん太が【ぶちかまし】を発動、ヤバイカに558ダメージを与えました。スタン状態にしました』

【どん太が【二段掌】――――』


 あ……。このダメージ量、間違いねえですよ…‥! どん太、ヤバイカと泥試合だわこれ……! ダメージログがうるさくなるから、倒せるまで簡略化っと…………。


『どん太が【二段掌】を発動、ヤバイカに致命傷を与え、撃破しました。経験値 10,100 獲得』

『わふ……わふ……(疲れた……)』

「おつかれおつかれ。よしよし……」

「どんちゃん、お疲れ様ですわ。アイギス!」

『ペルセウスが【魔盾アイギス】を発動し、【ペネトレイト・3】状態になりました』

「どん太さん、お疲れ様ですっ」

『わう~……』


 よしよし、よくやったどん太。偉いぞっ……。ダメージログを戻しておこう……。しっかし、ヤバイカめ……。連携までしてくるとは、とんでもないレベルの害悪だわアレ……。そして絶対にユルセンボンがなんで『絶対に』って付けられてるのかこれで本当に理解できた。許せるわけないわ、あんなの。


「絶対にユルセンボン、何かしら弱点はあると思うんだけどなぁ……」

「そうでなければ困りますわ……」

「範囲を広げた状態で、遠距離からブリザードクラッカーを当てずっぽうで発動しては、どうでしょう?」

「アリ、かもしれない」

「アリですわね! やってみましょう!」


 なるほど、オーレリアちゃんの案に賛成。ちょっとのことで命の危機を感じそうなヤツだし、遠距離から広範囲にブリザードクラッカーを撃てば勝手に自爆するかも。というわけで、やってみよう!


「やってみますっ! 怒り狂えし氷の牙よ、我が元に集いて氷塊となり、砕けて弾けよ! ブリザードクラッカーー!!!」

『オーレリアが【完全詠唱ブリザードクラッカー】を発動しました』


 ――――パァァァァァァァァン…………!!!


「お~……。散弾形にも出来るんだ~……」

「これなら結構な広範囲に攻撃が行きそうですわね」

「威力は、落ちるんですけども……」

『わう…………?』

「ん? どん太、どうしたの?」


 広範囲のブリザードクラッカーは、まるでひょうが降るみたいにばらばらばらばらーーーっと落ちてくのね。威力は下がるけど、鋭い氷が勢いよく飛んでくわけだし、ダメージにはなるにはなるよね。


『Weak!!! 凄いタフなサメさんが755ダメージを受けました』

『Weak!!! 彷徨うタコさんが721ダメージを受けました』

『Weak!!! マッチョマックスペンギンが955ダメージを受け、死亡しました。経験値 10,550 獲得』

『Weak!!! 突撃、ウツボさん!が752ダメージを受けました』

『絶対にユルセンボンが491ダメージを受け、死亡しました。経験値 10,550 獲得』

『Weak!!! ヤバイカが720ダメージを受けました』

『絶対にユルセンボンが493ダメージを受け、死亡しました。経験値 10,180 獲得』

『Weak!!! 突撃、ウツボさん!が732ダメージを受けました』

『Weak!!! 凄いタフなサメさんが815ダメージを受けました』

『Weak!!! ヤバイカが721ダメージを受けました』

『絶対にユルセンボンが491ダメージを受け、死亡しました。経験値 9,880 獲得』

『Weak!!! ヤバイカが722ダメージを受けました』


 おーかなり広範囲に撃っただけある。結構な数の絶対にユルセンボンが死んでるわー! はー気分いいわーーー!!!


「あっ……! あっ……!! ま、まずいですわ!!!」

「ん? ユルセンボンが死んでるから良いんじゃない?」

「これ、全部こっちに来ますわよ?!」

「あっ……」

「あっ」

『わうぅぅぅう~~~~!?』


 はーーーーーーーーやっばぁあああああーーーー!? これ、そうだよね?! 全部ターゲット取っちゃったよねぇ?! 全部来るじゃん、こっちに!!! 周りに居たモンスターを全部集めたようなもんだよねぇこれーーー?!


