緊急クエスト・5 ~なんだか芸術的~
◆ 魔神殿・ギルドルーム【ロビー】 ◆
――――なんか、デッカくて可愛いデフォルメされたドラゴンのぬいぐるみが、置いてある。
『わう……? すんっ……わんっ!! (これは、お昼寝さんの匂いがする!)』
「お昼寝さんかぁ~~~……置いてったの……」
「家具効果、ないタイプ。でも可愛い。ふわっふわ……」
「あっ、やっと、離して貰えました……」
『Σ(´∀`;)』
「よいっしょ、おお! 実際のとは違って、柔らかいですね。これはよいものです……」
どうやらお昼寝さん達が倒したドラゴンの報酬だったらしい。【まっかなドラゴンのぬいぐるみ】って書いてある……さつりくしゃーちとまっさつしゃーちのぬいぐるみ同様、家具としての効果はないけどインパクトがあって可愛いね。また新しい、お昼寝さんの抱きまくらが増えましたね……。そのうちぬいぐるみでロビーが溢れかえるんじゃないだろうか。まあ後10個以上置いてもスペース余ってるぐらい大きいんだけどね、このロビー。
「みなさん、少しここでお待ちになっていらして? すぐに鑑定して来ますわ!」
「お~鑑定~」
「ええ、お待ちしております……ふわふわ」
「はい! いっぱい抱きつかれたので、ドラゴンに抱きつき返して来ます……えいっ」
『わふ?』
『(*´∀`*)』
リアちゃんと千代ちゃんはドラゴンぐるみに抱きついて休憩、おにーちゃんは座ってるどん太にもたれかかって休憩……あの二人は未だに201号室でご休憩、っと……。よし、休憩中にやることやっちゃおうか!
「あら……? この、扉……」
「3号室の扉を外して、ヘルホエール号の機関室の扉に変えたんだ~」
「どこに設置したのかと思ってたら、ここ。確かに扉――――え」
「えっ」
「え……!?」
いつもの3号室の扉を外して、あの機関室の扉をここに設置したのは確かに私ですけど……。いや、内装は弄ってない。これは知らない。というか開けて中を覗いてなかったからわからなかった……!!
「豪華な列車の中……ですわね、これは……」
「内装が、豪華な観光列車の中みたいなセットに変わってる~~~」
「え~~~……すっごい、こんな効果もあったなんて……!」
まさか、ヘルホエール号機関室の扉に更にこんな隠し機能があったなんて……。部屋の扉と取り替えると、内装が豪華観光列車の客室に変わるんだ! 他の部屋は――変わってないね。えええ~凄い……。これって概念的には機関室がロビー側で、機関室から後部が客室ってことなのかな? 入って、大丈夫だよね? お邪魔しまーす……。
「いつもの3号室じゃ、なくなっちゃったけど……」
「まるでスイートルームですわね~! きっと開発者さんの中に、内装に詳しい方がいらっしゃるのね! 再現性が見事ですわぁ~……!!」
「サラッと乗り慣れてる側の感想が出たね?」
「あら? あらっ!」
「実際に乗ってみたい。でもこれ見てからだと、実際乗っても『あ、同じだ~』で終わりになりそう」
「…………確かに!!」
「それはありそうですわね~……」
いつもの『The 会議室』みたいな3号室から豪華観光列車のスイートルームになっちゃったけど、椅子はふかふか、テーブルとか壁紙の装飾は綺麗、床の絨毯は踏むのを躊躇うレベル、内装も落ち着いた淡い光を放つランプとか、レトロな感じの作り込みが凄まじい……。これ、開発の人さ? プレイヤーの誰も見つけてくれない可能性だってあるわけでしょ? いやぁ本当、そういうものに全力を掛けられるの、凄いなぁ……。ぜひとも、ゲーム開発側の作り込みを見落とさないようにこっちも全力で発見してあげたいね! そう思えるゲームだわ。
「よし!! 鑑定しよっ!!」
「そうですわね、取り分はどうしますの?」
「私はこれのこと、あるから。全部そっちでも大丈夫」
「それは流石に! 押し付けたみたいなところありますし!」
「そうですわ、では今回は欲しい物を1つだけ先に選んで、それ以外は相談で分配で如何かしら?」
「私はそれに賛成!」
「じゃあ、それに甘えて、それが良いっ!」
さあ、そんなわけで! とりあえずここまで出た装備の鑑定タイムに移行しよう! とりあえずいつも通り、この部屋で一番大きいテーブルに出た未鑑定品をぽいぽいぽいぽいっと並べて、テーブルの上を【?】マークでぎっしりにする! これが好き、これがいつも楽しい!
