ステラヴェルチェ・3 ~ブチギレてイカれた女・ぶっちぎりでイカれた女~

◆ ステラヴェルチェ・王の間 ◆


「エネミーサーチ、スタート」

『ミッチェルが【エネミーサーチ】を発動しました』

「ん……。この王の間だけでも、30を超える反応があります。どれも兵士などの魂のようですね。炙り出しの魔術は持っています、使えますよ」


 やっぱり、この王の間には無数の霊魂が漂っているらしい。カシュパはレベルが下がりすぎても一瞬の隙さえあればソウルドレインを使って、またレベルが元通りになってしまう。そうなればいくらつくねちゃん達が奮戦しててもキリがないし、疲れてくればカシュパが思い通りに動けるようになってしまう。長期戦は向こうも不利な要素が一部あるかもしれないけど、決めきれないとこっちの不利のほうが目立って来てしまう。


「ありがとうミッチェルさん! リアちゃん、さっきカシュパが使った魂を吸収する魔術、あれの解析出来ないかな? 私が詠唱しても、発動までには至れないかもしれないけどさ」

「わかりました、やってみますっ!」

「じゃあ……。星屑と散りし英霊達よ、我が糧となれ!! ソウルドレイン!!」

『【ソウルドレイン】の発動に失敗しました。資格がありません』


 なら、カシュパのアドバンテージを潰すしかない。魂が周囲にある限り無尽蔵に回復されるなら、その魂を消滅させるしかない。どうせここには今までいい暮らしを送ってきた兵士とか貴族の奴しか居ないんだし、消滅させたって胸も傷まない。


「発動に失敗しているのは、魔術陣にかけられた制限のようなものですね。なるほど、カシュパが発動しているわけではないようですっ! カシュパはあくまで起動だけ、発動したいと願い出て、他者がこれを発動していますっ!!」

「……なんでそんなややこしい事を?」

「ミッチェルさん、私はこのバトルログに違和感を感じてたんです。これです」

「これは……これが、何か……」


 そしてこの作戦の狙いはもう一つ。これは私が感じていた違和感なのだけど、このバトルログがおかしいなって感じてたんだよね。『蛇神カシュパ(Lv,214)に【リコンストラクション】が発動、蛇神カシュパ(Lv,206)が復元されました』、蛇神カシュパ“が”発動してるんじゃなくて、誰かに発動して貰って復元されているようなログ。もしかしたらカシュパは囮っていうか、わかりやすいターゲットとして置かれているだけで、カシュパを操っているような奴が周囲に潜伏してるんじゃないかって思ったわけ。


「――確かに、誰かに発動されているようなログですね」

「あ……! カシュパの両目、紫色の光が消えています! 耳にも紫色の宝石のイヤリングがありません!」

「ほぼ確定じゃない? あれは蛇神の本体じゃなくて、蛇神が傀儡にしてるカシュパで、本体は……周囲に居るはず」

「あれだけの攻撃で巻き込まれていないということは、特別な攻撃手段が必要ということでしょうか」

「リアちゃん、さっきの魔術を弄って攻撃系の死霊魔術に転用出来ないかな?」

「難しいですねっ……でも、やってみます。時間が欲しいです」

「では、時間を稼ぎましょう。聳え立て、ストーンウォール」

『ミッチェルが【ストーンウォール】を発動しました。周囲に石の壁が複数生成されました』


 ――――パリンッ!!


『遅いッ!!! ようやく駆けつけぶべぇ――――!!!』

『つくね☆が【フルスウィング】を発動、蛇神カシュパ(Lv,192)に1,776,452ダメージを与えました』

『蛇神カシュパ(Lv,192)が壁に叩きつけられ44,007ダメージを受けました』

「暗殺者ァ!? 暗殺者、暗殺者暗殺者ァ!!! 服装が、被ってるだろうがぁあああ!!!! ふっざけやがってぇええええええ!!!!!!!!!」

「げ、新手だぁ」

「約束は果たして貰うぞ、カシュパ」


 げ、新手が乱入して来た……。あの服装見たことあるな……。あ! ローレイの教会に居た、黒い影って連中のやつと一緒だ! ってことは、カシュパめ……裏でメルティス教会と繋がってたなぁ!?


『ぐっ……! 天使降臨の儀だろうがなんだろうが、ああ! やってやるよ! だからこいつらを始末するのを手伝――――ひぃいい!?』

「天使が手に入ればなんでもいい。アレは教団には手に余る代物――」

「天使だぁあああああああ!? ぶっ殺す、ぶっ殺す!!! 殺す殺す殺す!!! 悪魔のほうが可愛いだろうがぁああ!! 謝れぇえええ!!!!!」

「天使ぃいいい!? 降臨だぁああ!? つくねちゃんそいつ殺せぇえ!! 絶対殺せええ!!!」

「殺すッ!!!!!! 天使殺すッ!!!! 天使呼ぶ奴も殺すッッッ!!!!!」


 天使降臨の儀だぁ!? 絶対に阻止、絶対に殺す! こいつは殺す! なにが約束だクソ暗殺者、絶対殺す! 殺す殺す殺すっ!!!


