緊急クエスト・1 ~衝撃的~

◆ ローレイの海岸・ドラゴン緊急会場 ◆


 201号室事件の衝撃も落ち着いた頃、ドラゴン討伐緊急会場にて二度目の衝撃が私を襲った。


「……効果がねえ」

「うっそ~ん」

「わ~久々と思ったら効果なしはきっつ~」

「まあそら、いつまでも効果があったらバランス狂うわなぁ」

「更に上位の素材、必要?」

「かもしれねえなぁ」

『わうぅぅん!! わう? (美味しいよっ!! 駄目なの?)』

「駄目じゃないよ~どん太。美味しいけど、別のことで残念なことがあったんだよ~」

『くぅ~ん……? わうっ! (そうなんだ? 食べないなら、ちょうだい!)』

「しょうがない奴め……」


 なんと、【タフなサメバーガー】を食べても【HP2倍】と【1度だけHP1で復活する】の効果が発揮されなかった。原因はレベルの上がり過ぎで、レベル75を超えた二次覚醒済みのプレイヤーには効果がないってガッツリ表示されてしまった。こっちのレベルが高すぎるとレベルが離れすぎたモンスターから経験値が入手出来ないように、レベルが離れすぎた料理も効果がなくなってしまうらしい。まあそうしないと、バビロンちゃんとか教官NPCとかがこれを食べてHP2倍の復活持ちとかになったらとんでもないことだもんね。


「じゃあ最近どう調理すればいいかわかったこいつでも食ってくれや」

「お~……?」

「これ、なんや?」

「秘密だ。ほれどんちゃん、お前の分のデッカイのもあるぞ」

『わぅぅぅううぅぅ!!!♡』

「あっ……」

「千代さんのもあるぜ」

「此方のも! 感謝いたしますハッゲ殿!」

「ほいっ」

「わ、ありがとうございます!」

『ハッゲから【たぶんおさかなさんのソーセージ】20個を受け取りました』


 ん~~~ハッゲさん、これ何が原材料なんですか……!? たぶん、たぶんってなんですか!? え、でも食べちゃう……。あ、おいしい! リアちゃんに食べさせても大丈夫そう。たぶん。


「はい、食べても大丈夫だと思う。これはリアちゃんの分ね」

「ありがとうございますっ! 前に見た、まっかなものとはまた違うんですね……」

「そうみたい~美味しかったよ。どん太と千代ちゃんは直接貰った、おにーちゃん……あ~~」

『(*´∀`*)』


 おにーちゃんはこういう時に食べられないのが一番の弱点だよねぇ~。本人も食べれないのをたまーに忘れてる時があって、つい手を出しちゃう時があるんだよね。ごめんね、そんな様子を見てニヤッとする悪い主人で。


『(´~`)モグモグ』

『フリオニールが【たぶんおさかなさんのソーセージ】を魂の炎で吸収しました』

『フリオニールが3時間の間、【ダメージカット・999】状態になります』

『(*˘︶˘*).。.:*♡』

「えっっっっ…………」


 た、食べた……!? おにーちゃん、兜のバイザーをパカッと開けて魂に直接投入して、燃焼して吸収した……!? おにーちゃんに食べる機能が……まさか、いやまさかおにーちゃん、バビロンちゃんにお願いしに行ったのって!!!???



【★魔神兵長】

・シールドアサルト【スタン・気絶】

・マルチカウンター【気絶・反射】

 …………

 ……

・魔神崇拝・超【パッシブ:カルマ値-300】

・魔神の祝福【聖属性弱点削除】

・魂に焚べる娯楽【食事・入浴・睡眠を堪能出来る】



 こ、こ、これだァーーーー!!!!? 魂に焚べる娯楽!!! 食事と、お風呂と、睡眠を堪能出来るって!? なるほど、なるほどおにーちゃんがあの時風呂に行ってた理由が理解出来た……。このスキルを貰って嬉しくなって風呂に直行したのか……。そうだね、他の皆が堪能してるものばっかりだね、食事に、入浴に、睡眠……。おにーちゃんも生前は当然してた行為、これがなくなって辛かったか~……。