「では、今回はささっと手早く行きますわよ! 先に欲しい物をお選びになって?」
「じゃあ、この虹枠の杖!」
「わたくしは服が良いですわ!」
「ん、靴にする」
「ではまとめて行きますわよ!」
それじゃあ各々欲しいのを選んだところで、まとめて鑑定行ってみよー!
『【?剣】は【ドラゴン
『【?斧】は【ドラゴ
『【?槍】は【ドラゴン
ミドルレッドドラゴンを許すな。アイツ全部偽装備しか落としてないぞ!!
『【?鈍器】は【ドラゴン
『【?杖】は【
『【?服】は【ドラゴンレザーアー
ラージレッドドラゴンも許すな。アイツも全部偽装備しか落としてないじゃん!!! ドラゴンレザーアーアーって何よ! うわぁこれ首を通すところに穴があいてないじゃん! あーあー!!!!! ドラゴンダメイスに至っては振りかぶるとヘッドが飛んでくってさ! 駄目にも程があるわ!!
『【?食材】は【皆で食べよう! 赤龍の赤身肉・焼肉セット!】でした』
『【?食材】は【皆で食べよう! 赤龍の赤身肉・焼肉セット!】でした』
『【?食材】は【皆で食べよう! 赤龍の赤身肉・焼肉セット!】でした』
出たな食材、完全に焼肉用のお肉セットじゃん! これが普通の食材インベントリに入るアイテムと何が違うのか理解に苦しむね!!
【皆で食べよう! 赤龍の赤身肉・焼肉セット!】(ユニーク・食材)
・バーベキューに、ご家庭で焼肉に、一人用ではかなり多い焼肉セット!
・味付けは付属の3種のタレをご利用ください
・四切れ以上召し上がりますと、通常の人の場合はランダムでステータスが+4上昇します
消費期限【残り40時間】・食事制限時間なし・重量4.0kg
「あ、これステータス上がるって……」
「ええ!? あら本当ですわ!」
「前のソーセージ系の再来。いっぱいあるから皆で食べる?」
「そうですね、皆で食べたいですね!」
これは、これは良いものだよ……。食材に直で入って来なかったのは、格が違うっていうか永続効果のアイテムだからかな……? 差別化されてたんだね! じゃあということは、こっちの虹食材も……!?
「こ、こっちは?」
「ええ、見てみましょう!」
『【?食材(虹)】は【★皆でモリモリ食べよう! 赤龍のやみつき肉・焼肉セット!】でした。おめでとうございます!』
『【?食材(虹)】は【★皆でモリモリ食べよう! 赤龍のやみつき肉・焼肉セット!】でした。おめでとうございます!』
『【?食材(虹)】は【★チャレンジしてみよう! 赤龍の食い尽くし大満足フルコース!】でした。おめでとうございます!』
【★皆でモリモリ食べよう! 赤龍のやみつき肉・焼肉セット!】(レジェンダリー・食材)
・バーベキューに、ご家庭で焼肉に、一人用ではかなり多い焼肉セット!
・味付けは付属の5種のタレ・スパイスをご利用ください
・四切れ以上召し上がりますと、通常の人の場合は全ステータスが+4上昇します(肉系上昇カテゴリーと競合)
消費期限【残り40時間】・制限時間なし・重量6.0kg
【★チャレンジしてみよう! 赤龍の食い尽くし大満足フルコース!】(レジェンダリー・食材)
・並のお肉の量では満足できない! ご安心下さい、貴方のためにこれがある!