「生ける屍と化せ、ゾンビパウダー! 深淵の脈動、ネガティブバースト!!!!」

『周囲にゾンビパウダーが発生しました』

『広範囲に負の領域が展開されます』

『合成魔術【ゾンビバースト】が発動しました!!!』

「あ……? なんだ、この深緑のモヤは……」

「た、隊長! 離れたほうが――――」


 もう遅いッ!!! 脱出不可能よッ!!!!!


「お、ちょうどいいところに」

「あ、が、ギャギャギャギャアアアアア……!!!」

「何が……ごはっ…………アァァァアァァッ……」

『暗殺者・漆黒のシトリ(Lv,95)が呪われました。ゾンビ化しました』

『暗殺者・漆黒のラウナ(Lv,95)が呪われました。ゾンビ化しました』

『暗殺者・漆黒のジュド(Lv,95)が呪われました。ゾンビ化しました』

『5分間、姫千代の全ステータスが+44されます』

『5分間、つくね☆の全ステータスが+44されます』

『5分間、お昼寝大好きの全ステータスが+44されます』

『5分間、オーレリアの全ステータスが+44されます』

『5分間、ミッチェルの全ステータスが+44されます』

『蛇神カシュパ(Lv,192)に効果がありませんでした』

『暗殺者・漆黒の…………』

 …………

 ……

『暗殺者・漆黒の長、クナー(Lv,110)が呪われました。ゾンビ化しました』

「出オチのゴミカス暗殺者ァ!!!! ご苦労様でしたァーーーー!!!!!」


 あーーースッキリしたァーーー!!! ざまぁ見ろクソカス暗殺者! 何が天使だ、天使の何が良いんだ! 天使を欲しがるような奴等は地獄に突き落としてやる!!!


「う~わ……。初手全滅だぁ。ねえ、カシュパさんどんな気持ち? あれが? 僕たちに何をしてくれるんだっけぇ~? ゔぁ~ゔぁ~言ってるよぉ~こわいよぉ~~」

『お昼寝大好きが【挑発】を発動、蛇神カシュパ(Lv,192)が【激昂】状態になりました』

『クソがぁああああああああああ!!!!!!!!!!!! アガァアアアアア――――!!!!!?』

「クソはてめぇだカシュパてめえおいッ!!! 天使ィ!? 天使だァ!? 悪魔呼べよ悪魔ァ!! 悪魔のほうがいいだろ悪魔のほうが、天使だこのクソ野郎がぁ!! おっらぁあああ!!!!!!」

『つくね☆が【フルバスター】、【フルスウィング】コンビネーション! 蛇神カシュパ(Lv,192)に合計2,993,135ダメージを与えました』

『蛇神カシュパ(Lv,192)に【リコンストラクション】が発動、蛇神カシュパ(Lv,186)が復元されました』

『つくね☆が【激怒・10】に到達。攻撃力2.0倍加算』

『つくね☆が【激怒・10】【高揚・10】を達成、【ジェノサイド☆オーバーキル!!!】状態に到達しました』

「ふぁ……! あ……!」

『つくね☆が【全ステータス強化状態】、【全スキル強化状態】、【最終攻撃力5倍】、【オーラ・8,600】、【ペネトレイト・86状態】になりました。ペネトレイト消滅まで継続します』


 あ……。つくねちゃんが、到達しちゃいけない領域に入ったっぽくない……? 一瞬、急に大人しくなったと思ったけど……違うわ。これはね、嵐の前の静けさってやつだね……? 今から、来るよ。嵐が。


