ステラヴェルチェ・4 ~押して、押されて~
◆ ステラヴェルチェ・王の間 ◆
『巨大なる魔神の右腕が召喚されます!!!』
『NPを最大値の半分消費しました』
『【巨躯なる魔神バビロンドッペルの右腕】が汎ゆる敵を打ち砕く!!!』
『蛇神兵の魂(Lv,80)に2,766,105ダメージを与え、魂を粉々に打ち砕きました!』
『蛇神兵の魂(Lv,80)に3,160,997ダメージを与え、魂を粉々に打ち砕きました!』
『蛇神兵の魂(Lv,80)に2,961,324ダメージを与え、魂を粉々に打ち砕きました!』
『蛇神兵の魂(Lv,80)に――――』
うおぉ……わぁぁお……っ……。NPを半分使うって、コストがきっついけど! いやいや私が出して良いダメージじゃ、ないよこれは……! というか想像と全然違う、もっと可愛らしいばびろんちゃんっぽいパンチの幻影エフェクトが飛んでいけばいいなーぐらいのつもりで『ばびろんぱんち』って口走ったのに、なにがどうやったら二メートル以上もある拳が、その剛腕が召喚される魔術になるんですか、これ……!?
「やっべ……」
「お、お姉ちゃん……?!」
「なんと……!!」
いやそりゃ、驚くよねえ。私だって驚いてるんだもん、それにこれはバビロンちゃん本体のパンチじゃなくってバビロンちゃんの影武者のパンチか! 多分前に戦ったバビロンちゃんの分身体、偽物が巨大化したやつのパンチだわ! だって、最後に会った時とバビロンちゃんの服の袖が違うもん! うぉおおすっげ、まだまだ打ち砕ける、まだまだぶっ潰せる!
『蛇神兵の魂(Lv,80)に3,155,019ダメージを与え、魂を粉々に打ち砕きました!』
『クリティカル! 蛇神ミズチ(Lv,????)に4,991,420ダメージを与えました!』
『シャァアアアアアア!!!!!!???』
「居た!! 兵士の魂に化けてるけど、あいつが本体だ!!!」
居た、やっぱり居た!! カシュパを操ってる本体が!! 蛇神ミズチ、はるか昔からステラヴェルチェに巣食う巨悪の根源! ステラヴェルチェの癌細胞!!!
「――お化けっちゅうことは、師匠が苦手な相手やなぁ」
「そうですね。ん? あら、おかえりなさい」
レイジさん! 無気力から回復して戻ってきたんですね! でも、覚醒使っちゃったから1時間は職系スキルが使えないんじゃ……。
「師匠! こいつはワイが相手したる、印術無いぐらいが丁度ハンデやろ」
「お、おばけは任せましたよ! 決して、此方はそちらを向きたくないわけではありませんからねっ!!!」
千代ちゃんは、完全におばけがふわふわしてる方は見たくないらしいね……あんなに強いのに、おばけは苦手って、なんでそんな可愛らしい弱点があるんですかね千代ちゃーん……。とにかく、こっちはレイジさんに前衛をやって貰うしかない。手厚く補助魔術をかけないと!
『レイジがお昼寝大好きからのパーティ招待を受諾しました』
『レイジがパーティに加入しました』
「阻め、ボーンシールド!」
『パーティメンバー全員が【ボーンシールド】状態になりました』
「呪え、喝采し、死を謳歌せよ。禁断の呪いをここに」
『ミッチェルが【禁断の呪い】を発動を更新しました』
『解除まで永続的にSTR、AGIが170増加します。攻撃基礎値が+1,000されます。攻撃力が1.3倍になります。HPが毎秒0.3%減少します』
「深淵の脈動、ネガティブバースト!」
『3分間、パーティメンバー全員のステータスが+44されます』
『蛇神ミズチ(Lv,????)に効果がありませんでした』
『傀儡のカシュパ(Lv,182)に効果がありませんでした』
とりあえずこれで仕切り直し、蛇神ミズチと偽蛇神カシュパの相手で4人と3人に分かれる形になった。カシュパの方はほとんどつくねちゃんが
『ば、かな! 霊体化した我に傷をつけるなど、ありえぬ……!! こんなことがぁ……!』
「ありえるからダメージ負ったんやろ、アホちゃうか自分っ!! 既に同じ土俵に上がってんやで、死ぬ覚悟せえや!!!」
「お~っと……??」
『図に乗るな!!!』
『蛇神ミズチ(Lv,????)が【毒刃】を発動しました』
『Miss……。お昼寝大好きに【毒刃】は効果がありませんでした』
あっ! お昼寝さんがこっちに来てくれてた! あっちはつくねちゃんと千代ちゃんだけで大丈夫って判断したのかな! 紫色の如何にも毒のかまいたち攻撃、みたいな奴を代わりに受けてくれたけど、そっか! お昼寝さんに毒攻撃は無効なんだね!