・味付けは10種のタレ・スパイス・ソースをご利用ください
・総量の40%以上、かつ全てを二人以内で召し上がりますと、全ステータスが+10上昇します(人外種用・肉系上昇カテゴリーと競合しない)
消費期限【残り40時間】・制限時間30分・重量80.0kg・完食時【
「これはどん太と千代ちゃん用だ……」
「どうしましょう? もう暫くでお昼ですし、皆様を集めてこれを食べてからでも良いですわねぇ」
「集まっても、食べきれないと思う。人外用を抜いても、24キロ」
「まあ! 24人集まっても1人1キロですわね!? あら、でも四切れでいいのなら……」
「…………ハッゲとクックさんに頼んで、食堂の売店で売ってもらう?」
「ギルドメンバーで食べきれない分はそれが良いかも! 四切れずつ販売にすればいいですね、良い肉から食べちゃいましょう!」
「賛成ですわ!」
「賛成~……問題は、もしかしたらお昼寝達も出してるかも」
「「あっ…………」」
「それにまだ出るかも。そうなると消費、また困る。告知出して、21時からでいいと思う」
「この緊急が20時までですものねぇ、ギリギリまで狩りたい人もいるでしょうし、打ち上げがてらが良いかもしれませんわね!」
「そうしよ、今すぐじゃなくていいね」
「お昼寝に個チャ送る~」
これ、私達が出した分のお肉ですら食べ切れるか不安なのに、お昼寝さん達も出してる可能性があるもんね。しかもまだ増えるかもしれないし……。とりあえずギルド倉庫に突っ込んで置いて、夜に皆で食べるのが正解かも。あれ、ちょっと待ってね……今日って、日曜日? あ~……寝落ちしたから曜日感覚がちょっとずれてた、もう日曜日なんだ~……。明日学校か~行くの面倒だなぁ~……。いやいや、誰のお陰で行けると思ってるの! 真弓に行かせて貰ってるのを忘れちゃ駄目よ私!!
「送った~。場所考えておくって、とりあえず鑑定続き?」
「ありがとうレーナさん! では続きですわね!」
「ありがと~!」
「んっ!!」
レーナちゃんが焼肉パーティの件をお昼寝さんに送ってくれたから、こっちは返事待ち。そうだよね、焼肉してから暴竜炎帝戦とステラヴェルチェの王宮カチコミより、これらを消化してから焼肉の方が良いよね。とりあえず続き、鑑定して貰おう!
『【?盾(虹)】は【★★ドラ
偽物みたいな名前してミスティックだよこれ……! 許せねえよぉ……!!! ちょっとごめん、これだけ性能見せて?
【★★ドラコンシールド】(極上・ミスティック・軽量盾・スロットなし)
・【呪】よく飛ぶ
・【呪】投擲から30秒後、所有者の異空間収納に自動で戻ってくる
・スキル【フリスビー】使用可能
・所有者登録時、ドラコンシールド専用の【異空間収納】習得
【ガード性能】
・斬属性耐性+0%
・打属性耐性+0%
・突属性耐性+0%
――これ、面白いぐらい飛ぶなぁ……。これ、面白いぐらい飛ぶなぁ……! いつでも遊べるように魔女殿にエンチャントして貰おう……by暇過ぎた騎士
強化不可・破壊不可・重量0.4kg
なんだこれ……!? 盾とはいったい……!! しかも無駄に高性能なエンチャントを魔女にして貰ってるんじゃないよ、この元持ち主の暇人騎士、ふっざけたヤツだなぁ……!
