道は一つではないから
◆ バビロニクス・魔神殿 ◆
うわあ皆にバレちゃったどうしようって思ったけど、水・金・日曜日の24時にランキング更新されるからどの道レベル100になったのバレるし、いいんじゃな~い? ってバビロンちゃんに言われて、まいっか! ってなりました。
「これ、どうしましょう……」
『起こしてみたらぁ~~?』
「起こして、大丈夫ですかね……」
『粗相したらチョップしてあげるから、起こしちゃいなさいよ~♡』
「チョップ」
『チョップ♡』
【古き芸術の神・マリアンヌ】、恐らく死の芸術にくっついてた芸術野郎なんだろうけど、まさか装備を破壊したら依代が無くなったからなのか、霊体が死体安置所に潜り込んでくるとは思わなかった。バビロンちゃんは起こしてみたらって言うけど、うーん……。面倒な奴感が既に強いから、正直素材にしてフェティッシュして倉庫にポイッとするのが良いんじゃないかなって思ってるよ……。でもまあ、面倒な奴だったらチョップしてくれるらしいから……。起こしてみようか~。
「じゃあ、起こしてみます」
『起こしちゃえ起こしちゃえ~♡』
「…………起きろ!」
あ~~~起こしちゃった~~~私、知~~らない!!
『【古き芸術の神・マリアンヌ】が自信喪失状態の為、ランクダウンが発生しました』
『魔神バビロン(Lv,????)の【リインカーネーション】により、対象アンデッドが受肉しました』
『【自信喪失の芸術家】が貴方の従者になりました。名前をつけ――――名前は【マリアンヌ】です』
「…………今まで追い求めてきた芸術は、
「あ~~……」
『あ~~…………♡』
あ~~…………。やっぱり重いよ~~~…………。
「芸術の神とか、我を称えて崇めてた言葉は全部皮肉だったんだ……。魔神様を知っていた人間は我の生み出した塵のことをどうせ影で
面倒くさいよぉぉ~~~~…………。そうか、いやでもそうかそうか、バビロンちゃんが芸術だって理解したか~……。装備の状態ではバビロンちゃんの姿を見ることが出来てなかったのかな君、こうして生バビロンちゃんを拝んで、今までの人生の全てが塵のように感じる程に自分の中の何かがガラガラと音を立てて崩れちゃったのか~。わかる、な~んか気持ちはわかるような気がするんだけど、あ~~~……見ていてムカムカする!! 我慢できない! 言ってやる!!!
「じゃあ、辞めちゃえば? 芸術家」
『え、直球~~辛辣~~♡』
「…………いや、でも、だがしかし…………」
「自分の作った芸術よりも凄い芸術なんて、何十何百何千何万ってあるに決まってるじゃん! バビロンちゃんはその星の数ほどある芸術の中で頂点なだけ! どんなゴミを作ってきたか知らないけど、ゴミすら作れなくなったあんたはゴミ以下!」
『マリアンヌが【自信喪失の芸術家】からランクダウンし、【自身崩壊のゴミ】になりました』
「そこまで、そこまで言うか、そこまでぇぇ……」
「自分の好きだったものをゴミって呼ぶ奴なんてゴミに決まってるでしょこのゴミ!!!」
『あら~~♡』
「う、う、うぅぅ…………!!!」
こういうね、半端に縋り付くような何かが残ってるぐらいなら、いっそ更地になるぐらい徹底的にやったほうが良いのよ。良いと思う。もうこいつは、完成された芸術の前に屈してしまったからこれ以上の芸術を生み出せない。だったらもう、徹底的にぶっ壊そうね。
「……我は、ゴミです……。何の取り柄もない、何の価値もない、消えたい……」
「で、これが至高の芸術が生み出した芸術品なんだけど」
「…………」
「どう思う?」
で、壊れきったところで。今度はこのゴミをリサイクルしてみよう。スタッフ・オブ・バビロン! どうこれ、黒い水晶を赤いなんかよくわかんない超格好良い飾細工で掴んだ杖、こういうの作ってみない? どう?
