判明

◆ 魔神殿・ギルドルーム【ロビー】 ◆


 ――――原因が、判明しました。

 アニメイトフェティッシュでウィッチブルーム、さつりくしゃーち、呪いのコインを混ぜ混ぜしてしてる最中に、隣に並べておいたまっさつしゃーちの死体も飲み込んでました。異物混入です異物混入……。

 それで慌てて、呪物のススメを読み直したんですね。そうしたら、ええ、確かに書いてませんでした。投入する素体や死体、呪いのアイテムの個数は一切書かれてない。つまり私が勝手に1:1:1じゃないとならないと思いこんでただけで、実は1:2:1でも2:2:1でも構わなかったんですね。まあこれは成功した後に呪物のススメに記載が増えたので、いわゆる隠し要素みたいなやつでしょうね。成功率も追加投入した物によっては激減するそうです。


「これをほうきと言い切る勇気」

「ほうきちゃうやろどう見ても!」

「可愛いですね……。ほら見て赫、ちゃんと座る部分がありますよ。横向きに乗れば良いのでしょうか? どうしたのですか? 何か問題かしら?」

「みーちゃんが気に入ったなら、それをほうきと認めるなら、何も問題ないッス……!」

「ほら、ちゃんと掴まるところもありますよ。良いですね……可愛らしい……」

「デザインが、いいな……いいセンスだ」

「いい。100点満点中、150点は行ってる」

「おかしいですわ……。間違いなく、間違いなくほうきを投入したハズでしたのに……!」

「イヤーヨカッタナー。スゴイノガ、デキテー」

「すっごい棒読みだぁ……」

「現実逃避しとるやないかい!」


 はい。では出来上がったほうきをご覧ください。こちらです。



【★★シャーチ&デストロイ! シャチさん型ハリケーンクリーナー!】(最上級・ミスティック・ほうき・スロットなし)

・スキル【ほうきコントロール】を習得していない場合、装備できない。

・【呪】この装備のスキルを使用した時、ソナー音、もしくは吸引音が鳴る

・【呪】物理攻撃力-99%

・【呪】この装備のスキルは、本体のボタンを押して発動しなければならない

・スキル【アイテムサーチ】使用可能

・スキル【エネミーサーチ】使用可能

・スキル【アイテムバキューム】使用可能

・スキル【デストロイハリケーンクリーナー】使用可能

 ――――可愛いくって高機能! 隠れたものも根こそぎサーチ! コード不要でハンディ&スティックタイプの切り替えが出来る新商品です!

 強化不可・破壊不可・装備登録者【ミッチェル】・重量3.0kg



 これを、ほうきと言い切る勇気。どうみても掃除機です、本当にありがとうございました。尾っぽの部分が持ち手になってて、本体がデフォルメされたさつりくしゃーちみたいな見た目をしてる掃除機……いや、ほうき! 背中の部分に乗りやすいように座る部分が付いてるもん! 掴まっていやすいように本体に持ち手も付いてる! 掃除機……いや!! ほうき!!!

 で、肝心の機能は! 口の部分からえらい勢いで何でも吸い込む吸い込む! 吸い込んだゴミは『まっさつ』されて、アイテムとかインベントリに入る物はミッチェルさんのインベントリに吸引されていくらしい。おー便利便利……。そして吸い込み音、あのまっさつしゃーちの『ギュァアアアアアアアアアア!!!!』が控えめかつ可愛い感じの音になってる。


「いいほうきだなぁ……」

「掃除機やろって! ほうきちゃうわ!!」

「ほうきコントロールで使えますから、ほうきですね」

「僕はほうきの概念がわからなくなってきたよ~」

「デストロイハリケーンクリーナーだったか? ダメージが1しか出ねえと思ったら、一部のバフが剥がされてるじゃねえか」

「あ、本当だ。エリスの幻影から受けてた高揚効果が消えてる~!」

「バフも吸い込めるようですね。私には何も影響がありませんが、ディスペル効果付きだったようです。支援・妨害職としてはこの上なく良い装備ですね……ありがとうございます、リンネさん」

「気に入ってくれたようで、良かったです!」


 ごめんなさいミッチェルさん、もうね? どう見ても大きなシャチのぬいぐるみに横乗りしてるようにしか見えなくなってきました。真面目そうなお姉さんが大きなシャチの掃除機に乗って飛んでるの、シュール過ぎますよ!! なんですかそのギャップ、可愛すぎるでしょう!?


