天使狩り・1 ~入り口から大騒動~

◆ 廃教会入り口 ◆


「せ~~~のっ!!!」

「「「押せ押せ押せ押せ押せっ!!!」」」

「「「うぉおおおおおおおっっ!!!」」」

『きゃぅぅぅうううぅぅぅう~~~ん!!!!』


 何が起きてるかって? 見ての通りだよ。どん太が教会の入り口でね、つっかかったんだよ!!!


「だめですわ~~!! どんちゃんのどん・・の部分までは入りましたのに~~!!!」

「どんちゃんの、の部分、入らない……」

「入りませんね、太い部分がっ……」

『(´・ω・`)』

『くぅぅ~ん……』


 私が一番最初に廃教会に入って、それでどん太が続いて入ってこようとしたのね。この時点で既に『あ、キツイな』って思ってたんですよ。そしたらとりあえずどん太のね、どんの部分は入ったのよ。どんまでは。太が入らない! 太の部分が!! 壁が崩れて出入りできる場所から回り込んで外の様子を見てみたら、廃教会の入り口からどん太のケツが生えてるような状態でものの見事につっかかってたよ……。なにやってんのよ本当に……。しかも他のプレイヤーさんにまで手伝ってもらっても、入らないんよ……。しかもどん太が謎のプライドを発揮して、何が何でも壊さずに入り口から入るって聞かないのよ。何よその謎プライド。


「どん太、壊しな」

『くぅぅ~~ん……(入るもん……)』

「入らないから壊しな」

『がぅぅぅううう!!!! (入るも~ん!!!)』


 ダメです。どう頑張っても入らないですどん太君。諦めてさ、もう入り口壊しなよ。他のプレイヤーさん達がどん太のこの状況をスクショ撮って良いか聞いてくるもんだから、まあしょうがない。特別に良いよって言っちゃったわ。そんで何人かは公式掲示板の『ほんわかスレ』と『総合スレ』に貼りたいっていうもんだから、そこだけなら良いよって許可にチェック入れてサイン書いてあげたよ。全く、このデカさだからいつの日かやるだろうなっては思ってたけど、こんなところでやるか?! やるんだよなぁどん太君は!


「どん太殿~~。お尻に力を入れておいてください~」


 あ、ヤバい。千代さんの死刑執行宣言が来た。5分経っても入れなかったらケツを蹴っ飛ばして良いよって言ってあったんだよね……。蹴るわ、これは……!


『わうぅぅ~~~!? (まって、こころのじゅんびが!)』

「とりゃ~~!!!」

『どん太が【金剛】を発動しました』

『姫千代がどん太に51ダメージを与えました』

『きゃぅぅぅぅううぅん!!!』

『((((;゜Д゜))))』

「あ、ぶっ壊れた」

「壊れましたわーー入り口がーーー!!」

「広くなった。どんちゃんのおケツサイズにくり抜かれた」

「…………これ、ダンジョンの中も、大丈夫でしょうか」

「心配だわ……」

「ふぅ~。これで入りましたね!」


 うーん姫千代さん、ナイスドロップキック。これでどん太の太の部分もようやく入ったわ! 皆様、どうもお騒がせしました……。崩れた部分からの迂回、誠に申し訳有りませんでした……。


「どんちゃん、お尻大丈夫~?」

「もふもふしてるもんなぁ~」

「じゃ、無事入れたってことで! そっちもレベリング頑張ってね~」

「ばいばいどんちゃ~ん」

「いいなーもふもふペット……。ばいば~い」

『きゃぅぅん……(ありがと~……ばいばい!)』

「すっごいショボーンとしてますわね……」

「お耳ぺったんこ~」

「お尻、大丈夫でしたか~?」

「此方も手加減は致しましたから、大丈夫でしょう!」

「多分こいつは、お尻よりもプライドが傷ついたっぽいね……」

『きゅぅぅ~ん……(入れたもん……入れたもん……)』


 負けを認めなどん太。入らないもんは入らないんだ。それにしても、いい人たちだった……。わざわざどん太を押すの手伝ってくれるなんて……。これが、冒険者同士の困った時の助け合いかぁ……今度あの人達がPKにでも襲われてるのを見たら、助けてあげよう。顔は覚えたからね。