『【?鈍器(虹)】は【★★ドラゴンボーン】でした! おめでとうございます!』
【【?帽子(虹)】は【★★黒姫の青薔薇帽子】でした! おめでとうございます!』
【【?衣類(虹)】は【★★黒姫の芸術】でした! おめでとうございます!』
『【?素材】は【★オリハルコン】でした! おめでとうございます!』
『【?素材】は【★ドラゴニウム合金】でした! おめでとうございます!』
『【?本(虹)】は【★スペシャルカードバインダー】でした! おめでとうございます!』
『【?本(虹)】は【★スペシャルカードバインダー】でした! おめでとうございます!』
『【?本(虹)】は【★スペシャルカードバインダー】でした! おめでとうございます!』
『本日21時に打ち上げがてら焼肉パーティやりまーす。ドラゴン行ってない人もお肉消費しに来てね~ステ上がるよ~。食堂借りれるみたいなんでそこでやりま~す。よろしくっ』
『【?杖(虹)】は【★★死の芸術】でした! おめでとうございます!』
『【?服(虹)】は【★★黒姫の黒衣】でした! おめでとうございます!』
『【?靴(虹)】は【★★黒姫のハイヒール】でした! おめでとうございます!』
お昼寝さんの流したテロップのタイミングで勢い余ったけど、これが私が選んでた杖ね! 死の芸術、もう名前が呪われてそうなんですけど、どうなんですか!
【★★死の芸術】(最低最悪・ミスティック・片手杖・スロットなし)
・【呪】装備者が毒状態になる
・【呪】装備者が麻痺状態になる
・【呪】装備者が呪い状態になる
・【呪】装備者が精神崩壊する
・【呪】装備者が石化する
・【呪】装備者がゾンビ化する
・【呪】装備者が即死する
・この杖の装備者がいずれかの方法で相手に死を与えた場合、相手は死亡時に爆発する
・爆発ダメージ上昇+77%
――――死は芸術だ!!! そして芸術は、爆発だ!!!!! by狂った芸術家
強化不可・装備登録者【リンネ】・重量0.8kg
いいねぇ……いいよこれは、とても、良い!!! そうだよね、爆発は芸術だよね……。わかる……。
「見て見て~メッチャ強いよこれ~!」
「メリットしかご覧になってませんわね!? 絶対そのクソ武器誰も使いませんわよ!?」
「んっ、これ、ペルちゃんのセット。どうぞ」
「あら、あらあらまあまあ……! どうしましょう、他の装備も全部出てますわ……」
「私この杖だけで良いよ! 凄い強いもん!」
「ぜったい欲しがるのリンネだけ。デメリットが狂ってる。防具は、私も大丈夫。これ、全身装備だから」
「では、黒姫の4点セットを頂いても……?」
「おっけ~」
「いいよペルちゃん、装備しちゃえ!」
「はぁ~~っ! ありがとうございます、感謝ですわぁ~~~!!!」
その後、話し合いの結果『黒姫の青薔薇帽子、黒衣、芸術、ハイヒールの4点セット』はペルちゃん行き、『ドラゴンボーン、オリハルコン、ドラゴニウム合金』がレーナちゃん行き、『ドラコンシールド、死の芸術、スペシャルカードバインダー3冊』が私に分配という結果で終わった。
レーナちゃんは前に色々と貰った件、シャチさんリュックサックを貰った件ね。ハイヒールの譲渡とスペシャルカードバインダーの譲渡で相殺ってことにして貰った。本人は返し足りないって言ってるけど、私達がオッケーだから何も問題ないのよ! それに、このスペシャルカードバインダーの凄さを、レーナちゃんはまだ知らない……!
「――――行くよっ」
「初めて見る。カードバインダーは基本微妙なイメージ」
「あ、待って、ちょいおにーちゃん呼んでくるわ!」
「あら!? ああ、豪運の男ですわね!」
ロビーに飛び出しておにーちゃんをロックオン。驚きのエモーションを出してるところを問答無用で立たせて3号室スイートルームへ強制連行! さあ、おにーちゃん! 引くのよ!!!