『かぁああ!!!』
『蛇神ミズチ(Lv,????)が【実体化】を発動、【薙ぎ払い】を発動しました』
「っしゃぁ、焼き斬ったるわ!!!」
『レイジが【斬滅の構え】を取りました!』
流石に本物の蛇神、行動速度が速い。カシュパの攻撃をつくねちゃんが『ヌルい』って言うのも理解出来る、余りにも次元が違うスピード。前衛職って、こんな化け物みたいな速度の相手と至近距離で戦わなきゃならないの? しかもこれを迎え討とうとしてるしレイジさん。本当に大丈夫なのかな……職ポイント消費系のスキル発動、発動出来ないんですよね……?
『っは!! 人間如きが、甘いわっ!!!』
「頼むで……頼むでほんま……!」
あ、やっぱりこれ、レイジさんかわしきれないんじゃ――――。
『蛇神ミズチ(Lv,????)が3ダメージを受けました』
『ぐ、ぁあ……!? 何が――』
『m9(^Д^)9m』
『フリオニールが【プロヴォーク】を発動、蛇神ミズチが【激昂】状態になりました』
『き、さ……まぁあああああ!!!!!』
「ほんまや、ええ仕事しよるわ!」
『レイジが【斬滅】を発動、Weak!!! 蛇神ミズチが1,229,193ダメージを受けました!』
おにーちゃん!!!? そっかぁ!! 盾は投げた後回収しなかったら、30秒で手元に勝手に戻ってくる!!! ネタ機能としか思えなかったあの機能が、この場で最大限に活躍してる!! 凄い、でもなんで!? おにーちゃんの活躍、レイジさん見てないよね!?
『く、ぐぁ……!! 我の体に、き、傷が……!』
「僕が教えたからねぇ、ギルドチャットでさぁ!!!」
『お昼寝大好きが【超酸爆弾】を投擲しました!』
『蛇神ミズチ(Lv,????)に【超酸被害】!!!』
『シ――――ギャアアアアアアアア!!!!!!!!』
レイジさんにおにーちゃんが遠くからでも挑発と妨害が出来ること、お昼寝さんが教えてたんだ! そういえばさっき千代ちゃんに攻撃を任せて何をやってるのかなって思ってたけど、教えてたんだ、あの時に!
『くたばれぇ!!!!!!!』
「や、っば」
『蛇神ミズチ(Lv,????)が【大暴れ】を発動しました』
『レイジの【ボーンシールド】状態が解除されました』
『お昼寝大好きの【ボーンシールド】状態が解除されました』
『ッチ、手応えが薄い!! 起きろカシュパ、いつまで寝ておるか!!!』
『蛇神ミズチ(Lv,????)が【リコンストラクション】を発動、傀儡のカシュパ(Lv,176)が復元されました』
ボーンシールドを掛けてて良かった! 一撃貰って吹っ飛ばされただけだから、ボーンシールドでダメージ一発分無効に出来た。しっかし、吹っ飛ばされた後に空中で体勢を立て直してスタッと着地するの、もはや人間業じゃないですねそれ!? いいなぁ前衛職の運動能力、後衛職はAGI低いから常人よりは優れた身体能力止まりだよ~~。
しっかし、あんなに暴れられたら近寄れない……。でも放っておけばまたリコンストラクションを使われるし、どうするべきか。ばびろんぱんちは後一回しか発動出来ないし、本当にここぞって場面で発動したい。ミッチェルさんは攻撃性能が完全に死んでるサポート専門だし、どうしようかなぁ……。
「にゃんにゃんにゃーん!! にゃおにゃおーーん!! アイツをやっつけて!!」
『オーレリアが【にゃんにゃんふぇすてぃばる】の開催宣言をしました!』
『なぁぁぁぁあああ~~~お』
『ボス猫のルナが子分を従え突撃します!』
おお、リアちゃん! 可愛い……。その手があったね! 可愛い……。猫の手も借りたい場面で本当に猫の手を借りるとは、流石だよリアちゃん……。可愛い……。これでさっきみたいに、猫たちが蛇神ミズチをボッコボコに――
「……やけしねー! ばくごう、ねんしょーっ!! めがにゃぱーーーーむ!!!!!」
『オーレリアが【めがにゃぱーむ】を発動しました!』
『スキルリンク! 【にゃんにゃんにゃぱーむ】が発生しました!!!』
なにそれ、やばいしぬ、可愛い。死ぬ。
『なんだ、この不快な魔力は!!! まさか貴様、あの魔女の――――シャァアアアアア!!!!!! なぜ潰れない、なぜ、なんだこの火の猫は、ひ、広がる!! 焼ける!!! が、ぁ、ああああああ!!!!!!!』
『蛇神ミズチ(Lv,????)に着弾! Weak!!! 特効!! 合計4,991,222ダメージを与えました! 【火だるま】状態になりました! 継続的にダメージが発生します!』
うおわーーー威力が全然可愛くないーーーー!!!! 火に包まれた猫が着弾する度に、ミズチの蛇の体が炎に包まれていく、振り払っても叩き潰しても、そこからどんどん火の勢いが増していく! こんがり焼けた臭いが、あ、どうしよう……なんか焼肉っぽい臭いでちょっとお腹減ってくるかもこれ……! いやあんなの食べたくないけどね!?
