遥か高みへの挑戦
◆ 魔神殿・3階 ◆
『そうだわ! ねえ、あんた達さぁ~? ワ・タ・シ・と……♡ 遊んでみな~い?』
はい!! 遊びたいです!! なんて勢いよく返事が出来なかったのは、バビロンちゃんが黄金のガントレットを右手に装備していたから。今ここにいるのは私達のフルメンバーと、ペルちゃんを合わせた合計8人のフルパーティ。つまりバビロンちゃんは、私達8人を相手に『遊んでやる』と言ってるわけで。
実力差は歴然。勝てないなんて当たり前、でも遥か高みの実力がどれ程のものなのか、見てみたいと言う気持ちもある……。そして困ったことに、起きたばっかりのセイレーンのローレライことローラちゃんも含めて従者6名が全員『ちょっと深淵を覗いてみたい』って顔をしてる。これはもう、ペルちゃんがやるっていうならやるしかないでしょう。
「わたくしは、やってみたいですわ……!」
『ふっふ~ん♪ イカレ女は? ヤるの? ヤらないの?♡』
「全員で、お相手させて頂きます!」
『わうん!!! (やってみたい!)』
「どこまで、通じるのでしょうか……! 知りたいですっ」
『((((;゜Д゜))))』
「魔神様との手合わせ……! 光栄に御座います!」
「おやおや、あたしが崇拝する魔神様はどれ程強いのか、知りたいねぇ……!」
「うちもぉぉ……。目覚めたばっかりなんで、軽く動きたいですぅ~……!!」
バビロンちゃん的にはちょうど私達が8人だし、アンデッドのメンバーも結構揃ってきたし、いい機会だから遊んでやろうって思ったのかもしれない。今後強いボスと戦闘する際の参考にもなるだろうし、やらないっていう選択がない。
いつもならバビロンちゃんの可愛さにやられて失神コースだけど、向こうがせっかく!! 相手をしてくれるっていうんだから! しっかりやる!! そしてどんな手段を使ってでも、バビロンちゃんを感心させられるような一手を、取りたい!!
『いいわねぇ♡ じゃあここじゃアブナイからぁ……アナザーディメンション♡』
『別次元の空間に飛ばされます――――』
◆ ???? ◆
う、わ……!? 足元が、周囲の空間が、消えた……!!? ここは、ここは! 覚醒の時に見た赤黒い靄がどこまでもどこまでも広がる、不気味な空間!!! あの時飛ばされたのは、ここだったんだ!
『どうしたのかしらぁ? 用意、あるでしょぉ? しないのかしら~?』
まずい、もう始まってるのに悠長に周囲の観察なんて。バビロンちゃん、いつもの雰囲気とは違う。いつものニコニコしたサディスティックな笑顔じゃなくて、口だけ笑って目が笑ってない。これは本気でやらないと……愛想を尽かされちゃう!!!
「アイギス!!!」
『ペルセウスが【魔盾アイギス】を発動、【ペネトレイト・10】状態になりました』
「沈め、ネガティブオーラ!」
『3分間、パーティ全員の全ステータスが+40されます』
「阻め、ボーンシールド!」
『パーティ全員が【ボーンシールド】状態になりました』
「無双緋影!」
『姫千代が【無双緋影】状態になりました』
『(`・ω・´)』
『フリオニールが【エナジーライト】を発動、姫千代のHPが最大まで回復しました』
「気を抜くんじゃないよ!! あたしに付いて来な!!!!」
『トルネーダが【攻撃の号令】を発動、1分間攻撃力が上昇します』
よし、これで用意は出来――――
『ローレライが
『魔神バビロン(Lv,????)が【精神衝撃】状態になり、MPが急激に減少します!!!!!』
「嘆きの歌を此処に歌おう、想い砕く槌となれ、死を穿つ槍となれ、愛も恋も引き裂く刃となれ、
『ローレライが
『Weak!!! 魔神バビロン(Lv,????)が合計187,771の全属性ダメージを受けました!』
『ふっふふ♪ やったわね~??』
ローラちゃん、曲系のスキルと歌系のスキル、同時発動出来るの……?! 前方範囲に打攻撃、斬攻撃、突攻撃の3種攻撃が複数回、全属性で発動するのぉ!? なにそれぶっ壊れてない?! よく勝てたな昔のローレイの住人!? え、いやそれどころじゃない! これじゃ真っ先に狙われるのはローラちゃんだ!!
