いつもそうとは限らない
◆ 魔神殿・食堂 ◆
「いいかぁい!? よーく見てなぁ!?」
「ん~~ん~~見てる見てるぅ……!」
――――チーン……。
「あっははははははは!!! いい音で鳴るだろう~このグラス~!!!」
「いっひぃぃぃいいぃぃ!!! すっごぉぉい!!! んぐっっ……ぐっ……!! ぷはぁぁぁあああぁぁああ!!! うぐっ……ずっっっ……!!」
前に見たよこの光景。スプーンでグラスを叩いた音で大笑いしてるよ。ローラちゃん、前も思ったけど何も凄くないし、何も面白くないよ……。しかも見てなって言ってるのに楽しんでるの音だし。まあでも、前と決定的に違うのはローラちゃんが泣いてることだね。あの時は罵詈雑言と暴言の嵐だったけど、内心傷ついてたんだろうなぁ~……全く見向きされなかったことに。
このままだと前と同じように酔いつぶれてダブルノックアウトになるのは目に見えてるし、私も前と同じようになっては困るので……ええ、対策はしてきましたよ。
「まーた泣く! 泣くんじゃないよ、あんたのジョークが寒いから冷めたんじゃないっ!! ドゲルがそんなあんたも愛せないような【自主規制】野郎だっただけさ!!!」
「びぇええええええええ~~~~~~!!!!!!!! だっでぇ゛ぇ゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!!!!」
「ねーさん、ローラちゃん。これ、温かいの貰ってきたから飲んでね」
「あ……っ! す、すまないねぇ……」
「んぐっっっっ……!! ぐぅぅぅ……ふぅぅぇえええ…………」
ローラちゃんが一気に行ったっ!? でも飲んだからヨシッ! 飲んでもらったのはね、前みたいに泥酔からの8時間再起不能にならないようにするためのお薬ですね。一階に居る錬金術師のアルスちゃんと、料理長のクックさんに協力を要請して作っていただきました。その名も『ポーションカクテル:今夜は月が綺麗ですね・1号』! 飲めば徐々に落ち着いた気分になって、酔いも酷くならない! 程々の酔いを維持してながーい時間お酒が飲めるようになる、らしい。
「クック料理長から伝言言われて貰えますカーーーッッ!! 悪いんだけど、部屋で飲んでくれますカーーーッッ!! お昼に向けてお客が増えるんで、退いてくれますカーーーッッ!!」
うわ、カラス……カラス? これ本当にカラス? 九官鳥…………。まあ、うん。カーカーって良く鳴く鳥型NPCから、どけって言われちゃった。流石にここにずーっと居座られたら邪魔だもんね、これは仕方ない……。
「ねーさん、ローラちゃんと2階の201号室で飲めば良いんじゃないですか? ギルドルームの反対側、宿みたいなフロアのとこですね。あれも元はうちの所有物らしいんで」
「じゃ、じゃあそっちに移ろうかね……っとと。わ、悪いね、ちょっとなんて言って、その~……」
「んっっ……!! ごめんなさいでしたぁ……!」
「今回は、仕方ないですよ。ねえねえ、これ食べ物とお酒持ち帰ってもいいですか?」
「カーーーッッまいません!!!!」
「持って帰ってもいいって、ねーさんの宝物庫に入る?」
「入る入る、うん、入るよ……よいしょ、よいしょっ……」
ねーさん酔っ払いのピークを過ぎて段々と大人しくなってくると、急に可愛くなるのズルくないですか? よいしょ、よいしょって言いながら金ピカの宝箱に料理とかお酒突っ込んでるの、なんか妙に可愛いんですけど。いつもはシャキッとしてる人の意外な面を見ると、キュンキュン来るよね……。
「手伝うぅぅ……」
「良いんだよ、ほらローラは201号室に先に行きなよ」
「やぁぁだぁぁぁ!! いっしょ。行く。いっしょぉ!!!」
「しょうがない子だねぇもう……ほら、行くよ? じゃあリンネ、なんだか本当にすまないねぇ、ありがとうね」
「はーい。ローラちゃんの相手、頑張ってね……」
「ばぁいばぁい!! またあとでねぇ~!!」
「はいはい、ローラちゃんもちゃんとねーさんに掴まらないでシャキッと歩く!」
「んぅぅう……!!」
本当、困った人達だなぁ~……。今回もドラゴン狩りに参加してほしかったんだけどなぁ~……。
「うわ、お酒くさい」
「あ! レーナちゃんおかえりなさい! そっちも終わりですか?」
「おわった。Aエンド、どっちも完全破壊」
「こっちはCエンドで、ドゲルだけ破壊のナタリアがMP切れで機能停止です」
「…………Bエンド、ナタリア破壊の、ドゲル機能停止?」
「そんな気がしますね……復活とか、浄化とか、破壊のどれかがDエンドっぽいですね」
「じゃじゃ~~ん。僕が食堂に、うわ酒臭ぁぁぁ……」
「よう! 飲んでた奴は、もう居ないみたいだがな」
あ、レーナちゃん達も教会から帰ってきた。どうやらあっちも無事に討伐完了出来たみたいだ。これで迎えたエンドが3種類になったところを見るに、もしかしたら残されたBエンドはナタリア破壊でドゲル機能停止のルートっぽいね。ちなみにこっちは報酬が【カードバインダー】だったけど、レーナちゃん達はなんだろう?