「味方には当てないように気をつけてね~?」

「効果範囲はちゃんと調べておかないとなりませんね。自分で与えたバフを自分で剥がしてたら滑稽極まりない」

「エンチャントレスは魔術系の支援職ですのね?」

「ええ、攻撃面は完全に死んでいますが、STRやMAGの一時的な上昇、攻撃倍率の上昇、数回の直接攻撃を防ぐバリア、魔術の茨を出して敵の拘束、攻撃属性を闇属性に強制変更、闇属性吸収状態のオーラを一時的に与えることなどが出来ます。またこれらの代償としてHPが徐々に減少します。基本は秒間0.3%程度ですね」

「メッチャ高性能じゃないそれ……?」

「タンクがピンチな時に、モンスターに闇属性を付与して闇吸収オーラで突っ立ってれば、タンクを一時的に交代することも出来るッス!」

「メッチャ高性能じゃない!?」

「なんやそれズルすぎるやろ!?」

「闇属性付与に時間がかかりますから、言うほど高性能ではないですよ。少しタイミングを間違えれば変更前の攻撃を受けて死んでしまいますから」


 ほえ~~~……ミッチェルさん、滅茶苦茶高性能じゃないですか~……。攻撃が完全に死んでる代わりに、支援妨害に全力を尽くしてる感じ……凄い好き! 縁の下の力持ちポジションだ~……あれ、なんか私と似てるな?! もしかして私とミッチェルさんが揃ったら、千代ちゃん達の攻撃力が爆発的に高くなるのでは?! ああ、でも支援枠が干渉したりするかもしれないから、どうかな? もしかしたら攻撃倍率上昇とか、ねーさんの号令とかに被って数値が高い方が優先されるかもしれないし、一概には言えないね。4人支援とかになれば超強化がまかり通っちゃうし。


「よーし! じゃあまずは各々やれることのすり合わせをして、ドラゴン狩りに行くぞー!」

「レベル60のドラゴンは5体、レベル75のドラゴンが1体しか倒されてねえな。負けると向こうは完全回復して最初からになるらしい。ゾンビアタック防止だな」

「80体もいるんだっけ~?」

「81体やな。中央の巨大ドーム、レベル140のドラゴンが最強らしいで。一回だけ戦ってみたいわ!」

「どの程度通用するのか、知りたいッスよねぇ!」

「そうですね。一番上が知りたいです」

「じゃあ~まずはレベル140のに挨拶しにいこー!」


 さあて、ドラゴン狩りのお時間です!! お昼寝さんチームはレベル140のドラゴンにまず挨拶に行くらしい! そうだね、レベル140とか絶対強――――レベル272とか321とか444と戦った気がする。まあでもシャチのレベル444とドラゴンのレベル140だと、ある程度の内情を知ってる側からするとドラゴンの140のほうが強いんじゃないかなって思う。

 このゲームのレベル、実は一部は飾りなんじゃないかなーって。千代ちゃんはレベル30、私はレベル85だけど、『その種族・職業としてのレベル』なだけで、同じレベル1でも妖狐とスライムが同格じゃないように、内部的には差があるんじゃないかなと。

 つまり何が言いたいかって、ドラゴンなんてレベルが全然上がらなそうなモンスターがレベル140もあるんだから、絶対やばいよねって話。あれ……? じゃあ千代ちゃんがあの時レベル125だったのって、本当の本当に、とんでもないヤバい数字だったのでは…………? 待って、じゃあなんであの時あんなにあっさり死んだの?! これは聞かないと気が済まない!


「千代ちゃん千代ちゃん!」

「は、はい!? 此方に何か!」

「私達に襲いかかった時のこと、まだ覚えてる!?」

「あの時は本当に、此方は飢えておりまして、申し訳なく……!」

「それは大丈夫だよ! あの時千代ちゃんってHP……あーー……。生命力が限界だったりした?!」

「そうー……ですね。あの時の此方は確か、健全な時と比べて一割の半分にも満たぬ生命力だったかと思いまする。ただ戦えるだけの気力が戻っただけ、と言った具合で」

「い、一割の半分以下……」


 あの時の千代ちゃん、残りHP5%で復元されたのかー……。そりゃあ、あっさり死ぬわけよ。その辺り、バビロンちゃんがうまく調整して起こしてくれたんだなぁ……。感謝感謝感謝感謝ッッッ……!!!