『((((;゜Д゜))))』
『フリオニールが【ハイガード】を発動、強力な防御状態になります』
『あら~? じゃあお前が一番最初よ~? それで耐えられるかしら~?』
『((((((((;゜Д゜)))))))』
一番前に立ったけどおにーちゃん、耐えられるの?! いや絶対無理だよね!?
『魔神バビロン(Lv,????)が【破壊する右腕】を発動、Miss……。フリオニールが【霊体化】で回避しました』
『へぇ……』
『(`・ω・´)』
『ガウァアアアアアアア!!!!!!』
『どん太が【魔狼身弾】を発動しました』
最初っから受ける気がなかったのね!? でも良い判断よ、それに当たったら絶対ヤバかったから! ナイス霊体化! そしてどん太、すり抜けてターゲットを失った所の隙を突くナイスな突撃よ! いけっ!!!
『お座り!』
え、さっきまで体勢を崩してたのに、踵落としが出来る状態になって…………あっ、バビロンちゃん、黒だ…………。
『魔神バビロン(Lv,????)が【消滅の右足】を発動、どん太の【ボーンシールド】状態が解除されました。どん太ドッペルが消滅しました』
『どん太が【金剛】を発動、頭部を金剛化させました』
『魔神バビロン(Lv,????)がどん太に1,997,459ダメージを与え、撃破しました』
『キャゥッッ――――』
あ…………。金剛、してたのに…………。え、え! そうだよ、何気にどん太の初死だぁ……!? やばい、これは今のうちに準備、しないと……!
「
『オーレリアが【
『ふぅ~~~……』
『魔神バビロン(Lv,????)が【超風】を発動、【
――――やばいってそれは!!!
『セイレーンが演奏・歌を中止しました』
「うち、焼き鳥になりたくない~~……」
『姫千代が【水月】で回避しました』
『ペルセウスが【
『フリオニールが45,571ダメージを受け、鎧が破壊されました』
『うわあああ▂▅▇█▓▒░(’ω’)░▒▓█▇▅▂あああああ』
ああ……! おにーちゃんが、フレンドリーファイアで死んだぁ……!
「きゃああああああ!!!!!!!」
『オーレリアが42,289ダメージを受け、死亡しました』
『使い魔【黒猫ルナ】が犠牲になりました』
『オーレリアが復活しました』
『オーレリアが42,441ダメージを受け、死亡しました』
マズい、リアちゃんが死んで生き返ってまた死んだ……! これはアビスウォーカーの出番……! 隠れないと……!
「深淵よ、我が道となれ! アビスウォーカー!」
『【アビスウォーカー】状態になりました。トルネーダの影にワープしました』
「っらぁ!!!」
『トルネーダが【★トルネーダスペシャル】を発動、範囲スキルを弾きました』
生き残ってるのは、私、ペルちゃん、千代ちゃん、おにーちゃんが魂だけ、トルネーダさん、ローラちゃん……。あっという間に実質3人もやられてる……! とりあえず取り急ぎでワープした先がトルネーダさんだったけど、トルネーダさんはMP消費スキルが無いから、よし! ここで準備開始だ……!
「……っ!」
『あら、いつの間にか近くに……! 今度はちょっとは強くなったかしら~?』
「行きますわよ!!!」
『ペルセウスが【魔双剣・ワラキア】を発動、魔神バビロン(Lv,????)に合計22,241ダメージを与えました』
『あらあら、当てられるだけ前より上達してるわねぇ~! でも魔剣には、こういう使い方も、あるのよっっっ!!!!!』
『魔神バビロン(Lv,????)が【魔短剣・レーヴァテイン】を抜剣、【サウザンドレイン】を発動しました』
「えっっ…………」
『ペルセウスの【ペネトレイト】状態が解除されました』
『ペルセウスの【ボーンシールド】状態が解除されました』
『ペルセウスが合計9,988,999ダメージを受け、死亡しました』
魔短剣にも、そんな使い方が、あるんですね……。ガントレットから直接、何百本ってレベルで射出するスキルが……。しかも直接攻撃扱いで、ばっちりペネ剥がれてるし……。一発の威力が高すぎるし、マル・デ・ウニで受けても返し切れなさそう……。ペルちゃんもやられちゃった……。ヤバいヤバい……もうちょっと持ってくれると思ったのに……。
『ダーリ! トゥム! ダーリ!』
「あ、うち、死んだ……」
え……? 今のその可愛い謎言語、なんですか……? 完全にローラちゃんがターゲットされてるけど、何が――――
『
『魔神バビロン(Lv,????)が【
「ちょっと、こりゃなんだ――――」
『トルネーダが???,???,???ダメージを受け、死亡しました』
『魔神バビロン(Lv,????)の【精神衝撃】状態が解除されました』
『ふぅ~……』
一瞬だけ、一瞬だけブラックホールが出現しただけで、表示を放棄するレベルのダメージが、出たんですけど……? ローラちゃん、トルネーダさん……? え、大丈夫だよね……? 再召喚、出来るよね……?