「おにーちゃん、ちょっと悪いんだけどこれ引いてくれる?」
『(`・ω・´)b』
『フリオニールが【★スペシャルカードバインダー】から【ネームカード】5枚を引き当てました』
『フリオニールが【★スペシャルカードバインダー】から【ネームカード】5枚を引き当てました』
『フリオニールが【★スペシャルカードバインダー】から【★★★妖狐百姫カード】を引き当てました! おめでとうございます!』
『(`・ω・´)』
「おおおーーーー!!! さすがおにーちゃん……!」
やってくれましたおにーちゃん、アルティメットカード引いてるじゃん!! これもしかして結構確率高かったりしない? いや、アルティメットなんだからそんなはずないか……。じゃあ引いてくれたお礼に、暇つぶしの道具を君にあげよう……。
「さあ、これはおにーちゃんにご褒美だよ……! どう?」
『Σ(´∀`;)!!!!』
『【★★ドラコンシールド】の所有者が【フリオニール】になりました』
『フリオニールが【ドラコンシールド専用・異空間収納】を習得しました』
「ありがと、おにーちゃん!」
『(*´∀`*)b』
どうやら気に入ってくれたらしい。ありがとう、良い働きをしてくれたよおにーちゃん……。本当にあの人運がぶち抜けてるなぁ……。そして絶対あの盾が原因で何かとびきりの不幸イベントを引き当てるんだろうなぁ……。
「あら……? バビロン様から呼び出しですわ! ちょっと、一人で来いとのことですので、行ってまいりますわ!」
「いいなぁ~~~!!」
「いいな~~~」
「ふふ~ん♪ 行ってまいりますわ~~!!」
ぐぬぬ、ペルちゃんがバビロンちゃんに呼び出されてる! 羨ましい……。バビロンちゃんは何時でも降臨してるのかと思ったら、結構ちょいちょい本来の魔界に戻ってるみたいで不在な時があるのよね。せっかく居るなら会いたかった~~~……。
「ふたりっきり」
「えっ……ちょ、おお……!?」
「……カード、効果なんだった?」
レーナちゃんが、ち、近い……! 腰から生えてる機械の翼をパタパタパタパタっと折りたたんで、ずいっと近寄ってきた! ん、可愛い……本当に年上なんだろうか……妹が居たらレーナちゃんみたいな、飛び切りキュートな子が良いなぁ……じゃなくて! カード、そうだカード引き当てたんだった。えーっと、これだ!
【★★★妖狐百姫カード】(アルティメット・指輪)
・印術【一騎当千】使用可能
・印が1上昇する
・印の回復速度5秒短縮
――次の相手は誰ぞ、此方が一切合切斬り伏せてくれようぞ! by妖狐百姫
「これ、千代ちゃんのお母さんっぽい」
「……いや、多分そうですよね。そうじゃないかなーって引き当てた時に思ったんですよね」
「絶対そう。カードに描いてある絵が千代ちゃんっぽい」
「絶対そうですねこれ……。どうしよう、渡すべきかなぁ……」
「渡すべき」
「そうですよねぇ~~」
やっぱりこれ、千代ちゃんママのカードっぽいわ! カードの絵柄詐欺の可能性もあるけど、少なくとも関係者でしょ、これは。一応このカードを刺せば誰でも印が1増えて、3分間クリティカル率が上昇する一騎当千が使えるようになって、なおかつ55秒で印が1回復するみたいなんだけど……。どう考えても千代ちゃんが装備するのが一番だわ。
「千代ちゃんに渡して来るよ」
「んっ! 私、ちょっとウェポンメイカーで遊んでくる。ペルちゃん帰ってきたら教えて」
「はい! じゃあほんの少し休憩の後で!」
とりあえず千代ちゃんにこれを渡して、後はペルちゃんが帰ってくるのを待つかぁ~……。ペルちゃん、何の用事で呼び出されたのかな~?
あっそうだ! アニメイトフェティッシュやってないや。とりあえず~~~……この偽武器シリーズはユニークだから駄目か。じゃあ倉庫に眠ってる大量のハイレザーブーツとか、魔術師の帽子とか、使わせて貰っちゃお。千代ちゃんは申し訳ないけど、念話で呼んじゃおうかな?