「ね~~。どらご~ん、どれから食べる~?」

「弱いのから順に食べていきませんこと?」

『わんっっっ!!! (ドラゴン、美味しいよ!!)』

「私、隙があれば喋ってみたいですっ!」

「お~そういえば~。喋れたら喋ってみよ~」

「あれもなかなかまともではない種族では御座いますが、話せるものは話せますよ! ん……? おばけ殿?」

『(´;ω;`)』

「あ、おにーちゃん!!! 盾出来たよ!!」

『キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』

「そう言えば出来ましたわねぇ! 盾も!」

『キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!』


 忘れてた、おにーちゃんの盾も『故意なイレギュラー発生テストで突っ込んじゃえ』って真シャチ系2匹を同時投入してたんだった。実を言うと15回も失敗してて、ペルちゃんから『わたくしには使えないゴミチケットだと、余していましたから全部差し上げます!』って【制作保護チケット】を15枚も貰ったから完成した奴なんだよね。



【★★オルカイトシールド】(極上・ミスティック・騎士盾・スロットなし)

・【呪】装備者を【狂戦士】状態にする

・【呪】【狂戦士】状態ではガード不能になる

・【呪】装備者を【発狂】状態にする

・スキル【エモーション:プロヴォーク】使用可能

・ヘイト率+88%上昇

・被ダメージ時、10%の確率で受けるダメージを1にする

・この盾は破壊されない

【ガード性能】

・斬属性耐性+37%

・打属性耐性+56%

・突属性耐性+40%

 ――これか? 娘の落書きだよ、お守りだってさ。で、こいつはシャチらしいんだが……by娘の落書きがイルカにしか見えないとある騎士

 ――へったくそだなぁ~~! んなもん皆に見せてんなよ~! by同僚からウザがられている騎士

 強化不可・破壊不可・重量5.5kg



『m9(^Д^)9m』

『フリオニールが【プロヴォーク】を発動しましたが、対象がいませんでした』

「あ、それなんだろう、ムカつく……!」

「対象に向けて発動すると、ヘイトが取れるようですわねぇ!」

「強い。ただ顔文字が、ちょっと、絶妙」


 なーんか色々言いたいことはあるんだけど、まあ強いから良いよ、強いから! 本来は狂戦士と発狂が強制で付与される呪いの盾なんだけど、おにーちゃんはどっちも効かないからデメリットがない! メリットしかない盾だね! ただカードスロットがないから拡張性がないんだけど……。無くてもいいぐらいには高性能!


『(*´∀`*)』

「嬉しいのね、良かった良かった。こっちの盾はどうする?」

『(´;ω;`)』

「お別れね……。たしか、コナーさんがこれ欲しがってなかったっけ? お下がりで申し訳ないけど、赫さんに持ってって貰おうか? 探索チームだったよね」

「そうですわね! 赫さんとフレンドですけれど、送りましょうか?」

「おくっちゃえ~。プレゼントを貰って嬉しい同盟ふやせ~」

「増やしちゃいましょうね~!」

「おねがいしまーす!」


 盾が使えるのはおにーちゃんだけだし、実質完全上位互換の盾だからね。ホ・タテにはお役御免になってもらおう! コナーっていうガーディアン系職の探索チームのプレイヤーさんが居たから、彼に使ってもらうのがベストだね!