『3時間の間、【ダメージカット・999】状態になります』

「――それじゃ、僕たちは行ってくるね~」

「行ってくるッスーー!!」

「行ってまいります。レベル140、楽しみですね」

「ワイらが先に倒してくるでーー!」

「レイジの野郎、フラグを立てやがった」

「レイジのせいで全滅フラグだ~~」

「なんでや! 最初っから負けること考えるなや!」

「いってらっしゃいまし~!」

「てらら~」

「あ! いってらっしゃい、です!」

『わうわうわう~~~』


 おおっと、おにーちゃんのスキルを覗いてたらお昼寝さん達がレベル140のドラゴンの討伐に転送されてった。倒しちゃうかな? 倒せるといいな~~!! さて私達も、まずはレベル60のドラゴンから行こうか!


「私も~美味しいドラゴンがたべた~い」

「ドラゴンですもんね、経験値もきっと美味しいですよねっ」

「あ! そういえば、フルパーティでもソロでも経験値に差が出ないよう修正されましたのよ。パーティを組まないソロプレイヤーからの要望が多かったからだそうですわ」

「パーティでもソロでも100%~」

「あ、そんな変更が……」

「実はリンネさんがプレイし始めた時には既にこの仕様に変わっていたようでしたの。わたくし、気がつかないで誤情報を教えてしまいましたわ! 申し訳ありませんわ!」

「大丈夫だよペルちゃん! 急に仕様が変わると把握出来ない時あるもんね」

「その代わり、ギルドに追加機能で経験値関連が追加~。多分、金のシャチホコとかがそう。経験値アップの家具が色々あるみたい~」

「なるほど……ソロプレイヤーでもギルドに幽霊メンバーで所属して、恩恵だけは受けれると……」

「そうなりますわね。パーティを組みたくないソロプレイヤーが集まるギルドもありますから、ソロプレイヤーはそっちで恩恵を得てねってことですわね」

「経験値アップ系の家具はお金出し合えば頑張れば買えるみたい~。でも置けるのは3個まで、115%限界~」 

「うちは120%ですよね……?」

「そう、黄金のバビロン像以外に2個経験値アップを置けば、130%になりますわね!」

「なーるほど……! あ、ちょっと待ってて、すぐ戻るから!」


 なるほど、そんなことがあったのね。一部からは非難が上がりそうな内容だけど、元の数値に近い値がパーティ組まなくても発生するなら、実質上方修正かな? うちなんてMAX130%になるわけだし。あ、じゃあ今度経験値アップ系の家具を…………そういえばアレ、設置するの忘れてたなぁ。


「ちょい、おにーちゃんこれ一瞬だけ装備してくれる?」

『(*´∀`*)』

『【★★ヘルホエール号機関室の扉】の所有者が【フリオニール】になりました』

「どん太、食べ終わったでしょ? ちょっとギルドルームに戻るよ」

『わんっ! (わかった!)』

「よし、じゃあおにーちゃん。その盾をギルドルームに設置しに行くよ!」

『(*´ω`*)』


 この【★★ヘルホエール号機関室の扉】、ギルドルームに設置してどん太に乗って爆速で帰ってこよう。さて、何の効果が出るかな!?




◆ 5分後…… ◆




『【★★ヘルホエール号機関室の扉】の効果が発動し、ギルドメンバー全員に【経験値上昇+10%】と【インベントリ重量制限+15kg】が付与されました』


 誰ですか、この盾をダメミスティックなんて呼んだのは!! 置くだけでアイテムインベントリの重量制限が+15kgされるなんて、凄すぎる効果があったじゃないですか!!!


「ものすごくグッドな効果。驚きが隠せない」

「あの盾は飾ることで効果を発揮する、家具として有能なミスティックでしたのね!?」

「ペルちゃん、今それに比べてって言おうとした?」

「い、いいえ!? 呪われたぱんつの話なんてしてませんわよ!?」

「ほう……!」

「あっ」


 今のところ一般的には最も無能なミスティック、私のパンツになっちゃったねえ!? 装備したら永続でHPとMPが回復しなくなる効果の状態異常が発生とか、ふざけてるにも程があるよねえ!?