『く、そ……! だが、無駄だ! 俺様は不死身だ!! 何度でも――』

「ヒャアアアアアアア!!!!! 来たァ!! 来た来た来た来た来たァ!!!」

『つくね☆が【★アースクエイク】を発動、蛇神カシュパ(Lv,186)が体勢を崩しました!』

『う、わ、ぁあああ!!!!』

「これは、今の此方でも妖狐化しても太刀打ちできるかどうか……」

「うっひゃーーーーー絶好調だ、絶好調だよつくねちゃん!」

「絶好調ぉおおおおおおーーーー!!!!!!!」

『つくね☆が【★ぐちゃぐちゃになれ!!!】を発動、蛇神カシュパ(Lv,186)に合計4,993,762ダメージを与えました』

『う、が、ぁ、ぁああああああぁぁああ!!!!』

「うるっせぇえええ!!!!! 黙って死ねぇえええ!!!!! やっぱり悲鳴を上げろぉおおお!!!!!」

『つくね☆が【★月までぶっとべ!!!】を発動、蛇神カシュパ(Lv,186)に3,442,567ダメージを与えました』

『か、ひ――――!?』

「うおーっとこっち来た~。へ~い千代ちゃ~ん」

「滅鬼斬ッッッ!!!」

『姫千代が【滅鬼斬】を発動、蛇神カシュパ(Lv,186)に合計664,980ダメージを与えました』

『蛇神カシュパ(Lv,186)に【リコンストラクション】が発動、蛇神カシュパ(Lv,178)が復元されました』


 どうしよう……。つくねちゃん、もう目で追いかけるのが精一杯なレベルのスピードで動いてるんだけど。今の千代ちゃんでも妖狐化しても戦えるか微妙って、ヤバいよつくねちゃん……!! ここまで到達するのが大変だからこそ許されるスキル性能なんだろうけど、く、狂ってる……!!


「どぉぉこに行くんだよぉぉカシュパぁ……ふざけやがってぇ……!!!」


 いや、自分でふっ飛ばしたのに怒らないでよつくねちゃん……!


『ひ、ひぃ……!? ひぃぃ……!? た、助けてくれ!!! おい、俺様を助けろぉぉ!!! 近くに、居るんだろぉ!!!』

『蛇神カシュパ(Lv,178)が【精神崩壊】状態になりました。MPが急激に減少します!!!』

「助けなんざ、来ねえよッ!!!! わっちがぐちゃぐちゃにしてやる!!! 嬉しいだろ!? 嬉しいよなぁ!!? お前が悪いんだよ、ガキなんて呼びやがってぇ!!! 謝らねえ、クソッタレがぁあああ!!!!!」

『ひっ――――』

『つくね☆が【★とつげーーーき!!!】を発動、蛇神カシュパ(Lv,178)が3,936,001ダメージを受けました』


 カシュパが王の間の右端から、左端にふっ飛ばされて、また右端にふっ飛ばされて、起き上がれたと思ったら千代ちゃんかお昼寝さんにボコられて、その内つくねちゃんが追いついて来て滅多打ちにされる……。これ、ソウルドレインをする暇も無くレベルを消費し切って死ぬのでは? いやでもそれじゃダメなんだよね多分。今の発言で確信したけど、蛇神の本体が間違いなく周囲に隠れてる。それを殺さない限り蛇神がまた復活するはず。ここで災いの芽を摘まないと、こいつは二度と復活しないように根絶させなきゃダメだ。


「――お姉ちゃん! 出来ました! 多分、これで行けるはずです!」

「おおっ!! さすがリアちゃん! どれ、どれ……?」

「これです!」


 リアちゃん、ナイスだよ! 遂に攻撃の死霊術が完成したんだね? それでえーっと、これですって言ってるんだけど……。ごめんね? 読めないんだよね、お姉ちゃん……。古代語はちんぷんかんぷんなんだわ……。


「彷徨う星屑達よ、の後に……。打ち砕かれよ、です! でも私じゃ発動しなくって……合ってるか不安で……」


 彷徨う星屑達よ、打ち砕かれよ……ね! わかった、オッケーやってみよう! それで、これの魔術名は?


「これの名前は?」

「え?」

「いや、えっと、名前……魔術名?」

「ないです! オリジナルなのでっ! 魂に攻撃するという内容しかないので、後はお姉ちゃんが良さげな名前を付けて、攻撃方法のイメージを形にして下さいっ!」

「…………」


 どうしよう、リアちゃんの『期待してます、新しい魔術の名前! それと攻撃方法も! ニコッ♡』って笑顔が、プレッシャーが、キツイ……! 私のそっち方面のセンスのなさは、どん太でわかってるでしょう……!? リアちゃん私にその手のセンスを求めるのは間違ってるからね!? いや待てよ、そういうこと!? 私流のセンスに期待してるってことか! よっしゃ、そうならお姉ちゃん! 張り切っちゃうぞーー!!


「炙りスキルを使いますね。隠れしその姿を露わにせよ、スピリットトーチ!」

『ミッチェルが【スピリットトーチ】を発動、隠密状態の死霊モンスターが現れました!』


 よし、決めたッ! 打ち砕くなら、やっぱりアレよ!


「彷徨う星屑達よ、打ち砕かれよ!!!」

「……っ!」

「ばびろんぱーーーんち!!!」

『【ばびろんぱーんち】を発動しました! 巨大なる魔神の右腕が召喚されます!!!』

 

 破壊する右腕!! 霊だろうがなんだろうが殴って壊す!!! この拳を、喰らえぇーーー!!! 


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