「それじゃあ、行こうっか! あ、一応起きてるかもしれないし、ねーさんとローラちゃんに挨拶だけして来るから!」

「あら、じゃあ先に下でポーションのラインナップに変更がないか覗いて来ますわ!」

「一階のショップはラインナップ変わりがち~。どんちゃん、ごはん、食べてく?」

『わうぅ!! (ご飯!?)』

「ご飯だけ覚えてる、偉い。行こ?」

『わんっっ!!!』

「私も、軽めに何か食べていきますっ!」

「此方も軽めに!」

「絶対軽くない」

「か、軽いですよう!! 重くありませぬ!!!」

『(*´∀`*)』

「重くないと言っているではございませんか、おばけ殿!!!!」

『(´゜д゜`)』


 あ、おにーちゃんが千代ちゃんにまた頭ふっ飛ばされてる……。相変わらずだなぁ、このコンビ。どれどれ、じゃあ201号室に行ってみよう。何も言わずに行ったら、おにーちゃんみたいに拗ねちゃうかもしれないからね。




◆ 魔神殿・ギルドルーム【201号室】 ◆

 



 扉をノックしても、中から何も音がしない。プライベートエリア状態になると外へ音が漏れなくなる仕様があるけど、これはNPCも同じらしい。というかNPCがこういう個室を使ってプライベートエリア化出来るの、すごいなーって。逆にそっちに驚いてるよ。


「寝ちゃったかな……。寝るだけなら、リアちゃんみたいに死体安置所に戻らずにそのままだもんね。じゃあ――」

『トルネーダが【魔神殿・201号室】のプライベートエリアを解除しました』

「遅れちゃったね、い、いるよ……!」


 あ、ねーさんが返事した。扉をノックした音だけは呼び出し機能として中に伝わるみたいだからね、起こしちゃったかな? どれ開けてくれたなら、覗いてみよ――――


「あ、待って、まだ開けちゃ――――」


 ほう……。これは、これはこれは。メイド服ですか、大したものですね。スクショスクショスクショスクショスクショ…………。


「ほう、ほう…………」

「違うんだよ、これは、違うんだよ。部屋にあったんだよ……」

「部屋にあったから、ローラちゃんが着てて可愛かったし、着てみたいなーって思っちゃったわけですか?」

「そう、いや、違っ……!!! ああああああああ!!! 見なかったことにしておくれ!! 脱ぐ、脱ぐからさ!!!」

「うわあ、ねーさんここで脱いだら駄目だって!」


 あああねーさん、ねーさん待って! まだスクショ撮りきってないのに勝手に脱がないで!? ああ、アバター化解除されちゃった……! あれでも海賊船長のバトルドレスの上着を脱いでる! これはこれで――――あ。


「今見たのは、忘れるんだよ!? いいね!?」

「…………」


 上着を脱いだねーさんの後ろ姿、タイトドレスだけの状態なんだけどね? そのねーさんの背中、背中……!!!


「ねーさん、201号室に元気な猫ちゃんでも居た?」

「え!? ね、猫かい?! 居なかったけど、なんでだい!?」

「そっか、そっか~~~……。じゃ、私達ドラゴン狩り行ってくるから。ローラちゃんにもよろしくね」

「あ、ああ! 今回も、すまないね、本当にね」

「いえいえ! むしろご馳走様でした。ではでは……」


 んふっ。どうしよ、ねーさん全然気がついてなかったけど、あの引っかき傷は、そうだよね。いやぁ~そっかそっか、元気な猫ちゃんで大変そうだなぁねーさん。そっかぁ、そっかぁ~~~~…………!!!


「あら? もう大丈夫ですの? リンネさん、随分と嬉しそうですわね?」

「201号室にはね、元気なピンク色の猫ちゃんが居たんだよ」

「それはどういう…………あっっっ!!! あ~~…………!!!!」

「ねこ……? 猫ちゃんが居たの?」

「そうです。居たんですよーレーナちゃんっ!」

「ん、私は犬派だから。どんちゃんがいい」

「…………レーナさんに、まさかの通じないという、不具合が発生しましたわね!?」

「純粋なレーナちゃんもまた、可愛い……っ!!」


 いやぁ~~~~こういうことしてくるんだぁバビロンオンライン、気が抜けないわぁ~~~……!! そうだよね、実は対象年齢15歳以上だもんね、このぐらいの描写ならあるかぁ!! ふ、ふふ……。ローラちゃん、良かったね~……。


「どんちゃ~ん。ごはん、おいしい?」

『わうぅん!!! (お肉をこねたやつ好き! 中から美味しいのいっぱい出てくる~!)』

「ワンちゃんも可愛いですよね~……」

「わたくし、猫ちゃんがいいですわ!」


 え、ペルちゃん猫ちゃんがいいの? え~? 逆でしょ~~~……!


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