「オーレリアちゃん!! もう一発!!!」

「は、はい!! 怒り狂えし氷の牙よ」

「来ましたわーーー?! こうなったら応戦ですわよ! ハイパースラッシュ!!」

「どん太! オーレリアちゃんを守って!!」

『わんっ!!! (わかった~~!!!)』

『ペルセウスが【ハイパースラッシュ】を発動、ヤバイカに2,997ダメージを与えました』

『ペルセウスが【ハイパースラッシュ】を発動、ヤバイカに3,112ダメージを与え、撃破しました。経験値 10,350 獲得』

『レベル45に上昇しました。おめでとうございます!』

『ペルセウスがレベル45に上昇しました。お祝いしましょう!』

『どん太がレベル30に上昇しました。これ以上レベルが上がりません! 進化しましょう!』

『ヤバイカが【スミバズーカ】を発動しました』

『オーレリアがレベル22に上昇しました』


 ごめん今それどころじゃないわ!


「我が元に集いて氷塊となり、きゃあ!!!」

『オーレリアが【ウツボまっしぐら】を受け、ボーンシールドがダメージを無効化しました』

『オーレリアが【シャークタックル】を受け、320ダメージを受けました』

「阻め、ボーンシールド!」

『オーレリアが【ボーンシールド】状態になりました』

「どん太!!! なにやって、あああああーーーーー!!!」

『わうわうわうわう~~~(前が見えないよ~~~!!)』

『どん太が【スミバズーカ】により暗黒状態です』


 なんだこりゃ、阿鼻叫喚過ぎる、なんだこりゃ……。どうすりゃええの……。おごっっ……!?


『【ウツボまっしぐら】を受け、ボーンシールドがダメージを無効化しました』

『【シャークタックル】を受け、328ダメージを受けました』


 お、おのれ、本体を狙ってくるとは卑怯な……! ええい、かくなる上は、これよ!!


「沈め、ネガティブオーラ!!」

『【ネガティブオーラ】を発動しました』

『どん太がネガティブオーラで強化されます』

『オーレリアがネガティブオーラで強化されます』

『ペルセウスがネガティブオーラで強化されます』

『突撃、ウツボさん!が【混乱】【麻痺】【呪い】状態になりました』

『凄いタフなサメさんが【混乱】【麻痺】【呪い】状態になりました』

『ヤバイカが【混乱】【呪い】状態になりました』

『ヤバイカが【混乱】【呪い】状態になりました』


 ―――― ん゛ っ゛ ? ! なんか、前は無かった効果、付いてない?! 強化とか、知らない効果出てるんだけど!?


「たぁあああ!! ハイパースラッシュ!!!!」

『ペルセウスが【ハイパースラッシュ】を発動、ヤバイカに3,665ダメージを与え、撃破しました。経験値 10,660 獲得』

『ペルセウスが【ハイパースラッシュ】を発動し、クリティカル!! ヤバイカに5,555ダメージを与え、撃破しました。経験値 10,680 獲得』

『わうっ!! (見えるようになった!)』

『どん太が【二段掌】を発動し、凄いタフなサメさんに777、790ダメージを与え、撃破しました。経験値 12,500 獲得』


 お、おお……。なんか、起死回生の一手に、なったんじゃない?!


「砕けて弾けよ! ブリザードクラッカーー!!!」

『オーレリアが【詠唱省略・ブリザードクラッカー】を発動しました』

『Weak!!! 凄いタフなサメさんが2,998ダメージを受け、死亡しました。経験値 12,770 獲得』

『Weak!!! 彷徨うタコさんが2,711ダメージを受け、死亡しました。経験値 12,910 獲得』

『Weak!!! 突撃、ウツボさん!が2,660ダメージを受け、死亡しました。経験値 12,880 獲得』


 オーレリアちゃんが特に、詠唱省略でこのダメージ!! 強い!! 強化倍率これ高くない?! ええ、ええ……。私も戦おう!