「――――てめぇも火の海で体洗ってこいよ、おらぁああ!!!」
『うわああああああああ!!!!! ミズチ様ぁああああああ!!!!!!!!』
『馬鹿、やめろぉ!!! こっちに来るな――――ごっはぁ!!!?』
『傀儡のカシュパ(Lv,176)が蛇神ミズチ(Lv,????)に直撃! 両者が441,559ダメージを受けました。傀儡のカシュパ(Lv,176)が【火だるま】状態になりました! 継続的にダメージが発生します!』
うわ。うわ。うわ。つくねちゃんがカシュパをぶっ飛ばして、カシュパをミズチにぶつけてまとめて火だるまにしてるし……。あれ? もしかして今、この状態……。どっちもまとまってるこの状態って、チャンスなのでは?? チャンスだよね? チャンスだわ!!!
『雑魚共ぉ!!! 我を守れぇえええ!!!!』
『蛇神ミズチ(Lv,????)が【★配下強化】を発動、蛇神兵モンスターが大幅に強化されました!』
「彷徨う星屑達よ、打ち砕かれよ!!!」
「……あっ!」
「来たれっ!!! ばびろんぱーーーんち!!!」
『【★ばびろんぱーんち♡】を発動しました! 巨大なる魔神の右腕が召喚されます!!!』
おっしゃぁーーーー雑魚が押し寄せてくる前に、こいつを喰らえぇ!!!!! バビロンちゃんの影武者の右腕ぇーーーー!!!!
◆ 迎撃班 ◆
「本当に、頼りになるッスねぇフリオニールさん!」
『わんっ!!』
『(`・ω・´)b』
「おにーちゃん、常にナイスガード。ひゃくてんまんてん」
魔神兵長フリオニール! もう名前だけでも格好いいッスね。でも本当に格好いいのはそのタンク能力、うちの探索チームのガーディアンやってるコナーよりも数段格上のタンクッスね……。タゲ取り、ヘイト分散、そしてボス部屋にいるボスのヘイト散らしまでやって妨害、管理能力が狂ってるッス。そしてこの――――
『フリオニールが【ダークアスパーション】を発動、パーティメンバーのHPが完全に回復しました。5秒間状態異常を完全に防ぐ状態になりました』
『フリオニールが【ハイパーガード】を発動、エリート蛇神兵(Lv,100)の【ポイズンブレス】をガードしました。大幅にダメージが減少! フリオニールが1ダメージを受けました』
この、防御能力! 発動を阻止出来なかったブレス攻撃を一人で受け切って、しかも流れ弾で僕たちが毒状態にならないように予防までしてくれる! こんな完璧なタンク他に居ないッスよ、本当に……コナー君、フリオニールさんに弟子入りして修行したほうが良いッス。
『蛇神ミズチ(Lv,????)が【★配下強化】を発動、蛇神兵モンスターが大幅に強化されました!』
うっ……!? ヤバいっすね、今までは無限湧きして来るんじゃないかって数の蛇神兵をなんとか止めてたッスけど、強化されたら流石にヤバいッス!!
「数まで増えてますわーーー!!!?」
「やべえ、退くぞ」
やっぱりペルセウスさんとハッゲさんが押されて後退して来たッス! これはヤバいッスね、ペルセウスさんもハッゲさんも、リソースがカツカツな状態だったからここで強化はキツイッス!!
「ポーション、もたないかも。ザミエルも弾、ない」
『ガウァアア!!!』
『どん太が【爆滅二段掌】を発動、★蛇神兵(Lv,80)に合計446,172ダメージを与え、撃破しました。経験値 800,000 獲得』
『シャアア!!!』
『★蛇神兵(Lv,80)が【ハードインパクト】を発動、どん太が21,504ダメージを受けました』
『フリオニールが【シールドアサルト】を発動、★蛇神兵(Lv,80)に5,119ダメージを与えました。【気絶】状態にしました』
フリオニールさんが駆け寄ってきた奴を弾き飛ばしてくれたッス! どん太君にこんだけダメージが出るのもヤバい、それに今の動き……速かった! いやあもうキツイッスね、十分引き付けて階段下に敵が集まったッス。これ以上我慢できないし、全員射線から出たからやるしかないッス。
「撃つッスよ! どっごーん!!!」
『【絶滅焼夷弾】を発射! どっごーん!』
『Weak!!! クリティカル! ★蛇神兵(Lv,80)に1,276,552ダメージを与え、撃破しました。経験値 800,000 獲得』
『Weak!!! クリティカル! ★蛇神兵(Lv,80)に1,276,552ダメージを与え、撃破しました。経験値 800,000 獲得』
『Weak!!! クリティカル! ★蛇神兵(Lv,80)に1,311,400ダメージ与え、撃破しました。経験値 800,000 獲得』
………………
…………
……
『Weak!!! クリティカル! ★エリート蛇神兵(Lv,100)に1,133,315ダメージを与え、撃破しました。経験値 1,300,000 獲得』
「おい、まだ来るぜ……」
「もう、厳しいですわ……! MPも、ポーションも……」
「最後に魔神銃乱射で、ちょっとだけなら抵抗出来る」
「エリスちゃんの支援じゃ、追いつかないよ~~。ごっめ~ん!!」
『がうぅぅ……』
『(。・_・。)』
まだ居るんッスか……。もう無理ッス、ボス部屋まで後退してバリケードでも組むしか無いっすかね……。後ろから敵が来ないから、ボス部屋での安定した戦いが出来てるんっすよねぇ……これが崩れたら、無理ッスかね……。ちょっと甘く見てたかもしれないッス。
『!!!(`・ω・´)!!!』
「おにーちゃん、あの数は流石に無理。下がろう」
「下がって、リアちゃんに協力して貰うのが良いかも知れませんわ!」
そうっすね、リアちゃんに再度広範囲魔術で焼いて貰うのが一番手っ取り早い解決法かもしれないッスねぇ……。はぁ~~~……。
『フリオニールがNPブレイク!!!』
「え?」
「NP、ブレイク……覚醒スキルがありますの!?」
『わうっ!?』
か、覚醒スキルがあるんっすか!? でもこの現状を一瞬打開したところで、どうにも……!
『フリオニールが【魔神兵召喚】を発動しました!』
『★獅子の魔神兵・レオンが現れました!』
『★牡牛の魔神兵・グスタフが現れました!』
『★射手の魔神兵・スージーが現れました!』
『★乙女の魔神兵・カヨコが現れました!』
…………魔法陣から、急に、現れたんッスけど……。だ、誰……ッスか……?!
『(*´∀`*)ノ』
『ようリーダー、ここが新しい戦場か?』
『暴れさせろ暴れさせろリーダー!! 俺様が一番敵をぶっ殺すんだ!!!』
『グスタフ落ち着きなさい。リーダー、まずはわたくしが足止めします。燃えろ燃えろ、あの火の山のように!! フレイムウォール!!!』
『★乙女の魔神兵・カヨコが【フレイムウォール】を発動しました。周囲に炎の壁が発生しました』
『目標確認、蛇頭兵士』
『(`・ω・´)b』
『おしゃべりフリオニールともあろう者が、喋れねえとはなぁ!!! がーーーーっはっはっはっは!!!!!』
『おい、誰のお陰でまた戦場に出られたと思ってる? 言葉には気をつけろグスタフ』
『口より先に手を動かしてくださいませんこと? 万年リーダーに負け続けのグスタフさん?』
『るっせええええぞカヨコぉおおお!!!! だぁあああやってやらぁ!!!!』
『行動開始。通達、後退推奨』
こ、後退推奨……?! この場を、交代してくれるってことッスか……!? 大丈夫なんッスか!? 5人だけで!!
『(`・ω・´)ゞ』
「フリオニールさん……! 今のうちに、ギルドに戻ってポーションとか諸々回収ッスよ! すぐに戻って、入り口と階段から挟み撃ちッス!!」
「ギルドポータル開いた、戻る」
「頼んだぜ、フリオニールさんよ!」
「頼みましたわよ、フリオニールさん達!!!」
『戦場に出たからにはきっちり仕事を果たす。任せておけ』
『おらぁ行くぞぉ!! グスタフサイッッッックロォオオオオオオン!!!!』
『相変わらずダサいネーミングですこと……』
『射殺開始』
『わんっっ!!!』
『なんだぁ犬っころ!! おめーも手伝うってか、いい顔だ、気に入ったぜ! おっしゃ行くぞぉ!!!』
今のうちに戻って、立て直しッスよ! すぐに戻るッスから、頑張って耐えて欲しいッス!!! どん太君も、どうかこの場を、よろしくお願いします……!!
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