「ほら行くよどん太。入るのが目的じゃないでしょ」

『わんっっ!!! (そうだった! 行くよ~!)』


 切り替え早いな君。


「さあて、色々ありましたけれど、全員揃いましたわね! それでは、ポータルを起動しますわよ!」

「お~」

「天使が出るのでしたね?」

「天使は滅ぼさないと」

「天使狩り~」

『わおっ! (敵はやっつけようね!)』

『ヮ(゜д゜)ォ!』

「天使? あれはまともでは……。あっ、何でも……」


 さて、やっとこさ今回の目標に到着よ。それじゃあポータル起動がてら、今回のダンジョンのインフォメーションを見せて貰いましょう。



【封じられた教会】(推奨レベル30~)(推奨レベル??~)

・発見ギルド【華胥の夢】、発見者【レイジ・ダテ】

・初クリアパーティ【なし】

・最大8人までパーティ入場可能

・メモリアルダンジョン

・ペナルティ:なし

・1日1度の挑戦が可能(毎日5:59に回数制限リセット)

・パーティメンバーは全員ポータル内に入って待機してください

・30秒のカウントダウン後、ポータル内のメンバーがダンジョン内に転送されます


 

 え、発見者レイジさんなんだ。まあ場所的にすぐ見つかるだろうし、ここの場所の情報を流したのももしかしたらレイジさんなのかな? 丁度うみのどーくつダンジョンとは反対方向だし、あっちのダンジョンから遠のくし……。確かに情報を流したほうがメリットがあるのかな。

 それで? うみのどーくつダンジョンと違って、ランダム生成ダンジョンじゃなくてメモリアルダンジョンってことは、内容が記憶されるタイプのダンジョンって認識で良いのかな? レベル50ぐらいのモンスターが出るって聞いてたけど、推奨は30ぐらいからなんだ。いやね? あの、もしかしてなんだけどさ?


『パーティリーダーからの申請を受諾……。転送カウントダウンを開始します』

「(これって来る順番的に、こっち先じゃない……? うみのどーくつよりさ)」

「(たし……かに……)」

「(そうな気がする~~……)」


 絶対順番的に、こっちを先にやってほしいって感じがするよね……。うみのどーくつダンジョンは、ここの後に入るべき場所なんじゃないですかね……? だってあそこ、難易度おかしいもん! 絶対に!


『カウントダウン、5……4……3……2……1……0。転送』


 おおう、そんなことを考えてるうちに転送だ。さあ滅ぼすぞ~~天使~~~!!!




◆ 封じられた教会 ◆


 


 ――――わあ、綺麗な教会! バシリカ式の、上から見下ろすと十字架に見える構造の建物のやつね! うんうん、ゴシック建築とか趣味で学んだついでに覚えたから知ってる~~!! ここ、さっきの教会と同じところかな? まだ綺麗な状態ってことは、過去? メモリアルダンジョンってそういうことか! 過去を記憶したダンジョンってことね!


「ここは入り口……? ですわね……?」

「椅子に、結構座ってる人がいる~」


 天使が出るって聞いたけど、人っぽいのしか居ないような……。これ、本当に天使出てくるの?


「これが天使系モンスター? いや、普通に人っぽいような……あ」

『アァァァアァァァ…………』

『ォァァアアァァァ…………』


 うわ、ゾンビだったわ……。え? 死霊系? 逆の情報が流されてるってこと?! え~そんなのってない――――


『ソードケルビム(Lv,45)がグール(Lv,10)に771ダメージを与え、滅ぼしました』

『ランスケルビム(Lv,45)がグール(Lv,10)に749ダメージを与え、滅ぼしました』


 光の柱と共に、降ってきた! 天使、天使だ~!!! 白い鎧の兵士! 背中から天使の白い羽が生えてる~! もげろ。


「穿て、カーススピア!!!」

『Weak!!! ソードケルビム(Lv,45)に1,779ダメージを与え、撃破しました。経験値 1 獲得』

「うわぁ問答無用で殺しましたわね!?」

「ばーん」

『Resist……。07XB785Yが【魔弾属性変更・火】を発動し【クイックドローショット】を発動、ソードケルビム(Lv,45)に2,215ダメージを与え、撃破しました。経験値 1 獲得』


 っふ……。所詮、レベル45ではもはや雑魚よ。突撃、ウツボさん! とかがHP800前後なんだから、こいつらだってそんなに高くないでしょ。それにしても、経験値たったの1かぁ……。レベル差が有りすぎると、経験値入らなくなるんだねぇ……。


「よっわ……」

「まっず……」

「ん~。こう言ってはなんですけども、あまりやる価値を感じませんわねぇ」

「弱いですね~……」

「此方はこんなに貧弱な天使を見たことがありませぬ……」

『^^;』


 あーあ。おにーちゃんにすら呆れられてるじゃん……。


『わう~……? (全部、突進してやっつける?)』

「次から降りてきた奴はどん太に蹴散らしてもらう?」

「そうしましょうか? きっと次の階層とかがあるはずですから、その都度様子を見て大丈夫ならどんちゃんに殲滅をお願いしても?」

「さんせ~……弾の無駄~……闇属性に変えておこ~」

「んじゃあ、そういうわけで……どん太、蹴散らして」


 んーー……。こんなもんか~……。そうだよね、うみのどーくつダンジョンだって、ペナルティモンスターのシャチ系がすんごい強いだけで、もはや雑魚モンスターは相手にならなくなってたもんね。ボス狩りメインで、雑魚はどん太の魔狼身弾で大体一掃出来るし。


『わんっ!! (じゃあ、やっちゃう!)』


 経験値1しか手に入らないログは非表示でいいや。いちいちログ流れるのうるさいし。それより、このダンジョンって次の階層に行くにはどうすればいいんだろ?


「――――キエェエエエ!! オノレェ!!!」

『堕ちた神官・ドゲルが逃亡します!』


 あ、ボスっぽいの居るじゃん!! 一番奥の祭壇のところに!


「逃さない」

『MISS……。07XB785Yが【クイックドローショット】を発動、堕ちた神官・ドゲル(Lv,70)に闇属性ダメージは効果がありません』

「なるほど」

『Weak!!! 07XB785Yが【魔弾属性変更・火】を発動し、【スナイピングショット】を発動、堕ちた神官・ドゲル(Lv,70)に34,475ダメージを与えました』

「ギャァアアアアアア~~~~~!!!!!」


 おー火が効く。あのボスっぽい神官、不死じゃない? なんか顔面かなりガイコツガイコツしてるし、不死でしょあれ! もしかして、同職の方じゃな~い?


焼け死ねグィ・ゾダス!! 絶滅しろアニェーラ!!! 絶滅焼夷弾アナイアレーションナパーム!!!」

『オーレリアが【絶滅焼夷弾アナイアレーションナパーム】を発動しました』


 リアちゃんが続いた~! 手前にいる天使とかゾンビだかグールだかごと、全部焼く勢いの焼夷弾を発射したねぇ?! すんごい熱気なんですけど、これこっちまで焼き焦げそうですけど?!


『Resist……。ソードケルビム(Lv,45)が火だるまになり、灰になりました。経験値 1 獲得』

『Resist……。ランスケルビム(Lv,45)が火だるまになり、灰になりました。経験値 1 獲得』

『Weak!!! グール(Lv,10)が火だるまになり、灰になりました。経験値 1 獲得』

『Weak!!! グール――――――』

 ………………

 …………

 ……

『Weak!!! 堕ちた神官・ドゲル(Lv,70)が火だるまになりました!』

「ギャァアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」


 あ、逃げる足が止まった。流石に火だるまになったら動けないか! 動けないってことは、まあそういうことだね! じゃあ、お願いします!


「終わり~」

『Weak!!! 07XB785Yが【デッドエンドショット】を発動、クリティカル!! 堕ちた神官・ドゲル(Lv,70)に121,557ダメージを与え、撃破しました。経験値 444,666 獲得』

『フリオニールがレベル5に上昇しました』

『姫千代がレベル3に上昇しました』

 

 さっすがレーナちゃん先輩! ナイスショーット!! そしてこの2人のレベルアップかなり渋いなぁ?! 全然上がってないじゃん!!