『(千代ちゃ~~ん……聞こえますか~~……ギルドルームの、青い扉から入ってきてくださ~い……)』
『姫千代が【驚天動地】を発動しました』
「――来ましたッ!!」
「はっやぁ!?」
うわ来た、はっやぁ……!? まだアニメイトフェティッシュやろうと死体が物理法則を無視して圧縮されてぎゅうぎゅうに詰まってる棺桶を並べてる途中だったんですけど!?
「あ、あのね! これ、手に入っちゃって」
「むっ護符で御座いますか。これは……これは…………あっ…………」
「やっぱり、お母さん……?」
「ええ、そうだと思います。此方が10歳になる前だったでしょうか、国に隣国の軍が攻め入りまして。その際に千の敵を斬り、将の首を取り、見事国を守り……力尽き、息絶えたと聞いております」
「そうなんだ……。思い出させて、ごめんなさい」
「いえ!! 母は此方の誇り、その母上の力を宿す護符がこうして手元に来たのは僥倖! 此方は幸せに御座います。これは、此方が頂いても?」
すみません、そんな幸せだよって言ってる最中に棺桶が並んでて……。
「うん、貰って欲しいなって。他の人に渡すのは考えられなくって」
「有難き幸せに御座います。では、遠慮なく……」
『姫千代が【★★母妖狐の形見】に【★★★妖狐百姫カード】を合成しました』
『姫千代が【★★一騎当千・妖狐百姫の形見】を装備しました。【一騎当千】を授かりました』
おお……。なんか、感動的な光景、かも……。装備の名前も母妖狐の形見から、本名解禁されたからか妖狐百姫の形見に変わってる。あ~……ねーさんと、こういうイベントを熟さなかったから進化先が開示されてなかったのかなぁ~……。千代ちゃんは、イベントいっぱい消化してレベル75で訪れる仮上限で一番最適な進化先? 覚醒先? それを憂いなく選べるといいなぁ。
「――して、その棺桶は?」
「ああ、これは私が使ってる呪物の作成用、かな」
「なるほど、リンネ殿の妖術の素材というわけですね。此方は、見てはいけないもので御座いますか?」
「ううん、見てても大丈夫だよ。なんにも面白くないかもしれないけど」
「いえいえ、どの道食べることしかすることがありませんでしたので、是非!」
おおっと、千代ちゃんが食べることよりも妖術……じゃなくて死霊術の見学を選ぶとは予想外。でも見られても何も問題ないし、ちゃっちゃとやっちゃおう。対象はミドルレッドドラゴン、ハイレザーブーツ、呪いのコイン。いきまーす!
「じゃあ、行くよ? 捧げよ!」
『ハイレザーブーツが呪われました!』
『ハイレザーブーツが変質しました!』
『ドラゴンレザーブーツが更なる変質に耐えられません!!!』
『ドラゴンレザーブーツが消滅しました』
「およよ……失敗でしょうか?」
「んー失敗だねー。こういうこともあるのよ」
「左様ですか……。狭き道なのですね……」
ん―残念、でもこんなのに制作保護チケなんて使うのもったいないしね、それにチケットはペルちゃんがこっそりいつの間にか送りつけてきてたヤツが3枚しかないしね。次、ラージレッドドラゴンで他は同じ。行ってみよー。
「じゃあ次、捧げよ!」
『ハイレザーブーツが呪われました!』
『ハイレザーブーツが変質しました!』
『ドラゴンレザーブーツが変質しました!』
『ドラゴンレザーブーツが呪物化しました!』
『★ドラゴンレザーブーツが完成しました! おめでとうございます!』
「おお、完成ですか!」
「うんうん! 完成だね! この調子で全部出来るといいなぁ~」
「そうですね、此方も楽しみです!」
物珍しい光景だからか、千代ちゃんがぴょこぴょこちっちゃく跳ねてて可愛いな。これは私が装備しても良いんだけど、出来れば千代ちゃんに装備して貰いたいんだよねぇ。千代ちゃん装備薄いからなぁ~~……。
「千代ちゃん、今使ってるその衣装の下の装備、更新してみない?」
「え? あ、う~ん……。確かに、特別な力などはないものですが……」
「やめとく?」
「ん~~…………いえ、やりましょう! いつまでも引き摺っていてはいけませんからね、では、脱がせてくださいまし!」
「えっっっ!? あ、ああ! アバターの下から強制脱衣させれば良いのか……」
千代ちゃん、更新しても良いって! 装備は前に強制着用させた逆も出来るって思ったのね、私に脱がせてなんて言ってくるから一瞬ドキッとしちゃったよ。とりあえず、脱がせた! ヨシッ! これでとりあえず、グレートレッドドラゴンから使えばいいかな。それ、草履~行け!