「穿て、カーススピア!」

『【カーススピア】を発動、weak!!! 突撃、ウツボさん!に371ダメージを与えました。呪い状態にしました』


 はい。


「これで、最後ですわね! とりゃぁ!」

『ペルセウスが突撃、ウツボさん!に2,145ダメージを与え、撃破しました。経験値 12,220 獲得』


 はい。


「ふぅ~……。なんとか、なりましたわね……」

「オーレリアちゃん、ごめんね。私達の判断ミスだわ……」

「いえ、私も、こうなるって予測できなくて……。ごめんなさい!」

「うんうん、いいのいいの……。ごめんねぇ……よしよしっ……」


 これで良いのでしょうか。私、とっても置物です。たまーにシールドを張ってくれるタイプの、微ダメージ発生装置です。呪い撒き散らし装置です。あ、でも強化が出来たね。何でだろ?


「ネガティブオーラは、不死と闇属性の相手には逆にプラス効果が発生するようですわね……。わたくし! いつの間にか闇属性を獲得していましたわ!」

「あ~。じゃあどん太とオーレリアちゃんは不死属性だからか……。なるほど、消費は少ないし、今度からは積極的に使うね」

「それが良いですわね! 巻き込みの心配もありませんし、撃ち得ですわ!」

「私がどんどん置物化していくな……!」

「バッファーの存在は重要でしてよ? とても貴重ですわ!」


 なるほど、闇と不死属性はネガティブオーラで強化されるんだ…………私以外。そう、私以外! これ、ログを良く見たら私は強化されてないんだよね! っく、くそう……。


『わうっ!! (進化!)』

「あ、そういえば進化出来たね。えっと、あ~……。ごめんどん太、帰ったらじゃないと素材がないから無理そう。後で確認するから!」

『わんっ! (わかった!)』

「あら、もう進化ですの! それにわたくし達もレベル45になりましたわね……。帰ります?」

「え、途中で帰れるんだ」

「パーティリーダーがリタイアを選択するか、メンバー全員がギブアップを押すと帰れますわ! せめて5階層を見つけてからと思ったのですけれど、ちょっと厳しそうですから出直しましょう」

『わうぅう? (乗って、ポータルに飛び込む?)』

「どん太に乗って、ゴリ押しでポータル潜ろうか? だって」

「ん~っ……。デスペナルティは経験値3%だけですし、それもいいですわね……」


 どん太のレベルがカンストしちゃったし、進化素材は☆3魔晶石10個以外は見たこと無いし、丁度レベル上がったばっかりで切りが良いし! デスペナも経験値だけなら、どん太に乗ってゴリ押しでポータルを潜っちゃおう大作戦、というわけで!


「――走れ、どん太!」

『わおぉ~ん!!!』


 海中散歩、どん太の背中に乗ってゴリ押しの旅! さあ、ポータルは見つかるでしょうか~~~~!!!


「あ、宝箱!!!」

「絶対にユルセンボンがいますわ!!」

「爆速で回収すれば、ギリ行けるかも?!」

「どんちゃん、宝箱に突撃ですわ!」

「はわわわ、はわわわわ……」

『わおぉぉぉおおん!!! (後ろからいっぱい来てるよ~~?!)』

「「宝箱は命よりも重いっ(ですわっ)!!!」」

『きゅぅぅ~~ん……』


 ポータルより先に宝箱発見! デスペナ払えばいいだけだ、最悪死んでもいいから回収!!


『【?長杖】を獲得しました』

『【?アクセサリー】を獲得しました』

『【?本】を獲得しました』

『絶対にユルセンボンが命の危機を感じ――――』

「逃げろどん太!」

『わうぅぅぅうううぅ~~~!!!』


 よし、逃げ切ったーーー!!! このままポータルを、探しきれば――――ッッ?!


「な、なんですのアレは!?」

「で、でかい!!」

「砕けて弾けろ!! ブリザードクラッカー!!!」


 な、なにかデッカイのが追いかけてきてる?! え、何アレ、あんなのこの階層に居たの?!