「ええと! 行きますわよ!! グリムヒルデさん御機嫌よう~~!!」

『ピピ……。御機嫌、よう、ペルセウス様。現在、ミドル9体撃破。ラージ3体撃破。残存69体、です。ご用件を、此方の端末から。どうぞ』


 ああ!? ペルちゃんが逃げた!? まあいい、まあいいでしょう! それよりドラゴン狩りよ、どん太と千代ちゃんが満足する量のお昼ごはんを狩りに来たのよ!! 


「レベル60のミドルレッドドラゴンがまだ41体、レベル75のラージが12体、レベル90のグレートが10体、レベル100のスーパーが5体、そしてレベル140の暴竜炎帝ドレイクが残っていますわよ!」

「ミドル~」

「まずは小手試しにミドル!」

『わんわんっ!! (お肉!!)』

「龍の肉、心が躍りまする……じゅるっ……」

「前に食べました! 美味しかったですよねっ!」

『(*´∀`*)』


 おーおー皆楽しみにしておるね。おにーちゃんも食べれるようになったから楽しみだね~。じゃあまずはミドルからお肉にしてやろうね!


『ピピ……。ミドルレッドドラゴン、推定レベル60、選択。承認後、10カウント、バリア内の、戦闘エリア、転送。尚、バリア通過時、補助魔術、スキル等消滅。注意』

『ミドルレッドドラゴン討伐戦が選択されました。10秒後に戦闘エリアに侵入します』

「あ、中でバフかけなきゃだめなんだ」

「事前準備からの超火力ぶっぱ即終了対策ですわね~」

「ずる禁止~」


 なるほどなるほど! 事前にバフが掛けられたら、パーティ外の人にいっぱいバフを掛けてもらって転送された瞬間に超火力スキルで終わり! ってのが出来ちゃうもんね。ずる対策もちゃんとしてあるところを見るに、調整はしっかりしてあるイベントなのね。


『3……2……1……転送』


 さあいくぞっ! まずはミドルレッドドラゴン! 対戦よろしくおねがいしまーす!!




◆ ◆ ◆




 対戦ありがとうございました。


『――――2COMBO! どん太が【究極魔狼拳】を発動、ミドルレッドドラゴン(Lv,60)に合計331,350ダメージを与え、撃破しました。経験値 1 獲得』

『おめでとうございます! クリアタイムは7秒です!』

『MVPはどん太でした。MVP報酬【ドラゴンの鱗】を入手』

『【死体安置所・7】に【ミドルレッドドラゴン(Lv,60)】を納棺しました』


 ドラゴンを見た瞬間『あれ、どん太と変わらない大きさだな……』って思ったら、どん太が地獄行き超特急で『お肉~~~~~!!!!!!!!!』って叫んで魔狼身弾、からの究極魔狼拳で粉砕して、終わった。終わってしまった。


「…………よわ~」

「そう言えば、レベルが20以上離れているせいで経験値が……」

「1しかない……こいつは狩る意味がない……」

「一瞬でしたけど、ミドルはなんだか知性が乏しそうでした。お話も出来なさそうだったので、もう来てもしかたないですね」

「肉になる部位も少なそうで御座いました!」

『((((;゜Д゜))))』


 これじゃ本当にお肉を取りに来ただけになってしまう。もうレベル60と戦う必要性がなくなっちゃった。強いて言えばドラゴンの鱗が貰えるってことと、死体が手に入るってことだけど……。


『取得する宝箱を選択してください』

「いや1個しかないけど」

「選択とは……?」

「選択しないという選択も、あるのかも……」

「本当にただただ帰るだけになっちゃうねえ!?」

「てきとーに開けて、次いこ~?」

「これは適当でいいですわね。わたくしが持っておきますわ」

「おっけー」

「はーい」


 それにしてもさぁ~~? どん太に瞬殺されるようなドラゴンがドラゴンって名乗るの、本当に強いドラゴンに失礼だと思わない? チョットデカイアカトカゲ(Lv,60)に改名するべきだと思うんだよね。まあこれより大きいレベル75のラージなら、私達で言う所の二次覚醒相当のレベルだからね! ここからきっと強くなるはず、はずなのよ! 次に期待しよう!!