「…………凄い、良いな、良いなって、思うけども、駄目だ……作れるような、イメージが、インスピレーションが……」
これはダメか。むむむ~。じゃあ~こうなったらもう、アイテムインベントリにあるの全部引っ張り出してやろう!
「これは? 料理の道とか」
「料理は、下手なんだ……」
「この映像見て? 楽しそうでしょ? 今このリゾート地にはね、カジノがあってね?」
「綺羅びやかな世界は、苦手なんだ……我に、向いているものなんて……」
「む~……。あ、この写真見てよ。こういうぬいぐるみとか可愛いの作るのはどう?」
「どうしても、見た目が、こういうものの真逆になってしまうんだ……」
『んっふふふ……♡』
「これ。ちびちゃん達に囲まれて癒やされてみたら? 妖精さんみたいなものよ」
「可愛らしい……。ふとした拍子に思い出して、泣き崩れて、消えたくなりそうだ……」
あ~~~~~めんどくせ~~~~~なんだこいつ~~~~~!!!!! 他のスクショ、なんかないの、なんか……!
「…………?」
「あ!? 何!」
「今の、今の……」
「これ? レーナちゃんっていう子だよ。ゴスロリ服がとっても似合ってて可愛いでしょ? こう見えてもう20を過ぎたお姉さんで――――」
「違う。この、美しい……。この、レーナチャン……? が、抱えている長細い物は、なんだ……?」
『マリアンヌが生きていた時代には存在しなかったわね~♡』
お……? 何か、興味を示した……? レーナちゃんにじゃなくて、これは……。ああ!!
「あ、銃? あ! 収納してくるの忘れてた! 最後まで見てた5個、そのままだった! ちょうどいいや、ほら」
「銃……。銃…………どうやって、使う?」
「あ~……。使ったら帰属しちゃうけど……。リネームカードでなんとか出来るかな……これはね、この引き金を引くと魔力を消耗して魔砲の弾丸を作り出して、この先端から発射するの」
「引き金、これか……? 魔砲、弾丸…………」
『あら、魔界技師の称号を得てないから撃てないわね~♡』
「強烈な、抵抗を感じる……。使ってみたい……」
まさかまさかの意外なものに興味を示しましたねこの人。そっか、マリアンヌが生きてた時代には銃はなかったんだ。新しいものだし、ちょっと興味が出るのも無理ないね。そうだ、もうレーナちゃん帰ってきてる頃だよね。もしよかったら撃ったところを見せてもらおうか!
「マグナさんに弟子入りするしかないかな。試験は厳しいらしいけど」
「弟子入り……」
「まずはその写真の子が使ってるところ、見せてもらおうよ」
「見たい!」
「ありゃ、レーナちゃん0時になったから落ちちゃった……。そういえば0時でバタッと居なくなるんだった……」
『あら、じゃあお姉ちゃまが暇してるから、お姉ちゃまに見せてもらったら~?』
「え、ティスティス様ですか?! 銃使うんですか!?」
『そう♡ あ、来たわよ~♡』
え、もう来たんですかティスティス様!? ええ、銃、使うんだ……!! 意外かも!
『はぁ~い♡ 銃を撃つ所が見たい子って貴方ね~~♡♡ あ、ボロ着で可哀想じゃな~い♡ ほら、お着替えしましょ? 磨けば可愛いわよ絶対、ね♡』
「え、いや、我は銃を使うところを……」
『言うこと聞かない子は銃使うところ見せてあげませ~~ん♡ あ、リンネちゃんこの子借りるわね~♡ ふんふふ~ん♡』
「あ、あ、あ……」
「あ、え……。行っちゃった……」
『お姉ちゃま、相変わらず自由ねえ~……』
自由すぎませんか!? え、本当にマリアンヌが連れて行かれちゃったんですけど……。しょうがないから、待ってるか~~……。
◆ ◆ ◆
『ほら、可愛い~♡』
『あら、可愛いじゃな~い♡』
「…………す、少し、派手過ぎる」
あら、あらあらあら。さっきのボサボサ髪のボロ雑巾みたいな人が、急にいい感じに……! いいね、いいんじゃな~い?