「これでよし、捧げよ!」
『戦巫女の草履が呪われました!』
『戦巫女の草履が変質に耐えられません!!!』
『戦巫女の草履が消滅しました』
「あ、やば、制作保護チケ忘れた!!!」
「えっ」
「…………このレザーブーツ、履いててくれる……?」
「え、ええ、次は、手順をお間違いになりませぬよう……? あ、これはよいですね! あばたぁ? の下でも履き心地が変わるものなのですね! 此方のほうがよいです!」
「あ、よかった~ごめんね~……」
やっちゃったよ……泥の中に先に制作保護チケを入れなきゃいけないんだった……。応急処置でさっきのブーツ渡したけど、気に入ってくれたから良かったものの、これで千代ちゃんが嫌だこれじゃ駄目って言ってきたらどうしようかと……あれ? そんなに履き心地いいのかなそれ。性能見てないや。
【★ドラゴンレザーブーツ】(最上級・レジェンダリー・靴・空きスロットなし【●】)
・【呪】素のMAGの値が半減する
・【呪】素のMNDの値が半減する
・AGI+40
・【ラージレッドドラゴンカード】STR+20
強化可能・重量0.2kg
おお~普通に強い! いやこれ本当は私用に作った装備だったんだけど、そもそも私使えなかったなこの性能じゃ……。千代ちゃんが気に入ってくれて助かった~。じゃあ今度こそ間違えないように、スーパーなやつを投入しよう!
「それじゃあ、今度は間違えないから! 捧げよ!」
『制作保護チケットが投入されました』
『戦巫女姫装束・黒が呪われました!』
『戦巫女姫装束・黒が変質しました!』
『戦巫女姫装束・赤龍が変質しました!』
『赤龍鱗鎧の巫女姫装束が変質しました!
『赤龍鱗鎧の巫女姫装束が呪物化しました!』
『★★赤龍鱗鎧の巫女装束が完成しました! おめでとうございます!』
『制作保護チケットが払い戻されました』
「お~出来た! 出来たよ千代ちゃん!」
「おお、素晴らしいですね! それは良かっ――――」
わ~出来た! 出来た良かった~これも千代ちゃんに気に入ってもらえると――――あ、これは前に見たことがあるやつだ……!
『強い思念により、呪いの泥がまだ残っています!』
いやぁアレだけブチ切れてたもんなぁ……!! そりゃあ強い思念残ってるよねぇ!?
「千代ちゃんもう一回行ける、これもいい!?」
「ええ、大丈夫ですよ! 行け行けーで御座います!」
「行けーーー!!」
『制作保護チケットが投入されました』
『戦巫女の鉢金・黒が呪われました!』
『戦巫女の鉢金・黒が変質に耐えられませんでした!』
『制作保護チケットが消費され、制作前の状態に戻りました』
ここまで来たらこのスーパーな奴、何が何でも成功させてやる! 保護チケット突っ込め突っ込めーー!!