◆ ◆ ◆



 ………………

 …………

 ……

『07XB785Yが【デッドエンドショット】を発動、クリティカル! ラージレッドドラゴン(Lv,75)に615,300ダメージを与えました』

『――――4COMBO! どん太が【究極魔狼拳】を発動、ラージレッドドラゴン(Lv,75)に合計330,330ダメージを与え、撃破しました。経験値 19,500,000 獲得』

『どん太がレベル4に上昇しました』

『おめでとうございます! クリアタイムは15秒です!』

『MVPは07XB785Yでした』

『【死体安置所・8】に【ラージレッドドラゴン(Lv,75)】を納棺しました』


 こんな短時間で合計2M近いダメージが出てるんですよ。信じられますか? 私は信じたくないです。レーナちゃん、恐ろしいことに左手でだけで身の丈ぐらいある【魔神銃マシンガン】を発射しながら、右手でマスケット銃を用意して最後に【魔砲ザミエル】が撃てる……。そのDPSたるや恐ろしく、【魔神銃マシンガン】の方は秒間90kぐらいダメージ出てたね……10秒で900k強、最後にザミエルで615k。どん太が極限化なしで500kぐらい出してたから合計2Mダメージ強。うちのメンバー、火力がアホほど高過ぎませんか……?


「う~燃費悪すぎる~」

「うわ、MP空っぽに近いじゃないですか!」

「撃ってる最中、MP自動回復が止まってる。攻撃を止めないと自動回復できない。途中で超高級マナポ二本も使った、辛い」

「あら、それは辛いですね……」

「秒間10発、重め。反動強い。雑魚散らしにしか使えないかも」

「音は爽快でしたわね~! デッカイ的にゴリゴリと当たって怯んで叫ぶ! 素敵な蹂躙光景でしたわ~!」

「音は気持ちいい。撃ってる感じが、好き」


 でもレーナちゃんのこの銃は、燃費がものすごく悪いみたい。1発2%消費で秒間10発で10秒撃ったってことは、この短時間でMPを200%も使ったってこと! しかも最後に40%消費のデッドエンドシュートまで撃ったから240%! 秒間16%ずつMP減るって、いやーーーヤバい、それはヤバい! あ、そういえばリアちゃんがお話したいって言ってたのに、また瞬殺しちゃった!


「あ、リアちゃん! ごめん、またすぐ死んじゃった!」

「弱いドラゴンとはお話しなくても大丈夫ですっ! 強いドラゴンの方が、きっと頭がいいです!」

「そ、そうだね……。じゃあ強いドラゴンとはお話出来たらしてみようね」

「はいっ」


 あ~~~……。後はレベル90のグレートと、レベル100のスーパー、レベル140の暴竜炎帝ドレイクか~……。どれかとお話出来れば良いけど、どん太が突っ込んでいくからなぁ~……。でも次からは一応レベル的には格上なんだから、慎重に行かないと。流石にね?


「どん太、次からは強いドラゴンだと思うから、考えなしに突っ込んだらダメよ?」

『わんっ!! (わかった!)』

「それでは、此方も本腰を入れねばなりませんね!」

『(`・ω・´)』

「ストーンウォールを出す準備もしますね!」

「ブレス攻撃はありそうですものね~」

「あるって。お昼寝以外みんなこんがり焼けたみたい」

「あ~~~……」

「レイジさんが悪いですわね!」

「そう。レイジが悪い」

「何ていう理不尽……」


 やっぱりブレス攻撃、あるんだ! 甘く見ると、こんがり焼けて全滅しちゃうから注意しないと! じゃあ次の作戦をここで決めて、宝箱の中身を回収したら次のグレートに挑戦しよう!!

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