『姫千代の影にワープしました』
「今ッ!!!」
『姫千代が【一刀断鉄】を発動しました』
『当たってあげようかなぁ~? どうしようかなぁ~~~?』
「なっ……!?」
『魔神バビロン(Lv,????)が【白刃取り】を発動し攻撃を無効化しました』
『NP1を消費しました』
『当たってあ~げな~い』
その、神速とも言える抜刀術を、右手だけで止めるんですか……? いや、いやいやいや…………。
『魔神バビロン(Lv,????)が【粉砕する左腕】を発動、姫千代が17,747,196ダメージを受け、死亡しました』
いやぁ~~~…………実質、全滅ですねぇ~……。後は私と、おにーちゃんの魂しか居ないんで…………。もう、ダメージソースが無いし、後は私が負けるだけで終わりー粉砕されて終了ーーー。バビロンちゃんにダメージを与えられたのは、ペルちゃんとローラちゃんだけでしたー……。
――――と、思うでしょ?
『魔神バビロン(Lv,????)が500,000ダメージを受けました』
『な――――かっ……はっ……!?』
全滅するって確定したタイミングで、使ったんだよ。黒イ雨をね。アビスウォーカー中なら、声が外に漏れ出さず、狼特有で鼻が良くなんだかんだ勘の良いどん太が私に気が付かないほどに気配も匂いも漏れ出ない。最後、千代ちゃんが刀を止められた瞬間に使ったんだ。
『マナが……!? やって、くれ――――』
『魔神バビロン(Lv,????)が【麻痺】状態になりました』
『魔神バビロン(Lv,????)が【毒】状態になりました』
「やっぱり、そうだった……」
『はりゃ……? 気づひひぇ、ひゃの……?』
そしてバビロンちゃん、状態異常耐性を今回抑えてるか、もしくはそもそも状態異常耐性が無い状態で遊んでくれてた。ローラちゃんが初手に【精神衝撃】の状態異常を与えた時点でこれは判ってた。だからバビロンちゃんに今回有効なスキルを、しっかりと当てられる状態に持っていかなきゃならなかった。言っちゃ悪いけど、今回一番時間を稼いでくれたのが、千代ちゃんだったから千代ちゃんにしただけ。
『魔神バビロン(Lv,????)が【出血】状態になりました』
『魔神バビロン(Lv,????)が【沈黙】状態になりました』
『魔神バビロン(Lv,????)が【猛毒】状態になりました』
『魔神バビロン(Lv,????)が【重篤な出血】状態になりました』
『魔神バビロン(Lv,????)が【石化】し始めました…………』
バビロンちゃんが、バビロンちゃんが苦しんでる……。しかも私のせいで……! ああああ……!! 胸が、胸が痛いぃ……!! でも、でも判ってる! 判ってるのバビロンちゃん!! これは倒して良いバビロンちゃんなの!!!
『魔神バビロン(Lv,????)が【石化】しました』
『魔神バビロン(Lv,????)が死亡しました…………』
死んじゃった……。バビロンちゃんが、バビロンちゃんが、あああぁぁぁぁ…………! 死んじゃったよぉぉ!!! 辛い、辛い、胸が痛い、苦しい、私も死ぬ……。
『アナザーディメンションが解除されました』
◆ 魔神殿・3階 ◆
死にたい……。死にたい……。こんな気分になるぐらいなら、倒したくなかった……。でも倒せるってわかったなら、倒さないと……。
『きゃぁ~~~~~♡♡♡ 凄いじゃなぁぁぁ~~~い♡♡♡』
あああああバビロンちゃんだぁぁあああ!!!