『制作保護チケットが投入されました』
『戦巫女の鉢金・黒が呪われました!』
『戦巫女の鉢金・黒が変質に耐えられませんでした!』
『制作保護チケットが消費され、制作前の状態に戻りました』
………………
…………
……
『制作保護チケットが投入されました』
『戦巫女の鉢金・黒が呪われました!』
『戦巫女の鉢金・黒が変質しました!』
『戦巫女の鉢金・赤龍が変質しました!』
『赤龍鱗の鉢金が変質しました!』
『赤龍鱗の鉢金が呪物化しました!』
『★★赤龍鱗の鉢金が完成しました! おめでとうございます!』
『制作保護チケットが払い戻されました』
「ラスト1枚だった……千代ちゃん、出来たよぉ……!」
「本当に、よう御座いました……!」
で、出来た……。出来たよ……! 肝心の性能、見せて……。ここまで粘られたんだから、良い装備なんでしょうねぇ!?
【★★赤龍鱗鎧の巫女装束】(最上級・ミスティック・体1・空きスロットなし【●】)
・【呪】水属性で受けるダメージ+50%
・【呪】HP-20%
・火属性攻撃完全無効
・MP+20%
・【スーパーレッドドラゴンカード】HP・MPバニッシュ無効
強化可能・装備登録者【姫千代】・重量1.2kg
【★★赤龍鱗の鉢金】(最上級・ミスティック・頭・空きスロットなし【●】)
・【呪】MP-20%
・HP+10%
・HPが0になる攻撃を受けた時、5秒間HP1で食いしばる
・【怒りのスーパーレッドドラゴンカード】凍結・空間凍結無効
強化可能・装備登録者【姫千代】・重量0.4kg
はい! 姫千代ちゃんは不死属性なので、そもそも水属性が無効です! いや私もこの前相性表を確認して知ったんだけど、不死属性って火弱点の代わりに水が無効なんだって。なので呪いのデメリットが無いです、HP-10%だけが痛いけど、弱点の火属性が完全無効なのが美味しすぎるから良いでしょ! しかも食いしばり効果まで付いてるし、リアちゃんの特殊凍結の空間凍結も無効化出来るって、私でも無効化出来ないのを無効化するの強すぎない? え? ずるいずるい……。
「おお? おお! おお~……温かいような、適温のような……?」
「生命力が1割減っちゃったけど、火の攻撃は全部無効にできるって! 聖なる属性の攻撃は4倍効くからそれだけ注意してね! 後、死ぬほどの攻撃を受けても5秒間はグッと堪えられるって!」
「それは元より大変効く攻撃でして……。此度はより一層注意で御座いますね。ええ、わかりました! 5秒だけ死の淵で留まれるのも、なんとなく気合が湧いてくるような感覚がありますね! 新しい装備、確かに受け取りました! 有難う御座います!」
「あ、ごめん、これに名前書いて靴にペタっとしてくれる?」
「はい? ええ…………こうで?」
『姫千代が【ネームカード】を使用し【★ドラゴンレザーブーツ】を所有者登録しました』
よーしこれで、後はペルちゃんを――――
「――――おまたせしましたわーーー!!!」
ぺぺぺぺぺ、ペルちゃん、その格好はどうしたの……!? え、やだ、えっ美しい…………芸術では? 好き。好き。好き。好き。好き……。好き!!!
「好き」
「へぅ……!?」
「あ、じゃなくてえっと、好き」
「え、ええとね!? バ、バビロン様が、もう体に魔剣が定着したからいらないでしょうって、ガントレットを紋章にして左手の甲に焼き付けてくださいましたの! 枠が腕輪なのは代わりませんけれど、ほら! アバターが自由に変えられるようになりましたのよー!!」
「好き」
「ひぃ……!? 話を聞いて下さいませんわ……!?」
「好き。ちょっと触って良い?」
「あ、此方は――――」
「千代ちゃんもついでだから、ね? 触る」
「ちょっと、リンネ殿――――!?」
「はわわわわわわ……!?」
前門のペルちゃん、後門の千代ちゃん。逃げ場が無いのは私じゃない、そっちの方だってことを、思い知らせてやる――――ッ!!!
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