森は危険がいっぱい
◆ リンネ・ペルセウス、ターラッシュ南の森にて ◆
「そぉりゃぁあああああああ!!!!」
『ペルセウス(Lv,11)がフォレストゴブリン(Lv,15)に197ダメージを与え、撃破しました。経験値 330 獲得』
「ゲゲ、ギャァアアー!!」
「無駄無駄ァーーー!!!!!」
『ペルセウス(Lv,11)が【乙女の突進】を発動し、フォレストゴブリン(Lv,15)に271ダメージを与え、撃破しました。経験値 330 獲得』
『どん太(Lv,7)がフォレストゴブリン(Lv,15)に315ダメージを与え、撃破しました。経験値 495 獲得』
はい、森にやってきました。どん太とペルちゃんが強い、強すぎる。この森でキルスコアトップがどん太、2位がペルちゃん。その比率は大体6対4ぐらい? 私、ゼロ。ゼロキル。完璧に置物です。本当に、本当にありがとうございました。
「余裕ですわねー。やっぱりもう数段強いモンスターを狩りに行っても良いかも知れませんわね」
『わうわう(弱い~)』
「お前達が強すぎるだけだと思うんですけど」
「そうとも言いますわね! ちなみに森を抜けた後はジードの街で、本命はその先の都市に用事がありますの。最初は徒歩でしか行けませんし、歩き狩りがてらですわね」
「じゃあ森さ、どん太に乗って抜けちゃおうよ」
「…………乗れますのーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!??????」
『わうぅん!! (乗せるよ!)』
「ほら、乗って良いって」
それにこの森も経験値的に微妙、次のレベルまで20k(1k=1,000。1キロってこと。つまり2万経験値)以上必要だし、ここで300とか400とか500で稼いでたら効率が悪い気がする。
「リンネさん、このゲームは未だに乗り物とかは馬車と馬止まりで、ペットとかに乗れるシステムは見つかって居ませんのよ?!」
「へえ~。でもどん太は大きいし、乗れても不思議じゃないでしょ。大型モンスターだと乗れるとかじゃない?」
「大型モンスターだと乗れる……。なるほど、大型ペットが見つかればもしかしたらペット騎乗とか見つかるのかしら……。あ、どんちゃん? 乗せて頂きますわね?」
『わぉ(いいよ!)』
「意外と乗り心地が良いけど、振り落とされないように屈んでたほうが良いかも。木の枝とか、当たり判定あるでしょ? 絶対痛いから」
「確かに、そうですわね! あらでも二人乗りしても良いのかしら……」
『わぉわぉ(二人までなら平気だよ!)』
「二人までなら良いって」
「でしたら、わたくしが前に乗りますわ! さあ、わたくしにギュッと掴まって居てくださいまし?」
「んっ……」
――ということなので、この森はとっとと抜けることに。どん太は二人乗りまでオーケーみたいだから、ペルちゃんの後ろに乗ってギュッと抱きついて振り落とされないようにしておこう。道すがらモンスターが狩れそうならカーススピアを撃っても良いかもしれない。
「どん太、このまま真っ直ぐの方向に走って。低い枝に気をつけて、強いモンスターが居たら逃げるか気づかれる前に降りて交戦。良い?」
『わぅわ……(指示がいっぱい、むずかしい、でもわかった!)』
「…………ワーグは賢いはず」
『きゅぅぅーん……(がんばる)』
「人語が通じる時点で十分賢いと思いますわよ……?」
「……確かに!!! どん太、お前凄いね! 賢いわ!」
「わぅぅぅううぅぅう~~~♡」
どん太が便利だ、どん太が便利過ぎる。便利過ぎて人語での命令が通じること自体が凄いってことを忘れてた。そうだ、どん太は私に負けるぐらい鈍くさいからどん太だったわ。どん太に対して求めるレベルが高くなりすぎてた、反省反省……。お前は馬鹿っぽい可愛さと、もふもふが売りだったわね。さあ、行けいどん太ぁ! 森を抜けるのだ~!