『MVPはオーレリアでした』


 ちょっと待って?! なんでっ?! しかも150kダメージ近く出してるレーナちゃん先輩より、オーレリアちゃんの方がMVP獲得ってどういうこと!? 火だるまになったスリップダメージ、そんなにヤバいのこれ?! いや確かに、待ってよ……? 計算してみよう……。

 ほうきをちゃっかり安全圏強化したから火属性が1.62倍でしょ? ゲソピで魔術攻撃力が+50%だっけ? 後は詠唱ボーナスで威力1.5倍? 弱点が~~~……4倍?! 不死属性の不死系モンスターだから、弱点が倍の倍になって4倍なの?! 単純計算だけど、ダメージ約15倍だわ……。仮に火だるまになった瞬間の元ダメージが1万入るとしても、15万入りますわ。つまりそれ以上出てたってことですね、はい……。


「はわわわわわわ…………!! 消えて、消えろっ!」

『((((;゜Д゜))))』

『わぅぅぅぅぅぅ……! (毛が、無くなっちゃうよ~)』

「龍の妖術ですか。此方も何度かこの火を見たことがありまする」


 一番驚いてるのリアちゃんだわ。でも口では『はわわ』なんて可愛いこと言ってるけど、口がね? にぃぃ……って笑ってますよ? 隠しきれてない悪い子オーラが出ちゃってるよ? そうだよね、実はカルマ値がマイナスなんだよね、リアちゃん。どっちかって言うと悪側なのよね……。あ、消火した。ちゃんとナパームの火の海を消せて偉いぞ~。

 そんでちゃっかり言ってるけど、千代さんその龍の火を見て生きてるってことは、そういうことですね? 斬ったんですね? 美味しかったですか……? いや、聞かんでおこ……。


「つっよ~……ボスよっわ~……」

「出る幕が有りませんでしたわ~」

「これ、本当は逃げるボスを追いかけて、天使が乱入してくるタイプのダンジョンなんじゃ……?」

「多分、そうですわね。祭壇の向こうに2階層に続くポータルがありますもの」

「え……? このダンジョン、終わり……?」

「嘘でしょ……」

「わ、私、悪いことをしてしまいましたか……っ?!」

「あれで死ぬボスサイドに問題があるから、リアちゃんは悪くないよ」

「はう、はう……」


 ん~で~……。ボスを倒したってことは、宝箱よ。あるんでしょうね、宝箱? どうせこんなんじゃ木の宝箱なんじゃないの~~~???


『クリア条件を達成しました。報酬を受け取る場合は入り口から見て中央交差路の左翼のポータルへお進みください』

「報酬、あっち」

「行きましょう……。なんとも、拍子抜けですわ~……」

「もっと天使を、滅ぼしたかった……」

『わうわう~~……(せっかく頑張って入ったのに~)』

『(´・ω・`)』

「はう~~~…………」

「期待外れで御座いますね」


 報酬部屋は向こうか。こんなのを誰もクリア出来てなかったってこと? あ~もしかして、最大まで天使狩りをするのにさっきのボスをわざと逃して、何階か進んで~を繰り返すと経験値が美味しいのかな~?


「じゃあ、報酬貰いに行こ――」

『1階層でのボス討伐を確認』

『裏クリア条件を達成しました。報酬を破棄し、禁じられた楽園ダンジョンに進む場合、報酬フロアの反対のポータルへお進みください』


 ――――これはぁ……!! やってくれましたよオーレリア先生がァ!!!!


「おおおお~~裏ダンジョン~~~」

「裏クリア条件……?!」

「これは行くしかないでしょお?! 禁じられた楽園!!!」

『わう~~~!! (頑張って入って良かった!)』

『(`・ω・´)!』

「こちらは強敵が居るでしょうか! 楽しみです、ええ! 行きたいです!」

「よくやったぞぉ~リアちゃん! で、どうする? 破棄して行く?!」

「どうせ表の報酬ショボい。グレートホエール号で思い知った」

「そうですわね。あちらの報酬よりは劣るでしょうね……。レベルも5低いようですし……」

「此方は、行きとう御座います!」

「私も、これじゃ不完全燃焼なので……」

『(*´∀`*)b』

『わんっ! (行くよ~!)』


 ほんじゃあ満場一致、このボスの報酬は廃棄して……! 行きますかぁ、教会の裏ダンジョン!!! 禁じられた楽園に!!!


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