『オーレリアが【詠唱省略・ブリザードクラッカー】を発動しました』

『weak!!! 殺戮者(Lv,99)が1ダメージを受けました』

「シャチ?! シャチだよアレ!!」

「さ、殺戮者……?! 未発見のモンスターですわ!!! それにレベル99?! 全然効いてませんわよ!?」

「あ、あっ……」


 ヤバい、絶対ヤバい、追いつかれたら死ぬ! 一発だけならボーンシールドで耐えれるかもしれないけど、その次が続かない!! でも一応、一応効くなら!! それに強いんじゃなくて、1ダメージ族の可能性あるでしょう?!


「穿て、カーススピア!!」

『weak!!! 殺戮者(Lv,99)が1ダメージを受けました。呪い状態になりました』

「どん太、絶対に追いつかれちゃ駄目!!」

『わうっ! わうっ!!!』


 呪いの効果で、若干ステータスが落ちるはずだし、AGIも下がる、はず。ちょっとだけだけど、距離は離せてる……氣がする!


『殺戮者(Lv,99)が呪い状態から回復しました』

「穿て、カーススピア!!」

『weak!!! 殺戮者(Lv,99)が1ダメージを受けました。呪い状態になりました』


 ポータル、ポータル、早く早く早く、雑魚モンスターには追いつかれないし、タフなサメよりもどん太は速いけど、あのシャチが呪い切れたら間違いなくどん太のほうが遅い。追いつかれる。名前がまずヤバいもん、殺戮者って何よ?!


『殺戮者(Lv,99)が死亡しました。経験値 999,999 獲得』

『おめでとうございます! 貴方がMVPです! MVP報酬【さつりくしゃのぬいぐるみ】』

『レベルが46に上昇しました! おめでとうございます!』

『レベルが47に上昇しました! おめでとうございます!』

『ペルセウスがレベル47に上昇しました。お祝いしましょう!』

『オーレリアがレベル26に上昇しました』

「…………」

「…………」

「えっ」

『わうっ?!』

「えっ……。ダメージ1族?!」

「ええ……。ええ……?」


 うそ、死んだ……? ストーンアーマーキングスライムより、弱くない……? あ、MVP報酬のぬいぐるみかわいい……。いや、いやいや。えっ?


「エリアボスじゃない!?」

「宝箱がありますわ! どんちゃん!」

「どん太、宝箱は命より重い!!!」

「どんちゃん宝箱ですわ!!」

『くぅぅ~ん』


 いや、倒せたなら、宝箱出てるはず、この表示はそう。出てる! あった! ある! しかも銀色だーーー!!!


「あれは絶対取らないと駄目!」

「絶対取りますわ!!!」


 ヤバイカが大群で来てるけど、アイテム回収のほうが早い! 回収回収回収ーーーーっ!!!!


『【?クロー】を獲得しました』

『【?槍】を獲得しました』

『【?家具】を獲得しました』

『【王者の証】を獲得しました』


 あーーー駄目だ、ヤバイカが全員ユルセンボン咥えてるーーー!!!


『リタイアが選択されました』

『リタイアポータルを展開します』

『記録中……。うみのどーくつダンジョン 4 階層まで到達しました』

『お疲れ様でした。30秒後に自動でダンジョンの外へ転送されます』

「流石にあの数はどうにもなりませんわ! リタイアしましたわよ!」

「うん、ナイス判断……」

「ほっ……」

『わっふぅ……』



 リタイア!! ペルちゃんナイス判断~……。未鑑定品は、帰ってからだね。いやぁ~頑張った、よく頑張った……。ヤバイカもユルセンボンもやばかったけど、最後の殺戮者……。本当あれは一体なんだったの。


「あ、未発見モンスターを撃破しましたから、命名権が貰えて、詳細情報が見れますわよ!」

「本当だ、インフォメーションが更新されてる。殺戮者……えっ」

「あっ……なるほど……」


 殺戮者のインフォメーションが見れるようになってたから、転送前に確認しとこうって思ったら、これは……。なるほどね……。




【殺戮者 → さつりくしゃーち】

・HP200 ・MP∞ ・超硬モンスター

・非常に速いスピードでダンジョン内を進んだプレイヤーを検知すると追いかけてくるペナルティモンスター。スクリュータックルを仕掛けてくる。

・スクリュータックルは多段ヒットする斬、打属性の複合スキル。



 こいつ、ペナルティモンスターらしいです……。

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