「こっちはカードバインダーでしたよ。2冊だけでしたけど、そっちはどうでした?」
「こっち、鉄とか、銅のインゴット」
「材料系ばっかりだったよ~。うちは鍛冶師居ないからなぁ~」
「まあここじゃアレやし、ギルドルーム行こうや!」
「エリスちゃんも賛成~」
レーナちゃん達はインゴット系のアイテムばっかりだったみたい。やっぱりDエンドが一番いい報酬なのかな? となると、ダークプリースト系の職業の人がいると良いのかな、本来は。闇属性の回復魔術が使えるんだったよね。それでドゲル達を復活、ないし浄化か完全消滅させればDエンドなんだと思う。
まあここで立ち話というか、周りの人に聞かれるかもしれない場所でこの話をするよりギルドルームに戻るのは賛成!
「そういや、赫から聞いたか? ルテオラ共和国の話と氷の宮殿の話なんだがよ」
「ワイは聞いたで! 掲示板にも書き込んどったなぁ!」
「あっちでギルドハウス買ったみたいだよ~? ギルド資金が枯渇するかも~寄付待ってまーす」
「エリスちゃんは300万とりあえずしておきましたよ~余裕のある人はしておいてね~」
ルテオラ共和国!? 氷の宮殿!? 新しい都市が見つかったんだ! 赫さん達が見つけたんだね、凄いなぁ探索してるなぁ~~!!! こっちは探索も無しにギルドポータルの行き先が増えて嬉しいなぁ!? とりあえずギルドルーム行こう! 行こう行こう!!
◆ 魔神殿・ギルドルーム【ロビー】 ◆
「こんちゃーっす!」
「こんにちは。ドラゴン、聞きました。楽しそうなイベントですね」
ギルドルーム、全員集合してる!? あ、忘れてたおにーちゃんも居る……。ごめんよおにーちゃん、置いてくつもりはなかったのよ……。
「おにーちゃーん……? 怒ってる~……?」
『(´;ω;`)』
「ごめんって……。お風呂に居るの気が付かなかったんだって……」
『_| ̄|○』
「今度、新しい盾なんか用意するから! 許して!?」
『(*˘︶˘*).。.:*♡』
めっちゃ落ち込んでる……。本当にごめん、今度からは気をつけるからぁ……。新しい盾用意するなんてかるーく言っちゃったよ、用意できるかなぁ~~……。
『トルネーダ・ローレライが【魔神殿・201号室】をプライベートエリアにしました』
『トルネーダがパーティから外れました。死亡時は【死体収容所・5】に自動納棺されます』
『ローレライがパーティから外れました。死亡時は【死体収容所・6』に自動納棺されます』
あ、ねーさんとローラちゃんがパーティから外れた!? 私のパーティから外れた場合って、死亡しても死体収容所に自動納棺されるんだ……。じゃあ一応、他のギルドメンバーの手伝いに行くことは出来るってことかな? その場合だとアイテムのドロップとか取得権はないだろうから、もしダンジョンに誰かと一緒に付いていった場合は私もパーティに参加してないとアイテムが貰えないのがネックになりそうだわ。
「んでんで~? 赫さんどーだった~?」
「すっごい寒い場所ッス! アバターの方は水着だろうがなんだろうが構わないんッスけど、防具を温かい奴にしないとHPがゴリゴリ減ってくッス! すんごい探索しがいがありそうな場所ッスね、氷の宮殿は都市内にある宮殿跡地から入れるッスよ!」
「やのに探索しないで戻ってきたんかい!」
「我々リーダーだけが都市の探索よりもドラゴンに興味を持ってしまいまして、パーティに空きがあれば入りたいと思いまして戻ってきた次第です」
「自分はヘビーシューター、みーちゃんがエンチャントレス、ッスね!! どっちか、空き無いッスか!?」
「こっちは空いてるが?」
「どらご~ん。リンネとペルちゃんと一緒行きたい~~」
「およよよ~? レーナちゃんがそっちなら、赫さんとミッチェルさんはこっち来る~?」
あららら!? レーナちゃんがこっちに来たがってる! 丁度6人になっちゃったところだから、良いかもしれない! これで7人と6人パーティかな?