「驚きましたわ……。でもどうして……
『ねえねえ? どのタイミングでわかったのかしら~? ききた~い♡』
き、聞きたい? 聞きたいって推しが言うんだから、聞かせてあげましょう! どうして私が、あのバビロンちゃんが偽物だってわかったのか!!!
「バビロンちゃんの笑顔が、完全再現されていませんでしたぁ!!!」
『…………え? 本気なの? ワタシのこと大好き過ぎな~い? 大好きじゃな~~~い♡♡』
「嘘ぉぉ……?! それはもう、最初からじゃありませんのぉ……!?」
「あと、声! ねっとりしたチャーミングな声じゃありませんでした!! ハートマークがいっぱい付いてるバビロンちゃんの声じゃありませんでしたぁ!!!」
『やだぁ~~♡ もう愛? 愛ね? 愛なのねぇ~~!!!!』
そう!! まず顔、顔!! 顔を見た瞬間に違和感でしたね! そして声、バビロンちゃんの煽情的なねっとりチャーミングボイスが不完全! これがもう、最初から『違う……』と判断したポイントですね!
『イカレ女、ワタシのことじーーっくり見たこと少ないのにぃ……♡ 隅々まで覚え過ぎ~……♡ もう、えっち……♡』
「――ア゛ァ゛!!!!!!」
「気をしっかりもつのよ!!!!!」
「ア゛ア゛!!!!!」
バビロンちゃんの今のボイス、目覚ましボイスにする! 録音してあるもん! するするするする! あと、ペルちゃんの顔も近い! ペルちゃんも顔が良すぎる死ぬ!!! こいつら戦闘終わったのに私を殺しに来てるでしょ!? 酷い! 幸せ!
『でもぉ、偽物ってわかっただけであの手を取るには、至らないでしょぉ? なんでぇ~?』
「最初、ローラちゃんの精神衝撃が効いたので……」
『あのMPバニッシュね! 確かに、ボス属性じゃないから効いたわよ~! それが、最後確実にワタシの偽物が足を止めるタイミングを見計らって、大技を使うタイミングであの雨を使ったのねぇ~?』
「何かしら有効な状態異常が付いたら、勝てる見込みがあると思ったので!!」
『すごいっ! えらいっ!! ちなみにあれを遠くで発動してたら、ブラックホールで消してたわよ~♡ 遠くに行ったらブラックホール、近くは近接スキルで対応するようにしてたのよ♡』
「わたくしも、それに気がついていれば、カラミティウェイブが効いたということですのね……」
『ペルセウスは観察不足ね~♡ 精神衝撃が効いたログは見えてたでしょぉ? 攻撃の前に一番有効打になるものを試す! アドバンテージを大きく取れる、リスクが少ないスキルなんてボンボン使いなさいよぉ~!』
「反省致しますわぁ……!!」
ん~~~…………! 勝てたのは正直、私が判断する時間を稼いでくれた皆のおかげだし、最後に千代ちゃんの攻撃を止めてから殴るっていう僅かに時間の掛かる行動をしてくれたおかげでもあるんだけど……。でも、そういったちょっとした運とかをものにして、一瞬の隙を突けたのは、大きかったかな!
『じゃあまさかまさかの、勝っちゃったリンネにはご褒美ね~??』
ご褒美!? アレしかないじゃん!!!
「キス!!!!!!!!!」
『全力でキス要求してくるなんて変態じゃなぁ~~い♡ っちゅ♡』
「あぁ~~~~…………」
『ん~~~……♡ 物足りないでしょ? 他にないのぉ?」
ない!!!!!
『プレゼントばっかりじゃ、面白くないしぃ~……。情報とかど~お? 砂漠の国、知りたいでしょ♡』
「――それって、リアちゃんの故郷ですかぁ!?」
『ぴんぽーん♡ ターラッシュより西の王国、砂漠の国ステラヴェルチェ王国!! この砂漠の国のお話。聞きたくな~い?』
「「聞きたい(ですわぁ!)」」
『ん~~~♡ じゃ、教えてあげちゃうわね~♡』
キスして貰えた上に、お話まで聞けるんですかぁ!? やったーーーー!!!!
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