◆ ◆ ◆
――――ターラッシュ南の森はとある事情を抱えた人間には絶好の森だった。モンスターは弱いが無視できない程度に数が多く、そして騒がしい。そんな面倒な森を態々好んで通る理由は通常ではほぼ存在しない。故に、身を隠して追っ手から逃れたい者には好都合な森だった。
ある日、この森を隠れ蓑にして通る者達が居た。追っ手はこの者達を見失い、次第に日も沈み、方向感覚も失われつつあった。完全にこの森から抜け出せなくなる前に追っ手は引き返し、一行は難を逃れた――――はずだった。
ここにあるのはその一行の亡骸。この森のモンスターに負けるはずのない実力を十分に持ったはずの彼らは、一体なぜここで死んでしまったのか。肉体はゴブリンに食い漁られ、致命傷となった傷跡の痕跡などは見つけられない。
あなたはこの奇妙な白骨死体を発見した。気になるのであれば、その死の謎を解明しても良い。
◆ ◆ ◆
「止まれ、どん太」
――――なんか変なムービーが一瞬入ったと思ったら、これクエストってやつかな? なるほど、確かにあるわ、白骨死体。ただ遺留品全く無し。白骨死体しかないんですけど。
「……ああ、ありましたわね~これ。これは【謎の白骨死体】ですわね。未だに誰もクリアしてない回数制限クエストで、それは一度誰かがクリアしたら終わりのタイプですわ」
「ふ~ん……」
いやいや、これでクリアしろってクエストのほうが無理があると思うんですけど。せめてなんか証拠品とかあれば話は別だけど、無理でしょこれ。
「気になりますの?」
「気になる。それにムービー中に言われてたけど、実力はあったんでしょ? 起こせたら使えるかも」
「起こ……す?」
「あ、そっか。見たこと無いもんねそういえば」
こういうクエストで必要な白骨死体とか普通は動かせないけど、もしかしたら動かせるかもしれないし。それに生前それなりに強かったってわかってるなら、起こせたら本当にラッキーだし。どれか一体ぐらい起きないかな。
「起きろ」
『この白骨死体には使用不可能です』
「起きろ」
『この白骨死体には使用不可能です』
「起きろ」
『この白骨死体には使用不可能です』
「起きろ~~~」
『この白骨死体には使用不可能です』
ん~やっぱり駄目か。残りはこの小柄な白骨死体だけなんだけど……。
「起きろ~~~~」
『…………(カタッ)』
「起きた!」
「お、起きましたわ!!!」
動いた、動いた! えーマジかーーー! これだけオッケーなんだ、ええ~~~~~~!!!
『★スケルトン・ウィッチが貴方の従者になりました。名前をつけ――――名前は【オーレリア】です』
勝手に名前付いたんですけど……。ああ、生前の名前か。それにしてもスケルトン・ウィッチね~……。魔女さんだったんだ。あ、丁度いいのが色々あるから与えとこ。
「名前、オーレリアだって。魔女みたい。オーレリア、私の従者になったからには働いて貰うからね」
『(こくりこくり)』
「はわ~……。こうやってアンデッドが出来ますのね~。NPCからも出来るなんて、便利ですわね~」
「とりあえず武器と、防具ね」
『(!!!)』
魔女のローブ、アンダーアーマー、魔女の帽子、魔術師の杖、レザーブーツ。とりあえず一式与えておけば、あら後ろから見れば魔女っぽく見える不思議ー! 正面からみたらまんま骸骨だけどね。
『わうっ!!』
「あ、早速ゴブリン発見。オーレリア、あれやっつけてみてよ」
『(こくりこくり)』
「どんな魔術を使うか、楽しみですわね~」
さて丁度お誂え向きな奴が出てきたし、オーレリアの能力を見せてもらおうじゃないですか? どんな魔術を使うのかな~?
『…………!!!!!!!!!!!!!』
「え? なにしてるの? ゴブリン来てるけど」
「あら? あらあら……?」
『(ふるふるふるふる)』
「めっちゃ首振ってるけど?」
『わぅぅん?!?! (オーレリア、戦えないって! 言葉が出ないから!)』
…………魔術、そうだ、そうか、起動ワード…………。
「「えええええええええええええええええ~~~~~~~~~~~~」」
『わっぅん!!!』
『どん太(Lv,7)がフォレストゴブリン(Lv,15)に384ダメージを与え、撃破しました。経験値 495 獲得』
『(ぺこぺこぺこぺこ)』
オーレリア、めっちゃ謝ってる……。魔術が一切使えない魔女、大復活の巻……。そうか、起動ワードが唱えられなくて常時沈黙状態みたいなもんなんだ、オーレリアは。え、もしかしなくても完全にお荷物では? 超いらない子疑惑あるな?
「…………どん太、お前より鈍くさい奴が後輩になったよ。やったね」
『(ぺこぺこぺこぺこ)』
『わうぅぅ~~(進化 待つ?)』
「ああ、進化……進化かぁ」
「進化? つまり上位種になればこの状態を脱する可能性があるということかしら」
「そうだといいけど……。まあ、起こしたからには育てようか、うーん……」
即戦力になったどん太と違って、オーレリアは大器晩成型と見るべきか、本当にいらない子の可能性もあるな……。どうしよう、どうしようなあ~……。
『わうわっ!! (僕 オーレリアの分 頑張るよ!)』
「どん太がオーレリアの分も頑張るか~~。先輩として頑張っちゃうか~~」
「良いんじゃありませんこと? パーティ扱いでパーティボーナスも入るようですから、経験値はむしろ増えますわよ!」
「え、頭割りじゃないんだ」
「そう! 今までは3人で321%を頭割りでしたけど、4人なら440%を頭割りで1人あたり110%になりましてよ!」
「ほえ~。じゃあ人数が増えるデメリットはないか~……あ、どん太が2人乗りだったわ」
『わんわんわうわうっ(オーレリア 骨だから 軽いし 大丈夫!)』
「じゃあ、大丈夫か~……オーレリア、頑張って進化するのよ! 目指せ、肉のあるボディ!」
『(こくりこくり、ぺこぺこ)』
オーレリアを使役するデメリットもなさそうだし、じゃあパーティに加え入れましょうか。そんじゃ、ここから……うん?
『…………』
「あ~……お仲間さんだったんだもんね。埋葬、しようか?」
『…………(ぺこぺこ)』
『わんっ!! (穴掘り 得意だよ!)』
オーレリアがお仲間の埋葬をして欲しいみたいだし、してあげようか。穴掘るのはどん太に任せて、私はなんか墓標になるものでも探してあげよう。ちょうどいいサイズの石とかないもんかな。
『ワオーン!!!! (なんかあったよ!)』
「うん? どん太、何を見つけたの?」
『!!!!!!!!!!!!』
おや、おやおや~……。なんか宝石ごってごてのネックレスが出てきましたよぉ~……絶対高い。お金になる。偉いぞどん太!!
『?ネックレス(未鑑定)を手に入れました』
『…………』
「オーレリアのだった? これ」
『…………(ふるふる)』
「じゃあ私が貰って良い?」
『(こくりこくり)』
アクセサリーを手に入れたのは偉い、偉いんだけど、装備品は未鑑定品の状態だと性能も何もわからないんだよね。装備しても『未鑑定品のアクセサリー』ってしかならないし、一応効果自体は発揮してくれるんだけど。なんか平常時でも効果を発揮してくれる系の装備だと良いんだけど。
『?ネックレスを装備しました』
『?ネックレスは呪われている!!!!!』
『?ネックレスを外せません』
…………やった。やっちまったぁぁ…………!!!
「あら? リンネさん? もしかして今のエフェクト、呪い装備じゃありませんこと?」
「…………はい、そうでーす!」
「あら~~~。しかも未鑑定品! 何の効果が出る呪い装備かもわからないじゃあ御座いませんの!?」
「はい、そうでーーーーーーーす!!!!!」
『わうぅ……』
「お前は悪くないぞどん太、私が無警戒に着けたのが悪いんだ」
『(ぺこぺこぺこぺこ)』
「オーレリアも、私が悪いんだから……。あー喋れないって不便ねー貴方!」
『(ぺこぺこぺこぺこ)』
呪い装備だったよ、ネックレス……。白骨死体のある場所に埋まってたネックレスとか、そりゃあ呪われててもおかしくないよなあ! しかも宝石ゴテゴテたくさんとか、宝石とか貴金属は人の恨みとか買いやすいもんなあ!!!
はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~…………。
「まあ、HPとかMPが勝手に減る系でもないし、ステータスも減ってないし……。穿て、カーススピア!! よし、使える。問題なさそう」
「外せないだけの呪い装備かしら。外せない以外のマイナス効果が無いタイプの呪い装備もありますし、そのタイプかもしれないですわね」
とりあえず何の呪いがかかってるかわからないし外せないから、着けてるしかないか。それにしても鑑定ってどうやればいいんだろ?
「ん~そうだと良いけど。鑑定ってどうやるの?」
「都市の鑑定師にお願いする以外でしたら……。ジードの街の次のローレイという都市に到着したらわたくしが鑑定しますわ。消費アイテムガチャで手に入った課金アイテムが沢山余ってますの。街でしか使えないので我慢してくださいまし」
「ふーん……。ジードじゃ駄目なの?」
「ローレイはわたくしの所属しているギルドのホームですの。ギルドハウスもありますから、そこで誰にも見られずに出来ましてよ」
「はえ~。んじゃあそこまで行こー」
「そうですわね!」
宝石ゴテゴテネックレスの鑑定はローレイまでお預けか。とりあえずはよう到着したい。そんじゃまたどん太に乗って、いざローレイへ!!
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