「それで大丈夫なら行くッス! レベルは75超えたんっすよ、重火器が取り扱えるスキルが増えたんッスけど、無いんで! まだレーナちゃんのこれで!」
「お~。いっぱいつかって~」
「…………重火器? ですの?」
「あ……。赫さん、ゴールドオークションのページで、【★撃つボッ!】って調べてもらえます……?」
え、待って待って? 赫さんヘビーシューター? もしかしてその重火器って、これのことだったりする……?!
「あーーーーーーー!? こ、これッス!!!! たっかぁ!?」
「これ、自慢で出してるだけで売る気はなかったから……」
「でも、入札あるッスよ!?」
「「ええっっ!?」」
え、嘘嘘嘘嘘ォ!? 入札あるの!? あるじゃん、ギャーーーーーーー!!!!???? こんなぼったくりな値段で買おうと思った人がいるって、こと!? しかも8万円まで上がってるじゃん、嘘でしょ!?
「キャンセルとかって……! 赫さんにこれ、使ってもらったほうが良いと思うんだけど!」
「出来ますわよ! 40時間の出品不可ペナルティも来ますけれど、特に問題ないですわ!」
「あの大砲が、8万円まで上がってたかぁ~……」
「はい、キャンセルしましたわよ! 赫さんには前からよく助けていただきましたし、あーちゃ……リンネさんも良いと言っていますし。どうぞお使いになられて?」
「いや、いやいやいやいや無理ッスよ!? 8万円超えてるのをはいどうぞは、無理ッスよ!?」
絶対これを8万円はおかしいから! 絶対に後々でこれ系の武器がずらーっと出品されるようになって、買った人が後悔することになるだけだからやめた方がいいよ! こっちも自慢したいだけで出しただけなのに、買われたら困るもん!!
「俺らも実は色々貰ってるしな。返すもん探しの毎日だぜ」
「僕たちと同じ、リンネちゃん達に返すプレゼント探し班になれ~」
「なれ~」
「ワイも大太刀もろたからなぁ……」
「本当に皆何かしら貰ってるねぇ……僕もこのシャチパペ、貰ってるし」
「エリスさんってこういう暗器は使えないんですか?」
「え、使える。え?」
「え? どうぞ」
「エリスもコッチ側になれぇ……!!!」
「ワイらと同じになれぇ!」
「おう、一緒に宝探し行こうぜ」
「行こうぜ~」
「赫、見合うだけのものを返せば、受け取ってもよろしいのではないかしら? それとも、女性からのプレゼントを受け取れない、器の小さい男だったかしら」
「はぁ~!? みーちゃん以外のプレゼントはちゃんと受け取ってお返しするッスよ!? あ、あの、使わせて、ください! お願いしまッス!!」
良かった。これの保有者が赫さんになって……。ついでにだいぶ前に出た【★止まらない殺戮】っていう暗器もエリスさんに渡しちゃった。蛇腹剣は接近されると弱いから、サブでナイフ系が欲しいって言ってたけど、暗器も装備出来るみたいで良かった~。これで、ミッチェルさん以外には皆一個ずつプレゼント出来たね、武器。
私ね、こう思うんですよミッチェルさん。これまでリアちゃんと一緒にいっぱいお勉強に付き合って下さった、いわばリアちゃんの恩師であると。そんなミッチェルさんになんのお礼もしないのは、良くないなーって思うんですね。
じ ゃ あ ミ ッ チ ェ ル さ ん の も 作 っ て く る か 。
「ちょっと、待ってて下さいね……」
「ヤバい! リンネちゃんが3号室に籠もる!」
「3号室に籠もると、何かあるんッスかぁ!?」
「おう! 3号室から帰ってくると、おぞましい何かを握りしめて出てくるんだぜ」
「アカン、ミッチェルはんターゲットされとるで!?」
「え? 私ですか? え、え?」
「なかま~~」
「リンネさん、ミッチェルさんもほうきが武器ですわよ!」
「オッケー……よし、ある」
「ある!?」
「え、何が、始まるんですか……!?」
「ペルちゃん、来て来てっ」
「え、見たいですわ! 見る見るっ!!」
そりゃあミッチェルさん……。貴方の武器を、これから私が作るんですよぉ……この、シャチの死体でぇ!!! そうだ、ついでだからおにーちゃんの盾も作れるか、挑戦しちゃおうぜぇ……! 今日はペルちゃんの直感力を借りようよ! それじゃあ、いざ! いつもの3号室へ!!!