『私からのプレゼント、着てくれるわよね~?♡ 着てくれないと、お仕置きしちゃうぞ♡』
「き、着ます。有難き幸せ」
『んんん~~~♡ じゃ、見せてあげる♡ これが、お姉ちゃまスペシャル!! 【
名前なっが!!! え、うわうわうわうわ、大きい銃だなーって思ったら、真ん中で折れてたんですかそれ!! 銃身が、ガチャッと! 急に長距離射撃用のライフルみたいになった! ギミック付きのライフルだ、格好いいですねそれ!
『ん~~♡ 丁度、初心者ちゃんを騙してお金を毟り取った悪~いプレイヤーちゃんが居るから~……当てちゃう~♡』
『あ~……♡ 塵も残らないわねこれは……』
「え、どこに!? ここから見えるんですか!?」
『お姉ちゃまは目が良いのよ……』
ええ~……。ここからそんな悪いことをしてるプレイヤーが見え――――
『 発 ★ 射 』
「――――ッ!?」
「――――ッッッッ!!!!!!』
――――耳、聞こえないなった。この、超巨大な破裂音、リアちゃんのブリザードクラッカー以来だねえ……!!
『ワールドアナウンス:冥府仮面が詐欺行為を働いたプレイヤーを成敗しました! 対象プレイヤーは次回同様の行為を行った場合、指名手配状態になります――――反省なさ~い♡』
『ど~お?♡ あ、返事を聞かなくてもわかるわね~~♡』
『マリアンヌが【自身崩壊のゴミ】から【銃の虜】にランクアップしました』
ああ、凄い。さっきまで死んだ魚のような目をしてたのに、こんなにキラキラした目が出来るんだ、この人。やっぱりその分野の神と呼ばれる程に登り詰めた人間なんだから、一度火が点けばちょっとやそっとじゃ消えない炎にすぐに成長するよね。よかった、マリアンヌさんがゴミのまま腐って消えていくだけの存在じゃなくなりそうね。
『じゃ、私は満足したから~♡ ばぁ~い♡ 開け、冥界の扉!』
『相変わらず術を使う時は格好良いのよね……』
「あ、ありがとうございました~!!」
『ッチュ♡』
『冥神ティティエリィ・ティスティス(Lv,????)が【悩殺♡投げキッス】を発動、魔神バビロンの愛し子の為、【悩殺】を無効化しました』
「っふ、効きませんよぉ……!」
『わぁお! 本気過ぎ~~!!♡ バビロンちゃん愛されてるぅ~♡ ふーふー♡』
『お姉ちゃま!!! ワタシのなんだから!!』
『はいはい♡ ごめんなさいね~~♡ 取ったりしないわよ~♡』
お姉ちゃま、なんて、可愛らしいお方……。でも私、バビロンちゃん絶対崇拝なので!
「――――いい。いいなあ……。いい……。いい……」
さーて、火が点いたマリアンヌちゃんもこのままにしておけないか。知~らないなんて思いながら、私が口を出してここまでやっちゃったんだから、責任を取らないとね。
「バビロン様、私はマリアンヌをマグナさんのところに連れて行こうと思います。今日は本当に、ありがとうございました! これからも精進します!」
『んっ♡ 頑張りなさいね~♡ でも頑張り過ぎちゃ嫌よ~? 倒れたら悲しいもの~』
「はいっ!!」
『元気でよろしい♡』
バビロンちゃんとずっと一緒に居たい……。でも、ずっと一緒に居たら、進歩しないからね! 先に進むために、辛いけど……。行こう!! まずは、マグナさんのところに――
『マリちゃんも元気でね~♡』
「マリ、ちゃん……?」
「……。マリアンヌちゃん。今日から、貴方の愛称はマリちゃんです」
「マリ、ちゃん……。悪く、ないな……。そっちは……、マイマスター。よろしく」
「リンネで良いよ。じゃあ、バビロン様! 行ってきます!」
「行って、きます」
『行ってらっしゃ~い♡』
マリアンヌ改め、マリちゃん! まあここまで来たら死の芸術の頃からの腐れ縁よ。今後とも、よろしくねえ~……。
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