◆ いつもの【3号室】 ◆
さあて、アイテムインベントリを開いたら、スペシャルカードバインダーとかを開け忘れてたのにも気が付いたので、開封しましたよ……。
「では、待たせてはなりませんし、3連続! いきますわよ……!」
「せー」
「のっ!!」
『【カードバインダー】から【デッカイカニカード】を引き当てました』
『【★スペシャルカードバインダー】から【ネームカード】5枚を引き当てました』
『【★スペシャルカードバインダー】から【★★★自動人形姫グリムヒルデのサイン入りカード】を引き当てました! おめでとうございます!』
ええと。これは? 反応に困るカードが出ちゃったんですけど、これは……?
【デッカイカニカード】(ノーマル・登録部位【体・体2】)
・HP+5%
――デッカイ! でも不味い……。
【ネームカード】(ユニーク)
・装備に名前カードを貼り、所有者登録が出来る
おおーーー! ネームカードいいじゃん! しかも5枚もあるし! これでクリムゾンバングルとか、王家の首飾りにネームカードぺたぺた貼っちゃお~~!! で!! グリムヒルデのサイン入りカードは何!?
【★★★自動人形姫グリムヒルデのサイン入りカード】(アルティメット・登録部位【首】)
・ダメージの下3桁を0にする(999ダメージ以下無効化効果有り)
・バニッシュ系無効
・MPが0になった時、貴方は死亡する
――復唱、ヒルデのサインが欲しい。理解、不能……by自動人形姫グリムヒルデ
うわぁ、本来なら扱いに困るカードだわ、これ……。MP管理に失敗したら即死の代わりに、良い効果が二つも付いてるカードだ……。あ! 首だから王家の首飾り、空き1あるから刺せるじゃん!! 刺しちゃお~~! ん~~~名前なっが……【★ステラヴェルチェ・王家の首飾り・オブ・グリムヒルデ】! デメリット効果は普通なら怖いけど、これ私にとって死亡条件が何も変更ないから超強いじゃん! やった~!
「どうでしたの!?」
「ん、これ!」
「…………ええーーーズルいですわー!? いえでも、これわたくしが刺したら頻繁に死にますわね……。わたくしはゴミが1枚と、ネームカード4枚、巨人グーカードでしたわ」
「装備破損状態を無効化するその他アクセのカードか~……強そう!」
「強いですわね! これで装備破損の可能性がゼロになるのですから、戦いが安定しますわね!」
「いいねぇ~……!」
ペルちゃんも当たりが出てたみたいで良かった! ペルちゃんは前にあげた斬・突1.1倍のダークネスパールに刺したみたい。これでまた、強くなってしまったねぇ……! 私も頑丈さがアップしてしまったよ……!
「それではいよいよ、本番ですわね!」
「うんっ……!」
それじゃあ本題! アニメイト・フェティッシュのお時間です!! 本日の素材はこちら、【さつりくしゃーち】【まっさつしゃーち】【真・殺戮者】【真・抹殺者】の4匹になっておりまーす! 呪いのアイテムは宝箱からこっそり出てたいつもの呪いのコイン!
「呪物化はね、これを溶かして死体と混ざって、ドロドロになったやつに装備を投入すれば出来るの」
「言葉だけ聞くとものすごくグロテスクなのですけれど!?」
そうかな? そうかも。でもまあ、百聞は一見にしかず! ペルちゃんにギルド倉庫から引っ張り出して貰ったほうきが呪物化するところ、よーく見ておいてね!!
「まあまあ見てて! じゃあ、行くよ? 捧げよ!」
『ウィッチブルームが呪われました!』
『ウィッチブルームが変質しました!』
『ダークウィッチブルームが変質しました!』
『ダークネスウィッチブルームが呪物化しました!』
「まあ!? これが、呪物化ですのねー!? 凄いですわーー!!!」
ふふん、凄いでしょう凄いでしょう……もっと褒めて良いんだよペルちゃん! いやぁ~それにしても、結構作ってきたからね~! もう慣れたもんですよ、呪物化も!!
『警告!! イレギュラー化が発生しています!!」
あ、ごめん、それは知らない。
「こ、これは……? なんですの……? 赤黒いドロドロに変わりましたわよ……?」
「…………わがんにゃい」
「ええ!? わかりませんの!?」
どうしよ、私こんなの初めてみたんだけど。もう一回がたまに発生するのは知ってるんだけど、イレギュラー化は知らない、知らないよ? ごめん、誰か助けて? これ何? 怖い怖い怖い~……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます